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1:祖母・昭子
投稿者:
雄一
女の人の、男子として妙に気持ちをそそられそうな甘い化粧のような匂いを、
僕は鼻孔に感じ、同時に薄くすべすべとした布地の感触を通して、人肌の温み を頬肉の表皮に感じさせられて、茫漠とした気持ちで薄目を開けた。 すぐ間近に人のような気配を感じ、顔を少し動かせて目を大きく開けると、 畳に寝転んでいる僕の身体に、誰かが覆い被さってきているようだった。 開けた目の真ん前に、薄い水色のすべすべとした布地が揺れていて、その布 地の中の人肌の温みが、感じのいい化粧の匂いを含ませて、僕の顔のあたりの 空気をほんのりと包み込んできているのだ。 少し慌て気味に顔を上げた時、僕の鼻先と頬に水色の薄い布地の中の柔らか い肉が触れてきたのがわかった。 居間の畳の上に僕は身体を横たえて、うたた寝よりももう少し深い眠りの中 に落ちていたのだ。 そこへ風呂から上がってパジャマ着替えた祖母が来て、寝入っている僕にタ オルケットを掛けてくれていたのだ。 寝がえりか何かでタオルケットがずれたのを、祖母がまた掛け直してくれる のに身体を僕に寄せてきた時に、僕が目を覚ましたのだった。 「風邪ひくわよ、こんなとこで寝ちゃ」 身体を少し離して、祖母がかたちのいい唇から白い歯を覗かせて微笑んでき た。 「あっ、ごめん。婆ちゃんにおやすみの挨拶しようと思っ てたら、つい寝込 んじゃった」 「そんな気を使わなくていいのに」 「あ、それとね、婆ちゃんにいい忘れてたことあって」 「何、いい忘れててことって?」 「あのね、僕の発見なんだけど…演歌の歌手でね、三味線抱えて歌う人で、 その人の顔が婆ちゃんにそっくりなんだよ。名前はたしか…長山、何とかってい う人。スタイルも婆ちゃんと一緒で小さくて奇麗な人。何日か前にテレビに出て たんで母さんにもいったら、驚いてた。」 「そうなの。婆ちゃん喜ばなくちゃいけないわね」 「ああ、そういえば、婆ちゃんの娘の母さんもチョイ似てるね。でも婆ちゃん はほんとに瓜二つだよ」 「はいはい、もういいから早く寝なさい」 「うん、おやすみ」 他愛のない話を祖母とし終えて、寝室の布団に身体を横たえると、現実の状況 がすぐに僕の頭にもたがってきた。 竹野という男のことだった。 当然に、僕はまだ竹野本人には会ってはいなくて、知っていることといったら、 年齢が祖母よりも二十二も年下の四十二歳で、例の高明寺のお守り役として働い ていて、坊主頭であることと、性格的には自分の書いた下品で下劣としか思えな いような拙文をわざわざ祖母にメールに書き写させて、それを読ませたりとか、 相当な偏執狂のような面があったりという変人的な人物のようである。 祖母のスマホのメール情報では、過去に離婚歴があり、この村へは四年ほど前 に流れ着いたとのことだが、それまでの住まいとか仕事歴はわかっていないよう だ。 祖母との性の関係もそうだが、推測するまでもなく、所謂SM嗜好者であるのは 間違いないようだ。 性の問題は、たかだか十六歳でしかない、著しく若輩の僕が偉そうにいうべき ことでないことはわかっているので、どうこうと意見はいわないが、SM嗜好その ものについては、僕自身は侮蔑や軽蔑の対象外だと胸の奥では密かに思っている。 恥ずかしいことだが、思春期真っ盛りの一年ほど前のある時期、僕は女性の生 理について、唐突に歪んだ好奇心を持つようになり、自宅の便所の汚物入れにあ った自分の母親が捨てた汚物を手に取り、テッシュに包まれたものを開いて、赤 い血や黄色い沁みを見て、訳もなく興奮したことがある。 人はさまざまなのだと僕は思う。 つつましく穏やかで清廉な僕の祖母を、恥ずかしく凌辱し虐げる竹野という人 物には、憎悪や嫌悪や憤怒といった感情が、何故かあまり湧いてきていないこと に内心で少し驚いているというのが、僕の正直な気持ちで、肉親である祖母には 申し訳ないのだが、性行為に伴うSM嗜好への興味の思いのほうが強いのかも知れ ないと恥ずかしながら思っているのだ。 「明日の夜ね、婆ちゃん、また寄り合いがあるの。雄ちゃん、留守番お願いね」 祖母の口から待望(?)の言葉が出たのは、それから三日後のことだった…。
2023/01/27 22:12:19(7WqPo0xO)
投稿者:
(無名)
お前じゃなくて、昭子と呼び捨てにしてやってほしい。
23/02/27 18:19
(chsX9toL)
投稿者:
雄一
僕が布団から起きて室を出たのは、午後の一時過ぎだった。
家の中は静かでがらんとしていた。 蝉の細かな鳴き声だけが、外から聞こえてくるだけだ。 祖母はいないようだった。 祖母の気持ちを察すると、起きてくる僕を待つのは、やはりいたたまれないだろ うなと思った。 もしいたら、僕も相当に困っていたかも知れない。 朝方早くから、僕は祖母の身体を求め、そして長い時間抱いた。 途中で何があったのか、祖母のほうは兎も角、僕の人間性のようなものが、自分 でも驚くくらいに、とんでもない豹変の憂き目に陥っていた。 祖母の小さな身体を、僕が騎乗位にして淫靡に責め立てている時だった。 何かが僕の全身と心の中に、何の予兆もなく摂り付き、僕の人格をまるで別人の ように豹変させたのだ。 当事者の僕に、その原因がわからないのだから、どうにも納得のしようのないこ とだが、それで僕は祖母に、自分でも信じられないような罵りの言葉を吐いたり、 侮蔑的なことをいって、祖母の身体だけではなく、心まで折れさせるような甚振り を繰り返していたのだ。 だから、今ここに祖母がいたら、一体自分はどういう顔をしたらいいのか、と心 を悩ませたのだ。 朝飯も昼飯も喰えていないが、空腹感はあまりなかった。 冷蔵庫の前でミネラルウォーターを飲んでから居間に入ると、座卓の上に白いメ モ用紙が置いてあった。 祖母の字だ。 (畑に出かけます。鍋にカレー作っておきました。戻るのは夕方です) 祖母のその字を見て、単純な僕は少し安心して、カレーライスをぱくついた。 点けたテレビを観るともなしに観ていたら、どこかの寺の全景が映し出され、そ こで僕ははたと思い出した。 そうだ、高明寺に行くことになっていた。 昨日の朝、わざわざ尼僧本人がこの家まで持ってきてもらった、寺の歴史を書き 綴った資料を返却しに行かなければいけなかった。 僕は慌てて顔を洗い、何故か歯磨きだけ入念にして、短パンをジーンズに履き替 えて、自分の室から借りた資料の包みを持ってきて、小走るようにして玄関を出た。 昨日のうちに資料の全部を、スマホの中に撮り込んでおいてあったのだ。 寺までの草だらけの細道を歩いていると、昨夜のことも忘れ、僕は鼻歌を口ずさ んでいた。 尾崎豊のアイラブユーだった。 iloveyou いまの暮らしの中では辿り着けない ひとつに重なり生きていく恋を 夢見て傷つくだけの二人だよ このフレーズを僕は前から好きだったが、何となく今の祖母と自分に重ねた気分 で口ずさむと、夏なのに鼻水が出そうになっていた。 祖母と僕では、所詮、恋ではないか、と妙な納得をしていたら、寺の本堂の前に 出ていた。 タイミングよく本堂の正面の、木製の階段を下りてくる長身で細身の尼僧と目が 合った。 驚いたような顔をしながらも、尼僧は僕を自分の住家に招き入れてくれた。 玄関を入るとすぐに、祖母の室のあの匂いとは少し違うが、女性的で香しく、何 かをそそられるような匂いが充満していて、不謹慎にもまた僕の下半身がびくんと した動きを放った。 借りた資料を返却するだけのはずが、尼僧一人が住む住家の中まで招き入れられ た僕は少し面喰いながらも、尼僧の背中の後をついて行くと、奥座敷の八畳間の座 卓の前に座らされた。 黒色の立派そうな座卓の前で、恐縮至極の思いで顔をキョロキョロさせていると、 白の袖頭巾姿の尼僧が、麦茶を載せた盆を手にして、静かな足取りで室に入って きた。 恐縮の思いに尿なそわそわ感も加わり、出された麦茶の味も、僕はよくわからな いでいた。 座卓を挟んで真向かいに座った尼僧の顔に、特段の表情はなかったが、それが却 って僕の気持ちに微かな不安を募らせた。 そして間もなく、僕の不安は的中した。 「ごめんなさいね、勝手に足止めしてしまって」 と物静かな口調でいった後、思いもしていなかったことを話し出したのだ。 それはこの前、僕が寺のごみ焼き場で、尼僧の書いた日記を忙しない動作で、ス マホで撮影していたことを知っているということだった。 「あの日、たまたまある檀家さんの奥さんが、お寺の掃除の手伝いに来てくれて いて、あなたがごみの焼き場でそんなことをしていたというので…」 僕に気遣うように、声の調子を落としながら話した尼僧の薄化粧の顔を、僕は返 す言葉もなく凝視するしかなかった。 こちらに一切の弁解の余地はないと、僕は即座に判断し、畳に強く手をついて、 「ごめんなさいっ」 と強くいって、頭を深く下げた。 それから室の中には、かなりの沈黙の時間が漂い流れた。 「…もう起きてしまったことは、いまさらどうしようもないことだわ。…で、あ なた、それをどうなさったの?」 尼僧の穏やかな口調には、憤怒の印象がないようなのが、僕の気持ちの大きな救 いだった。 「何も、誰にも見せてなんかいません。僕のスマホに残っているだけなので、こ の場ですぐに消します」 そういって僕は、慌てた動作でポケットからスマホを取りだし、座卓に身を乗り 出すようにして、尼僧の目の前でデータ消去の作業を急いだ。 スマホの画面にデータ消去完了の文字が出て、それを尼僧に見せると、彼女は少 しほっとしたような表情になり、法衣の肩を小さく揺らせた。 「ごめんなさい、すみませんでした」 もう一度僕は畳に手を付け、頭を深く下げて詫びをいった。 頭を深く下げながら僕は考えた。 昨日の朝、わざわざ僕の家を訪ねてくれたのも、資料提供の他に、僕に会ってこ のことを確認したい意味が大きくあったのだと。 いい気になって、卑猥な気持ちで読み耽っていた、自分の馬鹿さ加減を蔑み、自 嘲的に笑うしかなかった。 「もういいから、このことは私も忘れるから、あなたも元気出して」 尼僧の声は優しかった。 「最後にね、一つだけ聞かせて。…日記の中味って…あ、あなたも読んでないの ね?」 という尼僧の言葉に、 「読んでいませんっ、ていうか、写真の写りも悪くて、ほとんど読めませんでした」 僕は明快に嘘をついて、尼僧の住家を辞去した。 帰りの細道では、さすがに尾崎豊の鼻歌は出てこなかった。 家には、次の大きな課題が待ち受けている。 祖母との対面だ。 尼僧の時と同じで、気まずくなるのは目に見えている。 が、越えなければならない関門だ。 最後の最後まで激動だった、僕の夏休みが終わり、明日には、もうこの村から出てい くというのに、十六歳の少年の試練は果てしなく続く…。 続く くのだ
23/02/27 22:00
(RJ4EmkwE)
投稿者:
(無名)
祖母・昭子さんとのやり取り、最高です!!
息子がズボンの中で苦しいx2と暴れています。 続きを楽しみにしております!!
23/02/28 10:37
(k0uzLiJY)
投稿者:
雄一
祖母との対面をした時の対処法が、まだよくまとまらないまま帰宅すると、庭先
に祖母が畑に行く時に、いつも引いていく一輪車が置いてあった。 帰っているのか? まるでコソ泥みたいな忍び足で玄関を入ると、薄暗い家の中に人ないようないよ うだった。 ま、出たとこ勝負でいいか、と僕は腹を決めて、自分の室に入った。 壁の隅に置いていた、僕が来るときに持ってきたバッグの横に、洗濯してきちん と畳んだ衣服が積んで置かれていた。 室の中も掃除された後のように、奇麗な感じがする。 畑からは、だいぶん前に帰ってきているんだと思いながら、することもなかった ので畳に寝転がり、顔の上にスマホを翳し、Yahooサイトを見ていると、ほどなくし て玄関か台所のほうで物音がした。 いつもなら、室を出て、お帰りの声掛けをするのが普通だったが、今日の気分は さすがにそうはいかなかった。 するとこの室の入り口の辺りから、小さな足音が聞こえてきた。 「ゆ、雄一…さん」 祖母の蚊の鳴くような、物静かな声が僕の耳に入ってきた。 後で思うと、祖母のその声が僕の身体と心のどこかを、昨夜にフイードバックさ せるスイッチだったのかも知れなかった。 瞬間的に、僕の体内で血が逆流したような気持ちにさせられ、体温が勝手に急上 昇する思いに駆られた。 目が吊り上がり、おそらく表情も一変していたのかも知れない。 「何…?」 相手を突き放すような口調になっているのが、自分でもわかった。 「あ、明日は何時の列車で帰りますか?」 襖戸を開けないまま、やはり物静かで、囁きかけるような祖母の声だった。 「昼過ぎ…かな?」 ぶっきらぼうに僕は応えていた。 「じ、じゃあ、朝のうちにお祖父ちゃんのお墓参り、行ってくれますか?」 「ああ、いいよ。それより顔見せろよ」 投げ出すようにそういうと、少しの間があって、襖戸が静かに開いた。 畑の野良着と違って、白のブラウスと黒の花柄模様の入った臙脂色のスカー ト姿だった。 ボア風のそれほど長くない髪も化粧も、奇麗に整っていて、色白の顔に赤い 口紅が際立って見えた。 開いた戸の向こうで、祖母は膝をついて座ったまま動こうとはしなかった。 十六の、まだ人生経験の浅い僕は、こういう時の女性への、対処法というの が全く分からなかった。 「近くへ来いよ」 畳にだらしなく寝転び、本能の赴くままに僕はいった。 祖母が立ち上がり、つつとした足の運びで、寝転んでいる僕の顔の近くに正 座した。 悪魔でも何でもいい、自分の思うとおり、自分がしたいとおりに動こうと、 心の中で僕は決心していた。 「キスしてくれよ」 すでに大波のように湧き上がってきている、動揺と戸惑いをひた隠して、さ りげない声で僕は祖母に向かっていった。 ちらりと見た祖母の、切れ長の目が潤んでいるように見えたが、涙の潤みで はない感じに見えた。 祖母の小さな顔が、僕の興奮をさらに増幅させる、女性的で香しい匂いを引 き連れて、僕の顔に近づいてきた。 躊躇う素振りもなく、祖母の赤い唇は僕の唇を音もなく塞いできた。 祖母が吐く小さな鼻息が、僕の鼻孔の前でそよぐように吹いた。 祖母の口から差し出された舌が、弱い力加減で僕の歯と歯の間を割って忍び 入ってきた。 もう僕の下腹部の反応は、充分過ぎるほどに昂まっていた。 口の中で祖母の小さな舌の動きが、時間を置くことなく活発になってきてい るのが、それを甘受している僕にはすぐにわかった。 卑猥な気持ちでいうのではなく、祖母の身体と心は昨夜の時の気持ちから、 まだ脱却していないのだ。 潤んだような目の輝きがそうだ。 夢幻の境地に、祖母はまだ浸りきっているのだと僕は確信した。 明日から暫くは祖母に会えない。 こうして愛し合えるのは、今と今夜の時間だけだと思うと、夢幻の境地を彷 徨い、孫ではない、男の僕に必死に尽くそうとしている、祖母が無性に僕は愛 おしくなった。 唇がようやく離れた時、 「ここが、もう破裂しそうだ」 と祖母の片手を握って、自分の下腹部に誘いながら、僕は愛おしさの欠片も ないような卑猥な台詞をいった。 これが祖母への愛おしさだと、若過ぎる自分なりの解釈からの台詞だった。 祖母は従順だった。 身体を僕の下のほうにずらせて、ジーンズのホックに小さな手を掛けてきた。 ただひたすらに僕に尽くすというひたむきな、祖母の顔が僕にはそんな風に 見えた。 ジーンズを僕の足首から全部抜いて、テントが張られたようになっているト ランクスに、手を差し伸べてきて、すでに屹立全開状態になっている僕のもの を、祖母は布地を通して優しく撫でつけてきていた。 祖母の手でトランクスがゆっくりと脱がされる。 表情を変えないまま祖母の唇が、僕の屹立に近づいたかと思うと、その先端 を躊躇うことなく、愛おしげに、自分の口の中に含み入れた。 僕の全身に思わず力が入ったのがわかった。 同時に、あのめくるめくような暴発の危険性も、僕は頭の中で察知した。 快感にひたすら堪えるしかなかった。 窓からの陽射しも陰り出し、ほの暗くなった六畳間の畳の上で、祖母の口か らの愛情と熱情の波状攻撃を受け、経験値のまるでない十六歳の少年は、堪え がたい快感に、ただひたすらに堪え続けた。 若過ぎる故か経験値の少なさからか、限界は間もなく来た。 慌てた素振りで、僕の下腹部に顔を埋めていた、祖母の身体を突き放した。 そのまま畳に祖母の身体を仰向けにし、スカートを大きく捲り上げ、引き摺 るようにショーツを脱がした。 剥き出しになった祖母の、真っ白な両足の間に急いた動作で潜り込み、僕は 自分の暴発寸前のものを突き立てた。 「ああっ…いいっ」 畳に仰向けになった祖母の顔が、包丁で身体のどこかを刺された時のように、 激しく歪んでいるのが見えた。 祖母の両手が、僕の二の腕をがっしと掴み取ってきた。 自分のものが、祖母の胎内深くまで入っていることを、僕の脳は間違いなく 実感していた。 「ゆ、雄一さん…す、素敵っ。…いいわ」 祖母の白い顔が上気して朱色に染まり、額に汗が滲み出ているのが見えた。 「あ、昭子っ」 躊躇うことなく、僕は祖母をそう呼んだ。 「か、帰したくない…あ、あなたを」 「ぼ…お、俺もだよ。帰りたくないっ」 まるで獣同士のそれのように、僕は祖母の唇に唇を強く押し付けるように 重ね、気が触れたように舌を縦横無尽に暴れ廻らせた。 はうっ、と声にならない声を漏らして吐いた、祖母の生温かい息が僕の鼻 先を撫でつけてきた時、唐突に絶頂の極点が僕を襲ってきた。 堪えようのない快感だった。 「あ、昭子っ…い、逝くぞっ」 「ああっ…雄一さん…き、来てっ」 ほぼ、二人同時の断末魔だった。 室のなかはすっかりと夕闇に包まれていて、お互いの顔すらもはっきりと 見えなくなっていた。。 夢幻夢想の、めくるめくような行為の後始末を終え、祖母がスカートの裾 を直し終えた時、 「僕は…何も後悔していないからね」 と僕が畳に目を落として、少し強い口調で呟くようにいうと、薄暗くなっ ている前方で、祖母が片手を畳について、嗚咽のような声を漏らしてすすり 泣いていた。 「あ、昭子のこと、何も嫌いになってなんかいないよ。いや、前よりもも っと好きになったのかも知れない」 嗚咽の止まらない祖母に目を向けて、僕は思いついた正直な言葉を続けた。 逆に祖母の嗚咽がさらに強くなってしまった。 「…ごめんなさいね。雄一…さんにそういってもらえると、私、本当に嬉 しい」 「ションベンしてぇ」 話を打ち切るように、明るい声でそういって、僕は畳から立ち上がり、そ そくさと便所に走り込んだ。 夕食はこの前してくれたばかりのすき焼きだった。 「最後の夜だからね。あの雑貨屋の叔父さん、今日も同じ肉あるよってい うから」 「こんな柔らかい肉なら、僕は毎日でもいい」 二人は元の祖母と孫に戻って、にこやかに笑い合いながら、すき焼きに舌 鼓をうった。 その夜も、僕は祖母の室に寝ることになり、布団に枕を並べたのだが、お 互いに何も動くことなく、スタンドの灯りを消す前に、少しだけ濃厚なキス だけで、深い眠りの中に入ったのだった。 眠りにつく寸前、明日の墓参りの時、あの尼僧に会えるかな、とふと思っ た…。 続く 血族同士の性行為は、社会通念上は当然に許されることでないことは、 祖母は確実にまだ昨夜の、信じ難いような出来事を、
23/02/28 14:50
(kGYYtlP4)
投稿者:
雄一
八月の下旬だというのに、朝から気温はどんどんと上がり、祖母と墓参りに出かけ
た十時には、スマホで見た三十四度になっていた。 祖母は薄水色のブラウスに黒のパンツ姿で、白の日傘を差していた。 僕はあまり暑いので、短パン姿で外に出ようとしたら、 「ちゃんとズボン穿きなさい」 と祖母に叱られて、ジーンズに穿き替えた。 蝉の鳴く音がけたたましい墓地からの帰り道の、本堂を過ぎた辺りで、僕にとって は会いたくもあるような、ないような尼僧と、ばったりと出くわしてしまった。 尼僧と最初に目が合った時、祖母にはわからないようにして、僕のほうが先に頭を 下げた。 尼僧のほうも目を少し動かせて、僕に視線を向けてきたが、すぐに祖母のほうに目 を動かせ、通り一遍の挨拶に興じていた。 祖母も如才なさげに笑みを浮かべて応えていた。 夏休みが終わりで、今日の午後、僕が帰って行く話のようだった。 二人の間の秘密の関係を知っている僕には、何とも間の悪い時間だったが、尼僧の 屈託のなさげな声を聞いていて、唐突に邪心のようなものが湧き出てきた。 祖母が話す僕のことに、あまり関心がなさげだったようなのも、少し気に入らなか った。 別れの挨拶をして祖母が歩きかけた時、僕は尼僧の傍に素早く近づき、 「失礼します。これからも祖母のこと、どうかお姉さんだと思って仲良くしてやって ください」 と囁くようにいって、足早にその場を離れた。 二十メートルほどのところで振り返って尼僧を見ると、愕然とした表情で、驚きの目 をしているのがはっきりと見えた。 尼僧の書いた、あの長文の日記を何回か読み耽ったせいなのか、袖頭巾と法衣がよく 似合うこの尼僧には、祖母とはまた少し違う、魅力のようなものをいつの頃からかわか らないが、僕は内心で抱いていたのだ。 今後の布石みたいなものだ、と僕は大人っぽく呟きながら、前を行く祖母の後を追っ た…。 続く
23/02/28 21:37
(kGYYtlP4)
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