動画の始まりは朝の光景だった。通勤時間帯の駅の様子が数秒入ったあと、急ぎ足の女の足元が映される。黒いパンプスにスラリと伸びた脚がストッキングに包まれ、小気味よく歩いていく。
チャコールグレーの膝丈のスカートが、足の動きに応じて太もものかたちを伝え、同色の上着が清潔な白のブラウスに羽織られている。繊細な首に揺れるロングの黒髪、あの柔らかな頬に長いまつ毛、潤いのある瞳。
はじめから分かっていた。それは香澄だった。
予感していたとおり、この男は盗撮していた。映像はそこで切り替わり、駅構内の階段を登る、香澄の後ろ姿になる。パンプスを静かに鳴らす足首とふくらはぎの細さは、スカート越しに見える尻と太ももの肉感を、静かに扇情的に支えていた。
そして、電車の車内では逆さ撮りされ、スーツの膝丈スカートだからこそ明瞭にではなかったが、明るいベージュのパンストは、香澄の太ももの感触を慎ましく包みながら、その奥にはラベンダー色のショーツがひっそりと息づいていた。
そこで映像はタブレットに映されたものへと切り替わり、盗撮されたものと同じショーツが、男の手によってタブレットの横に置かれる。男は誇らしそうに、花柄の刺繍が入ったラベンダー色のショーツを、後ろや前にひっくり返しながら、おもむろにクロッチ部分を広げた。
タブレットには香澄の顔がアップで映され、長いまつ毛の奥の瞳がこちらを見つめている。その香澄の顔をふさぐように赤黒い肉棒が現れ、ゆっくりと顔を這いながら、先端から滲み出た粘液を、頬や唇に塗りこんでいく。
やがて男の息は、はぁ、はぁ、はぁ、という荒いものに変わっていき、ねばねばと汚された香澄の顔の前で、まるで見せつけるかのように、ラベンダー色のショーツを肉棒に巻きながら、手を上下に動かしていった。
はぁ、はぁ、はぁ、かすみ、かすみ…
呻くように香澄の名前を呼びながら、男の手の動きは早まっていく。知らない男に呼び捨てにされる妻の名前に俺はドキッとしながら、その行方を静かに見守る。俺のも熱く硬く勃起していた。
かすみ、かすみ、犯…す…っ
その声に合わせるように、ラベンダー色のショーツにくるまれた肉棒はビクビクと痙攣しながら、精液を吐き出す。亀頭にあてがわれたクロッチ部分からは、粘液がにじみ出し、まるで香澄のなかに出した余韻に浸っているようだった。
ゆっくりとショーツは肉棒から離され、大量に射精された濁った液体でどろどろにされたクロッチ部分が広げられる。男はそれを、タブレットに映された香澄の顔の横に置く。そこで映像は終わっていた。
その晩、俺は脱衣所をまさぐり、香澄の脱ぎたてを1枚ビニール袋に入れて、郵便受けに投函した。
前略 下着泥棒様
素晴らしい内容にとてつもなく興奮しました。こちらは約束どおりのお礼です。続きがあれば、ぜひ見せてください。何かしらのお礼はさせてもらいます。
早々
拝啓から前略に切り替えたのは、俺なりの洒落のつもりだった。また、そんなメッセージをつけて投函したあと、下着泥棒に親密さを感じていることに気づいて苦笑した。
しかし、このペースでは香澄の下着がなくなってしまう。彼女にどんな言い訳をしたらいいんだろうと思いながら、この際、俺の趣味も取り入れた下着を、香澄と一緒にまとめて買おうと考えた。
そして、このときまでは、性的興奮を求める欲望の強さを、俺はまだ甘く見ていたのだろうと思う。たぶん引き返すなら、このタイミングしかなかったことを。
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