腰を屈めての作業も多く腰が痛む。ただ時間だけが一刻一刻と進んでいた。「茂坊…昼だな。家に入れ。何か作るから喰え。」スマホを見ると昼時になっていた。「あっ、はい。」そう言うとおばさんの後ろを歩きながら家に入った。土の付いたジャンパーを脱ぐと上がり台に腰を下ろす。ズボンも少し汚れていたが気にするほどではなかった。靴を脱ぐとそのまま居間に歩き座布団に座っていた。「疲れたべ?冷たいもんでも飲め。」そう言いながら冷えた麦茶を差し出した。既に乾燥していた喉に冷たい麦茶が染み渡るように流れていった。(はぁ、美味い…)そう感じながら手を後ろに置くと痛む腰を伸ばした。「腰、痛むか?」笑いながらおばさんが一皿の漬物を運んできた。「たいしたものは無いけど、有るもんで良いか?」そう話し掛けた。「うん、何でも良いよ。」疲れのせいもあって、空腹感が感じられないのだ。ようやく身体も落ち着いてきた。安心感からか尿意を感じた。座布団に膝を付きながらも立ち上がると台所に向かった。「おばさん…トイレ借りても良いか?」そう言うとこちらを向きながら、「そこ曲がると風呂場があるから…風呂場の向かいだ…早く行って来い…」そう言うとまた包丁を動かした。田舎の会話と云うものはざっくばらんである。別に軽視している訳でもなく、面倒くさい訳でもない。ただ、尊重の中にも気兼ね無く親密感を感じさせながらの会話になる。家族との会話にも等しくなる。「けー」、「くうー」これだけでも会話が成立するのだ。「食べて下さい」、「いただきます」の会話となる。言われたように廊下を歩く。風呂場を右手に向かい側にトイレがあった。中に入ると小用を済ませた。手を洗い廊下に出た。向かい側の風呂場の入り口前は洗濯場になっていた。白い洗濯機が置いてある。無意識と云うか…好奇心とでも云おうか何気なくその蓋を開けた。洗濯する暇も無かったのかそのままの状態で衣類が入っていた。辺りを見廻しながらそっとその中に手を入れた。手に掴んでいたのは1枚の布地であった。グレーの光沢のある布地である。両手で広げるとグレーの光沢の中に薔薇の刺繍が施されていた。罪悪感と興奮が胸の中を駆け巡っていた。(おばさん…)言葉に発することなく心の中で叫んだ。それはあきらかに、想いを寄せていた御婦人のパンティであった。台所から聞こえるまな板を包丁で叩く音と目の前の布地が妙に重なっていた。
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