目覚まし時計の煩いほどのアラームで目が覚めた。眠気眼で時計を見た。朝の7時を示していた。(今日も手伝いに行かないとな…)約束事、或いは使命感にも似たような気持で起き上がった。いそいそと着替え身支度をすると自転車のペダルを踏んだ。昨日の事もあり、厚かましい気分ではいたが彼女の姿が常に頭の中に存在していた。暫くして作業場となる納屋に到着した。納屋の隣に自転車を停めると近くの山を眺めた。直ぐ側にある山である為、歩いても数分で行ける。緑の葉が僅かな風に揺られていた。小鳥の囀りも聞こえていた。「茂坊、もう来てくれたんか?」振り返ると彼女が麦藁帽子を手に持ちながら笑顔で歩いて来た。昨日の事もある。若干の気不味さを感じながらも挨拶をした。「あっ、おはようございます」そう告げると挨拶を返してきた。「おはよう…昨夜は眠れたかい?」何事も無かったのようにいつもの雰囲気だ。ただ、衣類の変化には気付いた。「おばさん…その服って昔っぽいですね。似合うけど。」彼女は衣服を確認するように眺めると、「これか?ホームセンターに売ってたんよ。今のモンペって感じでしょ?紐でなくてゴムが入ってるんよ…そんなにバサバサしなくて。」テレビの昔の映像でしか見たことがなかった。かすり柄のモンペと云う作業着に花柄のブラウスである。今の時代に合わせてかそんなに幅が広い訳でもなく、かと言ってスラックスのような窮屈感は感じられなかった。作業するには適した衣類であろう。然しながら、そんな昭和チックな衣装を纏う彼女に心が動いていた。「今日は何すれば良いの?」そう尋ねると、「少し2階の片付けでもせんとな…」納屋の入り口付近に2階に昇る梯子があった。古い木製の梯子であったがまだ現役で使えていた。「茂坊…悪いが梯子登って上に行ってくんねーか?」直ぐに了承すると梯子を登った。「バケツ上げるからロープ下ろしてくれるか?足元にあるべ?」確かに足元には一本のロープがある。その先を下に下ろした。おばさんはバケツの持ちて部分にロープを結ぶと上げるように合図をした。「水入ってるからな。重いぞ。」確かに重さは感じたが、そんなに気になる重さではなかった。何の障害もなく2階へと持ち上げた。
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