(5)
夕飯の支度と、家族との夕食。それを何とか切り抜けた、香澄の身体に入っている……いや、閉じ込められている俺。
「香澄。お風呂に入りなさい」
香澄の母親に言われて、着替えを取りに二階の部屋に入る。そこへ、ケータイが着信メロディを奏でる。発信の番号を確認すると、俺のケータイ。つまり、香澄からだ。
「はい。もしもし」
「どう? 私の身体……。もう、オナニーした?」
ケータイを通して聞こえてきたのは、ハイテンションな俺の声。俺をからかう香澄に、俺は怒りをぶつける。
「あのなぁ! 電話を掛けて、いきなりそれかよ? それで……、何だよ?」
「そろそろ、お風呂に入る時間だよね?」
「うん。そうだけど」
「ピンク色の剃刀、私のだから。アソコの毛の処理、宜しくね」
「ちょっと待て! あんなところに、刃物を当てるのか?」
おののく俺だが、香澄はサラリと返す。
「アソコじゃないわよ。周りを、ササッと剃るだけ。出来るよね?」
「すごぉく、不安なんだけど」
「しかし、男って楽だね。……というより、結構自堕落な生活しているんだね」
「うるさい!」
可笑しそうに笑う香澄に、俺は怒鳴って返した。
「夕食の支度、手伝ってあげた。お母さん、喜んでいたよ」
「余計なこと、するな!」
あっ! そうだ! 大切なことを思い出した俺は、香澄に尋ねる。
「それより……。生理痛って、いつ襲ってくるんだ?」
「計算だと、明日か明後日」
「なにぃ!」
「お薬、用意してあるでしょ? まあ。殆ど、効かないけど……ね。あっ! 生理用品は、ドレッサーの引き出しに入っているから」
「話し方が、他人事のように思えるんだけど」
「他人事だもん。じゃあ。健闘を祈るよ。香澄くん」
「おい! ちょっと待て!」
またも、問答無用でケータイが切られた。畜生! 何の因果で、こんな目に? ケータイをベッドに叩き付けた俺は、両手で頭を抱える。
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