(7)
翌朝……。目が覚めたが、身体は何ともない。生理は、まだ来ていないみたいだ。香澄が、今日か明日……って言っていたな。生理用品、学校に持っていこう。そう思った俺は、ドレッサーの引き出しを開けた。
タンポン! これを、アソコに挿し込むのか? 何か怖い。こんなもの中に入れて、女は平気なのか?
「行ってきます」
朝食を終えてセーラー服に着替えた俺は、早めに家を出た。まったく……。スカートって、頼りないなぁ。それに、走りにくい。
やって来たのは、俺の家の近く。あっ! 居た! 鞄を持って歩く、制服姿の俺が。俺の身体に入っている香澄は、空を見上げるなどの余裕をかましている。
きっと、朝食の支度や後片付けも手伝ったに違いない。俺のイメージを、これ以上変えられて堪るか! 何より、生理痛が怖い。
「あっ! お早う。どうしたの?」
目の前に躍り出た香澄の身体に入っている俺に、俺の身体に入っている香澄がキョトンとして訊いてきた。
「握手」
鞄を放り投げた俺は、両手で香澄が入っている俺の身体の右手を握った。しかし……。
「えっ! あれ?」
可笑しい。元に戻らないぞ。唖然とする香澄の身体に入っている俺に、俺の身体に入っている香澄はクスッと笑う。
「悪いね。私が念じないと、肉体の交換は出来ないの」
そ……、そんな!
「それじゃ……ね。香澄くん。遅刻しないように」
呆然と立ち尽くす、香澄の身体に入っている俺。そんな俺を残して、俺の身体に入っている香澄は意気揚々と歩いていった。
学校に行った俺は、寿命が縮まる思いだった。いつ襲ってくるか分からない生理痛と、俺のイメージを変えちゃうかも知れない香澄。
その日は、何とか無事に学校生活を送った。明日、生理痛が襲ってくるのか。そんな思いで、香澄の家に帰ってきた俺。
「ただいま」
玄関に入った、香澄の身体に入っている俺。その俺に、母親が煮物を入れたタッパを差し出した。
「香澄。これ、お祖母ちゃんの家に持っていって」
鞄を置いて、タッパを持ち、家を出た俺。香澄が書いた家族紹介には、祖母は居なかったぞ。どういうことだ?
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