三度目の熱い饗宴を終えた私たちは、キッチンカウンターの冷たい大理石に突っ伏したまま、しばらくの間、荒い息を吐き出し続けていた。
キッチンという、家庭の平穏が詰め込まれたこの場所で、私たちは何度も何度も境界線を踏み越えてきた。カウンターの上には、調理器具や調味料が散乱し、私たちの激しい営みの爪痕を物語っている。
「……良太さん、もう、動けないわ」
純代さんが、力なく笑いながら私の胸元に顔を寄せる。その頬は紅潮し、濡れた髪が額に張り付いていた。彼女の身体から漂うのは、石鹸の香りと、私たちの愛液が混ざり合った、隠しようもない背徳の匂いだ。私は彼女の豊かな肩を抱き寄せ、その柔らかい髪を指先で愛おしそうになぞった。
「……そろそろ、帰らないといけませんね」
私は時計を見た。午後3時半。彼女の息子さんが帰宅するまで、残された時間はあとわずかだ。名残惜しさはあったが、この密室での時間は、あくまで「この場所」だけで完結させなければならない。それがこの関係を維持するための、唯一のルールなのだから。
私たちはゆっくりと立ち上がり、シャワーを浴びるために脱衣所へと向かった。
私はシャワーを借り、身体を洗い流した。冷たい水が、彼女の香りと自分の熱気を洗い流していく。脱衣所に置かれた彼女の家庭用のバスアメニティが、妙に現実味を帯びて目に映る。
身体を拭き、服を着ようとしていたその時、浴室の扉が滑るように開いた。
湯気の中に、バスタオルを脱ぎ捨てた純代さんが立っていた。先ほどまでの疲労はどこへやら、彼女の瞳には、私を送り出すことへの名残惜しさと、まだ満たされない飢えが混ざりあった妖艶な光が宿っている。
「……良太さん、まだ帰らないで」
「純代さん、あと少しで息子さんが帰ってきますよ」
「そんなのわかってる。でも……最後にもう一度だけ。あなたの温もりを、もっと焼き付けておきたいの」
彼女は言葉とともに私にすがりつき、濡れた肌と肌を密着させた。湿った空間が、再び二人を淫らな熱気の中に引きずり込む。
浴室の扉を閉めた瞬間、私は彼女の顎を強引に持ち上げ、逃げ場を失った唇を容赦なく深く噛み潰した。
「んむっ……っ!」
彼女の喉の奥から、甘い悲鳴が漏れる。私は彼女の肩をタイル壁に押し付け、逃がさないように首筋に手を回す。舌先を無理やりねじ込み、彼女の上品な口内を荒々しく蹂躙した。絡み合う唾液の糸が、私たちの結合をより濃密なものへと昇華させる。彼女は私の背中に爪を立て、恍惚と苦痛が混ざり合ったような表情で、抗うように身体を捩った。
「ん……っ、良太さん……っ、もっと、だめ……っ、息が……」
唇を離すと、糸を引く唾液が彼女の口元を濡らし、瞳は潤んで焦点が定まらない。私は彼女を抱き上げ、シャワーの温水が降り注ぐ中、壁に背を預けさせた。片脚を高く持ち上げ、すでに蕩けるほどに開いた秘部へと、四度目の侵入を果たす。
「ああ、あんっ! 良太さん、良太さん……っ、壊れる、本当に壊れちゃうっ! あまりに奥まで、いじり回されるからっ……!!」
四度目の激突は、より深く、そして重い。タイル壁に彼女の背中が当たるたびに、タン、タン、と乾いた音がする。お湯が彼女の豊満な胸を伝い、結合部からは泡混じった愛液が白く濁って滴り落ちた。
浴室のタイルに反響する彼女の泣きそうな絶頂の悲鳴と、私の荒い吐息。限界を超えたところで、私は彼女の奥深くに熱い塊を解き放った。彼女の身体はまるで蛇に巻かれたように硬く締め付けられ、私たちはシャワーの雨の中で、長い間、抱き合ったまま動くことができなかった。
夜。午後11時を回った頃、自宅で一人、スマホを眺めていた私のもとに、予定通り彼女から着信があった。
「良太さん……今、終わったわ……」
彼女は語り始めた。指令通りに黒いレースのランジェリーを纏い、ご主人を誘ったこと。しかし、ご主人との営みはあまりに味気ないものだった。
「主人は、いつものように電気を消して、背後から淡々と腰を突くだけ……。まるで事務作業のような、なんの熱もない行為。良太さんの激しさと比べたら、ゴミみたい」
その時、受話器の向こうで足音が遠ざかり、浴室のドアが閉まる音がした。水の音が響き始める。
「今、お風呂に入った。……良太さん、ここからよね?」
純代さんの声が湿り気を帯びる。彼女はベッドの上で、ご主人が先ほどまでいた場所のすぐ隣で、私が渡したバイブを自身の奥深くへとねじ込んだ。
「っ……あぁ……っ! ……ダメ、入りすぎ……っ、今の私、すごく敏感になってる……! ああぁ! ……そこ、良太さんが、さっき激しく突いてくれたあの場所っ……!」
彼女の声は、罪悪感で震えながらも底なしの欲情に溺れている。クチュリ、と愛液が混ざり合い、バイブが彼女の内壁をくすぐる音が激しさを増していく。
「良太さん……っ! イく、イグ……イクッ、イグッ……! あぁっ、良太さんっ、イ、イっちゃう、イっちゃうぅぅーーーっ!! イク、イク……イグッ……あああぁぁーーーっ!!!」
身体をエビのように反らせ、彼女が絶頂の波に飲み込まれていく。愛液がシーツを汚し、彼女の全身が痙攣し、荒い吐息が電話機を濡らしていく。
その時、浴室から「カチャリ」と金属音がした。シャワーが止まった。
「あ……ッ!」
彼女の絶頂の余韻が、凍りつくような緊張へと一瞬で塗り替えられる。
「あ、ぁ……っ、う、うう……ッ」
彼女は自身の口を必死に手で塞ぎ、溢れ出る吐息を殺そうとしていた。しかし、イききった直後の身体は、意思に反してヒクヒクと激しく震え続けている。浴室から聞こえる、ご主人の足音。タオルで身体を拭く、あの聞き慣れた日常の音。
「……ッ、ごめん、なさ……っ、明日……ッ!」
寝室のドアノブが重々しく回され、向こう側からご主人の気配が迫る。彼女は震える指で通話終了ボタンを押し、私はただ、沈黙したスマートフォンの画面を見つめながら、その背徳の余韻に深く沈み込んでいった。
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