ーーーーーサキュバスの町から王宮へ向かう道の途上-----ハイルの気を追っていると、息を切らしながら山道を転げ落ちるように記者を見つける。<あれか…ハイルの気も纏っているし、胸には映像魔石も仕舞っているようだな。>走る記者の前に姿を現し、<お前か?魔石を持って王宮に向かっている記者というのは。>急に声をかけられた記者は、警戒するように魔石が入っているであろう胸に手を当てて、<だ…誰だ!?><そんなに警戒しなくともよい。魔国側の国境の町で、ルチアという者に会っただろう、その仲間だ。走っていては時間がかかると思って、迎えに来ただけだ。><迎えに?ハイル様の知り合いなのか?どうして急に現れた?もしかして魔国の人なのか?><私の事は追々…まあ、これを見てくれ。>そう言うと、正聖女ベルの処刑の場面・勇者メルヒルが魔の子村で引き起こした惨劇の場面の映像を、記者の脳内に送り込むヨハンセン。<正聖女ベル様お労しい…で、でも正聖女ベル様が復活しておられるのか?…まさか勇者ともあろう者がこんなことを……><ベルが処刑されたわけは知っているかね。><噂ではベル様がフアナ王女様に魔法で……正聖女ベル様がそんなことするはずはないと思ってはいたんだが。><これから主には、新聞社に戻る前にあるところに付き合ってもらう。そのあるところで、本人の口から本当は何があったのか聞いてみるがいい。><あるところ?本人の口?私は一刻も早く社に戻って、この魔石のことを記事にしないと……><よった方が記事に厚みが出るぞ(笑)それに主がOKを出せば、次の瞬間にはあるところについておる。そこでの一仕事の時間を考えても、ここから走るよりははるかに速いぞ(笑)>記者はヨハンセンが忽然と目の前に現れた時のことを思い返し、<そ、それもそうだな。あるところとやらで何をするのかは知らんが、分かった。そうしよう。><決まったな。では早速向かうとするから、私の腕を掴んでくれ。>記者が腕を掴むと同時に、呪文を唱えるヨハンセン。次の瞬間二人の姿は、忽然とそこから消えていた。ーーーーーーーーーー王宮、舞踏会会場--------フレデリックや他の何人かの男がリルベルに声をかけている時に会場入り口のドアの前に姿を現す二人。<ここは?王宮?舞踏会会場か。こんなところには入る機会なかなかもないし、ビデオカメラで撮っておくか。>記者がビデオカメラを起動して目立たないところに置く。記者の様子を見て薄笑いを浮かべたヨハンセン。<記者殿、その魔石貸してくれないか。主の分はコピーを作るからそれを渡す。それから、ベルを紹介するから、処刑前に何があったか、本人の口から聞くがいいさ。>ヨハンセンが言った時に、会場内に国王と前王の、フレデリックへへの叱責の声が響く。<フレデリックと言えば、王国の騎士団副団長だよな。今回の盗賊団殲滅の功により、団長昇格が確実視されていたはず。そんな人のスキャンダル、これはこれで大ニュースだな。><やあ、リルベル外してしまって悪かった。>ヨハンセンと記者はリルベルに歩み寄り、リルベルと自分及び記者以外の時を止める。急に現れたヨハンセンにフレデリックは吃驚して、バツの悪そうな表情を浮かべている。<彼が新聞記者だそうだ。君の身の上に起こったこと彼にも見せてあげてくれないか。>リルベルが記者に回想魔法をかけると同時に、自分は国王の後ろに白幕を出現させて、映像魔石の映像を膜に映し出す。魔王に押されている勇者の姿が映し出される。〘おい、ハイル。少し勇者に肩入れしすぎではないか(笑)〙ーーーーーーーーーー勇者と魔王の戦いの場--------カン…キン…(剣の当たる音)<くっ……やるな魔王。…>ハイルとベルの魔法により、魔王の件の威力は3割減、切られても即座に直されていることなど思いもよらずに、勇者が呟く。一方魔王は、<くそっ、今日は調子が悪いのか、完全にヒットしたと思った斬撃が効いておらぬわ。>その様子を魔石で見ていたのか、ヨハンセンからのテレパシーが脳内に響く。〘これはヨハンセン様。記者とは無事合流できたのですね。と仰られても、これくらい肩入れせぬことには、勇者の奴直ぐにやられてしまいそうで…〙〘それでは困るな。勇者は人間の手で処刑されなくては、今後の人間国と魔国の友好関係が図れなくなってしまう(笑)防御回復魔法はベルか。両方とももう少し力を弱めてくれ。傷だらけになってた方が、見る方も興奮するだろう。ハイル、こちらで合図をしたら、魔王の件の威力はゼロに、一方勇者の件の威力は最大にしてくれ。防御力もゼロにすることを忘れずに。いくら鈍い魔王といえ、自分に魔法をかけられたら流石に
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