両親がサークルで知り合い、仲良くなり、家族ぐるみの付き合いになった、向こうの家族の中に、仁美という女の子がいました。
知り合った当時俺、高校一年、仁美、小学五年生でした。
すっきりとした二重まぶたに透き通るような目、黒い長い髪を後ろに一本に束ねた美しい女の子でした。
それまでの俺は、小学生なんてうるさいガキ、近所のガキ共なんか大嫌いでした。
初めて見たとき、その美しさと、控え目で大人しい、そしてなんか大人びた雰囲気にすっかり俺はKOされてしまいました。
家族ぐるみの付き合いが一年、二年と経つうちに、俺は仁美に対する思いが、益々膨れ上がりました。
でも俺のことなんか、絶対眼中にないだろう、そう思ってずっといました。
中学になって、携帯を買ってもらった仁美と、アドレス交換は出来ても、ろくにメールのやりとりもないくらいでした。
俺が大学一年のとき、俺は一代決心をしました。
ふられてもいい、どうせもう大学生だし、親同士の付き合いに付き合わなくてもいいだろうから、この際言っちまえ、くらいの気持ちでした。
俺大学一年、仁美中学二年でした。
「今からちょっと電話していいか?」
日曜午後メールしました。
「用件なに?今から部活で、もう学校だから。用件メールしといて下さい。あとから見ます」
メールで伝えようか迷いました。
でもなんかフラフラと仁美が通う中学に、チャリで向かってました。
そして校門近くでなんとなく待ってました。
端から見たら不審者です。
「用件送られてないけど、どうしました?」
俺に仁美からメールが届くと、仁美は校門から一人、出てきました。
そして俺の姿を見て、驚いてました。
仁美の家の方に向かって、歩きました。
「メールじゃダメなんですか?」
怪訝そうな仁美の様子に、俺は怖じ気づき、なかなか言い出せないでいました。
(くそっ!もう仁美の家に着いちまう)
そして。
(えぇい!もうヤケクソだ!ふられたらもう親同士の付き合いに付き合わなきゃいいだけだ!)
言いました。
なんの飾り気もない言葉しか言えませんでした。
「好きです」
たったその一言を絞り出すのが精一杯でした。
額や脇の下に汗が吹き出ているのがわかりました。
仁美が歩くのを止めました。
「え?」
俺は下を向いたまま、顔を上げることすら出来ません。
「え?え?」
仁美が驚いたような声をしてて、俺は恐る恐る顔を上げました。