しかし、この女性は馴れていました。その声はとても小さく、それこそここに耳をつけていなければ、決して1階には届かない程の小さく喘ぐ声。
きっと、この僕の部屋にも何人かの住人さんがいて、彼女は『ここまでなら大丈夫。』という境界線を知っているのです。
チンポを握り締めた僕でしたが、とても楽しめる程の行為にはならなかったのでした。
この部屋に住み始めてから、3ヶ月近くが経ちました。時間的に会う機会もないのか、2階の女性とは未だに顔を会わすことはありません。
それでも、毎晩のように聞く声から、僕なりに彼女を想像してしまいます。
『年齢は25~27歳。細身の美人で、肌は少し色黒、髪は長い栗毛。性格は少しキツそう。趣味はサーフィン。』こんな感じでしょうか?
そんな彼女と、いよいよ対面をする時が来るのです。
仕事帰りの、午後6時頃でした。僕の停める駐車スペースが見えると、そこに一人の女性を発見します。少し太めの女性で、胸には赤ちゃんを抱いていました。
すぐに、『2階の方か?』と緊張をしてしまいます。女性が僕に気づき、僕に頭を下げて、僕の駐車場から離れます。自分の車に用があったようです。
彼女を意識しながら、自分の車を車庫入れします。なんだろ?少し失敗しないように緊張をしてしまいました。
車を降りると、『こんばんわぁ。』と彼女の方から声を掛けてくれます。僕も、『こんばんわぁ。初めまして。』と挨拶をします。
すると、胸に抱いている赤ちゃんの手を取り、『サキですっ!』と僕に言うのです。そして聞いてもいないのに、『8ヶ月ですっ!』と言ってくれます。
『女の子ですか?』と聞き、彼女の胸元に抱かれている赤ちゃんの顔を覗き込みました。しかし、『うぎゃー!』と泣かれてしまいました。
おかしなものです。初めて会ったのに、どこか知っているような気持ちになります。そりゃ~3ヶ月、毎晩のようにこの母と娘の生活を聞いているのですから。
女性と分かれ、部屋に戻りました。自分の描いていた女性とまるで違うのに、このドキドキはなんでしょうか?
年齢35歳くらい。身体はふっくらとした丸顔、肌も色白。美人ではないが、どこか色気を感じさせるところがあった。
何より、胸元の開いた服装から、胸の大きさを感じさせました。分かりづらいと思うので、ドラクエ8のゼシカのような服装です。
変なものです。このドキドキ。知らない間に、顔も知らないこの女性に興味を持ってしまっていたのでしょうか。
その夜でした。今夜もサキちゃんの夜泣きが始まっていました。2階からは、女性の『はいはいっ!』とあやす声が聞こえて来ます。
それは1時間近くも続き、夜の10時を過ぎてしまいます。そんな時、2階からは、『ドタドタっ』と階段を下りてくる音がするのです。
そして玄関を開け、外に飛び出すのです。夜泣きをしている赤ちゃんを、一度外の風にあたらせそうと考えたのでしょう。
僕は玄関の覗き穴から外の様子を伺うと、外灯の灯りの中で赤ん坊を揺らしている女性の姿を見つけました。もちろん、アノ人です。
『なんと言って偶然を装おうか?』と、出ていく理由を探します。しかし、今日会ったばかりです。それは、あまりにも無謀です。
そう考え、引き下がるのでした。
僕はいつものように玄関を入ってすぐの廊下で寝ています。外からは、赤ん坊の泣き声と共に女性か身体を揺らしているのか、地面を擦る音がしています。
その心地よい音を聞きながら眠ろうとした時、『あれ~?どうしたのぉ~?』と女性か声をあげるのです。
聞こえて来たのは男性の声でした。ハキハキと喋る方なのでその声はよく聞こえ、女性と同じくらいの年齢の方ではないでしょうか。
そして、その男性も赤ん坊を抱えているのか、もう一人の子供の泣き声まで聞こえて来ます。男性も赤ん坊の夜泣きをあやしに来た方でしょうか。
そんな二人が会話をしたのは、ほんの僅かな時間。『一人も二人も同じよ。』と女性が言ったかと思うと、玄関の扉が開きました。
そして、二人は二階の部屋へと入って行くのです。
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