ちょうど同じ日の夕方
僕と神戸が、待ち合わせしていた頃
正美は、旧体育館のドアを叩いていた
重たい ドアが開いて園田が顔を出した
「どうした?、まあとりあえず中に入りなさい」
学校で見せる柔和な、目尻にシワの言った笑顔で迎えてくれた
前回 調教が行われたのとは違う、 居住スペースとして使われている和室に通された
正美は、ローファーを脱いで畳の上に上がった
正美は薄手のタイツの足裏に畳の冷たさを感じた
太い 張りのある天井
古い畳
昭和の雰囲気の残る和室に置かれた古いちゃぶ台に正美は、正座で座った
園田は入れたてのコーヒーを両手に持って現れ、1つを正美の前に置いた
神戸が、いつも生徒が来ると入れたてのコーヒーを目の前に置くのは、園田の影響だった。
正美は、うつむいたまま何も話さなかった
「彼とうまくいってないのか?」
強面の園田であったが、声は柔らかかった
「そんなことはないんです。大好きなんです⋯」
それ以上の言葉が出なかった
それは正美の、本心だった、その思いには嘘はなかった
それを園田も見て取った。
「そっか、それは良かった。じゃあ何でまたここに来たんだ?」
正美は、うつむいたまま黙っていた
園田の柔和な、笑みは消えていた
「自分の口で言わないと分からない。何をしに来たんだ?」
園田は厳しい口調で言い放った
園田の空気が一気に変わった
正美は、救いを求めてここにやってきたのだが、突き放されたように感じた
涙が溢れそうになるのをぐっとこらえていた。
「なぜここに来たのか聞いてるんだ、ただそれだけだ。」
そう
園田は、正美が、どうしてここに来たか、いや来る前から
ここに来ることも分かっていた。
前回の調教で、正美が、本当のマゾだということを分かっていたからだ
しかし園田は、
若い男女2人でうまくやっていければと思っていたのも事実だった
正美の、胸の中をいろんな思いが 駆け巡った、早瀬のことが好きな自分、でも、そこには求めるものがないことも分かっていた。
そして 何かを 求めてここに来てしまっていること。
すでに正美の中に、目の前の男による刻印が刻まれていた。
そして それは消えないろうそくの火のように、正美の中でともり続けていた。
新しい扉
でもその扉を開けることへの不安。
その扉を開けようとしている自分を
認めたくない 自分もいた。
でももう、この扉を開く 以外に、自分には道はないとも思えた
正美は、顔を上げ、輪郭のはっきりした瞳で 園田を見つめた
そして、3歩 ほど下がったかと思うと、両手を畳について 畳に、額をこすりつけながら
「ご主人様、どうか私をご主人様の奴隷にしてください」
とうとうその言葉を口にしてしまった
後戻り できない扉を開いてしまったのだ
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