「あのさ……もし良ければだけど……」
ようやく口を開いたまりあは、
こうたの顔を直視できずに視線を少し逸らしていた。
少し前までこうたを睨みつけていた気まずさが、まだ残っている。
「できたら……パートナーになって欲しい」
声は震え、派手なネイルを施した指が
ぎゅっと自分のスカートの裾を握りしめていた。
肩が小さく震え、自信なさげに内股気味に足を寄せている。
「俺は最初からそのつもりだよ」
こうたは真っ直ぐにまりあを見つめて答えた。
「俺は蝶の数より、考察力に優れた君の方が魅力だからね」
まりあは一瞬ほっとした表情を浮かべたが、すぐに気まずそうに頰を赤らめた。
先ほどまで睨んでいた相手に頭を下げている状況に、
強い羞恥を感じているようだった。
「……私に出来る事はそんなに無いと思うけど」
その言葉を聞くよりも先に、こうたはまりあの手を引いた。
突然の感触にまりあがびくりと肩を跳ねさせる。
ゆっくりと外へと続く扉に向かうこうたに、まりあは小さな声で言った。
「こうた……さん。本当に、私でいいの……?
蝶の数とか……関係なく?」
声はまだ少し硬く、気まずさが残っている。
しかし徐々に甘く掠れ始め、潤んだ瞳でこうたの横顔をチラチラと見上げる。
こうたが足を止めると、まりあは息を少し乱しながら続けた。
「……もし私に何かできることがあったら、何でも言ってください。
こうたさんの役に立ちたいから……なんでも……するから……」
最後の部分はほとんど消え入りそうな声だった。
派手な見た目とは裏腹に耳まで真っ赤に染まり、
太ももを内側に強く擦り合わせている。
この監獄に充満する紫の霧に、
まだ身体の芯が熱く疼いているのが自分でも分かった。
こうたがまりあの手をもう片方の手も包み込むように握ると、
まりあはびくんと小さく反応した。
敏感になっている胸の先端が布地に擦れ、思わず唇を噛む。
「まずはこの監獄の構造を把握しよう。一緒に探すぞ」
こうたの低い声に、まりあは小さく頷いた。
「……うん。よろしく、こうたさん」
二人は手をつないだまま、独房へ続く扉を開け、さらにその奥へと進んだ。
そして紫色の霧が漂う暗い廊下を、ゆっくりと歩き始める。
背後から、てんしの小さな、からかうような笑い声が聞こえた気がした。
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