ペニスは大きければ必ずしも良いというわけではない、そんな持論がある。同じ女性でもそれぞれに好みはあるし、一概には言えないのだろう。
それでも歩美には中毒性を感じさせ、あの後しばらく経ってもまだ中に入っているような、そんな違和感が残り続けていたものだ。
今度は私も、気持ち良くしてもらおうかしら……
あんなことを言ったのは彼の気持ちを持続させるためで、禁欲生活を続けた彼を大人しくさせるにはとにかく射精をさせる必要があったのだ。
中途半端にセックスを終わらせればあの若さである、どこかで問題を起こさないとも限らない。
そうはいっても歩美がもっと感じたいと思っていたのは事実で、入院病棟の大部屋で疲労困憊になるまで本気で感じるわけにはいかなかったのだ。
あの後も勤務は続くのだから自制をしなければならなかったし、一応は勤務中なのだから。
歩美たちは毎日セックスをするわけではない。
本来の看護師としての仕事は待ったなしであり、お世話と称したセックスはその一部に過ぎない。毎日のようにしていてはさすがに身体が保たず、仕事にも支障が出てしまう。身体に妊娠できる機能がある限りは生理が毎月あるわけで、体調管理もしなければならないのだ。
そうはいっても女である、猛烈にしたいと欲求が募る時期は必ずやってくる。生理の数日前になると子宮が疼きだし、生理後の数日間もそれは続くのだ。生理中は胸が張って乳首も敏感になるから触れられたくないという女性もいるし、苛々したり鬱気味になったり、生理が重い人もいる。
歩美は幸いにそれらの症状はほとんどなく、強いて言うなら気持ちが落ち着かなくなることだろうか。つまり、むらむらして仕方がないのである。
それは生理中も変わることはなく、できることなら生理中でもセックスをしたいとさえ思ってしまう。でもさすがに血だらけのセックスは臭いが気になるし、ドン引きする男性には見られたくはない………。
巨根を持つ彼に執着心はないけれど、生理が近いせいだからだろうか、仕事の手を止めた時になぜだか……思い出してしまう。彼のあの大きな物を、心ゆくまで味わってみたい、と。彼はといえばもう2日前に、元気に退院してしまっていた。会うことはもうないはずで、今頃は仕事に復帰しているのだろう。
どうしているのかな………。
歩美はそんな想いを断ち切るように、患者のこれからのことを後輩たちへ指示を出していった。
若いつもりでいたけれど、40を越えて10年前には感じなかった疲労感が、なかなか抜けなくなってきた。どことなく感じる体力の低下も気になるし、保てているのは仕事への情熱と性欲だけだろうか。いや……性欲は若い頃よりも年令を重ねた今のほうが、一段と強くなっているかもしれない。
休日は朝からウォーキングを開始して、週に1度はヨガ教室にも通いだした。可能であれば水泳も始めてみたいと、そんなことも考えている。
ある日勤を終えた帰り道、歩美は思い立って駅前まで足を伸ばしていた。美味しいお惣菜の販売をしているお店が駅ビルの地下にあり、普段はここまで来るのが億劫で、何かの機会があるときじゃないと寄れないのだ。バスに30分以上も揺られてやっと駅まで辿り着き、目的のお惣菜を手にすることができた。時にはどうしても堪らなく食べたくなる、そう思わせる味なのだ。
せっかく来たのだから少しだけ辺りを散策してから帰ろうと、歩美は歩き出す。ちょっと来ないうちに知らないお店がオープンしていて、物珍しそうにお店の前を通り過ぎる。飲食店や衣料品店、気になる居酒屋も新たに出店している。
駅前をコの字に回りながら裏通りに入り、表通りに戻るためにバス停に向かって歩を進めていく。そんなときに、また気になる場所を見つけてしまった。それは飲食店でもコスメ店でもなく、正確にはマッサージ店である。そこには見習い店員の施術が期間限定で3分の1で受けられると、そう宣伝した看板が店先に出されていたのだ。
完全個室、シャワー完備、お茶とお菓子なんてものまでサービスするなんて、よほど集客したいのだろう。そこには従業員の成長を望む店側の熱意が存在し、見習いの客慣れの練習も兼ねている。
お客側も破格で施術を受けられ、ウィン・ウィンというわけでお店の宣伝にもなる。
歩美は日頃の疲れを癒やしたくなって、お店のある地下への階段を降りていった。もし如何わしいお店ならすぐに出ればいいし、歩美はそのへんの鼻は効くほうだから。
マッサージ店は予想していたよりも洗練された店構えをしており、女性客を意識した素敵な内装に心が落ち着く。地下のお店とは思えないほど接客もしっかりしており、マッサージ師も務めてきた古巣から独立をしたのだと、嬉しそうに笑顔で話してくる。このマッサージ店なら好感を持てるしきっと、固定客もすぐにつくのだろうと、歩美は確信を持っていた。
案内された個室にはシャワー室が備えられ、その造りからかつてここは日焼けサロンだったのだろうと想像がつく。壁で隔てられた向こう側に備え付けの棚があり、バスタオルと化粧水、使い捨ての水着などが並んでいる。シャワー室も清潔に保たれていて、浴びる前から期待感があった。
とても清潔感のある脱衣所で衣類を順番に脱ぎ捨て、最近は当たり前のように着けるようになったガーターベルトとセパレート・ストッキングも取ると、ブラジャーのホックに手をかける。戒めから解き放たれた乳房が重力に逆らうように揺れ動き、歩美はショーツに指をかけた。
半分ほど下げたところで歩美はその手を止めて、燃えるような恥毛が生い茂るその下に見えるとある物に、爪をかけた。それはひょうたんを平らにしたシート状のもの。秘裂の形になったある意味で女であることの証、時間の経過で黄色味を帯びた色に変色するクリーム色の粘液が、排卵期特有の粘り気のある状態で付着している。
パンティライナーやオリモノシート…いくつかの商品名を持つそのシートを剥がし取り、歩美は細く棒状に丸めてティッシュに包むと、小さく可愛らしいゴミ箱へそっと捨て去った。
シャワーで1日の汗と汚れを洗い流し、身体のすべての水気を拭うと使い捨ての水着を身に着けていく。よくある紙パンツじゃないところが嬉しいけれど、布製の使い捨てではコストの関係で利益が削られてしまうのではないか。そんな要らない心配をしても仕方がないけれど……。
さすがに1回こっきりしか身に着けない使い捨てとあって生地は薄く、クロッチは二重底にはなっておらず、乳首も露骨に浮き出るのが気になる。
でもそれは紙パンツでも大して変わらないことだと思い直し、女性客を相手にするのは女性であるマッサージ師の見習いだからとの先入観は確かにあった。
備え付けのベッドに腰掛けて待っていた歩美の前に現れた見習いマッサージ師は、若い男性だなんて夢にも思わなかった。安さの理由にはこういう理由も隠されていたなんて、自分の迂闊さを今頃になって悔やむ。
見習いの若い彼も女性客のこんな反応を見てやはりバツが悪そうで、そんな彼の顔をまともに見た歩美は驚愕することになる。だって彼はあの巨根の持ち主の、先日退院したばかりの元患者だったのだから……。
彼は職場のストレスを零していたけれど、詳しくは話さなかったのだ。その理由が今になって、やっと分かった気がする。マッサージ師を目指す男の自分が女性客を相手にするなんて、動揺をする女性客に施術をするストレスなんて、ナースといえども同じ女性に理解されるとは思えなかったのだろう。
彼もまた相手客が歩美だと知って、驚きを隠せないでいる。どう接していいか分からなくなったようで、しどろもどろになっている。
びっくりした、ここでお仕事をしてたのね……
女性を相手にするのはこういう仕事だと、辛いことが多いんでしょ?分かるわ、頑張ってるんだね………
歩美に理解を示されて彼は、やっと緊張が解れたような表情を浮かべた。笑顔が引き攣っていたけれど………。
ほら練習をして経験を積まなきゃ、でしょ……?
嬉しそうなはにかんだ彼がテキパキと動き出し、ベッドに横になった歩美にアロマオイルを手にした彼が、一歩近づいた。
歩美は女性みたいに繊細な手だと、今更ながら改めて気づく。
その彼の手の温もりにあの日のことを思い出し、頭から振り払おうとしていた。
それは彼も同様で歩美のお尻を掴んだ感触、乳房の柔らかさ、いやらしい剛毛、吐息と掠れ声、そしてあの膣の中の温もり………。
走馬灯のように次から次へとすべてが蘇り、顔が高潮していく。無理はない、つい最近あったことなのだから。
そして彼の施術着のパンツの前が膨らんていくのを、うつ伏せの歩美は気づくことはなかった……。
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