2021/11/07 17:05:31
(aBuZA0rE)
混浴棟を出て、一瞬迷いました。
このまま、今度は男女別のお風呂のほうへ歩いていこうと思っていたのですが・・・
(どうしよう)
せっかくの有名温泉です。
私は、大の温泉好きでした。
はるばる来たのですから、やはりここは男女別の『普通』の女湯にも入浴してちゃんと(?)温泉を堪能していくべきです。
でも・・・
混浴棟であまり時間を使わなかったので・・・
もうひとつの選択肢が頭に浮かんでいました。
2カ所目としてどちらを選ぶか迷って、さっき諦めたほうの温泉です。
(行こう)
決断していました。
せっかく『温泉郷』に来たのです。
なるべく多くの温泉場に立ち寄りたいという気持ちのほうが勝りました。
その『3つ目』の温泉を目指して、細い山道を下っていきます。
まったく人がいませんでした。
(そこだって)
(けっこう有名なのに)
距離的には、さほど遠くありません。
ちょっと景色が開けたところで、すぐに見えてきました。
素朴な雰囲気の温泉です。
受付を済ませて、女性用の脱衣場へ向かいました。
時間帯のせいでしょうか。
貸切?って思うぐらいに、すいています。
全裸になりました。
簡単に言うと、脱衣室からあっちへ出ると女性専用露天風呂・・・
こっちから出ると『混浴』の内湯への入口に行けるというつくりです。
事前に調べて来た限りでは、混浴ではタオルを巻いての入浴が許されているはずでした。
ですから、
(さっきの2軒目のお風呂を思えば・・・)
混浴とはいっても、さほどハードルが高い感じはしません。
1軒目と同じパターンのはずでした。
(よーし)
(せっかくだから)
再び、混浴にチャレンジすることにしました。
からだにバスタオルを巻いたまま内湯への戸を開けると・・・
眼下に、
(わお)
湯船が見えています。
誰もいませんでした。
木製の階段を何歩か下っていきます。
そこが内湯でした。
(いいねえ)
(雰囲気あるねえ)
とりあえず露天も見てみたくて、奥の引き戸に歩み寄ります。
そのまま外に出ました。
(おお)
目の前に露天のお風呂があります。
そこは無人でした。
いわゆる木の湯船ではなく、岩風呂ふうです。
あっちのほうにも、もうひとつ露天岩風呂が見えました。
そちらには、男性がひとりだけお湯につかっています。
(どきどきどき)
混浴なので男の人がいるのはあたりまえでした。
でも・・・やはり、その存在を過度に意識してしまう内気な私です。
(恥ずかしい)
からだにバスタオルを巻いたままでお湯に入りました。
肩まで、
「じゃぼ」
お湯につかります。
ここの温泉は透明でした。
少し色味がかってはいますが、きれいに透き通っています。
いいお湯でした。
それほど熱くないので、いつまででも入っていられそうです。
(ふうー)
贅沢気分でした。
まあ、あちらの岩風呂のほうには男性がひとりいるけど・・・
秘湯温泉を、ほぼ貸し切り状態です。
(土日だったら)
(混んでるんだろうなあ)
混浴なのに、リラックスできていました。
風景自体は大したことありませんが・・・
耳をすませば、どこからか川のせせらぎ(?)が聞こえます。
向こうの岩風呂の男性が、こっちのお風呂をチラチラ見ていました。
60歳ぐらいのおじさんです。
と思ったら・・・
お湯から出て、私のほうに歩いてきました。
(あ・・・)
おじさんはからだの前に小さなタオルを垂らすようにして歩いて来ています。
一瞬見えてしまいました。
・・・明らかに『膨張』した、お○んちんが。
内心で緊張感が高まります。
なれなれしく、
「こんにちは」
こちらの岩風呂に、じゃぶっと入ってきました。
自画自賛するつもりで書くのではありません。
でも、はっきりとわかりました。
相手が、私の容姿・・・自分の『外見』に目を奪われているのが。
(どきどきどき)
緊張して背筋がコチコチになりそうでした。
からだにタオルを巻いているとはいえ、ここのお湯は完全に透明です。
(関わりたくない)
自分からわざわざ混浴に来ておいて、勝手な言い分なのはわかっていました。
でも・・・
(お願いだから話しかけてこないで)
それが、このときの私の正直な気持ちです。
なのに、
「おひとり?」
すぐに話しかけられていました。
こんな『美人』とふたりっきりで混浴・・・
いい歳して、あからさまに嬉しくてしょうがないという感じです。
すかさず牽制しなきゃと思う気持ちが働きました。
問いかけに、
「Excuse me?」
わざと英語で返してみせる自分がいます。
こういうときに日本人ではないふりをするのは、私の得意技でした。
少しだけ海外生活の経験があるので、雰囲気程度にネイティブっぽく話せます。
相手に対して角が立たないように・・・
にこにこしながら、
「sorry, I’m not sure what you mean」
言葉が通じないふりをします。
実際、このとき私はかなり警戒していました。
相手の目の奥に、はっきり男のいやらしさを感じ取っていたからです。
(どきどきどき)
いきなりの英語に、おじさんが『えっ?』と出鼻をくじかれた表情になっていました。
でも、それで引くどころか・・・
ますます目を輝かせて私のことをみつめています。
そして、こちらを指さしてきました。
「ノータオル」
「ジャパニーズオンセンルール」
にこにこしながらカタコト英語で注意してきます。
(え・・・)
「No towel?」
「Really?」
「イエス、オンセンルール」
しまったと思いました。
確かここはタオルOKだったはず、嘘だと思いながらも・・・
動揺してとっさに英語で反論できません。
空気的にバスタオルを取らざるをえない流れになってしまっていました。
いまさら、実は日本人でしたとも言えません。
「Oh sorry, I didn't know at all」
屈辱的でした。
でも、恥ずかしがる素振りをするのはもっと屈辱的です。
からだに巻いていたバスタオルを外しながら、
「ざば」
お湯から立ち上がりました。
平静を装いながら、おじさんの前ですっぽんぽんです。
(ひいいいん)
澄ました顔で、のんびりタオルを丸めました。
適当な岩の上に、ぼとっと置きます。
(どど、どうせ)
(二度と会うこともない)
心のどこかで開き直っていました。
(かまうもんか)
(見たけりゃ見やがれ)
またお湯につかるのではなく、ひとやすみの感じで岩風呂のふちに腰かけます。
のぼせたからだを冷ましながら、
「ふうー」
一糸まとわぬ姿でくつろぐ私・・・
そのまま、ぼーっと景色を眺めるふりをしました。
(ひいいん、見ないで)
私たち以外には誰もいません。
1対1でした。
見知らぬ男性の前なのに、オールヌードでいる私・・・
にやにや顔のおじさんが、
「ホエア、ユー・・・」
全裸の私を『しげしげ』みつめながら話しかけてきます。
「I'm from ○○○」
「My grandma is japanese」
微笑みを浮かべてみせながら、おっぱいまる出しでした。
あたかも、
「I'm traveling in Japan」
これが日本のしきたりなんだと納得したかのように、自然体のまま全裸です。
アンダーヘアもまる見えでした。
「Where do you live?」
「・・・Maybe Tokyo? or Osaka?」
「イエス、トオキョー」
(もうだめ)
(たすけて)
「this hot spring here famous?」
「え、なに?」
(ああ、私・・・)
(興奮してる)
目線を、すーっと向こうにやります。
さっきこのおじさんが入っていた、もうひとつの岩風呂があっちにありました。
おもむろに立ち上がります。
「ざぼっ」
目の前の視線からの逃避の感情と、背徳の興奮の入り混じった衝動でした。
バスタオルをその場に置き去りにします。
(ひゃあああ)
躊躇いのない顔で、
(きゃああ、きゃあああ)
すっぽんぽんのまま青空の下を歩いていきました。
正真正銘、一糸まとわぬ真っ裸です。
(何が悪いの)
(ここはお風呂だよ)
ものすごい高揚感でした。
同時に、自分を見ている男の人がいるという羞恥の気持ちに・・・
ずっと心臓を鷲掴みされっぱなしです。
「じゃぶん」
小さいほうの岩風呂に入りました。
首までお湯に沈めます。
(あああ、もうだめ)
(恥ずかしすぎる)
そのとき、一瞬ハッとしました。
コロナの関係で、もしかして本来はまだ海外からの旅行客は日本に来られない?
私は『○○○から来て日本を旅行中』だとあの人に言ってしまいました。
しまった、
(迂闊だった)
・・・嘘がバレる?
だいじょうぶ・・・
あの人は、若い女のヌードを見ることに頭がいっぱい・・・
だから、
(きっと大丈夫)
でも、そうわかっていても不安は膨らみます。
もはや、お湯を楽しむどころではありませんでした。
とにかく最後まで、なんとか自然体のふりを貫き通すしかありません。
(よしっ、よーーし)
ゆっくり30まで数えたら・・・
またこのまま素っ裸で、あっちの岩風呂へ戻ってやる・・・
(どきどきどき)
(どきどきどき)
28・・・29・・・30・・・よしっ。
「ざばっ」
お湯から出ながら振り向きました。
そして、
(あっ・・・)
ひざがガクガクしそうになります。
同時に、耳が『かーっ』と熱くなりました。
(いやん)
人が増えていたのです。
さっきのトオキョーおじさんの他に、男性2人がお湯につかっていました。
すでに、はだかの私の存在に目が釘付けの様子でこっちを見ています。
(ひいい)
行くしかありませんでした。
覚悟を決めて、足を踏み出します。
(ここはお風呂)
(やましいことなんてない)
どこも隠しませんでした。
胸もアンダーヘアもまる出しのまま、平然と自然体で歩いていきます。
(ばくばくばく)
(ばくばくばく)
あと10メートル・・・5メートル・・・
全員がおじさんでした。
お湯の中から無言のまま、すっぽんぽんの私を食い入るようにみつめています。
(いやあん)
(恥ずかしいよ)
何食わぬ顔で、置いてあった自分のバスタオルを取りました。
手早くからだに巻きます。
(ばくばくばく)
(ばくばくばく)
振り返らずに露天をあとにしました。
内湯の建物に入ります。
入ると同時に、
『どきっ』
そこにいたまた別の男性と目が合って、内心びくっとしました。
(ばくばくばく)
内湯につかるのは断念して、そのまま木の階段を昇っていきます。
まるで逃げるような気持ちで女性脱衣室へと戻る、心臓ばくばくの『私』でした。
(もうだめ)
(こんなの心臓に悪すぎる)
それから約1時間後・・・
途中で休憩を挟んでから、駐めた車のところまで歩いて戻ってきていました。
予約したビジネスホテルまで、ここから再び運転です。
続く。