王さまの耳はロバの耳…
とかありましたが、言っちゃいけない事は言いたくなるものですね。
私は高校教師してる40代の男です。
人生でモテた事なんてなかったし、お堅く見られて生徒もあまり寄って来ない。
そんな私が、生徒に携帯の番号とアドレスを教える事になりまして…
これは長期休暇中に何かあった時の為だったのですが、
これをきっかけにとある女生徒と親密になってしまったのです。
「お疲れ様です。HRNo.●●●●のMです。
先生放課後10分だけお時間頂けませんか?」
初めて来たメールがこれでした。
教師に「お疲れ様です」はないだろう…と笑ってしまいましたが、とても嬉しかった。
誰も私になんかメールしないと思ってたのに、というのとは別に理由がもう一つあったのです。
このMという生徒。
いつも孤独を背負っている感じというか…
特に仲のいい友達もいない様だし、かと言ってイジメられてる様子もない。
比較的成績もよくて、規定通りの制服の着こなしなのに、授業中や昼休みは寝ているか保健室。
教員としての勘でしたが、何か気になる存在でした。
早速放課後に進路指導室の使用許可をとり返信をしました。
「先生、私兄を起訴します」
開口一番でびっくりしましたが、覚えていました。
有名講師を招いた時のアンケートに「兄に復讐してやる」と書いたMを。
「もし、言いたくなかったら言わなくてもいい…
何か、…あったのか?」
あの時は何も言わなかったけど、この時は違った。
「兄妹間でも虐待…って言うんですかねぇ…」
「た、たぶん…何かされたのか?」
彼女は俯いた。
また行き止まりになるのかと思ったが、ちゃんと続けた。
「…夜寝てるときに、部屋…入ってきて…鍵かけてるのに…壊して…身体中…舐め…られ…て」
だんだん涙声になっているがなんとか聞き取れた。
毎晩兄にレイプされているらしい。
ソファを挟むテーブルにティッシュを置いた。
立ったついでに聞いてみた。
「コーヒー飲むか」
「…うん」
進路指導室には来客様にコーヒーがある。
コーヒーを入れて差し出した。
気分が落ち着いてきたのかMは泣き止んでいた。
「ありがとう。
こんな辛い話よく俺なんかにしてくれたなぁ…
「なんか、すみません、時間とらせてこんな話聞かせて…」
ペコリと頭を下げるMが愛しくなった。
「いやいや、正直嬉しいよ。
俺出来ることなら何でもやるから。」
「はい」
Mの表情が緩んだ。
教室では見たことないMの顔。
めちゃくちゃ、可愛かった。
「家であまり眠れないなら、俺出てくしここで寝てくか?」
「…うん」
「じゃぁ、鍵しめていいし起きたら俺の準備室おいで」
出ようと立ち上がったら上着を掴まれた。
「…先生、の、傍で寝てもいい…ですか?」
「へっ!?」
「一人は、誰か来そうで怖い…」
「あぁ、なるほど…」
準備室に入ってソファに座る。
この姿勢が電卓を叩きやすい。
そしてなぜか彼女も隣に座った。体育座り。
「…寝るんじゃなかったのか?」
「電卓の音眠くなるから…ここで寝る…」
そのままソファで丸まる。
「そ、そうか…」
さっきから、普段見せることのない表情を見せるMにドキドキしていた。
教員が、手を出したらいけない相手。
Mはその後日から度々寝に来るようになった。
教室でも 少し穏やかな表情を私に向けることがあった。