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義母・亜紀子   それから…
カテゴリ: 官能小説の館    掲示板名:近親相姦 官能小説   
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1:義母・亜紀子   それから…
投稿者: コウジ
(義家族との体験―義母・亜紀子より続く)

 翌日、新潟駅から上りの上越新幹線に乗ったのは、まだ雪の降る午後
四時過ぎでした。
 座席に腰を深く降ろした僕が最初にしたのは、肩までを使って長く大
きな溜め息をついたことでした。
 この旅の本来の目的だった、大学時代の友人の病気見舞いを終えて、
駅に向かうタクシーに乗り込んだ時、すぐに携帯が鳴りました。
 つい今しがた見舞ったばかりの、友人の浅野からでした。
 「浩ちゃん、今日は遠いところわざわざ来てくれて、ほんとにありが
とうな」
 明るい声でしたが、病人らしい弱々しさがどこかに感じられました。
 「何だい、さっきもお礼いってもらったばかりじゃん。どうしたの?」
 「うん、今日はほんとに嬉しかったよ。浩ちゃんの顔見れて…」
 「ああ、僕も祐ちゃんの少し痩せてたけど、明るい声聞けて安心した
よ」
 この後に、沈黙の間が何秒かありました。
 「どうした?祐ちゃん…」
 「うん、ごめん。…浩ちゃんの声聞いたら胸詰まっちゃって。…俺ね…
実は癌なんだよ」
 「えっ?何だって?」
 「腸閉塞もなんだけど…ほんとは膵臓癌なんだ。それもステージ4に近
いステージ3。…こちらの遅い桜が見れるかどうか…」
 「な、何だよ、急に。どうしている時にいってくれなかったの?」
 「浩ちゃんの明るい顔久しぶりに見れて、何だかいいそびれてしまって
ごめん。…あ、浩ちゃん、ごめん。母ちゃん戻って来たから、もう切るな。
ありがとう…」
 そういって携帯は相手側から一方的に切断されました。
 タクシーももう駅に着いたので、僕は慌てて降り、こちらから何度もか
け直したのですが、一度も繋がることはありませんでした。
 僕はもう一度病院に戻ろうかとも思ったのですが、友人の浅野のわざわ
ざ携帯での告白の気持ちを思うと、足は後ろには向きませんでした。
 そういうことがあっての、座席での僕の深い溜め息でした。
 新幹線は舞い降る雪の中を、ほとんど音も立てないまま疾駆していまし
た。
 何か全身に得体の知れない重さと、やるせなさだけが残ったような長い
旅だった気がしていました。
 温泉旅館で加奈子と二人で朝を迎え、彼女の運転する車で大粒の雪の降
る中を、昨日、彼女に迎えに来てもらった信越線の水原駅まで送ってもら
いました。
 その途中のコンビニの駐車場に加奈子は車を止め、
 「お願い、三十分でいいから、もう少し一緒にいさせて…」
 と赤い手袋をした両手を顔の前で合わせて、可愛げに懇願されたので、
 「いいよ、僕ももう少し加奈子の顔を見ていたいから」
 と笑顔でいって片目を瞑ってやると、
 「嬉しいっ」
 と彼女は運転席から身を乗り出すようにして、僕の肩に抱きついてき
ました。
 朝方には降っていなかった雪が、また深々と降り出してきていました。
 加奈子は車を降りて、コンビニで温かいコーヒーを買ってきてくれま
した。
 「昨日いわなかったけど、私…二日ほど前から阿賀野市内のビジネス
ホテルに泊まっているの」
 可愛い唇を窄めて熱いコーヒーに息を吹きかけながら、加奈子が呟く
ようにいってきたので、
 「どうして?」
 と理由を聞くと、
 「お祖母ちゃんがね、お金出してくれて、もうここにはすまなくてい
いって…」
 と彼女は応え、
 「都会に行くまで、ホテル住まいしてたらいいって…加奈子に辛い
思いをさせたのだから、こんなものではすまないけど、ぜひそうしろ
って、泣きながらお金渡してくれたの」
 そう言葉を続けました。
 大粒の雪が見る間に、車のフロントガラスに積もり出していました。
 「いいお祖母ちゃんだね…きっと優しくて綺麗な人なんだろうな」
 「旅館で仲居をしてた若い頃には、結構有名な美人だったらしくて、
何度か芸者さんになればって誘われたらしいわ…」
 「会ってみたかったね…」
 「浩二さん、年上の人が好きみたいだから…あ、ごめんなさい」
 加奈子が何を指していっているのかは、すぐにわかりましたが、
 「そうだね…年上の人好きだけど…でも、若い加奈子も今は好きだよ」
 と僕は冗談めいた言葉を返して、また片目を瞑ってみせました。
 まだ何ヶ月か前の、病院のベッドで義母と抱き合っているところを、看
護師だった加奈子に見られたのが、随分と昔のことのような気がしていま
した。
 「私、亜紀子先生に、前にこちらへ帰ったってメールしたんです…」
 「ああ、そうみたいだね。聞いてるよ」
 「まぁ…先生、私たちのこと知ってるのかしら?」
 「うん、前に一度、僕から少しだけ話したことあるけど…ここへ来る時
にもね、やんわりとだけど釘刺されてるんだ、ほんとは」
 「まぁ、どうしましょう?」
 「まぁ、余計な心配させるのもあれだから、僕もだけど…君も黙ってた
ほうがいいんじゃない?」
 「そうね…そうします。でも…」
 「でも何?」
 「ごめんなさいね。もし浩二さんとまだ続いているんだったら…私、亜
紀子先生に少し嫉妬しちゃう」
 「そんなじゃないさ…」
 雪ですっかり視界のなくなったフロントガラスに目を向けて、僕は加奈
子に切ない嘘をつきました。
 「ごめんなさい、何度も。そうだ、私、明後日くらいにはもうこの新潟
を出ますから…」
 「ああ、そう。住むところなんかは決めたの?」
 「ネットで探しました。…ご心配なく。浩二さんのお家から随分と離れ
てますから。…だって近いと私までが毎日苦しくなりそうだから…」
 加奈子はいつもの快活な声でそういって、僕に無理におどけたような顔
を向けてきていきました。
 それから昨日、加奈子に迎えに来てもらった水原駅で、今日は加奈子と
の別れの時を迎えたのです。
 加奈子は車を降りて、改札口まで見送りに来てくれました。
 別れ際に加奈子が差し出してきた手袋を脱いだ手を握り返してやると、
 「向こうで会える日を、ずっと待ってます。…私、負けませんから」
 …といって強い視線を僕に向けてきました。
 新潟までのローカル電車の中で、加奈子が別れ際にいった言葉を思い出し、
僕は何かやるせない物思いに耽っていました。
 彼女は多分、これからの苦難にも負けないといったのだと思いますが、僕
に投げつけてきた強い視線には、また違う意味合いがあったのかもと、僕は
妙な邪推に囚われていました。
 もしかしたら、加奈子は僕と義母の関係を指して、自分の意思を告げたの
かもという思いでした。
 加奈子がまた同じ街に戻ってくると聞いた昨晩にも、僕の心の中に過ぎっ
た不穏な予兆らしきものが、もうこうして早速に具現化してきていることを
感じていました。
 加奈子のほうに僕という、保身にばかり走る身勝手な男を見限るという思
考は欠片もないのは明白でした。
 だとすれば僕のほうから、多少の強引さを持ってでも彼女を見切るしかな
いのでしたが、ここでもまた自分の優柔不断さが表に出てきて、何の決断も
できないでいるのが実情です。
 しかも僕自身の今が、なさぬ関係を断ち切れないでいるどころか、逆に日が
経つにつれ、離れがたい思慕が増幅するばかりの状況に陥ってしまっています。
 肝心要の部分から逃避していて、都合のいい打開策など思い浮かぶはずはあ
りませんでした。
 詰まるところは、全てが中途半端なままの流れにまかせるしかないのか?
 これまでの自分の生き方は、どちらかというと何事においても慎重居士で安
全に穏やかに生きるというのが、僕なりの処世観でした。
 非常識で危険なことは、当然のように関わりのないように避けて通ってきて
いました。
 しかし現実の今の自分は、明らかに一触即発的な危険な境遇に、自らの意思
ではどうすることもできずに、この身を浸らせてしまっています。
 何事にも慎重なはずだった僕でしたが、義母、加奈子、妻の由美を含めると、
三人の女性に僕一人が糸を縺れさせるように絡み、その場凌ぎ的に虚構に近い
愛を振り撒いている…そんな風に思えるのでした。
 列車はすでにトンネルだらけの地域に入ったようで、暗くなった窓に顔を向
けると、自分でもわかるくらいに萎れた覇気のない顔が映って見えました。
 ふと、僕の頭の中に、中島みゆきの「糸」の歌詞フレーズが浮かんできてい
ました。
 縦の糸はあなた、横の糸は私…。
 今の自分の周りには、紡ぐのが難しい斜めの糸が何本か錯綜しているのは明
白でした。
 この北国への旅も、加奈子のこちらでの新たな再起を確認して、安堵して彼
女の幸せを願えたらという、都合のいい魂胆みたいなものを僕は心の中であわ
よくばと期待していたのです。
 そんな僕の身勝手な淡い期待は、加奈子の祖母と叔父の、三人の血族の間の
爛れた肉欲関係を聞かされて、脆くも雲散霧消し僕はただ驚愕の境地に引きず
り込まれただけでした。
 加奈子の叔父と祖母がどういう性格の人物なのか知る由もないことですが、
雪国のおそらくは過疎に近い田舎で、七十四歳の母と五十を過ぎた息子が、不
条理な肉欲関係を続けている情景の生々しさは、過度に卑猥な妄想力を働かせ
過ぎた僕自身の愚かさもあるのかも知れませんが、心に受けた衝撃は決して小
さくはないものでした。
 さらにそこに姪であり孫娘になる加奈子が、図らずも複雑に絡んでしまった
ことは、僕の驚愕を一層増幅させたのはいうまでもないことでした。
 そんな醜悪非道な環境の中で、加奈子の幸せを願うこと自体があり得ない話
で、彼とは女が一度は逃げ延びた北国の街を出ることは、至極当然の結論なの
でした。
 深い傷心の加奈子に、もっと違う場所に行けば?とは、さすがに保身的な僕
にもいえない台詞でした。
 加奈子が同じ街に戻ったら、また大きな波風がきっと立つだろうと、という
予感以上のものを、僕は心密かに感じていました。
 やはりこの旅で加奈子に会った時、僕ははしたない欲情に負けることなく、
もっと毅然とした態度をとるべきなのでした。
 例え加奈子に深い恨みを買うことになるとしても、はっきりと別離の宣言を
自分はするべきだったという悔恨だけが残っていました。
 そういうことからして、自分が今置かれている立場の危うさを、僕はつくづ
くと思い知り、痛感させられていました。
 そして病に伏す友からの、あまりに悲劇的過ぎる衝撃の告白。
 車窓の外の景色を真っ白に染めている雪とは真逆に、どす黒く澱み荒んだ自
分自身。
 何とも重きに過ぎた旅の終わりに、僕の脳裏に浮かんだのは、妻の由美では
なく、義母の亜紀子の顔でした。
 矢も盾も堪らぬ思いで、僕は携帯を手に取っていました。
 帰宅の時間を由美と義母の二人に、同じ文言でメールした後、義母にだけ引
き続いて、
 (亜紀子、疲れた旅だった)
 と追伸的に書き足し送信しました。
 ほどなくして由美からは、
 (了解、お疲れ様。私は明日がバレーの練習試合があるのと、今夜も同僚と
の食事会で、あなたのお迎えできないけど、ゆっくり休んでて)
 という絵文字を駆使した返信があり、少し遅れて義母からも返信がありまし
た。
 (何かあったの?)
 たったそれだけの短い文言でしたが、僕には義母の案ずるような愁いのある
顔が、携帯の小さな画面にありありと映り出ているように見えました。
 僕の左手の親指は、また即座に目まぐるしく動いていました。
 (見舞いに行った友人がね、重度の癌なんだって…。病室にいる時にいわず
に、僕が駅に向かった時に携帯でいきなり告げてきたんだよ。僕は戻れなかっ
た…)
 加奈子とのことは、さすがに書くことはできませんでした。
 (あなたの同級生ならまだお若いのに、お気の毒ね…)
 (病院に戻れなかったのは、何か、のんべんだらりと生きている自分が恥ず
かしかったからかも知れない)
 (恥ずかしいのは私。あなたを苦しめている…)
 (早く帰って亜紀子を思い切り抱きたい!)
 その文言をうった後、義母からのメールが途絶えました。
 いつの間にか車窓の外の景色が一変していて、真っ白な雪景色がどこかから
消え、薄暮の市街地の光景が長く続いていました。
 新幹線を下車する少し前、唐突に義母からのメールが届きました。
 (あなたを苦しめているのは…やっぱり私。でも離れられない。ごめんなさ
い…)
 あれほど重きに過ぎた旅に落胆していた僕の心に、いきなり閃光のような明
るい光を注ぐ義母からのメール文でした。
 何となく陰鬱な気持ちでいた今の僕が一番欲しかった、義母からの言葉でし
た。
 寒い雪国で冷やされた僕の身体の中の血液が、一気にほの温かく和んできて
いました。
 (間もなく新幹線下車予定。明日は日曜日)
 (お気をつけて…)
 新幹線を下車し私鉄を乗り継いで、終点駅からタクシーで家に辿り着いたの
は、あたりがすっかり暗くなった七時前でした。
 玄関のチャイムボタンを押すと、中のほうで小さな足音が聞こえ、ドアが開
いて小柄な眼鏡姿の義母が、白い歯を見せて立っていてくれました。
 「おかえりなさい…」
 襟の大きな白いタートルネックのセーターに濃いグレーのカーディガンを羽
織り、厚い布地の色の濃い長いスカート姿に、僕はただいまをいうのも忘れ、
少しの間うっとりと見とれたように玄関口に立ち竦みました。
 「寒かったでしょ?」
 理知的な赤い唇と、綺麗な歯並びの中から出た義母の何気のない言葉にも、
僕の心はひどく感動していたのです。
 「あ、ああ…ただいま」
 ようやく我に返ったように、慌てた素振りで言葉を返した僕を義母は少し不
思議そうな顔をして見ながら、
 「由美から連絡いってるでしょ?二人だけのお鍋よ」
 とそういってダイニングのほうに戻っていきました。
 暖房の効いた明るいダイニングに入ると、玄関では感じなかった何か懐かし
い愛着のある匂いが、食卓の上で湯気を立てている鍋の匂いと相俟って僕の鼻
腔を心地よく擽りました。
 「ビールか何か飲む?」
 と冷蔵庫の前に立つ義母が声をかけてきました。
 「あ、ああ…うん」
 まるで他人の家に来ているような戸惑いぶりで、僕はまた頓珍漢な返答をし
ていました。
 「どうしたの?おかしい…」
 ビール瓶を手にした義母が、本当に可笑しそうな笑顔を見せて近づいてきて
いました。
 「今日は由美もいないから、隣りに座っていい?」
 色白の顔をかすかに朱に染めながら、義母は少し気恥ずかしげにいってきま
した。
 「あ、ああ…そうして。亜紀子の側で美味しくビール飲みたい」
 僕はどうにか平静を戻してダウンジャケットを脱ぎ、椅子に座り込みました。
 いつもは由美が座る椅子に義母は少し恥らいながら座り、僕に冷えたビール
を注いでくれました。
 あまり飲めない義母でしたが、私も少しだけ、とはにかむようにいったので
ビールを注いでやり、取り敢えず僕の無事の帰還をということで、笑顔で乾杯
をしました。
 「お友達、お気の毒ね。癌って…?」
 「うん、膵臓癌っていってたけど…」
 「お若いのにね…ご結婚は?」
 「まだしてなかった…」
 コップ半分だけのビールで義母の顔は朱色から、熟した柿色のように赤く染
まっていました。
 鍋は僕の好きな味噌鍋でした。
 「昨日のテレビでは新潟のほうはひどい大雪だっていってたけど、大丈夫だ
ったの?」
 「うん、雪はすごかったよ。でも街歩いてる人たちは、こちらが騒ぐほど気
にしてない感じだったね」
 「そう、私は身体小さくて細いから、寒いところは骨身に凍みるから住めな
いわ。この前の日光でも寒かったもの」
 「雪は多かったけど、寒さはそうでもなかったなぁ」
 そんな他愛のない会話が続いた途中でした。
 僕がうっかり手を滑らせ、持っていたレンゲを床に落としてしまい、それを
拾おうとした僕と、一緒に動いた義母の身体が同時に前屈みになって、肩と肩
がぶつかり、そのはずみで彼女が身体のバランスを崩したので、僕が手で支え
ようと抱き止めたのです。
 片方は義母の腕を、そしてもう一方は彼女の胸に当たっていました。
 思わず二人は顔を見合わせ、義母のほうから離れようとしたのを僕が腕を掴
んだまま離そうとはしませんでした。
 義母の胸に添え当てた手もそのままにして、僕は義母の顔に視線を向けまし
た。
 義母の乳房の小さな膨らみの感触が、僕の手に服地を通して柔らかく伝わっ
てきていました。
 見合わせた義母の眼鏡の奥の切れ長の目が、激しく泳ぎ戸惑っているのがわ
かりました。
 そのまま義母のか細い身体を引き寄せるようにして、椅子に座った自分の太
腿の上に載せると、改めて両腕で彼女を強く抱き締めました。
 「お、お鍋があるから、危ないわ…」
 そういって義母は、まるで小さな子供がむずかるように肩を揺らせてきまし
たが、それほどに強い拒否反応ではありませんでした。
 「亜紀子…キスしたい」
 僕の顔のすぐ下に、恥ずかしげに怯えた表情の義母の小さな顔があり、僕が
そういうと、
 「何か向こうであったの?」
 と鋭い問いかけをしてきたのでした。
 「何もないさ。…どうしてそんなこと聞く?」
 「メールでも疲れたって…」
 「新潟は新幹線では近くなってるけど、やっぱり空気も何もかもが違う。降
っていた雪のせいだけじゃなく、とても遠いところへ来たと思った…」
 「お友達のご不幸以外にも、あなたに何かあったのかしらって…」
 「亜紀子が夢の中でも、とても遠かったよ」
 「夢、見てくれたの?」
 「どうかな?…キスしたい」
 そういった後、僕は義母の顔に顔を近づけていきました。
 唇と唇が触れ合う寸前に、義母が小さく吐いた息の匂いが僕の鼻腔をまた心
地よく刺激してきました。
 閉じられた唇の中で、義母の歯の奥に潜んでいた小さな舌を、僕の舌が素早
く捉えました。
 しばらくすると義母の腕が、僕の首筋に巻きついてきていました。
 椅子に座ったままでの、僕と義母の抱擁は長く続きました。
 義母の舌を飽きることなく弄びながら、僕は頭の中であらゆる思考を錯綜さ
せていました。
 このまま義母を彼女の寝室まで連れ込んで行こうかとか、居間のソファの上
でとかの不埒な思考が走り巡っていました。
 しかし、好事魔多しという言葉がここで適切なのかどうかはわかりませんが、
僕の携帯のメール着信音が唐突に鳴り響いたのです。
 それも妻の由美専用の着メロでした。
 慌てて開くと、同僚との食事会が早く済みそうなので、後一時間ほどで帰宅
するという連絡でした。
 少しの間を置いて、義母の携帯にも由美からの同じ内容のメールが届きまし
た。
 「やっぱり今日はこんな一日だったんだな…」
 と僕は独り言のように小さく呟いた後、
 「僕たちの楽しみは明日だね?」
 と義母のほうに目を向けていって、苦笑いを浮かべました。
 そう遠くない内にこの街へ戻るといっていた加奈子との、微妙に中途半端な
別離があり、友人からの悲し過ぎる告白を聞かされたりで、かてて加えて待ち
望んだ義母との抱擁にも水を差され、何ともほろ苦いやりきれなさの残る一日
だったような気がしました。
 「お風呂入れてくるわね…」
 少し乱れかかっていた身なりを整えるようにしながら、義母はダイニングを
出て行きました。
 何か本当に憤懣やる方のない、僕の一日が過ぎようとしていました…。

   続く


(筆者付記)
旅情編を終わらせ、完結編に向けての、もう一山二山の難題が、浩二と義母の
間に生じますので、それから…というサブを補足してもう少し頑張らせていた
だきますので、よろしくお願いします。
何分病み上がりの身であり、時に遅筆する場合もあるかも知れませんが、どう
かご容赦願います。
これからもたくさんの方の、ご批評ご指摘にも十分に傾聴していきたいと考え
ていますので、またご意見なりご感想もお願いいたします。
         筆者   浩二
 
 
2015/11/17 01:13:28(atUuUJ8o)
22
投稿者: kkk
いろいろな出会いがあると言う事ですよね。
それも色事で・・・、この後の2時間くらいが・・何があったのかな~。
亜紀子さんも敏感ですね~女性は皆そうなのかな?
帰ってから、なんと言って回避するんだろうか・・・と気になってしまいます。
15/12/12 05:45 (SveiB072)
23
投稿者: コウジ
上本佐知子の夫の交通事故死については、警察も事故そのものの事象は、国道を走って
くる大型トラックの前に、ふらふらと酩酊状態で飛び出してきた彼女の夫との出会い頭の
事故と判断したようですが、事故死した人物が四年もの間、失踪していたことに少し疑念
を持っているとのことのようでした。
 加害者側の運送会社と被害者との直接的な繋がりもなく、むしろその会社は出会い頭の
事故後も、彼女の住むアパートまで役員の人間が来てくれたりして、今後の補償について
も誠意を持って対応してくれるという言質を残して帰ったとのことで、不幸な出来事の中
でかすかに安堵させられることになっているようでした。
 しかし、上本佐知子にすれば四年もの間、理由も一切わからないまま家族を捨て失踪さ
れていて、その結末が知らない街の警察からの死亡通達では、どこへもやり場のない虚無
感に囚われるのは当然のことでした。
 「…私と娘のこ四年間というのは、一体何だったのでしょうね?」
 茫然自失とした目を箪笥の上の小さな遺影に向けて、独り言のように力なく呟く上本佐
知子の、少しやつれたような蒼白なだけの顔に、僕は情けなくもかける言葉を何一つ探せ
ずにいました。
 「すみません、何もお力になってあげられない自分が、ひどくもどかしいです」
 まるで弁明口調のように、そういうのがやっとの僕でした。
 「いえ、そんなことないです。…まだほとんど何も知らない私のために、こうして駆け
つけてくれましたこと、ほんとに嬉しく、ありがたく思ってます」
 「僕は何もあなたのお力になっていないのを、ほんとに歯がゆく思ってます。でも、偶
然の出会いとはいえ、こうして知り合えたのは何かの縁かも知れません。これからのこと
で、また何かお悩みのことがあったら、いつでも連絡してください」
 「ありがとうございます。そういっていただけるだけで、もう充分ですわ」
 ふと目に入った柱時計を見ると、十時をかなり過ぎている刻限でした。
 僕のそんな目の動きや表情を見て、
 「本当に今日はありがとうございました…」
 彼女は少し乱れ加減になっていた喪服の裾を手で直し、改まったように正座の姿勢をとり、
前に両手をついて、僕のほうに深々と頭を下げてきました。
 去り難い思いを胸に隠して僕は立ち上がり、居間から玄関に続く短い廊下に出た時でした。
 僕と同時に立ち上がった上本佐知子が、僕の背中に唐突にぶつかるようにしてしがみつい
てきたのです。
 「お願いっ…帰らないでっ」
 驚いて振り返った僕の背広の両腕を、彼女が強い力で掴み取ってきていました。
 かたちよく丸く束ねた彼女の髪が、僕の顎のあたりに接し、仄かに甘い美臭が鼻先に漂い
ました。
 目を下げると、彼女の喪服の後ろ襟からかすかに覗き見える、白い背中と何本かの髪が乱
れ散ったようなうなじが、もの哀しい妖艶さが滲み出ているように見え、思わず僕はどきり
とした気持ちになっていました。
 「う、上本さん…」
 僕の胸に顔を埋め、背広の腕を強く掴み取ったまま、動こうとしない彼女に、僕は明らか
に動揺を露呈したような上ずった声で名前を呼ぶと、陶磁器のように蒼白な顔が静かに上を
向いてきました。
 今にもまた泣き出しそうなくらいに、憂いを深く湛えた、澄んだ瞳を不安げに揺らせなが
ら僕を見つめてきていました。
 思い詰めたような表情で見上げてきた彼女の顔と僕の顔の距離は、互いに吐く息の音が聞
こえそうなくらいの近さでした。
 まだ蒼白なままの彼女の細面の顔が、かすかに上に向けて突き上がり、同時に切れ長の目
が静かに閉じられるのが見えました。
 控えめな薄赤色のルージュを引いた彼女のかたちのいい唇が、僕の顔の間近まで迫ってき
ていました。
 自然に僕の顔が彼女の顔の前に沈み、そのまま唇に唇を静かに重ねていました。
 薄い照明の廊下で、僕は彼女の喪服の肩に手を置いていた手を、抱き竦めるように背中に
廻し、重ねた唇の中で舌を少し遠慮気味に柔らかく差し入れると、彼女の歯の間から滑らか
な舌先が、かすかに戸惑うような動きで僕の舌に絡みついてきました。
 僕の両腕を掴んでいた彼女の手も恐る恐るとした動きで、僕の背中に廻ってきていました。
 口の中で彼女の滑らかな舌を捉えたことで、理性のそれほど強靭ではない僕は、一気に自
制心の歯止めを失くし、それからうえた狼が餌を貪り食うように、顔を強く押しつけ荒々し
く彼女の唇を、それこそ貪り吸いました。
 つい思わず抱き竦めた上本佐知子から漂う、女として妖艶過ぎるくらいの匂いと、黒い喪
服に合わせたかのような控えめな化粧でも、美しさの際立つ憂いのある顔に、僕の脆弱な理
性は瞬く間に崩壊の憂き目にあってしまっていました。
 唇と口の中への僕の激しい愛撫に、彼女は短い呻き声を何度も洩らしながら、背中に廻し
た手の力を緩めてくることはありませんでした。
 着物姿の女性との抱擁の体験は、これが初めての僕でした。
 そんな戸惑いを隠せないまま、彼女の肩の上から背中に廻した手を、僕は不得要領な動き
で上下に組み換えたりして長く抱き締めていました。
 最初は廊下の壁を背にしていたのは僕でしたが、もつれ合うように抱き合っている内に、
いつの間にか逆になっていました。
 長く重ねていた唇から唇を離し、彼女の耳朶から仄かな朱に染まりだしている細い首筋に
かけてに、息を吹きかけるようにして舌を這わしてやると、
 「ああっ…」
 という情感の籠った喘ぎ声が、僕の耳に心地よい響きで聞こえてきました。
 官能的なその熱い声と同時に、背中に廻っていた彼女の両腕が、僕の首のあたりに強く巻
きつけられてきました。
 闇雲に彼女の喪服の背中に手を這わせていた僕でしたが、もう身体と気持ちの昂まりを制
御できなくなってしまっていて、遮二無二、片方の手が焦れたような動きで、彼女の喪服の
帯の下に向かって下りていました。
 片方の腕で彼女の背中を抱き締めながら、深く折り重なっている喪服の前裾を、僕は強引
に割り開き、手の先を中にこじ入れました。
 「あっ…」
 幾枚かの布地を掻き分けて、僕の手の先が彼女の太腿のまるで柔らかい硝子の表面のよう
な滑らかな肌の感触を捉えた時、下半身を捩じらせるようにして、彼女が小さな驚きの声を
洩らしました。
 慌てたように閉じてきた彼女の太腿は、滑るという形容がすぐに思い浮かんだほどの艶や
かな感触でした。
 恥らうように全身を捩じらせていた彼女の全身が少し屈み加減になった時、驚いたことに
僕の指の先端に、ざらりとした繊毛の予期せぬ感触がありました。
 着物を着る女性は、下着を身につけないことがあることは薄々知ってはいましたが、いき
なり彼女のその部分に指が触れたことは、僕には少なからぬ衝撃でした。
 それはどうやら彼女も同じようで、予期していなかった驚きに慌てたように、丸い腰を後
ろに引いていました。
 「あっ…あぁ」
 激しい狼狽えを露わにしたような声を彼女は洩らし、か弱げに喪服の全身をしどけなく捩
じらせてきていました。
 喪服の前裾を割って強引に潜り込んだ僕の手の先が、彼女が身を捩じらせたはずみでか、
ざらりとした感触の茂みの中のもっと深い部分にまで達していました。
 その途端に、深く潜り込んでいた僕の指先が、ぬるりとした生温かい湿りのようなものを
感じたのです。
 あっ、と思わず声を出してしまいそうになるのを必死で堪え、僕は予期せぬ驚きを胸の中
にひた隠しました。
 清廉な身繕いとしとやかな身のこなしと清楚な顔立ちの際立つこの人も、やはり生身の女
性なのだという馬鹿みたいな感慨に、一瞬、僕は浸ってしまっていました。
 それでも生温かい湿りをはっきりと捉えた僕の指の先端は、さらに彼女の股間の奥深い部
分にまで潜り込み、ついには柔肉の裂け目にまで到達していました。
 「ああっ…」
 上本佐知子の女らしい反応が、一際激しくなるのがわかりました。
 折り曲げた中指の先に、繊毛とは明らかに違う滴り濡れた柔肉の感触を僕は実感しました。
 指先だけにだったしとやかな湿りが、しとどな潤みになって僕の掌全体を濡らしてきてい
ました。
 女としてのはしたなく淫らな反応の証しを、男の僕に知られたはずの上本佐知子でしたが、
不思議なことに彼女のほうから、この羞恥から逃れようとする気配がまるで感じられないこ
とに、僕は心の中で少し意外な気がしていました。
 理性心や貞操観念は僕とは比較にならないくらいに持ち合わせているはずの彼女が、女性
として最も恥ずかしい箇所への、僕の強引で狡猾な指の愛撫に、身を捩じらせるだけの動き
で容認してきているのでした。
 そのことを僕は、彼女の自分への一つの意思表示と都合よく解釈し、さらに滴りの激しい
肉の裂け目の奥へと指を深く押し入れていました。
 心地がいいとしかいいようのない感触で、彼女のその部分は僕の指をさらに、自らの奥深
いところへ誘うように柔らかく締め付けてきていて、浅薄な僕を有頂天な気持ちにしていま
した。
 このまま居間まで彼女を抱き抱えて、愚かにも興奮しきった僕は思いを遂げたいという不
遜な思いに駆られた時でした。
 その居間のほうから突然、
 「ママ…?」
 という子供の声が耳に飛び込んできて、僕の手が彼女の喪服の裾から素早く引き抜かれま
した。
 彼女のほうの驚きと動揺はもっと激しく、僕からすぐに離れ、慌てた素振りで身繕いを整
え、髪に手をやり、一呼吸おいて、
 「はぁい…里奈」
 と返事を返し、そのまま居間の戸を開けて中に入っていきました。
 箍を外されたような思いになった僕でしたが、子供がいることをすっかり忘れてしまって
いた自分を恥じ、すぐに冷静な気持ちになり、戸の閉められた居間に向かって、
 「すみません、僕はこれで失礼します。おやすみなさい」
 と挨拶の言葉だけいって、彼女の言葉を待つことなく早々に玄関を出ました…。
 中央線乗り場のホームにある、暖かい風除室の固い椅子に腰を下ろして、長い時間、僕は
上本佐知子との不可思議で浅からぬ経緯を、心の中で時にはときめいたり、ほろ苦く苦笑し
たりしながら思い起こしていました。
 やがて黒のコートに身を包んだ上本佐知子が、探しあぐねたような顔をして風除室の戸を
開けて入ってくるのが見えたので、
 「やぁ、すみません」
 と少し間の抜けたような声を出して、椅子から立ち上がりました。
 長い髪を揺らせて彼女は、はなから申し訳なさそうな表情を一杯にして人目も憚らず、頭
を深く下げてきて、
 「ほんとにご無理をお願いしてしまったようで、申し訳ありません」
 と呻くような声でいってきました。
 「あ、あぁ、いいんです。気になさらないでください。…出ましょう」
 中にいた数人の顔が、僕と彼女のほうに集中していたので、腕を掴んで一緒に外に出ました。
 定刻通り発車した列車の自由席の、乗客の比較的少ないところに並んで座っても、まだ上本
佐知子の表情は沈みがちでした。
 「…ほんとに、女一人ってだめですね。私、あなたにお電話したこと、今も後悔してます」
 電車が走り出して、車窓の外のネオンが目立つようになった頃に、襟を立てたままのコート
の中の首を小さく振りながら、上本佐知子は重い口をようやく開いてきました。
 「あなたには何の関係もないことなのに…」
 「上本さん、申し訳ないばかりをあまりくどくいわないでください。僕から申し入れてきた
ことなんだ」
 彼女よりは年下の僕でしたが、少し叱るような口調で言葉を返しました。
 この時、僕の頭の中に何の脈絡もなしに、家を出がけの時に、不安げな顔で抱きついてきた
義母の顔が、何故か思い浮かんでいました。
 そのことは当然ひた隠して、
 「あなたがしっかりしていないと、娘さんもきっと心配を大きくされますよ。他人の僕がい
うのも何ですが、ご主人の行方不明のことは、もういいんじゃないですかねぇ…。いい思い出
だけを残しておいたら」
 と柄にもないことを口にしていました。
 「…そうですわね。実は…私も、今日の遺品の受け取りで、主人のことはきっぱりと忘れよ
うと心には決めていたんです。あの人とは六年足らずの生活でしたけど、何も私はわかってい
なかったんですもの」
 「こんなこと僕がいうと生意気ですけど、男なんて…身勝手な動物ですからね」
 僕は少し自分をも揶揄するように、車窓に目を向けて呟くようにいいました。
 甲府の駅に着いた時にはすっかり夜の気配でした。
 タクシーで甲府警察まで行き、彼女だけが警察署の玄関を潜りました。
 中まで一緒に行ってほしそうだった彼女に僕は、警察からまたあらぬ詮索を受ける可能性が
あってもいけないからと諭して、タクシーの中で待機しました。
 一時間近く待って、彼女がバッグの他に紙袋を提げて俯いた表情で出てきました。
 「遺品っていっても、私が知っているのは腕時計だけでした。免許証の入ったお財布も変わ
っていて…。後は着替えや歯ブラシやシャツとか入ったバッグだけでした」
 駅に向かうタクシーの中で、上本佐知子はやはり落胆の色を濃くした表情で、寂しげに呟く
ようにいってきました。
 彼女のその言葉に僕は何一つ言葉を返せず、黙って聞き入れるだけでした。
 言い訳ではなく、どんな慰めの言葉をいっても、彼女の何年間もの間の苦悩や悲しみを払拭
することはできないと思いました。
 夜だったこともあり甲府の「こ」の字の雰囲気にも浸れないまま、とんぼ返りで下りの中央
線に乗り込み、僕と彼女は帰路につきました。
 駅弁と温かいお茶を買い込み、車内で二人で食べた頃には、彼女もそれまでのそれまでの落
胆の顔から一転していて、
 「来る時にいったでしょ?あなたにもいわれた通り、もう私の気持ちは吹っ切れました。…
それに明るくしていないと、あなたに嫌われそうだから」
 と予想外に弾んだ声でいいながら、屈託なさげに箸を動かせていました。
 それからの彼女は悲しさや寂しさの表情は一切見せることなく、当たり障りのない話にも綺
麗な歯並びを何度か見せて微笑んだりして、悲痛な本心をひた隠すかのように饒舌になってい
ました。
 「…そういえば、前に聞いていたあなたのお住まいの町内って、私、その時にはどういうわ
けか聞き流してしまったんですけど、以前に二度ほど行ったことあるんですよ」
 「あっ、そうなんですか?」
 「ええ、私の勤める老人ホームが、在宅介護の説明会でヘルパーの私まで駆り出されて、そ
この町内の集会所で、何人かのご婦人を集めてさせていただいたことがあるんです。その時に、
随分とお骨折りやお世話になった方がいて…確か町内会の婦人部の部長さんとかで、上品な奥
様でした」
 「…………」
 「説明会のビラ配りやら、司会までテキパキとやっていただいて。私もそういうお歳になっ
たらあの人のように慎ましやかで、それでいて気品のよさをひけらかそうとしない人になれた
らと、心密かに思ったものですから、すごく印象に残ってて…お茶を一緒に飲むことがあって、
ご自分からお歳を仰ったんですけど…とてもお若く見えて、私、驚きました」
 屈託のない笑みを随所に浮かべて、思い出すように話し出した彼女の言葉に、僕は返答も相
槌すらも打てずにいました。
 上本佐知子がほとんど憧憬に近い眼差しを宙に浮かべるようにして話している人物は、間違
いなく義母の亜紀子でした。
 何という巡り合わせなのか…僕は急に喉の渇きを覚え、残っていたお茶のペットボトルの蓋
を開け、深く飲み干しましていました。
 「どうかなさったの?」
 僕が俄かに落ち着きを失くした素振りを見て、彼女はすぐに顔を窺ってきました。
 「い、いや、何でもないです。ちょっと喉渇いちゃって…」
 とどうにか平静を取り繕って、気弱な笑みを返すのがやっとでした。
 上本佐知子にその時、その人物が自分の義理の母親ということが、何故か僕は正直に話すこ
とができませんでした。
 「あなたのご町内のことで、私、何かいけないことでもいったかしら?って思いました」
 「いや、僕はまだこの歳なんで、町内会のことなんかよく知らないもので…すみません。そ
うですか、そんなこととはいえ、やっぱり縁があったんですかね?僕たち」
 話を逸らせるつもりでいった言葉に、
 「そうかも知れないですね…」
 と彼女が妙にしんみりとした声で呟くように返してきました。
 後十分ほどで下車駅に着く頃になって、僕は急に思い出したように、
 「そういえば里奈ちゃんは?一人でお留守番ですか?」
 とさりげない口調で他意なく尋ねました。
 「今日は遅くなるかも知れないと思ったものですから、いつも学校で仲良くさせてもらって
るお友達のお家に泊まりに行ってます。宿題を一緒にするとかいって…」
 清楚な横顔を俄かに朱に染めながら上本佐知子の唐突な呟きの意味に、僕は少し動揺と戸
惑いをない混ぜた声で尋ねました。
 不埒にも先日の訪問時の彼女の妖艶な喪服姿が、僕の脳裏にはしたなく浮かび出ていました。
 「学校のお友達でいつも仲良くしていただいてるお家に、宿題を一緒にするとかいって泊ま
らせてもらってますの…」
 同じように朱に染まった顔を俯けたまま、彼女は少し気恥ずかしげな表情で応えてきました。
 上本佐知子の表情が微妙に揺らぐような感じに見えたことで、鈍感な僕はそこで初めて自分
の問いかけの愚かさに気づきました。
 子供のことを尋ねたのは、僕の当然の思いから出た言葉ですが、彼女にすると僕が暗に今か
ら家を訪ねてもいいか?という意思表示をしていると理解したのかも知れないのです。
 また過日の別れ際の、気恥ずかしいあたふたの出来事が、艶かしくフラッシュバックのよう
に僕の脳裏を過ぎりました。
 腕時計に目をやると、もう九時をかなり過ぎていました。
 「上本さん、生意気いうようですが、今夜はせめてご主人の遺品と一緒に夜を過ごしてやっ
てください。…形の上ではまだご夫婦なんですから」
 と僕にはまるで不似合いな言葉をいって、女としてのかすかながらの戸惑いを見せている彼
女に思いを伝えました。
 「はい…」
 彼女はそれまで俯けていた顔を上げ、僕の目をしっかりと見つめて、しっかりとした口調で
返事してきました。
 上本佐知子とは電車を降りたホームで、笑顔で握手して別れました。
 少しばかりの心残りがあったのは事実でしたが、彼女の口から思いもかけず義母の話題が出
たことで、自分自身の気持ちが吹っ切れたような感じになっていました。
 これからまた、彼女に会えることができるだろうか?とかすかな未練を抱きながら携帯を取
り出し、もう帰宅しているはずの妻の由美にかけると着信不能状態になっていました。
 風呂かな?と何気に思いながら自宅の固定電話にダイヤルすると、すぐに相手が出ました。
 義母でした。
 「もしもし、僕だけど、今中央線を降りたとこ。十時過ぎには帰れるけど、由美はいないの
?」
 そう聞いた僕に、義母の心配げな声がすぐに返ってきました。
 「それが、七時前にまた同僚の先生たちとお食事するって電話があったのだけど…」
 「うん、それがどうかしたの?」
 「いつもなら、そんな時でも九時には帰ってくるのに、まだ帰ってないの」
 「そうなんだ。僕も今、連絡入れたんだけど繋がらなくて。先生たちと話が弾んで盛り上が
ってるのかな?」
 「それならいいんだけど…。明日、学校あるのに」
 さすがに娘のことを気遣う母親の声でしたが、何かまだ気がかりなことがあるような感じだ
ったので、それを問い質すと、
 「…それが、九時前くらいにね、一緒に部活している先生から電話があったの。由美が担任
しているクラスの生徒さんのことで尋ねたいことがあるって。…それで、私、ご一緒させても
らっているんじゃないですか?って聞いたら、五時前に部活が終わって別れたって…」
 と不安げな口調で言葉を返してきました。
 「そう…急いで帰るようにする。ご飯は済ませてきたから」
 そういって携帯を切って、僕は小走りに乗り換えホームに向かいました。
 切迫感まではなかったのですが、由美の帰宅が遅くなっていることに、僕の心の中のどこか
に小さな不安の火がポッと灯ったような気がしていました…。


      続く


(筆者付記)
年末の仕事の多忙さに追われ、投稿が遅れていますことをお詫びします。
皆様からのご意見も謹んで拝読させていただいています。話の広げ過ぎ
というご指摘も心に刻みながら、まだもう少し続けたいと考えています
ので、よろしくお願いします。

      筆者   浩二
15/12/19 00:52 (oPIvqndM)
24
投稿者: まさ
忙しい中、更新ありがとうございます。
色々、言っている方もいらっしゃいますが
私は、楽しみにしております。
最後まで、がんばって下さい!


15/12/19 11:08 (Rgboju72)
25
投稿者: コウジ
由美からの少し長文のメールが入ったのは、駅裏駐車場に着いて車に
乗り込んだ時でした。
 (連絡遅くなってごめんなさい。あなたにも前に紹介したことのある、
大学の同級生の佐野由香里のマンションに来ています。実は何日前から、
彼女から自身の離婚問題について何度も相談を受けていたの。詳しくは
ここでは書けないけど、ご主人の浮気が原因。売り言葉に買い言葉で離
婚を切り出したらしいんだけど、当人の本音は別れたくないらしくて…
今日の部活終わる頃くらいに、彼女からひどく思い詰めたような声で携
帯があったので、心配になり家に寄ったら、泣きつかれてしまって…。
情緒不安定みたいな感じだったから、母にもあなたにも連絡できなかっ
たの、ごめんなさい。今夜はどうしても泊まっていってほしいっていう
から、明日はここから学校に出ます。母にはあまり詳しいこと話さずに
外泊するっていったら、教師が…っていって叱られちゃったから、あな
たから、あなたからうまく取り成しといてね。彼女は今入浴中。…でも、
もし私が同じ立場だったらどうなるのかしら?…おやすみなさい)
 確かにその名前の彼女のことは、僕たちの結婚式にも出てくれたり、
その後も二、三度会ったりしたことがあったので記憶にありました。
 快活な性格の由美とは対称的なくらいに、しとやかそうな素振りや控
えめな喋り方が何となく印象に残っている人でした。
 結婚は僕たちより三年ほど早くしていると聞かされていました。
 それにしても僕たち夫婦が同じ日に、各々が他人のために骨を折って
いることに気づいて、由美に抱いたかすかな胸騒ぎみたいなものも、ど
こかに雲散霧消してしまい、やれやれという苦笑混じりの安堵に浸りな
がら、義母の待つ自宅に向け夜の街を車を走らせました。
 正直なところ、上本佐知子とわかれてから、僕の頭の中に妙なもやも
や感みたいな思いが燻っていました。
 僕の独りよがりかも知れませんが、別れる間際に、今夜は子供が家に
いないということを、彼女は顔を俯けたまま、細い首筋のあたりを朱に
染めて、何か気恥ずかしげにいい澱むような口調でいっていたような気
がしていました。
 先日の彼女の自宅での思わぬ一時を僕は思い起こしていました。
 帰ろうとして廊下に出た僕の背中に、帰らないで、といっていきなり
しがみついてきた彼女をそのまま抱き締めてしまい、自然なかたちで重
ね合った唇の柔らかさと仄かなルージュの甘い匂い。
 その流れのまま喪服の前裾を強引に割り開き、彼女の股間に手を
潜らせた時の、太腿の艶やかな肌触りや、下着を身につけていなかった
ことで、唐突に感じたざらりとした繊毛の感触の驚き。
 そしてその後の、清楚な容貌の彼女からは想像もできないような、夥
しく溢れ出た滴りの洗礼を掌一杯に受けた驚きは、まだ僕の記憶の中に
生々しく残っていました。
 ハンドルを握りながら、僕は身体と心の中に残ったままのもやもや感
を、帰宅したら義母の身体にぶつけようと、また身勝手で不埒な思惑を
募らせていました。
 そう思うと僕は家に着くのを待ちきれず、義母の携帯にプッシュする
と、一度目のコールが鳴ってすぐに繋がりました。
 「あぁ、僕だけど…もう、今車に乗ってるから、後十分くらいかな?」
 「おかえりなさい。…でも、あなたももう少し早く電話くれたらいいの
に。心配してたのよ」
 義母が携帯にすぐに出た理由がわかりました。
 「あぁ、ごめん、電車の中だったんで…」
 「あなただけじゃないわ。由美から連絡入ってるでしょ?…ほんとにあ
なたたちは」
 本気混じりに叱るの義母の声に、
 「メールもらったよ。友達の家に泊まるんだって。大事な相談事あると
かいってたけど、心配しなくていいんじゃない?」
 と僕は少し恐縮しながら言葉を返しました。
 「外泊なんて、自分の職業が何なのかも考えずに。ほんとに…今日のあ
なたもそうだけど、お人好しな性格も考えものね」
 「あれ、とんだとばっちりだなぁ…」
 「お夕飯は?何か食べてきたの?」
 「駅弁を」
 上本佐知子のことは、義母との間に少しばかりの面識があるとのことも
隠して、僕は意識的に話題にしないようにしていました。
 「お風呂沸かしてあるから…」
 「今夜は亜紀子の室で寝たい…」
 「また、そんなことを…」
 「だめっていっても、そうするともうきめてるけどね」
 「…お気をつけて」
 自宅の駐車場に車を止めると、玄関の外灯がすぐに点きました。
 車を降りようとした時、携帯のメール着信音がいきなり響きました。
 画面を開くと、上本佐知子からのショートメールでした。
 (今日は本当にありがとうございました。駅のホームであなたに見送ら
れた時、何故かひどく寂しい気持ちになりました。ごめんなさい)
 家の中に入る前でよかったと何故か思いながら、
 (いつかまたきっとお会いしたいです。おやすみなさい)
 と僕は短い分を素早くうって返しました。
 玄関ドアを開けると、義母が上がり口のところで出迎えてくれてました。
 「ただいま、外寒いね」
 わざとらしく明るい声でそういいながら、何故か僕は義母の目を正視で
きずにいました。
 「熱いコーヒー淹れたから飲む?」
 モスグリーンに黄色のチェック柄の入った、足首のあたりまでの暖かそ
うな生地のスカートに、白のタートルネックのセーターの上にスカートと
同系色のざっくりとしたカーディガン姿の義母が、平静を装ったかのよう
な声でいって、僕の返事を待つことなく、そのまま踵を返してダイニング
のドアの中に消えていきました。
 そのまま僕もダイニングに入ると、エアコンの暖かい空気と一緒にコー
ヒーのいい香りが漂っていました。
 僕の座った椅子の前に、香り豊かな湯気の立つコーヒーカップを置いて
くれた義母でしたが、何故か視線を合わそうとはせず、また流し台のほう
に向かい、背中を向けて水道の蛇口を捻っていました。
 しばらくの沈黙の時間の後、義母が洗い物をしながら、
 「警察のほうは何も問題はなかったの?」
 と徐に呟くような声で聞いてきました。
 「あ、あぁ、色々と聴き取りはされたみたいだけど、特に何もなく、遺
品とかも無事返してもらったみたいだよ。僕は警察署の外にいたからあれ
だけど…」
 「これから大変だわね、お子さんもおみえなのに…」
 「うん、でも結構、芯の強そうな人だから…」
 「駅でそのまま別れたの?」
 「ああ、そうだよ。あまり僕が行った意味がなかったみたいだった」
 「そんなことないわよ。女の人一人では、何かと心細いものよ。いいこ
としてあげたのよ、あなた」
 「そうなのかなぁ…何もしてあげられなかったし、気の利いたこともい
ってあげられなかったんだけどね」
 「でも…そこから先へは、もう入っていかないほうが…」
 「どうもしやしないよ。僕なんか何もできないもの」
 そういいながら、この家に入る前に上本佐知子に返信したメールのこと
を、僕は少し思い出していました。
 「あなたの性格は、いいことなんだけど誰にも優しいから…あの、野村
加奈子の時だって…」
 「……………」
 一瞬、言葉に窮した僕に、義母は洗い物の手を止めて顔を振り返らせな
がら、
 「ごめんなさい、変なこといって」
 と申し訳なさそうな声で、さらに言葉を続けてきました。
 「こんな時に、こんな場所でいうことじゃないけど…あなたのすること
が、全部気になるの」
 細いフレームの眼鏡の奥の切れ長の目が、何かを思い詰めたようにきっ
と見開いているのに、僕は少し圧倒されかけましたが、反面的に僕よりは
はるかに理性や分別に長けた妙齢の義母が、生身の女らしい嫉妬心を滲ま
せた眼差しを投げつけてきていることに、何か胸がぐっと締め付けられる
ような思いになっていました。
 そこには義理の母親と入婿という高い垣根など、もう存在していないか
のような空気が漂っていました。
 義母はすぐに自分がいった言葉に少し気恥ずかしさを覚えたのか、色白
の頬を薄赤く染めて、慌てた素振りで僕から視線を逸らしました。
 まるで少女のような恥じらいの表情を見せる義母の、かたちのいい唇の
赤いルージュが、僕にはひどく際立って見えました。
 不意に僕の身体のどこかに、そんな義母への邪心めいた欲情が妖しく芽
生えていました。
 平たくいえば、義母の身体を抱きたい、という思いが唐突に湧き出した
のです。
 「風呂、もう入れるのかな?」
 小さく生唾を一つ飲んだ後、さりげない口調で僕は義母に尋ねました。
 「えっ?ええ、もう入れるわよ」
 まだ少し狼狽え気味に応える義母の背中に向けて、
 「風呂、一緒に入ろ」
 と僕はいきなり切り出しました。
 「えっ?」
 おそらくまるで予期していなかった僕からの思いも寄らない誘いに、
義母は一瞬、言葉を失ったかのように唖然とした表情になっていました。
 「亜紀子と一緒に入りたいのさ」
 自分の正直な気持ちを臆びれることなく、僕ははっきりとした声で義
母に伝えました。
 「な、何をいいだすの?」
 義母は驚きの表情を露わにして、声を詰まらせながら言葉を返してき
ました。
 僕からの突拍子もない誘いの言葉に、カーディガンを羽織った義母の
背中と細い肩が小さく震えているのが見えました。
 さすがにその場で、はい、といえるはずもないの見越して、僕は椅子
から立ち上がり、彼女の返答を待つことなく、そのまま背を向けてドア
を開けダイニングを出ました。
 湯気の立つ温かい湯槽に全身を浸からせ、湯で顔を二、三度洗うと、
もうそれだけで一日の疲れが消える感じでした。
 つい今しがたの僕の思いも寄らない刺激的な言葉に、全身を硬直させ
た義母の、恥じらいを露わにした後姿が目に浮かびました。
 身体に湯の温もりが染み出した頃、僕は上本佐知子との甲府までの慌
ただしい電車の旅を思い起こしていました。
 風に少し乱れ加減だった彼女の長い黒髪。
 くっきりとした目鼻立ちの顔に、胸を締め付けられそうになるくらい
の憂いを漂わせた表情。
 車内で一緒に弁当を食べた時、何かの拍子でふと触れ合った細長い指
の滑らかな感触。
 綺麗な歯並びを垣間見せて、物語を朗読する女優のようなしとやかな
語り口。
 そのどれもが今も僕の脳裏に、鮮やかな記憶として残っていました。
 自分が上本佐知子に女性を感じていたのは、間違いのない事実でした。
 僕の扇情的な記憶はさらに繋がり、過日の彼女の自宅の狭くて薄暗い
廊下での秘め事にまで遡っていました。
 帰らないで、といきなり背後から彼女から抱きつかれ、その流れのま
ま重ね合った唇の柔らかな感触と、喪服の前裾を割って手を強引に潜り
込ませた時の、彼女の太腿の艶やかな肌触り。
 さらに奥に忍ばせた手に感じた、下着を身につけていなかった股間の
繊毛のざらりとした驚きの感触。
 驚きはまだ続き、その繊毛の茂みの奥から溢れ出ていた夥しい女の滴
りを掌一杯に受けた時の驚愕。
 湯の温もりとあらぬ妄想で、僕の下腹部は恥ずかしいくらいに勃起し、
全身が昇せ上りそうになっていました。
 と、その時、ドアの向こうで不意に人の動くような気配がありました。
 僕ははっと我に返り、顔に湯をぶっかけました。
 小さく聞こえる物音は、義母だというのがすぐにわかりました。
 ダイニングで、一緒に風呂へ入ろうと誘ったはずの僕のほうが何故か
狼狽えていました。
 思いつきのように誘ったのは僕でしたが、恥じらいの強い義母の来る
確率に、それほどの自信は持ててはいませんでした。
 聞こえていた物音が止み、少しの間、静寂がありました。
 ドアノブの廻る音が聞こえ、内開きのドアが静かに開きました。
 胸を片手で隠し、もう一方の手にしたタオルで股間を塞ぐようにしな
がら、義母の白い裸身が静かに入ってきました。
 「来てくれたんだ…」
 と僕は半ば唖然とした顔で短くそういって、かすかに漂う湯気の中の
義母の白過ぎる裸身に目を向けました。
 「そんなに見ないで…恥ずかしいわ」
 恥らうようにそういって義母は小柄な身体を屈め、側にあった湯桶を
手に取り、湯槽から湯を汲み出し両肩にかけていました。
 「綺麗だよ、亜紀子」
 うっすらと漂う湯気の中で雪のように白い肌に、やや伏し目がちな仕
草で湯を身体にかけている義母に、僕は正直な気持ちを伝えました。
 「もう身体洗ったの?」
 僕に見られている恥ずかしさをおし隠すように、視線を逸らしたまま
平易な口調で義母は声をかけてきていました。
 「まだ、洗ってない。亜紀子、洗ってくれる?」
 「子供じゃないんだし…」
 「子供になりたい」
 「無理ばかりいうのね…」
 「何か今日は気分がね。もやもやしてる」
 「綺麗な人と一緒だったから?」
 「そんなんじゃないよ。亜紀子とこうして家の風呂に入れるのが嬉し
いのさ」
 「こんなおばあさんなのに…」
 「そういういいかた嫌いだよ」
 少しムキになってそういって僕は湯槽からいきなり立ち上がりました。
 驚いた顔で僕を見る義母の顔のすぐ前に、僕のふしだらな下半身が晒
け出ていました。
 固く勃起した状態の僕の下半身から慌てて目を逸らそうとした義母の
小さな頭を、上から乱暴に手で押さえつけるようにして制止しました。
 「ほら、もうこんなになってる」
 それまでの子供じみた態度を僕は一変させ、獲物を襲う狡猾なハイエ
ナのような目に多分なっていたと思います。
 義母の頭を押さえつけたまま、僕は湯槽から足を外に出し、屈んだま
まの彼女の顔の前にはしたなく勃起した自分の突き出しました。
 義母のほうも僕の突然の豹変ぶりに驚いたのか、強く抗おうとはして
こず、観念したかのように切れ長の目を静かに閉じながら、顔を少し上
げ小さな唇を僕の下半身に近づけてきました。
 やがて、すでに固く屹立しきった僕のものは、義母の小さな口の中に
静かに含み入れられました。
 湯の温みとは違う生温かな温みに僕のものは包まれ、一段と硬度を増
したような感覚に僕は襲われていました。
 顔を下に向けると、僕のものを深く口の中に含み入れた義母の目を閉
じた顔が、ゆっくりとでしたが前後に動き出してきていました。
 今夜は義母とずっと長く過ごせる。
 思いもかけない浴室での義母との行為は、彼女との今からの長い夜の、
ほんのプロローグに過ぎないのだと、僕は心の中を激しくときめかせて
いました…。


      続く
15/12/28 15:43 (Zn7XBi33)
26
投稿者: kkk
義母さんと過ごしている時間の会話に刺激があっていいですね。
従順で恥じらいを持ってる彼女とのお風呂ですか・・いいですね~。
お風呂の情景を想像しながら拝読させて頂きました。

風呂はこれで終わりでしょうか?・・・まだまだありそうな・・。
家の中はお二人で、奥様もいないとのことで・・裸でも良いのかな~と、続編をお待ちしています。
15/12/29 05:17 (IM9k0i9s)
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