第27章 私という人間
私、加藤海。28歳。情報処理室の室長をしている。
高校から大学を卒業するまでに、五人の男性と付き合ってきた。
優しくて、素敵な人たちだった。本当に。
それでも、デートを重ねて、身体を重ねても……私は、どうしても物足りなさを感じてしまっていた。
五人目の彼は、自分をSだと名乗っていた。
「調教してやる」などと言いながら、セックスの最中にお尻をペチンと叩いたことがある。
その時だけ——ほんの少しだけ——胸の奥に何かが引っかかる感覚があった。
やれ裸の写真を送れだの、ノーパンで来いだのと命令してくる。
でも、同い年の男性にそう言われても……どうしても素直に従う気が起きなかった。
写真なんて送らなかったし、すぐに別れた。
信用できなかったのだ。
「この人は本当に私を好きなのだろうか」と、どうしても考えてしまって。
ただ、彼のおかげで、SMという世界があることを知った。
ネットで調べてみて、驚いた。
雌豚だの、奴隷だの……そんな言葉が飛び交う世界。
当時の私は「自分には無縁だ」と本気で思っていた。
どちらかと言えば、私の方がS寄りなんじゃないかとさえ思っていたくらいだ。
そうして私は、「自分は人を愛せない人間なのだ」と確信した。
独りで生きていくと決めて、仕事に没頭した。
そのおかげで、最年少で室長を任せてもらえた。
身体の疼きはオナニーで十分だったし、かつての彼らとのセックスより気持ちいいとさえ思っていた。
ただ——お尻をペチンと叩かれた、あの感覚だけが、ずっと引っかかっていた。
そんな時に、梵様と出会った。
見出された、と言った方が正しいのかもしれない。
衝撃的なファーストコンタクトだった。
いきなり、頬を強くひっぱたかれた。
何が起きているのか分からず、涙が出て、変な感情がドクンと胸を刺した。
「よく頑張ったな」と頭を撫でていただいて……
何かは分からなかったけれど、凄く安心して、泣きじゃくってしまった。
今思い出すと、とても恥ずかしい。
それなのに、それから暫くは放置された。
私は梵様の事ばかり考えていた。
どんどん大きくなっていく梵様の存在。
頬に残った痛みが忘れられない。痛かった。本当に。
でも……それだけではなかった。
いろんな事を教わって、経験させていただいて、本当のセックスも……していただいた。
私が今までしてきたセックスが、
「人を愛せない人間だ」などと思い込んでいた自分が、
全部まがい物だったと、教えていただいた。
身も心も、この数ヶ月で大きく変わった。
私の身体は傷だらけだ。
でも……その傷の一つ一つが、愛おしい。
梵様の淫欲を受け止め、自分も酔いしれる。
それは私だけの特権。
私がこんなに一人の人を愛するなんて、
自分でも想像だにしなかった。
自分が本当はこういう人間だったなんて、知らなかった。
縄をかけられる時。
鞭を打たれる時。
外で露出させられる時。
身体を傷つけられる時。
マシンに犯される時。
私は、梵様を見る。
私を見て、微笑んでいる梵様を。
その時、幸せを感じる。
身も心も。
服従するに値する人。
全てを捧げられる人。
絶対の信頼を置ける人。
それが、私にとっての梵様の存在。
それに……可愛いところもある。
私の元彼たちに嫉妬するんだそうだ。
そんなところも、大好き。
そして、新しい梵様の記しをいただいた。
三つのピアス。
それも、梵様が直接、付けてくださった。
激しい痛みと、激しい快感。
嬉しい。本当に嬉しい。
わかるかしら。
痛みさえも、嬉しいの。
見てほしい。
あなたが作った私を。
それだけで、感じる。
セックスなんかより、ずっと感じる。
私はもう、一人では逝けない。
梵様の「逝きなさい」の言葉がないと、身体が達しない。
普通に歩いている時でも、梵様が「逝きなさい」と言えば、その場でイってしまう。
こればっかりは不思議。
よく動画でリモコンバイブというものを見るけれど、あんなものじゃない。
言葉どおりに、逝ってしまう。達してしまう。
凄くないかしら。
オシッコだってそう。
尿意なんて関係ない。
梵様が「しなさい」と言えば、出てしまう。
それに……それに。
梵様のおちんちんは、大きい。
ただ大きいだけじゃない。
愛撫が、上手い。
指先でクリトリスを優しく円を描くように撫でられ、時折軽く弾かれると、腰が勝手に浮いてしまう。
舌でゆっくりと舐め上げられ、ピアスを軽く歯で引っかけられた瞬間の、電気が走るような感触。
乳首を舌で転がされ、吸い上げられ、ピアスを優しく引っ張られながら、もう片方の手で秘部を掻き回される。
ゆっくりと奥まで入れられ、子宮の入り口をグリグリと押される感覚。
引き抜きざまに、亀頭でピアスを内側から擦られる感触。
全部が、計算されているみたいに気持ちいい。
「じーさんだから」などと謙遜されるけれど……そんなの、関係ない。
むしろ、その余裕のある手つきが、余計に私を溶かしてしまう。
そして……アナルも。
最初は怖かった。
「ここは、初めてだろ?」と後ろからゆっくりと割り入れられた時、熱くて、恥ずかしくて、涙が出た。
なのに、痛いはずなのに、奥を突かれるたびに変な快感が広がっていって……。
気がつけば、自分から腰を動かしていた。
二穴をされた時は、本当にすごかった。
前と後ろ、両方を梵様に埋め尽くされて、動けない。
お腹の中で二つのものが押し合い、擦れ合う感触。
息が浅くなるくらい、中がパンパンになる。
「両方に入ってる……」と気づいた瞬間の、言いようのない辱めと、そこから溢れてくる甘い快感。
頭が真っ白になって、自分が何を言っているのかも分からなくなった。
「雌豚です……」と自ら言わされて、それでも嬉しかった。
あれは……本当に、すごかった。
周りの目なんて、関係ない。
私は梵様を愛しているし、梵様は私を大切にしてくださる。
鞭の痛みも、縄の痛みも、終わらない快楽も、肉体改造も、辱めも——
全部が「愛している」と伝わってくる。
のろけてしまったかしら。
これから、梵様は私をどうしていくのだろう。
もっと傷つけてくださるのか。
もっと辱めてくださるのか。
それとも、また新しい「記し」をくれるのか。
少し、不安もある。
でも……絶対の信頼があるから、怖いのに、楽しみなの。
「海、そろそろオシッコに行きなさい」
「はぃ……梵様」
行かなくては。
デスクを立ち、トイレに向かう海だった。
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