「好きでなくても抱けるんだよね?だったら簡単でしょう!?娘でもね、抱けるでしょ!抱いてよ、抱きなさいよ!!」
下着姿の絵里香は興奮し、最後は泣き叫んだ。
そして、圭介に抱きつき、キスをしてきた
思いもよらない事だった。
圭介すぐ絵里香を引き離した。
「やめろ!なにしてんだ!」
そう圭介が怒鳴ると絵里香は、こらえていたものが弾けるように、
「うわぁ〜ん〜」と大声で泣き出した。
泣きわめく絵里香の肩にタオルケットを羽織らせ、
「絵里香…すまない…」
そう言って、絵里香の頭を抱き寄せた。
絵里香はいつまでも圭介の胸の中で泣きじゃくっていた。
藍莉とはもう何も関わりを持たない。
そんな事は重々分かっている。
だが、圭介にそれはできなかった。
なぜ藍莉が気になるのだろう。
あれから何日経ったのだろう。
仕事に行く途中、またあの公園を通った。
「おじさん…」
振り向くとそこに藍莉の姿があった。
傍らには小さなスーツケースを持って。
圭介は一瞬立ち止まったが、また会社に向かって歩き出した。
藍莉もスーツケースを引きながら、後ろをついてきた。
「どこか…行くのか…?」
「…うん…。東京の知り合いのとこ。」
「そんな当てあるのか…」
「うん…まぁ…」
「大丈夫なのか…お金は…」
「たぶんね…」
藍莉は、これ以上圭介に迷惑をかけたくない、そんな一心で東京に行くことを決めたのだった。それを圭介はなんとなく分かっていた。
「心配だな…」
「こんな時も藍莉の事、心配してくれるんだね…なんで?」
「さあな…」
しばらく2人は無言で歩いた。
駅に着いた。
「おじさん、お別れだね。」
藍莉が笑顔で言った。
「あっちで…ウリなんかするなよ。」
「うん…、頑張る…」
「どうしても…耐えられないくらい辛かったら…連絡しろ…」
圭介のその言葉に藍莉は首を振った。
「最後にさ、お願い…。もう一回だけ…藍莉、って呼んで…。」
圭介は少しだけ下を向き、再び顔を上げ、
「…藍莉、…元気でな…。」
藍莉は溢れそうな涙を堪え、無理に笑顔を作って、
「おじさんもな!、元気でね…」
そして圭介は背中を見せ、そのまま歩いて行った。
藍莉は、圭介の姿を見てると気持ちが変わりそうで、急いで改札に向かった。
立ち止まると涙が出そうな気がして、脇目も振らず新幹線のホームに向かった。
新幹線の自由席はもう満員だった。
仕方なくデッキに立って発車時間を待った
外を眺めていると、これまでの事が一気に
思い出されて泣きそうだった。
「おじさん…おじさん…もうすでに…つらいよ…」
下を向くと、足元に涙が一雫落ちた。
そんな藍莉を乗せ、新幹線は一路東京へ向かった。
「2度と会わない…でも会いたい…会えるかな…おじさん…。」
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