ドラッグストア店舗の先3〜40メートル先に併設されたトイレを目指し2人は、歩を進めていく。
誰も2人の思惑を疑う者はおらず、レジ袋を手にした買い物客が店舗から出てくる。
何気なく杏奈たちを一瞥しただけで興味を失い、2人の前を横切って停めた車へと歩いていく。誰もが自分の目的のために動き回る、日常の光景が過ぎていく。視界の左隅に店舗入口を捉えながらあと少し、垣根が途切れたトイレの入口まであと少しのところだった。
杏奈たちのすぐ背後で、砂袋が地面に叩きつけられるようなドシャッ……という鈍い音が聞こえた聞こえた気がしたのだ。続いて人の呻く声が続き、弾かれたように振り向く。そこにはつい今しがたに自分たちの前を通り過ぎたはずの、買い物客が倒れていた。
忘れ物でもしたのかドラッグストア店舗に引き返す途中だったらしく、地面にはレジ袋から飛び出た商品が散らばっている。50前後だろうか、やや小太りの男性が顔面蒼白で呻きながら、脂汗を浮かべて胸を押さえている。
これは………。
杏奈は間もなく起こる次の展開に備え、彼にあることを指示する。彼……卓は展開の中へと駆け込んで、数分後には店員を引き連れて戻って来た。
その間の杏奈は男性に声を掛け続け、胸元のボタンを外してやり、ペルトを緩めていた。
然るべきところに連絡をし、事が恐れていた最悪の事態へと移ったことを確認した。ぐったりした男性の胸に両手を重ねて押し当て、伸ばした腕ごと体重を乗せてリズムよく押し込んでいく………。
1…2…3…4…5……6…7…8…9…10………ふぅ~っ!
男性の顎を上に向け、男性の鼻を摘んで重ねた口から息を吹き込む……。
男性の様子に気を配りながら、卓が連れてきた店員を見る
手にしていたオレンジ色のプラスチックケース開き、男性の胸と脇の下辺りに線の繋がったパットを貼り付ける。
離れてっ……!!
杏奈が語気を強めて短く叫び、プラスチックケースの本体のボタンを押した。
刹那……男性の身体が地面の上で弾み、様子が変わらないことを確認。チャージボタンを押して再び胸を繰り返し押して、再度ボタンを押す……。
また身体を弾ませた男性は……小さく咳き込む様子を見せてくれ、呼吸が再開したことを確認する。
あとはサイレンを鳴り響かせて到着した隊員に、一部始終を告げて彼らにバトンを繋げ、事なきを得たのだった。
杏奈の職場は不特定多数の人が集まる施設とあってもしもの時に備え、スタッフの一員として講習を受けさせられていたのだ。今は大きな公共施設に専用機材が備えられていることが多く、もしかしたらと卓に頼んだのが良かった。
まさかこんな所で、役に立つとは思わなかったけれど………。
ホッとはしたものの出鼻を挫かれた格好になり、そんな雰囲気もへったくれもなくなってしまっていた。まともではないことしようとしていた罪の罰なのか、こうなる運命だったのかもしれない。
卓はもう杏奈と会わない意思を持ち、杏奈の今の気持ちも恐らく分かっている。だからこそ最後に応えようとしてくれていたというのに……。
彼よりもこの世に先に生まれ、少しだけ長く生きてきたのだ。だからこそ、せめて自分から笑顔を見せなければ……、そして精一杯の痩せ我慢をしながら、小さく手を振ってから背中を向けて歩き出す、これでいい……。
思い切って身体ごと向きを変え、卓の顔を見た。
もう腹は決めたはずなのに、あんな顔をするなんて狡すぎる。卓があんな感情を出した表情を見せるなんて、杏奈は初めて見た。
そんなに寂しそうな顔を見せるから、なにも言えなくなったじゃない……。
杏奈は困って、思わず溜息をついていた。
卓が育った環境は客観的に考えれば、望ましいものではなかった。派遣型風俗、それが実態だったからだ。
所属するお姉さんたちは、なにも望んでその世界に足を踏み入れたわけではない。様々な理由を抱えて、皆やって来る。
前職は教師や会計士、役所の職員や銀行員、そして保険外交員や法の世界を目指す女子大学生まで幅広く存在していたのだ。主な理由は借金の返済がいちばん多く、女子大学生は奨学金の返済がその理由だった。
もちろん、現役で二足の草鞋を履く人もいた。
夢だったお店をオープンしたものの、軌道に乗る前に資金繰りが上手くいかなくなったのだ。お客がつくまであと少し踏ん張れれば……そのあと少しが、踏ん張れなかった。
お店を畳んで虚しい返済を続けるか、彼女は悩んでこの世界の扉を叩いたのだ。昼間はやっと常連客がついたお店を回し、夜は闇夜に羽ばたく蝶となり、羽を動かず代わりに下半身の腰を動かすのだ。彼女は数年で借金の返済を終えて、足を洗っていった。
また普通の主婦が所属しているのも珍しくなく、性技に優れた彼女たちは人気があった。
その中には看護師をする40代の綺麗な人もいて、女湯かタレントを生業にしていても違和感のない美貌を備える女性だったのだ。
卓の童貞を奪った人でもあり、卓の父親のいう男にするべく地獄ともいうべきセックスを味合わされてきた。入れ代わり立ち代わりに下半身を跨がれ、女を教え込まれてきた。
特段に凄かったひとりにその看護師さん連ねていて、射精をしてしまっても決して許してはもらえなかった。射精直後だというのに腰の躍動を続けられる苦しみ……。
涙を流して悶絶する卓を憂いを帯びた顔で見下ろし、ゆっくりと腰を前後に揺らし続けるのだ。
頭が狂いそうな苦しみと快感が卓を絶えず襲い続け、やがて年増の味が忘れられない男に成長していったのだった。
その彼女が発作を起こした仲間を、目の前で処置をして救う出来事を目にしたことがあった。
セックスをするときの側面しか知らなかった卓は彼女の看護師としての凄さを知り、仲間を助けるために必死になる姿にひとりの女性として尊敬の念を抱いたものだ。
そんな体験をした卓は彼女と同じことをして男性を目の前で救った杏奈を、初めてひとりの女性、ひとりの人間として意識させられていた。
杏奈にも歩んできた人生があり、もう少し大事にするべきだったと後悔を覚えたのだ。
そして看護師の彼女とはまるで姿形もタイプも違うけれど、杏奈に対する気持ちの扉、封印していたその扉を開けてしまったのだ。卓は一期一会の精神で女性たちと交わるポリシーを持っている。
だから気持ちが入らなければ、勃起をしない。
好きになってはいけないから、その扉を封印しなければならない。去るときに辛くなるから………。
でも今、禁断の扉をついに開けてしまった。
口ごもって言葉を出せず困り顔の杏奈を前に、もう自分に嘘がつけなくなっていた。
杏奈の手を引いて停めてあった自分の車の助手席に案内し、どこに行くのかと尋ねる彼女にはなにも答えず黙って笑顔を向けた。
1時間半も走ると卓がたまにひとりで利用する、とある温泉宿に到着していた。初老の主人は既に馴染みであり、初めて女性を連れてきたことには内心で驚いていたが……。
年齢差があることから訳ありだと察し、そのことをお首にも出さないのは年の功なのだろう。
何も聞かず、余計なことも言わずに、露天風呂が備え付けの部屋を黙って充てがってやった。
そこは卓も初めて利用する部屋であり、この主人の心遣いに感謝した。いつも黙って手渡すチップの、細やかなお返しのつもりかもしれない。
部屋は奥まった位置にあり、静かに過ごしたい客用に配慮がなされている。つまりは男女二人連れが利用する部屋であることが分かる。
戸惑う杏奈を抱き寄せた卓は、優しく、容赦なく唇を重ねた。頬に当てた手を肌伝に後頭部まで移動させ、指の腹で杏奈の頭皮に接触させる。
その行為が卓の本気度を意識させ、杏奈の龍腕も伸びて卓の首に巻きつける。
2人はお互いに身に着けた衣類を脱がし合い、庭に面した石造りの露天風呂にゆっくりとその身を沈めた。卓の引き締まった色白の身体が杏奈の目に映り、メリハリのある杏奈の身体が卓の目をくすぐった。
程よく温まった身体をお湯から出して縁の岩に腰掛けて、卓の舌が杏奈の首筋からゆっくり南下する。ヨガスタジオで邪な気持ちを抱く、そんな男の目を釘付けにする乳房に唇を押し当てて、水分を舐め取っていく。
いじらしくもあり、焦れったくもあるけれど卓のその気持ちが乗った愛撫が、杏奈に感じたことのない気持ちにさせていく。混じりっけのない淫らな気持ちが溢れ出し、乳首を舌先で転がされるたびに幼児が愚図ったような喘ぎ声が出る……。
程よく遊ばせた舌を肌伝えに南下させ、オヘソを経由して太腿から膝へ。そして、その膝を左右に開く……。
まだ夕刻には早い時間とあって、白い柔肌に張り付いた黒々とした恥毛がはっきりと見える。そして杏奈の下の口は興奮度を現すようにびたりとは閉じておらず、温泉とは如何なる何かによって輝きを放っている。
杏奈は身体が燃え尽きそうなほど恥ずかしいのにそこを凝視する卓を見詰め、顔を埋められて初めて目を閉じた。あの日のトイレの個室の中で味わったように、いや……その時よりも露骨な愛撫に身体を安定させるのが大変だった。
こんななにも隅々まで舐めるなんて、そんな男は過去の経験にはない。そして、女泣かせの所業に移っていく。
ここが外じゃなければ、こんなに声を我慢する必要はないのに……そう感じるほど杏奈は苦しみ、卓の舌使いに身体を震わせる。
その苦しみは乱れのない断続的な快感そのものであり、吸い付かれたまま舌先を動かされ、地獄と天国を同時に感じさせる猛烈な官能の味が呼吸を忘れさせる。
慌てて息を吸い込んでも今度は吐き出せず、まともな声を出せないまま、背中が弓形に反っていく…。
激しく弾ませた身体がまた硬直し、休まずに舌を動かし続ける卓に再びその身を震わせる杏奈…。。
このままでは身体が保たないと感じた杏奈ば、卓の頭を引き剥がす。代わりに湯の中に膝をついて逞しいモノを口に咥えて、思う存分に味わっていく。
感じてもらいたいという杏奈の気持ちがその愛撫に宿り、卓ば尻の穴に思わず力を込める。
目尻から涙を零しながら喉の奥まで咥え込み、そうかと思えば顔を左右に傾けながら亀頭を攻めていく。
本体との凹凸にびたりと纏わりつく杏奈の唇が、卓のこめかみに血管を浮かび上がらせる。
卓はここまでフェラチオの出来る相手を、童貞をを奪ったあのお姉さん……看護師以外に知らない。
唇の吸着感も一定ではなく、咥え込んでから引く際に微妙な力の抜きかたをしてくる。
そんなことをされたら………。
女性の指を咥えて伝授をしたこともあるが、理解してくれた人はほとんどいない。それをいとも簡単にするなんて、一言も伝えていないのに……。
卓は堪らずに杏奈をそこから引き剥がし、どうして……と不服そうな杏奈のそこにあてがった。
クワッ……っと入口が上下左右に広がり、眉間に皺を刻む杏奈を見ながら沈めていく……。
ゆっくりと時間をかけて、何度か腰をひいては沈め、ゆっくりと静かに……。
奥に到達するのと杏奈の顎が跳ね上がったのは、ほとんど同時だった……。
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