……噛み心地に違和感はありますが?
虫歯の治療の最終段階、金属製の詰め物を入れたことの確認。
……それと、そろそろクリーニングをされたほうがいいですね。歯医者さんはお嫌いですか?
明美は努めて柔らかい言葉を選び、男性患者に対して遠回しに告げた。
………痛くなってからじゃ嫌な治療の回数が増えることになるから、そうなる前に是非いらして下さい…
我ながら少し意地悪な言い方になったかしらと、
渋々と歯のクリーニングの予約をいれると約束、治療を終えたた男性患者の背中を見送る。
明美は昨日から生理が始まった。これから数日間は鬱陶しい日々を過ごさなければならならないのだ。これだから女はと思われないよう、感情の起伏や言葉使いに気おつけなければならない。
もう慣れこととはいえ男には本当の意味で分からない気苦労を持て余しながら、明美はこの日の勤務を終えた。その2日後のいちばん生理の重い日を越えたこの日、揺れる電車内の人が密集する中で、あの細い少年の手の温もりを下半身に感じていた。
するするとスカートの中に侵入した彼の手が前側に周り、閉じた内腿をこじ開けるように入ってきた。彼はショーツの中の厚みのある物体に気付いたようで、その手の動きを止めた。
よかった、今はよして欲しいの、分かるでしょ?
そんな独り言をを、内心で呟いてみる。少年はそれでも再び手を動かしはじめると、鼠径部に指を滑り込ませながらやんわりと触れてくる。
内腿やショーツの前側を這い回り、生理中の女の欲情を少しづつ上げてくる。歯痒さを覚えつつも最低限の女の淫らな気持ちを味あわせてくれる。
明美は必要以上の行為に及ばない少年に、その若さに似合わない気遣いに密かな好感を抱いた。
でも寝た子を起こされた以上、悶々としてしまうのは否めない。明美のそんな気持ちを見透かしたように、ショーツを浮かせてお臍から少し距離のある箇所から肌の上を、滑り込ませてくる少年の指先。
止めてよ……という焦る気持ちが、体を硬くさせる。指先はナプキンの下まで進むことはなかったが、女を至福へと導く敏感な蕾をあの柔らかい指の腹が撫で始めるのだった。
ただでさえ生理中で敏感になったクリトリスが、歓喜の声を上げ始める。普段以上に繊細な指使いが明美を否応なくその気にさせていく。
前髪を軽く直し、何気なく腕時計を見たり、意味もなく舌先で唇を舐めてみたりと落ち着かなくなってくる。パンパンに張ったクリトリスが撫でられる快感が頭の中で、幾重にも大きな波紋となって何重にも歪に広がっていく。
油断をすれば声が漏れ出そうになり、体重を乗せていない方の踵を繰り返し浮かせ、膝を曲げたり伸ばしたりを繰り返しだす明美。眉間に寄せた皺が誰にもしられたくない苦悩を表していた。
ナプキンには経血に分泌液が混ざったものが溢れ出し、明美は少年の手首を力強く握ることで耐え忍ぶ……。
生理明けが、待ち遠しかった。
夜の帳が下り始めた空の下を、疲れを肩に乗せた人々を運ぶ電車が、帰路へと運んでいく。
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