目的地まであと少し。
車内を流れるジャズのリズムに合わせて、私は心の中でカウントダウンを始めた。
バックミラー越しの視線は、もう隠しきれていない。
「おっちゃん、そんなに見つめたら危ないです」なんて意地悪なセリフが喉まで出かかる。
さて、そろそろ今夜のクライマックス。
私は膝丈タイトの裾に指をかけた。思ってたより余裕なかったみたい。指が震えて何度か掴み損ねた。
そして、軽やかに、でも大胆にスカートを捲り上げる。
パンスト一枚。
ショーツを脱ぎ捨てた私の秘密が、夜の街灯に照らされて、ミラーの中に映し出されたと思う。
ベージュの薄い膜一枚隔てただけの肌。
その瞬間、運転手さんのハンドルを握る手がピクッと跳ねて、タクシーがわずかに揺れた。
「……あ」
小さな驚きの声。それ、私にはしっかり聞こえてる。
車が目的地についた。
私は捲り上げたままの脚をゆっくりと解き、わざとらしくパンストの質感をなぞりながら整えた。
精算の時、お釣りを受け取るふりをして、彼の白手袋の手に指先をそっと這わせる。
「おっちゃん。……安全運転、ありがとうございました」
私は気持ち急ぎ足になったが足が震えて上手く走れなかった。
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