日々は流れ,オーナーは増々日中の用事に追われ,店に出て来る時間が前よりも
遅くなり,愛莉は俺が居る事に安心して,忙しそうに店の仕事に追われている。
俺はあくまで客として,周りの男達に目を光らせていた。夜中配達された弁当・パン等,
チルド商品を陳列する愛莉の仕事を手伝ったりしていて時々,愛莉の横でマジっぽく
「もう俺が居なくても大丈夫でしょ。一人で居られる平気でしょ」と冗談言うと,
愛莉の,その小猫の様な可愛い顔が今にも泣きそうになり, 「冗談だよ」と俺が言うと,
「又~、飯村さんたら何時も真顔で言うから,私も本気にするじゃないですかーッ」と
愛莉は半ば泣きそうな声で俺の胸を軽く叩く。そんな愛莉か愛しくなり抱き締める俺。
無論,店内に客が無い事を承知の上での確信犯である。愛莉も始めは嫌がってたが,
『スキンシップ,スキンシップ。それとも愛莉ちゃんは俺の事信頼してないのかな?』
と言うと,愛莉は身体の力を抜く。それ幸いと日々抱き締める力を徐々に強めていく。
そんなこんなで小一ヶ月過ぎ,すっかり俺に全幅の信頼を寄せる愛莉とも打ち溶けて,
抱き締める時間が多少長くなっても嫌がる素振りも見せなくなり,それどころか逆に,
『スキンシップ,スキンシップ』と俺の後から抱き付いたりして来る様になってきた。
そんなある日,何時もに増して真顔で〈上記の様な事を〉言うと,愛莉も真剣な顔で,
「どうして何時も飯村さんはそう言って私をイジメるの?前にも言ったけど私は飯村
さんだけを信頼してるの。だから」と言うやいなや,泣きながら愛莉が抱き付いて来て,
「だからオネガイ,もう私の事イジメないで。でないと私壊れてしまうかも」と言って来た。
「ご免,別に本気でイジメてた訳じゃ無いんだ。俺も愛莉ちゃんの事好きだし,愛莉
ちゃんが余りにも可愛いから,ついイジメたくなっちゃって・・・ だから許して,御願い」
突然の愛莉の行言動に驚き,慌てうろたえた俺はそう言って,何度も必死に頭を下げ
まくった結果,やっと愛莉も泣き止んでくれて, 「それ本当?」と聞き返してきた。
「モチロン!愛莉ちゃんは可愛いよ,否,可愛過ぎる」と何とか愛莉の機嫌を取ろうとする
俺に, 「違~うの,私の事好きだって事」と甘える様な声で,改めて聞いてきた。
「えっ」 思いも寄らない愛莉の言葉に,俺は暫し絶句した。