人生にはおもいもよらない事がある。
ある事に気を付けようとすればするほど墓穴を掘ってしまう、理不尽さが時にはある。
車の運転時にカーブに差し掛かる手前で、スピードを落とすのは当然のこと。
カーブを曲がるときは無意識に進む先に目線を向けるものだけれど、迫りくるカーブの外側を見続けてしまうと、自分の意思に反してそちらに吸い寄せられてしまうように。
確かに人肌を欲してはいた。
生理の周期で高まる時期でもあったけれど、それが30歳を過ぎて痴漢を引き寄せる理由だったのだろうか。
あの出来事の気持ちの整理は3ヶ月が経った今になっても、折り合いはつかなかった。この歳になってこともあろうに痴漢に遭うなんて、そして人で密集する電車内で挿入までされたなんて……。
恐怖と羞恥、焦燥と忸怩たる思い。憤り、そして
それらを凌駕する快楽を受け入れてしまった自己嫌悪と罪悪感が涼子の胸の内に重く居座っていた。
エリート街道を歩いてきた道のりは、決して平坦だったわけではない。自分なりに努力をしてきた自負はある。両手を拘束された時点でなぜ声を上げられなかったのか、それはあんな満員電車内で何をされるかわからないという、そんな恐怖心からにほかならない。
そしてパンツスーツの下だけを下着もろとも途中まで下げられ、お尻を出しだ状態で犯される姿。
そんな姿を不特定多数の人の目に曝されるなんて耐えられなかったし、大事になれば職場にも知られてしまう。
当局には事情聴取を受けて根掘り葉掘り聞かれ、洗いざらい話さなければ行かなくなる。あの忌まわしくろくでもない官能の果に快感に酔わされ、
オーガズムに導かれたことを思い出しながら……。
どういうわけなのかあの出来事を経験してからというもの、電車内で痴漢の被害に遭うようになっった。もちろんあんなに酷いことにはならないけれど、緊張して身体が動かなくなる。パンツスーツだろうが涼子が抵抗しないと見るや、遠慮なく下半身を弄れてしまう。
もっと若くて可愛い女性は沢山いるというのに、自分の何が痴漢を惹きつけるのか涼子には分からなかった。
この日の涼子は、緊張していた。以前から決まっていた仕事で、ある企業の人材集めのための講演を依頼されていたのだ。会社員としての心得であったり、必要とされる人材になるためにはどうあるべきか、人生の先輩として話は任せられている。
いざその場に来てみるとパイプ椅子が並べられた正面が一段高くなり、教壇が作られていた。
聴衆者からはある程度の距離が開けられているのは、有り難かった。
1時間ほどの長丁場になるからか机と椅子が用意され、机は立派だけれど、椅子が見るからに心許ないように見える。涼子が椅子の高さ調節のために座ってみると、調節するダイヤル状のつまみが壊れて取れてしまった。
それを手に涼子が呆然としていると、先方は慌てふためきだした。それは当然のことで準備不足が祟っているだけでなく、開催時間がもうすぐそこまで迫っていたからだ。涼子は立ちっぱなしでいいと言ったのに、中小企業であるがゆえにつまらない威厳を見せたいらしく、代わりの椅子を探すと言って聞かないのだ。
それで差し出されたのは社長室から持ってきた、無駄に座り心地のいい豪華な代物である。
まず背もたれが高く、角度がありすぎる。
次いで座り心地の良すぎる座面は低すぎて、机の高さとあまりにも合っていない。これでは涼子の顔は机の上に顎が乗るように見えてしまう。
頭を抱える相手方の担当者は、とんでもないことを提案してきたのだ。先に誰かを座らせて、その膝の上に座ってはどうかと。確かにそれならば高さは合うけれど自分は女性で、人を膝に1時間も座らせる苦行に耐えるのは同じ女性とは思えない。
案の定抜擢されたのは学生時代に何かスポーツに勤しんでいたのか、立派な体格をした若い男性だった。どう見ても入社して1〜2年の社員にしか見えず、困り果てた表情のまだ20代前半の若者である。上司に命じられれば、断ることは彼としても難しいだろう。
こんなことは受け入れられないと、断って帰ることはできた。失礼にもほどがあるではないか。
それでも涼子は踏み切れなかったのは先方があまりにも必死であり、若い彼も仕方がないとはいえ涼子に恐縮しながらも気遣ってくれたからだ。
そんな彼らを無下にはできず、涼子が断れば影響は少なくないと容易に想像ができたから……。
走行するうちに傍聴者たちが会場に、集まってきた。気不味さと抵抗感はあったけれど、涼子は腹を決めた。すでに椅子に身体を横たえるように座る彼の膝に腰を下ろし、挨拶わ皮切りに説明会は始められていった。
同じ位置に座り続けて彼は痛くないだろうか、気になって仕方がない。だから涼子は体感的に10分置きに座る位置をずらし、お尻をわずかに移動させていた。ところが座面に角度がありすぎて深い位置から動けなくなり、前側にいけなくなってしまった。
涼子の体重は軽いとはいえ、50キロ近くはあるのだ。そんな中、涼子はお尻の下の異変を察知していた。若いとはいえ彼も男性なのだ、これは彼が男性としての生理現象だと、涼子は自分に言い聞かせながら話を続けなければならない。
それは硬く逞しく、涼子のお尻に押し潰されていて申し訳なくて、せめて時おりお尻を浮かせて位置をずらすことに努めるしかない。
そして異変はさらにエスカレート……いや、彼はついに暴走をはじめていく。
いつものようにパンツスーツにしていれば良かったのに、少しでも柔らかい印象をとスカートを選んだのが間違いだった。
涼子がパンツスーツばかりを身に着ける理由は、動きやすいからだ。タイトスカートは嫌いではないけれど、動きが制限される。
フォーマルな場であまりフェミニンだったり華美になるなのは、涼子の好みではない。だから大人しめのフレアスカートか、タイトスカートに見えるラップスカートを揃えている。今日は明るめのスカートスーツ、ラップスカートを選んでしまっていた。
話を続ける涼子に後から伸びてきた彼の手が膝に触れ、一瞬言葉が詰まった。心臓が早打ちを始めだし、緊張で身体が強張った。ストッキングに覆われた肌を彼の指が滑るように撫で、やがて我慢ができないとでも言うようにスカートの中へ侵入をしていく。
こんな真似をされてもどうして自分は話を続けるために口を動かし続けるのか、涼子は自分でも分からない。あの満員電車の中で体験したときのように肌がひりひりする緊張感に震え、彼の手によって強張った両膝が開かれていく。
ラップスカートゆえにそれは可能であり、太腿の内側を彼の指が滑るように触れていく。何度か手を往復させていくうちに奥へと進み、やがて生肌との境界に指先が触れる。
パンストではないことが彼に伝わり、俄然やる気になったかのように脚の付け根まで到達したのは間もなくのこと。普通なら初対面の若者が触れることはあり得ない、女性が身に着ける薄い生地に指を這い回らせ、やがて溝を上下に往復させはじめた。
わたしは今どんな顔をしているのか、変に思われないようにそれだけを意識しながら涼子は口を動かし続けていく。身ぶり手ぷりを交えて時には情熱的に、基本的には女性らしく柔らかな印象を心がけて笑みすら浮かべて。
不意に頭まで電流のような感覚が走る。彼の指先が敏感なところに触れ、宝物を見つけたようにその部分に執着をし始める。彼の手は薄い生地を浮かせて中へと入り、肌を滑らせるように密林を潜り抜けていく。
恐れていた敏感な部分を通り過ぎ、その下へ伸ばした指先で濡れ具合を確かめるように動かす。
ひたひたと自分たちにしか分からない程度の水音を机の下から奏でさせ、涼子に激しい羞恥を覚えさせてくる。
潤む瞳を瞬きをすることで誤魔化し、溝を割って粘膜の上を撫でる彼の指にひたすら耐える。
水遊びはもう飽きたと言わんばかりに移動をはじめた指先が、涼子の膝を硬く閉じさせる。
滑らせるように蕾を撫でる彼の指の腹は、涼子を動揺させるには十分。水面に堕ちた羽虫が激しく波紋を作るように、涼子の中に甘味な感覚が否応なしに広がっていく。あの日の電車内とは異かなり今日は、沢山の目が涼子を見詰めているのだ。
震えそうな手を組むことで誤魔化し、詰まる言葉も間を開けることで効果的な演説に変えていく。
こんなことがあっていいはずがない、ではどうすればいいのか……。
理性と欲望を隔てる針が前者側に留まる中、あとどのくらい時間が残っているのかと、そればかりが気になる。そんな時に、彼の指が不法侵入をしてきた。
講師の話に耳を傾ける若者たちは、その涼子の美しい顔の眉と眉の間に皺が刻まれた瞬間に気付いただろうか。声のトーンがわずかに下がり、喋るペースも少し遅くなり、途切れがちになっていく。
一本だけだった彼の指は二本に増え、手の平を上に向けて前後にゆっくりと揺らす。決して話を中断させることはないように。憂いを帯びた涼子の目元は見る者に優しく映り、声のトーンも相まって穏やかな気持ちにさせていく。
涼子は今深追いしてはいけない甘味な味に舌鼓をうち、上気して赤くなった耳を髪の毛で隠しながら努めて鼻呼吸をすることを意識していた。
視線を下に向ければ太腿の間を指の股まで粘液で光らせた手を、絶えず動かす光景が平常心を乱そうとする。
深く甘い味が官能の世界へと足を引っ張ろうとする。爪を自らの手の平に食い込ませ、わずかな痛みで平静をなんとか装うことを継続する。
食事をするときに下品な食べ方をする者が、発する汚らしい咀嚼音。自らの体の一部から発するそれに似た音から、耳を塞ぎたくなる。
その音を耳にしながらもっともらしい講釈を並べるのだから、笑い話にもならない。そんな嫌悪感と裏腹に手放したくない快感が皮肉にも涼子を、現実に留めさせる。分からないように薄く開いた唇から緩く吐息を漏れ出させパンプスの中の足の指に力が籠もる。
目を閉じてこの場に突っ伏して、感じ入りたい。そんな欲求に抗いながら、動かす手のペースを落とさせようと片手を机から落とし、彼の手を抑える。分かってくれたのか、彼は一旦その行為を止めてくれた。
なのに話を続ける涼子をよそに、涼子のお尻をずらそうとする。長く同じ位置にお尻を落ち着けていたから、辛くなったのだと解釈して座る位置をずらした。それでもモゾモゾと何かをしている。
再び涼子のお尻の位置が、元の位置に戻される。
そしてスカートの中へ、彼の手が侵入してくる。
今は止めてほしいけれど、それを阻止したくても片手では彼の両手には叶わない。
次の瞬間、涼子はぎょっとしなければならなかった。
Vの字に開いた両脚は左右に開かれて、ラップスカートが上げられた自らの白い太腿の付け根からは、自分にはあるはずのない男性器が立ち上がっていた。
どうしろというの、ここでこうして喋りながら手であたしにしろと……?
でも、涼子の考えは自分でも甘かったと知ることになる。
下着が片側にずらされたかと思うと、お尻を少し浮かされたのだ。涼子はそれを誤魔化すために、あたかも座り直すかのように装って見せる。
そして「あっ……!」っと気付いたときには、もう遅かった。
着座に合わせてあてがわれた先端がするっと滑るように入り込み、あとは彼に腰を引き寄せられるようにして埋め込まれていた。さすがにくぐもった声が出はしたけれど、座り直す真似をしながら軽く咳払いをする。
異物感が膣の中を占領し、極めて落ち着かない。
涼子の体重が軽いとはいっても、ほぼ50キロである。その身体をやんわりと揺らすように、彼自ら腰を揺らしはじめた。
もちろんその程度では感じるには至らず、彼の指先が敏感な蕾を優しく叩きはじめる。包皮の上からでも涼子には確かな伝わり方があり、それをいつまでも続けられたらさすがに堪らなくなる。
ブラウスの下の肌には汗が滲み出し、刺激を生み出すほどの動きのないペニスが存在感を放つ。
子宮の入口に接触される感覚が変な気分にさせ、不思議なことに感じるべきポイントが反応をしめじ始めてきた。
そんな、嘘でしょ……。
肌に美容液がじんわりと染み込むように、少しづつ確かな感覚が湧き上がってくる。体重が上がるにつれて酸素が欲しくなり、呼吸が早くなる。
ぬっ……ぬっ……ぬっ……っと奥を押し上げながらも入口付近の気持ちのいい所も、指の腹で撫でられていたとき動揺に感じてくる。
涼子は片手で髪の毛に触れ、軽く直す仕草を見せる。下唇を噛んだり、机の上の上資料を意味もなく揃えてみたり、気を逸らすできる限りのことを試すが、ほとんど意味をなさない。
根元まで埋まった彼のペニスは、恐らく2センチほどの動きかしかない。涼子の粘液を纏って妖しく光り、女の業を貪るようにわずかに上下に動き続ける。
少しの水量でバスタブが埋まっていくように、時間をかけて少しづつ確かに積み重ねられ、そして追い詰められていく。
乱暴に胸を揉まれてしまいたい……。
もっといっぱい突かれたい……。
もう、めちゃくちゃにされてしまいたい……。
高まる性感が涼子の理性をぐらつかせて、膣道を収縮させる。
しなやかな涼子の口調、潤んだ瞳、柔らかな口調とは裏腹に握りしめられた華奢な手と必死な眼差し。
傍聴者たちは涼子の熱意と勘違いをし、胸を熱くさせていく。
………それでは、さんのご健闘を、心よりお祈りし
ています……
拍手喝采を受けながら、机に突っ伏すように頭を下げる涼子。もう平静を装うのも、限界だった。
拍手の花吹雪を浴びながら下半身では彼が果てたことを告げる脈動を感じ、涼子はアンニュイな女の幸せを手にしていた。
若者というには年齢を重ね、熟女にはまだ遠く及ばない。言い換えれば若者の名残を残しながら、女としての魅力を見せはじめた女性。
内容はさて置きセックスの味を本当の意味で、知り始めたのかもしれなかった。
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