昼食をとりながらゼツは考えていた

毎朝同じ電車に乗る
8時13分
駅に着くのは8時28分

サチエはひと駅先だから3分ほど変わるから8時31分

始業時間は9時からだろうか？
8時45分始まり？
でも事務服に着替えたりする時間を考えると

やっぱり

9時始まりだろう。

じゃー

終業時間は18時のはず！

そうしたら俺と一緒の時間に終業時間を迎えたとしたら帰りの電車で見掛けてもいいはず！
だか、
一度も見掛けたことがない。
なぜ？
最近は労働基準局の通達により、サービス残業させないように会社も気配りしている。
世の中、不景気で残業代を出したくないのもあって以前みたいに連日遅くまで仕事することも無くなってきた。


どこの会社も似た状況のはずである

なぜ？

サチエを帰りの電車で見掛けたことが一度もないんだろうか？
理由を考えるゼツ。

ゼツ特有の空想である。


普通の人なら、それを推理と言うだろう。

なぜ？
終業時間が同じとして？
なぜ？なぜ？
帰りの電車で見掛けることはないのは？
なぜ？


毎日外食して帰る？
独り暮らしだから買い物して帰る？
デート？
習い事？
ダブルワーク？

解らない解らない解らない！



そこまでなら空想と呼べるかも知れない

が


よし、

終業時間は18時のはずである

会社名も解ってる今となってはググれば営業時間が出てくる！

やはり、18時である！


あとをつけてやろう！


それが

空想ではなくなる行為なんですけどー


ゼツは昼飯を食べ終えて
帰ってくると

帰りも娘を保育園に迎えに行かなくてはならなくなったと

会社を17時に帰る要するに上司に伝えて了承を得た！

ゼツは娘の保育園の迎えを理由に今日は早く帰ってサチエを尾行出来るとイキイキした。

今日は月曜か


月曜？

席を立つとまた先ほどの上司の席に向かった！

ゼツ「すいません。娘を迎えに行けるからと嫁さんに連絡したら、おりかえしメールで出来たら今週イッパイ迎えに行って貰えたら助かるんだけど言う事なんですが」

上司
「今週イッパイってか。また、なんでだ？」

ゼツ「パート先の人員が一度に3人もインフルエンザになったみたいでどうしても、いつも通りに帰れないみたいなんです」

上司
「インフルエンザなら一週間は掛かるだろうな。ま、今週イッパイと言う事だ5時な解った。」

季節は10月半ば過ぎ
温かいと思えば次の日冷え込む
ゼツの住んでる地域は12月の頭には必ず雪が降る。

インフルエンザも確かに流行してるわけで、上司が快く今週イッパイ早退けを承諾してくれたことに後ろめたい気持ちよりも、
ヨッシャーー！
と言う気持ちである。


あと30分ほどしたら5時かー

と仕事をしていると

今度は上司がゼツの席にやって来た。


ん？今になって早退け無理とか？
イヤな予感がした。

上司
「津川君、明後日の水曜なんだが事務の女の子が休みなんだ。水曜は20日で締め切り決済日でいつもは事務の子に銀行に入出金、振込の手続きに行ってもらうんだが、休みなんで津川君に行って貰おうかと思ってな」

ゼツ
「解りました。午後からですか？」

上司
「振込みやら手形やら有るから昼までに行って欲しいんだけどな」

ゼツ
「じゃー、11時前に出て昼食済まして帰ってくるパターンでよろしいですね」

上司
「銀行2行と信用金庫と行ってもらうことになるから手続きの時間を考えたら10時30分迄に出てもいいぐらいかも」

ゼツ
「解りました。水曜日ですね」

上司
「頼んだよ」

そんなやり取りを交わし仕事をするゼツであったが、

内心ラッキー！と叫びたい気持ちであった。

なぜ？ラッキーと叫びたくなるのか？

実は、ゼツが入社した5年、6年まえの頃は駅前の商店街も活気があり賑わいあり、都市銀行2件と信用金庫の１件があった訳である。


が隣街の造成地区に次々に住宅マンションが建てられ、駅前に大型スーパーが進出。それを皮切りに大手家電販売店にホームセンター、パチンコ店、おしゃれなカフェやレストラン、専門店街などがオープンし、その煽りを受け今や、商店街もシャッター通りと化したわけである。
　
当然に都市銀行2行はATMだけを残し隣街の駅前へ移転。今は信用金庫と小さな郵便局だけになってしまってる。

ここで言う隣街とは、サチエの会社の最寄り駅である。


　
その駅に行ける訳である！

しかも昼食も食べて帰れるのである。


昼にサチエの会社の前で待っていれば、弁当持参でない限り、サチエと同じ空間で昼食が食べれるかも知れないのだ。


いつもは女子社員の仕事であるが、今回はゼツが行ける訳である！



これをラッキーと言わずになんと言う！

ゼツはウキウキ気分！

いよいよ5時である。
そわそわしながら帰り支度をすると、お先に失礼します、と駅に向かう。
5時23分の電車に乗り込み座席に座ると、

何かお尻に違和感を感じる
その違和感の正体は小綺麗な100円玉ぐらいのボタンであった。
誰かの服のボタンが取れたんだろう。
小綺麗で見た目、高級感を感じるそのボタンで表面にアルファベットの「R 」と刻まれているボタンで無意識に自分のポケットに入れるゼツであった。

5時26分に隣駅の改札を抜け駅前の専門店街みたいな所に帽子屋さんを探した。

百均と向かい合わせであった。

グレーのハンティング帽子と百均で伊達眼鏡を買う。
トイレに入ると帽子を被り眼鏡を掛けるゼツ。
そう、変装用である。
まだ6時には17分あるがサチエの会社に向かう。

会社の前に着いたのが17時50分


ちょうど会社の斜め向かいに不動産屋があり、ガラスに貼ってある物件を見ながら待つことにした。

待つ身は長いものである。

ようやく､18時になり

18時7分ぐらいに一人
また一人と出てきた。

その時にゼツの携帯からメールの着信音が！

是非、続きをお願いしますm(._.)m

是非続きをと

読んでくれてる人がいるんやー


ありがとう、おおきにさんです。


続き


携帯の着信メール


「久しぶりー、メアド変更しました！」
迷惑メールだった。


が、

携帯を確認して前を見ると

サチエの後ろ姿が

赤いカーディガンにグレーなタイトミニ！
今日の朝見た服装である！
隣には同僚らしき女性。

危ない危ない迷惑メールに気をとられて見逃す所だった。

ハンティング帽子に伊達メガネ、



完全に私立探偵､シヤーロックホームズ気取りである！


(違うから違うから、ただのストーカーですから)


時間は18時12分。ゼツの尾行が始まる。


駅前のカフェに入る。

離れた席に座るが

何を話してるのか聞き取れず。

イライラするゼツ。

20分ほどで店を出て同僚と別れた。

そして、そのまま駅前ビルのエレベータにサチエが乗る。

ゼツも乗る。


他に誰もいない。
6階のボタンをサチエが押した。

エレベータ内の案内には6階は英会話教室と進学塾の二つが書かれいた。


サチエは月曜は英会話教室に通ってるんだ！

よし、俺も英会話を習おう！と思うような男ではなかった！



セックスの時も「オーイェオーカモーーン」って言わしてみたい！




とにかく変質的である。



読んでくれてありがとうございます。