人、人、人……よくもこんなに人が集まるものだと街を行き交う人の群れを見て、歩美は人酔いをしそうな気分になる。
東京の一等地にあるとある場所に向かいながら、女医の雅子とともに幅の広い横断歩道を渡っていく。歩美は学会が主催する製薬会社や著名な教授の話を聞きに、医院長の鶴の一声で参加させられてしまったのだ。
たかが地方の中小規模の病院だというのに、我が病院の職員とドクターを参加させれば箔が付くとでも思っているのだろうか。
君も看護師長になったんだから、勉強のためには1度は東京の空気を知っておきなさい……だって。
医院長の自己満足のために、バカバカしいにもほどがあるというものだ。
半日以上の拘束から解放された歩美は空腹を覚えていたので、雅子を誘ってどこかで食事をと考えていた。
そんなとき「ねぇ、食事の手配をしておいたからさ、もちろん行くわよね……?」
……と、目を輝かせた雅子が、やる気満々の眼差しを歩美に向けてくる。こういうときのこの女医は何か目的があるに決まっている。どうせ男絡みの食事なのだろうと、歩美はいささかうんざりする気持ちだった。
「どうせ支払いは向こう側がするし、美味しいものを食べましょうよ……ねっ、いいじゃない……」
食べるのは食事だけじゃなくて、その後の男もでしょ?………と、内心で毒づいてみる。まあ東京でひとり食事をする気にもなれないし、お腹が満たされたらさっさとホテルに戻ればいいと、歩美は雅子の申し出を渋々了承することにした。
夜の帳が下りてきた都会の街に明かりが灯り、道行く先々に見えるショウウィンドウやお店の看板を、綺麗に彩りはじめる。テレビでよく見る百貨店の屋上の時計台を眺め、また大きな交差点の通りを渡っていく。
中規模の建物が立ち並ぶ一階に様々なお店が通りの先まで続き、どこか格式張った雰囲気に少し疲れてくる。またいくつかのお店の前を通り過ぎた辺りで、雅子が歩く足の速度を緩めてキョロキョロしはじめた。
何やら建物と建物の間、人ひとりがやっと通れるような路地を確認しているようで、3本目の路地ともいえないような隙間の暗がりを、彼女は入っていくではないか。歩美もおっかなびっくり後をついていくと、その先はまた別の建物の壁になったのが分かり、路地の幅が少しだけ広くなった。
するとなんでこんな所にと思うような場所にお店の小さな看板の明かりが現れて、びっくりしてしまった。まるで時代の流れに取り残されたように周囲をビルに取り囲まれ、正和の香りを漂わせた古い木造の建物が歩美の目の前に現れたのだ。
よく見るとその向こう3件も同じような建物が軒を並べ、食欲を刺激する匂いがこちらまで流れてくる。歩みの住む街にはまだまだこういった佇まいのお店は当たり前に存在するけれど、大都会の東京では生き字引のようなお店なのだろう。
暖簾を潜るとL字のカウンターがあり、3組が座れるテーブルが壁際にあるどこにでもありそうな造りのそんなお店に、初めて来たのに懐かしさを歩美は覚えた。店主に話が通っていたのか、奥の座敷に行くように促されてカウンター客の背後を進んでいく。
すると突き当りを右に曲がる通路があり、お店の外観からは想像できない奥行きがあることが意外だった。お座敷の前らしき場所の引き戸を開けると、女医の雅子が好きそうな30前後のいわゆるイケメンが2人、笑顔で待ち受けていた。
考えてみれば雅子は東京から流れてきた医師だったことを思い出し、男の伝は今でも健在なのだろう。お座敷は昔ながらの落ち着いた造りになっており、部屋の中央に掘り炬燵が設えてあった。
季節は秋から冬へと移り変わり、これはありがたいと心がほっこりする。掘り炬燵の中は爪先が下に着かないほど深く、温風で暖めるタイプ。対面にいる人と足がぶつからない程度の距離がある、それは好感が持てる。
男性たちと軽く挨拶を交わし、商社に務めるサラリーマンだと知る。歩美たちも医療従事者だと名乗り、雅子が女医とナースだと余計なことを付け加える。それを聞いて彼らの目が輝くのが分かって、気が重くなる。あれこれと興味本位に聞きたがるのが人の性で、下心のある男ならなおさらなのだ。
けれど歩美の予想に反して彼らは大変な仕事だと労いの言葉を自分たちにかけてくれて、警戒心の扉の1枚開けてみる。東京の人らしく洗練された話は興味深くて楽しくもあり、美味しい料理とお酒に気持ちも緩んでいく。
居心地のよさに時間が立つのも忘れ、雅子に感謝したくなっていた。不意に雅子が炬燵の中が少し熱いと言い出した。彼らが言うには中に温度調整のスイッチがあるというので、雅子が自分でやると言って中に潜ってしまった。
普通なら男性がしそうなものだけど、雅子がこの季節だというのに、例によって短いスカートである。歩美たちに炬燵から1度出てもらうより雅子にしてもらうほうが早い、そんな暗黙の了解という空気があったのかもしれない。
普段なら初対面の男性を前にしてお酒は抑えるけれど、この日は知らず知らずのうちに進んでいたのか、心地のいい酔いが男性の話に華を添えていたのだろう。歩みの対面に座る彼の隣り、雅子の対面に座る男性の口数が少なくなったことに気づかなかった。
熱燗を注いだお猪口を口に運ぶというわけでもなく、テーブルに肘を付いて宙に浮かせたお猪口の中のお酒を揺らしている。正しくは揺らしているのではなくて、揺れているのだ。彼の目はほろ酔いにしてははっきりしているに、一点を見つめるように動きはなく、時おり不自然な瞬きをするようになっている。
歩美はそのことが気にならないほど酔ってよいたらしく、後になって気づく失態を犯していたのだった。
炬燵の中の暗がりではスラックスのチャックを開けて、取り出した男性のペニスを口に含む雅子がひとり楽しんでいた。喉の奥深くまで咥え込んでは亀頭に舌を這わせ、ペニスのカリ首までだけの短いストロークで頭を前後させる。こんな真似をされてはお酒を呑めるわけはない。
男性は唾液を何度も飲み下す仕草を繰り返して、天井やどこかを見詰めるようになり、やがて唇を舐めていたかと思えば固く目を閉じて、1度だけ肩を震わせた。おもむろに炬燵の中から姿を現した雅子は何事もなかったように髪の毛を直し、お酒を呑んで彼に微笑みかけていた。
彼はどこか迷いを見せるように雅子から目を逸らしながら、照れくさそうに雅子を見詰める。炬燵の中では雅子の足が彼の足を引き寄せ、抱え込んでいたのだから、お酒に酔った男性はこの誘惑には耐えられなかったのだろう。
歩美が気がついたときには雅子の前にいたはずの男性の姿が見えず、トイレにでも行ったのだろうと気にもとめなかった。雅子といえばテーブルに肩ひじ付いて手に顎を乗せ、歩美と一緒に歩美の対面に座る男性の話に、耳を傾けているのだから恐れ入る。
炬燵の中の暗がりでは彼の背中に両足を乗せて股を開き、そこに顔を埋める彼の頭を空いたもう片方の手で撫でる雅子が何食わぬ顔をしていたのだった。雅子が艶っぽい表情をしていたのは彼の舌が、クリトリスを攻め続けて執拗に吸われていたから……。
彼の顔に押し付けるように腰をうねらせて、指の腹で頭皮を揉みほぐすようにしていた指が、次第に掻き毟りながら鷲掴みになっていく。これまでの性体験で男性に吸われすぎて、勃起をしたそれを吸われるとカリ首までが、露出するまで飛び出る雅子のクリトリス。まるで小さなペニスのように根元の陰茎が出現し、男性にフェラチオをされるかのようにすべてが唇の中に収まってしまう。
耐性を備えるようになっていても、これをされてはさすがの雅子も長くは耐えられようもない。
敏感になったそれを唇を窄めて前後に振られるだけで、目の焦点が合わなくなってくる。震える手で何とかお猪口を口に運び、味も分からなくなった料理を一口だけ口に運ぶ。咀嚼をしてもやはり味わう余裕はなく、むしろ味などどうでもいい。
下の口に彼の指が出入りを繰り返し、クリトリスを唇に咥えられながら舌先で攻め続けられていくのだから堪らない………。
不意に雅子の身体が弾むように動き、背中と肩を震わせる。女医のそこから透明な分泌液の糸を引きながら口を離し、男性は炬燵の中から姿を現した。
自分の口を拭う仕草を見せてお猪口の中の冷めたお酒を口に放り込み、虚ろな目をした雅子を見やる。ひと目だけ隣に座る同僚の彼と目を合わせ、話のバトンを受けたように彼が饒舌になった。
雅子も話に加わって、後になって歩美の注意を引き付ける策だったのだと気づいたけれど、後の祭りでしかなかった。
あれっと気づいたときには自分の前につい今しがたまでいた彼の姿が見当たらず、彼の隣に座っている彼の同僚の男性に話を振られる歩美。それほどまでに酔いが回っていた歩美は、自分の膝に誰かの手が触れる感触を覚えて反応は遅れる………。
わりとシックなロングワンピースを身に着けていた歩美だったけれど、センターファスナーがついたデザインが裏目に出てしまう。なぜなら下からも上からも、開け閉め可能なファスナーなのだから、酔いの回った歩美には成す術はなく、太腿の辺りまで開けられてしまったのだ。
一瞬開けられた膝に頭を入れて閉じさせないようにされると、腰を引き寄せられて顔を埋められてしまった。炬燵の中の人物が誰であるかは明白なのに、いくら特殊な情事を重ねてきた歩美であっても羞恥心でわけがわからなくなる。
最初に感じた感情は2人に悟られたくはない、そんな女心に従うことだった。通常ならすべてがおかしいと思うことなのに、酔いが頭を麻痺させて考えが及ばないのである。
彼の頭を寄せ付けないように両手で押し退けたいけれど、挙動不審に見られたくたくて片手だけで対処をするしかない。酔った頭ですることはこの程度であり、当然彼には軽々と突破されてしまっていた。
下着越しに彼の鼻と口が押し付けられる不快感を覚え、上下に擦られはじめて無意識に膝を閉じようと焦るけれど、どうにもならない。顔は引き攣っていないだろうか、そんなことばかりが気になってしまう。彼の動きは刺激を与えるためで、その目的が分かるだけに気ばかりが焦る。
無情にもそこから駆け上がってくる快感が抵抗と言う名の盾を1枚づつ崩剥がし、抵う気持ちが萎えさせていく。気づけば下着を横にずらされて舌で直に刺激を加えられるクンニリングスに堪える自分がいた。
炬燵の中の暗がりでも彼はかなりの剛毛に興奮を覚え、彼の目には清楚に見える歩美に、顔に似合わぬ密林ぶりにむしゃぶりついていた。暗がりでも舌先に触れるクリトリスが包皮から顔を出しているのが分かり、その大きさに目を見張る。
雅子ほどではないにしても小指の爪ほどの大きさのあるクリトリスは、男を劣情的にさせていく。
座椅子に座る歩美はお尻と太腿の筋肉を反応させながら硬直と弛緩を繰り返し、無意識に両手で彼の頭を抱えてしまう。吸われては舐められ、忙しなく舌先を走らされては強かに吸着される。
滾々と湧き出す泉を吸い出しては喉の奥に飲み下し、分泌液を排除した舌のザラつきを触れるか触れないかの絶妙さを保ちながら、否が応なく刺激を与えていく彼………。
潤滑油のない抵抗を最小限に留め、痛みを感じさせないまま快感だけを生み出すクンニリングスに歩美の表情が妖しくなっていく。艶っぽい表情は女の顔を見せ、饒舌に口を動かす男性の顔を見ているようで、話は耳を素通りしていく。甘えるような甘〜い表情は恍惚として、両耳が赤く染まっているのは酔いのせいだけではないことが、男性と雅子はとっくに悟っている。
舌先に弾かれて肩を震わせ、舐め回されては薄く唇を開き、窄めた唇で吸い取られるように口を離されては背中を反らせ、また吸い付かれて緩い吐息を漏らす………。
だらだらと漏れ出る分泌液を吸い取り、吸い付いたクリトリスを唇に加えて極短のピストンを開始する彼。キツツキが木の幹を突くように首を動かし続け、クリトリスのカリ首まで唇に包み込んで刺激を与えていく。
このアプローチは継続させることに意味があり、大した快感を生んでいなかったはずが、柔らかい唇の粘膜の刺激に慣れて堪らなくなっていく。
そう、男性のペニスが膣の中で刺激を受けるかのように………いや、ペニス以上に敏感なクリトリスが受ける快感は、ペニスの比ではないのかもしれない………。
目の焦点が合わなくなった歩美は顔を固定させたままその目を泳がせ、指の間に絡まる彼の髪の毛を掻き毟る。急速に高まる快感が周囲から意識を遮断させ、甘く苦しく切ない、そして深い快感が押し寄せて呼吸もままならなくなる。
そして歩美の身体が座椅子の上で、激しく弾んで震わせた……。
雅子と男性はまるで気付かないように話に夢中なふりをして歩美の回復を待ち、その程度を見極めてから歩美に話を振ってみせた。何を話したのかそのときの記憶は曖昧で、歩美はただ炬燵の中から出て前に座る彼をぼ〜っと見詰めて、その目を逸らした。
彼らとの時間は終わりを告げ、雅子が歩美の耳元でこう囁いた。
あたしちょっと寄る所があるから、先にホテルに戻ってて………。
何が寄る所があるから……だ。どうせあの男性とどこかのホテルに行って、朝帰りすをるのだろう。
早々と雅子たちは店から出て姿を消し、支払いを済ませる男性を歩美は待った。こんなことになるなんて思わなかっから、支払いを済ませてお店の外に出てきた男性と、顔を合わせるのが恥ずかしくて嫌だった。
例をいうだけの常識を見せたらさっさとホテルに戻ろう、そう歩美は思っていた。それが自分が思っている以上に酔っているようで、足がもつれて転びそうになってしまった。それを彼が間髪入れずに歩美の身体を支え、抱き止めた。
唇を重ねられて気がつけば身体の中から興奮が再燃し、舌を絡め合う。どうしてあんなことをしてしまったのか、今でもよく分からない。
お店に向かうために通ってきた路地とは別の路地に入り込み、スラックスから取り出した彼のものを躊躇なく口に咥えてフェラチオをはじめていたのだ。彼は顔にかかる髪の毛を優しく押さえてくれながら撫でてくれ、もう出そうだというの言葉を無視して頭を振り続けた。
口に出すのが申し訳ないと思ったのか、それでも彼はしばらく堪え続け、腰を数回震わせながら果ててしまった。生臭い男の精液をその場で飲み下した歩美は立ち上がり、彼に背中を壁に押し付けられて片膝を抱えられると、体内に熱い杭が入ってくるのとともに目を閉じた。
これまでのどのセックスよりも興奮し、彼にしがみつきながら荒々しい情事が歩美を、ただの女にさせていく……。
体位を変えると壁に両手をついて、後ろから貫かれる。先ほどよりも確実に深く奥まで届き、硬い杭が子宮の入口を何度も突いてくる。1度射精を果たした彼に簡単には次の射精感は訪れず、絶え間なく注がれる快感が女盛りの歩美を狂わせていく。
表通りの喧騒が遠く離れた2人のところまで届いてきて、自分たちの生々しいセックスを自覚させられる。
ぬっちゃっ…ぬっちゃっ…ぬっちゃっ…ぬっちゃっ
結合部から発せられる卑猥な音が布ずれの音に重なり、狭い路地の隙間に消えていく。冷たい空気に触れる肌の部分に寒さを感じながら、接触する彼の肌が暖めてくる。硬く熱い彼のペニスが歩美の体温を上昇させ、ペニスを通して歩美の体温が彼へと伝わっていく。
もっと、もっと突いて……
そう、そこ……奥がいいの……
突いて、もっと突いて………
歩美の高まる性感が彼を苦しめるように膣の壁を収縮させ、息の根を止めるかのように拘束していく。出口を求めるかのように中を徘徊するペニスが歩美を押し上げ、視界を薄れさせていく。
歩美の腰を掴む彼の両手が鼠径部に回り、指が白い太腿の柔肌に食い込んでいく。男女2人の苦しげな呼吸が混ざり合い、速度を早めた彼が不意にその動きを止めた。
歩美の中で樹液を放つペニスが子宮頚部に押し付けられ、歩美が背中を弓なりに反らせ、何度かその身を弾ませていた………。
数十分後、2人は歩美の泊まる部屋に身に着けるすべてを脱ぎ捨て、2人でシャワーを浴びながら口を重ねていた。
彼はベッドの上で歩美を求め、歩美は彼を求めて2人は互いを貪るように何度も身体を重ね………。
彼はひと回り歳上の美しき美熟女ナースにその後も絞れ取られ、歩美の腰の律動に陥落したのだった。
あの贅肉のない身体、重力に負けない乳房、あの剛毛と甘い体臭、あの色気………。
彼女よりも美人は世の中にいくらでもいるはずなのに、あの肩にかかる黒髪のストレートヘアを思い出す。ややハスキーかかった声が愛らしくて、小顔の額を富士額にさせてワンレングスの髪の毛を、左右に分けて若さを失わない魅力的な笑顔を焼き付かせたのだ。
仕事が手に付かず、ペニスがあの感触を思い出させて堪らなくなる。彼は窓に顔を向け、向かいのビルを見詰めながら溜息をつくしかなかった。
なぜ連絡先を聞いておかなかったのか………。
あれから数日が経った同じ頃、歩美は患者の顔に跨りながら恍惚となって、身体を震わせていた。
若いペニスの上に腰を降ろし、吐息を漏らす。
あの彼の熱いペニスを思い出しながら前後に腰を律動させ、包茎手術後の性介助というセックスに悶絶する若者を犯していく。
堪え性もなく射精してしまった彼を、見て歩美は言った。
またまだ平気よね、溜まってるものを出してしまわないと身体に悪いから、出してしまいましょうね………。
銀座の路地裏で彼を魅了したあの笑顔で若者にそう告げると、抜かないまま再び腰を律動させていく。
若者の気の狂わんばかりの悶絶を無視して、白いお尻を前後に揺らしていく。
歩美のオーガズムはまだまだ遠く先にあり、若者を鼓舞しながら天使の笑顔を浮かべながら悪魔のように腰を躍動させていく。
歩美の身体はやっと、体温が上昇してきたところだった………。
※元投稿はこちら >>