バスタブに浸かりながら、放心したように考えていた。あの少年は一体、どういうつもりなのだろうと。
一般論として彼からしたらおばさんでしかない私のような女に、何を考えているのかしら……。
それと同時にこれといって抵抗することなく少年のする行為を受け入れてしまったこと、自分でもそれが信じられなかった。
そんな自分を恥じながら一方で表面上は嫌悪しながらも、満更でもないと思う決して認めたくない自分がいることも事実だった。もちろん両手を広げて受け入れられはしない。少なくともまだ、あの少年は如何なものかと思う自分は失ってはいないのだから。
その夜、珍しく酔った夫が帰宅した。アルコールの影響があるとはいえいつになく情熱的に誘われて、明美も火照った気持ちを持て余していたのかもしれない。
けれど夫は途中で不能になってしまった。若い頃はこんなことはなかったのにと、やや残念な気持ちを抱えて夫に背中を向けて眠るしかなかった。
夫といえば申し訳無さそうに謝ってきたが、こればかりはアルコールを恨むしかない。夫はお酒に弱いのだから。
………大丈夫ですか?
フォローをしますから 、あまり無理をしないで下さいね。
私も来週辺りだから、憂鬱です。男にはわかりませんよね
休憩時間に歯科衛生士のひとりに、言われたのだった。無意識にため息を吐く明美の姿を見たのだろう。生理中だと勘違いした彼女は、毎月来る重い生理痛に辟易しているのだ。
女同士だから通じる会話にそれとなく誤魔化した明美だったが、明美の場合は生理の前後のほうがむしろ鬱陶しいく感じるタイプである。
胸の張りや苛々する気持ちの不安定さ、もう長い付き合いだから折り合いの付け方は心得てはいるけれど、それというのも夫の昨夜の不手際のせいにすることにした。何よりも、あの少年の影響は確実にある。この年齢の女に性的興奮を抱かせて揺さぶり、満たされない気持ちを植え付けたのだから。
明美は自分のロッカーの中にあるポーチを手にしてトイレに入り、折り畳まれた小さなシートをパッケージから取り出して広げた。下着から剥がし取ったシートは排卵期を告げる粘り気が強い粘液が付着し、清潔なシートに交換する。
ふっ……と短いため息を付き、明美はトイレを後にした。女ってつくづく面倒臭いと思った学生時代の遠い日を思い、午後の診療に向けて頭を切り替えてトイレを後にした。
ホームに到着した電車が巻き起こす風に、カーキ色のスカートを押さえる。今日はパンツの気分だったのに、寝坊をして急いでシャワーを済ませて出てくると、用意して出しておいたパンツの上に愛猫が寝ていたのだ。
今からすべての準備を終えてからでは毛だらけのパンツを処理をする時間は無いと、急遽スカートに変更をしたのだ。まさかとは思うが2日連続で今日も痴漢をあの少年にされたら、抗い切る自信が持てそうにない。なのに………。
いくらなんでも連日はないだろうと思った明美の考えは、いとも簡単に裏切られてしまった。
少年の柔らかい手がスカートの裾を持ち上げ、太腿に触れてきたのだ。
よく考えれば扉の横は人の出入りが頻繁であるしし、人目が気になる場所といえるはずだが、そこが意外と盲点なのかもしれない。今どきの時代は痴漢に間違われたくない男性が顕著と言えるし、携帯電話に視線を落とす人は珍しくない。
余程の挙動不審だったり女性が声を上げない限りは、気付かれにくい場所になってしまっている。
事実 、少年はこれまで自分を弄ぶことが出来ているのだから。
今日はいつもより30分、遅かった。ホームの陰で見ているとあの人が並ぶ姿が見えたのだ。
初めて見た瞬間からこの人だと、決めていた。
お姉さんたちから教わった女の何気ない仕草、幾つもの特徴から性に深く喜びを感じるタイプを見極めることが出来るようになった。
選んだ女性に触れるたび、ほぼ外れはなく、それは自信に繋がっていた。どの女性も快楽の海に漂い、最後は挿入する段階になっても本気で抵抗はしなかった。そればかりかややお尻を突き出し、深く奥まで届くように自ら望んで快感を得られるようにするのだ。
反応を表に出さないよう我慢強く平静さを保ち、甘味を極力味わうように車窓に映る表情の目元をとろ〜ん……とさせる。
女性の中は柔らかくて温かくて、うねりのある波打つような凹凸感や細かなザラつき感が迎えてくれた。周囲に気付かれないようゆっくりとしか突けないが、その分長く中に留まれる。それはそのまま女性側の快感に繋がり、奥の壁に当たる度に頭が持ち上がるのだ。
このままでは達してしまう焦り、もっと味わいたい気持ちが拮抗して揺れる女心、それが伝わってくるのが好きだった。
この女の人を悦ばせたい、卓はその一心だった。
まさか2日連続で自分が現れるとは思ってはいないだろう。人をひとり間に挟んで後に並び、開いた扉に乗り込む前の人に続き、扉の脇に立った女の人の背後に流れるように身を滑り込ませた。
すぐ後に立つと僅かに汗ばんだ女性特有の体臭が漂い、その時を待った。電車が動き出す………。
お尻に触れると昨日と同じく体をぴくっと硬直させ、頭を下げて俯かせた。
誰もが親子ほど年齢差のある男女を見ても、痴漢の加害者と被害者だと気付く者はいない。見た目にして40前後の女性としてはスレンダーで、どちらかと言えば綺麗な人なのかもしれない。
スカートの中に忍ばせた手に触れる太腿がぴくぴくさせていることから、全面的に受け入れているわけではないようだ。色んな感情を抑えて自分に負けると、後はこちらに従順になっていく。
達しそうになる手前で手を緩め、汗ばむ股の間で指先を再び震わせる。子の人は完全にクリトリスを露出させて触れてもある程度の耐性があるのは昨日で分かっていた。無駄に触れ続ければ苦痛を感じるだけになり、上手にすれば、特に口ですれば数回は達することの出来るタイプかもしれない。そのことはお姉さんたちに教え込まれ、知っていた。
指の腹の下で滑る敏感な蕾が硬く主張し、女の人の膝ががくがくと笑い始める。卓は指を下に滑らせて触れなければその存在に気付かない膣の穴へと、指先を埋めていった。
他首を繰り返し返すように動かして、指の腹に当たる膣の壁を撫でていく。繰り返し何度も、何回も、繰り返し、繰り返し。
明美は知らずしらず上半身はそのままに手摺りを掴んだまま、お尻を後に突き出すようになっていた。お尻の間に何かが当たることよりも、抜き差しされることの抗えない快感のほうが大事になっていた。
夫のペニスを昨夜味わえなかった欲求が自制心を眠らせ、下着の中で躍動させる少年の指に陶酔せざるを得ない。それほど魅力的な快感だから……。
不意にその指が中から抜かれ、下着の中からも手が引き抜かれていく。昨日だって降りる駅の手前まで弄られていたというのに。急に夢から覚めたようになった明美は羞恥心に身が焼かれるいたたまれない気持ちを舐めさせられていた。
そんな明美はお尻で何やらごそごそとされる違和感の後 、スカートの裾を持ち上げられていた。
スカートと裏地に保護されていた肌が、密集する群衆の息が冷房で冷やされた空気に触れ、ひやりとする。
ほんのお尻の中心部分以外は下ろされ、露出部分は最小限になる。その代わりにショーツの片側が横にずらされ、あっ……と思ったときには何かが中へと潜り入ってくる瞬間だった。
僅か数秒後に息が詰まり、その存在が何であるかは性経験のある女なら誰でも認識出来るだろう。
こんな電車内で、明美は信じられなくて両目を見開いた。手摺りを掴む手に力が入り、空いている手を口元に運ぶ。少年にしてはあまりに立派で、夫よりも逞しいそれが膣の中程まで入ってくる。
引いては戻り、引かれては進み来る。ゆっくりと穏やかに何度も、何度も、また……。
やがて子宮の入口まで進み、当てられた。その瞬間に唇の薄く開いた隙間から溜めていた息が漏れ出し、声無き声も一緒に吐き出されていく。
少年の肩から下げられた鞄の影に隠れた手で明美の腰を掴み、手摺り側の手も反対側の腰を掴んで明美の下半身を固定させて、最小限の動きで生理の近い女盛りの明美を翻弄させていく。
クリトリスで受ける刺激とは別次元の深い快感が体中に溶け広がり、自分の意思では止められない悦楽の波に酔っていく。
腰を押し出されるタイミングに合わせ、明美もお尻を突き出してその先を要求する。女も歳を重ねればふてぶてしくなれる。特に秘密を共有する間柄ならば連れ添った夫に対するように……。
この人もご多分に漏れず、セックスが好きな女性なのだと思った。様々な鎧を脱ぎ捨ててこんなに貪欲になれるなんて、それなりの理由があるのかもしれない。
気が付けば30分以上も、時間が経過していた。
さすがにこんなに長い時間を、電車内で女の人の中に留まることは珍しい。女の人の耳は赤く色を染め、達することを踏み止まっているように見える。そのことは膣壁がひくひくと動き、度々強く締め付けてくることからも卓の経験から理解していた。
自分の醜態を、乗客たちに見せたくはないのだろう。卓は腰の動きを止めて、明美の手摺りを掴む側の片手を腰から脇腹へと滑らせ、脇の下を割って入ると胸を包み込む。こんな場所での交わりの満足度を上げるのに、精神的にも女であることの悦びを重ねでもらいたい。
次の駅でこの人が最寄り駅だということは、もう知っていた。胸から手を離し、達しない程度に腰を動かす。優しく包みこんでいた明美の膣は、今では収縮を顕著に見せるようになっていた。
電車が減速を始めた頃になって明美の中からやっと離れ、開いた扉から進み出た明美は足を縺れさせまいとする、そんな歩き方をしているように卓には見えていた。
次に会ったときにもまた受け入れてくれるだろうか、卓は再開時に想いを巡らせていた。
明美はあの場でオーガズムに達するわけにはいかない不条理さと、お預けをされたもの悲しさを覚えながら、狭い充実感をも感じていた。
最後までいけたなら、どんなにいいか……。
叶うかどうかも分からない不確かな期待を胸に、あの少年はまた現れてくれるだろうかと、社会に生きる常識的な成人女性にあるまじきことを考えていた。
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