「そうか、それはいい心がけだよ。私は君たちのように初々しく、仲の良い夫婦やカップルを応援するのが何より愉しみでねぇ…。結婚三年か…。普通ならば倦怠期を迎えるところだが、その心配は君たちには無用のようだね」
狩野は俺を、そしてとくに順子に「好印象」を持った様子で頷く。
「噂通りの生真面目な誠君の事だ。無論、私は全面的に応援するよ。君たち夫婦を見るに、その人柄はよくわかったのでねぇ」
俺はその場でなんと一千万円の融資を約束してもらい、人前であることも憚らず、恋女房と手を取り合って喜びあった。だがそんな幸福は長く続くはずもなく…救世主と思っていた狩野は変質的な悪魔へと姿を変えることとなる…。
最初こそは俺の情熱に惚れ込んだ素振りを見せたが、再び経営危機に陥った途端、僅か一年で見放すとそのテの輩を送り込み、俺たちに莫大な利子と共に返済を求め始めた。ただでさえ、閑古鳥の無く俺の店にまで顔を出し嫌がらせめいた取り立てに、夫婦そろって困惑する毎日。そんなある日、まるでドラマみたいなお話だが、新しいスポンサー探しに奔走し、成果なく疲れ果てて店に戻った俺に奇妙な置き手紙が残されていた。
『奥様を返済分の代わりにお預かりします 商談は狩野邸にて』
短いものの、この上ない脅迫文。順子は狩野の手足になっている連中に拉致られたわけだ。
下卑た嗤いと共に俺を迎え入れた狩野は、書生という名の配下達に俺を取り押さえさせ、奥の座敷に連行していく。
「じゅ、順子はどこだ!?」
「ククク、今すぐ会わせてあげるよ、慌てなさんな。仲の良い夫婦を観ていると、本当に愉快だねえぇ~~」
皮肉めいた声音で俺を詰りつつ、手下たちに座敷の襖を開けさせる。そこに見えたものは…。天井近くの欄間の部分に縄で釘付けにされたのX状の長い竹筒。そこにSMチックに縛められる我妻順子の姿だった。順子は裸だった。いや正確には、白いパンティ一貫の半裸だ。俺を魅了してやまない巨乳ともいえる乳房は見事に披露され、身悶えるたび荒縄の軋みと共に、左右に艶めかしく震えた。口には手ぬぐいの猿轡までまぐわされ、狂おしげな喘ぎが時折漏れる。
「いかがかね、愛する嫁さんの磔絵図をご覧になった感想は? うへへへへ」
狩野の下劣極まりない台詞など耳に入らぬ俺だ。まるで目の前の出来事が、TVドラマのワンシーン、いやエロビデオでも見ているような錯覚に襲われるも、俺は腕を押さえつける書生たちを振り払い、卑猥な捕えられ方をしている順子に走り寄ろうとした、が、背後から凄まじい力で引き戻され、畳にたたきつけられる。武道の経験のあるらしい篤志家の飼い犬の力は半端じゃなかった。俺は散々惨めなまでに蹂躙され、リンチを受けた。くぐもった悲痛の声ならぬ声を発する妻の前で・・・。
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