こんな覗きのような犯罪まがいな事を始めてもう2ヶ月になる。
言い訳だが、もちろん最初から意図していたわけではなく、趣味であり商売道具であるカメラの性能テストを兼ねた練習がきっかけだった。
複数の探偵事務所や雑誌社から仕事を請ける自分にとって必要な事であり日課。
買い換えた望遠レンズに慣れるために、遠くの看板や目立つ建物にピントを合わせては撮影し、その写真の解像度が『使えるものがどうか』の確認をしていた。
そして偶然、あの女を見つけた。
いつもの通りに手入れしたカメラにレンズを取り付け、ファインダーを覗いた。
ただの練習だったので三脚を使わず、雑居ビルの看板を拡大してみたり、駐車場に停まる車のナンバープレートにピントを合わしては試し撮りを繰り返した。
そんな事を繰り返した先、偶然にピントを合わせたマンションのベランダだった。
最初は何をしているのかわからなかった。
数分経ってもベランダの外を向いて立っている女。
気付いたのは女の体がビクンッと跳ね、その髪の向こうの顔を見た瞬間だった。
女はそそくさとガラス窓の向こうに消えたが、俺は思わずシャッターを切っていた自分を褒めた。
その日から、女の観察が日課になった。
9時までには起床し、女を見るためだけにセットしたカメラで覗くのだ。
三脚を動かないように固定し、ピントも合わせたカメラは女専用となった。
観察し始めて数日後には監視しやすいようにパソコンに接続してディスプレイでも確認できるようにした。
録画機能も使ったが、やはりライブでの鑑賞が一番興奮した。
1ヶ月ほどすると、別の欲が出てきた。
覗く興奮が薄れたわけではなかったが、毎日必ず現れるわけでもなかった。
そして、もちろん行動を指定できるはずもなかった。
だから俺は次の行動に移った。
郵便ポストに投下した茶色い封筒には、女の顔がアップに写った写真を同封した。
自分が撮影したなかでも、最も艶めかしく官能的な表情を選んだ。
もちろん女には言い訳のしようはいくらでもある。
言い訳できなくなっても、最悪は俺を逆に訴えることもできる。
大きな賭けである事は自分でも自覚していた。
職業柄、リスクの大きさも十分すぎるほど知っている。
だからこそ、その賭けに勝った瞬間・・・・女が 俺の書いた文字の通りの時間、俺の書いた通りの服装でベランダに現れ、俺の書いた通りに行動した瞬間は最高だった。
1人の女を 自分の思うとおりに操る。
しかもそれは性的で、卑猥で、アブノーマルな内容で。
そんな興奮は、俺をエスカレートさせていった。
それは賭けに勝った2週間後には、小さな小包に入れたピンクのディルドと、フリーのメールアドレスを同封してポストに投函させるほどになった。
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