第七章 選択と剥露
それからしばらく経ったある日。
海は何度か、いつものように矢島と社内ですれ違った。
ふと、矢島が海の顔を真正面から見た。
その瞳は、懇願するように潤んでいた。
「……熟れたか」
矢島は小さく呟くと、そのまま通り過ぎた。
就業後、海が自社ビルを出て路地に入ったときだった。
低いエンジン音を唸らせる黒いスポーツカーが停まっていた。
横を通り過ぎようとした瞬間、窓が静かに開いた。
矢島が運転席から海を見据え、低い声で言った。
「自分で選びなさい。車に乗るか……何もなかったと、そのまま帰るか」
待ちに待った言葉。
海の心臓が激しく鳴り、身体がゾクゾクと震えた。
(私が……選ぶ? どうして車に乗れと言ってくれないの……?)
乗ってしまえば、もう戻れない。
そんな予感が怖かった。
それでも、連れて行ってほしいと疼く身体。
まともに接触したのは、給湯室での平手打ちの一度だけ。
それなのに、毎日この人を想って、何度も達してしまった……。
涙がポロポロと零れ落ちた。
「……私を、連れて行って……どこへでも……」
矢島は静かに言った。
「乗りなさい」
「……はい」
車は静かに走り出した。
目的地は、あの高層マンションの地下駐車場だった。
専用エレベーターに乗り、斜め後ろをついていく海。
部屋に入ると、そこはモニターがズラリと並んだデスクと大きなソファー、そしてその間に大きな×印が描かれた床があった。
「しるし所に立って待っていなさい」
「……はい」
矢島はデスクに座り、何かをカチャカチャと操作し始めた。
モニターの隙間から、海の全身が丸見えになっている。
(この人は……私に興味がないの……?)
やがて矢島の手が止まった。
「君……いや、加藤室長。そのまま服を脱ぎなさい」
「えっ……?」
「何をする気ですか!?」
「何もしないさ」
困惑する海だったが、身体が勝手に動き始めた。
ジャケットを脱ぎ、スカートを下ろし、ブラウスのボタンを外していく。
パンティストッキングを脱ぎ、背を向けてブラジャーを外した。
「身体をこちらに向けなさい」
腕で胸を隠しながら振り返る。
「そのびしょ濡れのパンティーもだ」
その言葉に乳首がキュンと尖った。
息が荒くなり、手が震えながらパンティーに掛かる。
パンティーを下ろすと、無数の愛液の糸が引いた。
「乳首が立って、乳輪が縮んでいる……スケベな女だな。
パンティーもこんなに濡らして……汚い女」
(……っ! そんな……酷い……でも、なぜ……身体が熱くなって……)
海の胸の奥が、羞恥と快感でざわめいた。
罵倒されるほどに、下腹の奥が疼き、蜜がさらに溢れ出す。
パンティーが足元に落ち、恥ずかしさのあまりその場にしゃがみ込む。
「立ちなさい。こちらを向いて」
(いや……見ないで……こんな姿……)
身体が勝手に従ってしまう自分が、怖くてたまらない。
「いやらしい身体だ。手で隠すな! スケベ女」
「……は、はい……っ」
(スケベ……女……? 私、そんな……でも、呼ばれた瞬間、乳首が痛いほど尖って……)
「でかい乳房だ。何人に揉まれた?」
視線を落とす海。
「こっちを見なさい!」
ハッと顔を上げた瞬間、ぞくぞくっと背筋が震えた。
涙がボロボロと溢れ、太ももを蜜が伝っている。
矢島がゆっくり立ち上がり、海に近づいてきた。
「あれから何回オナニーしたんだ?」
首を横に振る。
「嘘をつくな!」
太ももを伝う蜜を指で掬い取り、矢島は嘲るように笑った。
「身体は正直なようだぞ……変態女」
(変態……っ! 違う……私はそんな……でも、なんで……こんなに気持ちいいの……?)
罵倒のたびに、ぞくぞくっと甘い痺れが全身を駆け巡る。
溢れる涙と蜜が止まらない。
「なんだこの汚い下の毛……雌豚か?」
「……ごめんなさい……」
「『私は汚い毛の生えた雌豚です』と言いなさい」
激しく首を横に振る海の頬に、バシッと平手打ちが飛んだ。
(……ああ、打たれて……また疼いてしまう……)
さらにベルトを抜き、尻にパンッと一撃。
「キャッ……!」
「私は……うぅっ……汚い毛の生えた……雌豚です……っ」
(恥ずかしい……惨め……なのに……この人の言葉で、身体が悦んで……壊れていく……)
矢島はリモコンを操作し、天井から大きな姿見を下ろした。
「見てみろ」
顔を背ける海の髪を鷲掴み、強引に鏡に向ける。
優しい、けれど深い声で囁いた。
「見てごらん……これが君が捨てようとしていた、本当の君だよ」
鏡に映る自分——頬が赤く腫れ、涙でドロドロになった顔。
太ももは蜜でキラキラと光り、目は恍惚と潤んでいる。
矢島は海を優しく抱きしめ、耳元で囁いた。
「身体も心も喜んでいる……綺麗だ」
海はワンワンと泣きじゃくった。
(こんなに惨めで、汚い姿なのに……この人が「綺麗だ」だなんて……)
あれだけ放置され、焦がれた人に散々罵倒され、悦んでしまった自分を肯定してくれたこの人。
海は心の底から、この人を恩人と思い、深い尊敬と、どこか狂おしいほどの愛情のようなものを抱いた。
(この人のためなら……何でもできる……してあげたい……)
心に、強い主従の念が、熱く刻まれた——。
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