【神事録 〜肉体と精神の乖離、そして鬼畜の微笑〜】
待ちに待った30分間の逢瀬……の筈だった。
私が牛飼い様にダメ出しをしてしまったせいで、この日の謁見はひどく緊張を孕んでいた。
日課であったチャットも途絶え、二人が暗黙のうちに築き上げてきたルーティンを、私自らの手で壊してしまったのだ。
案の定、彼の表情も硬い。
決定的な亀裂が入った訳ではないのに、この息詰まるような気まずさは何だ。
ぎこちない空気を、定番の天気の話題で必死に揺さぶってみる。ダメ出しはしたけれど、決して嫌いになったわけではない。ただ、素直にすがる気にもなれない……牛飼い様の方からこの面倒くさい女心を汲み取ってくれないかしら、などと傲慢に待っていた。
だが、牛飼い様は不敵に距離を詰め、そっと私の急所に触れた。
(あ……来る……)
そう身構えた瞬間。予想に反して、私のお腹がガンガンと強く押し込まれ、同時に首根っこを圧迫された。
お腹への一撃は完全に予想外だった。優しく首だけを押されると思っていた私の肉体は、こんな張り詰めた空気の中だというのに、自らの意志を裏切って卑猥な反応を示してしまったのだ。
圧迫から解放された瞬間、お腹の奥がヒクヒクとだらしなく呼応する。周辺の肉がギュルんと一回転し、神経のすべてが掻き回されていく。
平然と会話を続けながら、私は何度となくその恐ろしい「手術」を受けた。
そのまま口付けを交わした時、私はもう人様には到底お見せできない表情を浮かべていたのだろう。牛飼い様が「フッ」と笑いを堪える吐息だけが、耳元に落ちてきた。
何度目かの、腹部への圧迫。
「……こういう事をするから、太くて、大きいアレが欲しくなっちゃうんじゃないですか」
狂わされた脳髄から、遂にそんな本音が漏れ出た。
彼はそれがひどく愉快だったようで、聞こえないフリをして私を弄ぶり、私は三回もそのはしたない発情のセリフを復唱させられる羽目になった。
牛飼い様はご自身のズボンを覗き込み、「私は細くて小さいですから、役不足ですね」と、底冷えするほど冷酷に告げてきた。
私はもう、何も言えなかった。
ただ、このヒクヒクと蠢くお腹の奥を、圧倒的な質量の暴力で満たされたい。精子脳の煩悩を獣のままに叩きつけられ、思考のすべてを手放したい。
頭(精神)は完全に牛飼い様のもの。なのに、肉体は別のオスの暴力を求めて発情している。
私はこれから、一体どうなってしまうのだろう。
牛飼い様はいつものように穏やかに微笑んでいる。しかし、私が他のオスを求め始めているというこの悍ましい事実に対し、その仮面の隙間から口角を釣り上げる「本物の鬼畜」の顔が、確かに垣間見えたのだ。
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