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義母・亜紀子  
カテゴリ: 官能小説の館    掲示板名:近親相姦 官能小説   
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1:義母・亜紀子  
投稿者: コウジ
(義家族との体験―義母・亜紀子より続く)

 …青木との情欲を赤裸々に綴った義母の日記は、その
後、十日から二週間ほどの間隔をおいて生々しく書き記
されていました。
 義母の日記から青木という男を想像すると、僕とはま
るで異質の人物のようで、体型的にも無駄な贅肉のない
精悍さがあり、自分の強靭な身体能力と、普通人とは少
し違う事の善し悪しの判断能力を度外視したような、も
っと動物的な感覚と感性で生き抜いてきているというし
たたかさのようなものがあり、おそらく義母の精錬で聡
明実直な人生ではほとんど遭遇することのない、ある意
味、破天荒な人物のように思いました。
 何となく決められた階段を一歩ずつ上がり、安心と安
全と安泰の道を、ただ無機的に生きてきていただけの自
分にはないものだらけのような、そんな男のような気が
しました。
 義母の日記から青木が発した言葉の一つ二つを抜粋し
ても、彼が自分の感性と感覚だけで生き抜いてきてたと
いうのが窺い知れました。
 「なぁ、先生よ。その歳でも俺みたいな男に抱かれて
、あんた、いい気持ちだろ?男と女ってのはよ、理屈じゃ
ねぇんだよ」
 とか、
 「あんた、さぞかし立派な教育を受けて、真面目一筋
に生きてきたんだろがよ、男と女の間で、これだけ本心
で気持ちよく楽しめるてこと知らねぇのも、一度きりの
人生でそれはそれで不幸なことだと思うぜ。先生は俺に
会えてよかったよ」
 などという言葉で、不遜にも青木は元聖職者の義母を、
強靭な体力を活かした老獪な手練手管で、いとも短い期
間で屈服に追い込み、陥落させていたのでした。
 義母が青木に初めて尻穴を犯されたのは、四度目の逢
瀬の時のようで、そのあたりの件は次の通りでした。

 …青木に肩を抱かれ、いつものホテルのいつもの室に
入り、最初に私は彼の前に膝まづく。
 青木のズボンとトランクスを脱がし下ろして、汗と男
の体臭の強く入り混じったものを口で愛撫するのだ。
 そうしろ、という青木の命令だった。
 そしていつものように丸いベッドに投げ出され、衣服
を乱暴に剥ぎ取られ、はしたない愛欲の行為に淫れ堕ち
る。
 あるところで、というよりも青木と二人でホテルの室
のドアを開けて入った時あたりから、私は自らの意志と
理性を失くし、愚かで淫乱な女になり下がり、はしたな
くあられもない喘ぎの声を上げ、彼の背中にしがみつい
ていくのだ。
 女としての自分自身に、これほどに下品で卑猥な魔性
の心が潜んでいたことを、あろうことか自分を陵辱した
男によって知らされたのが悔しく哀しかった。
 私はしかし、まだ決して全ての面で青木には屈してい
ない、と強がりではなく心の中では思っていた。
 少なくとも気持ちの中に、彼への思慕的な思いは断じ
てなかった。
 年甲斐もなく消え入りたいくらいに恥ずかしいことだ
が、自らの意思とは関係なく、ただ動物の牝として屈し
ているだけなのだ、といつも心の中で私は叫んでいた。
 その夜も、私はベッドの中央で仰向けにされ、青木の
強いつらぬきを受けていた。
 つらぬかれながら彼の肩にはしたなくしがみつき、ふ
と目を開けると鏡張りの天井に、両足を淫らに開き、赤
黒く引き締まった肌をした男に覆い被さられている無様
な痴態を晒け出している自分がいて、愕然とした思いに
なるのだった。
 天井の鏡に妖しく無様に映る自分自身の痴態は、激し
い羞恥と同時に、身体のどこか奥底にある熱い昂まりの
坩堝を刺激し、意思とは裏腹に青木の背中にしがみつい
ていくのだった。
 青木の身体が予告もなく不意に私から離れた。
 昂まりくる快感に不覚ながらも酔い痴れようとしてい
た私の身体を、青木はいとも容易く起こし、俯けに這わ
した。
 四つん這いの姿勢で、私は再びのつらぬきを受け、叫
び声のような咆哮を上げて、首を激しくうち震わせた。
 と、腰の律動を続けながら青木の手の指が、私の臀部
の窄まりのあたりを不意になぞってきていた。
 これまでにも一度もなかったことで、予期していなか
った行為だった。
 青木の固い指先が、私のその窄まりゆっくりとだが突
き刺そうとしてきているのがわかり、私は驚き慌て慄い
た。
 直感的に青木の魂胆がわかった。
 臀部のその小さな窄まりは、排泄だけの機能と疑うこ
とのなかった私だったが、最初に青木の指を感じた時、
思わず背筋に鋭く電流のようなものが走るのを感じたの
だ。
 「い、いやっ…」
 私の慄きは頂点に達し、慌てふためくように前ずさり
に青木から逃げようとした。
 しかし私の逃亡は、青木の手でいとも容易く阻止され
た。
 「ああっ…」
 青木のつらぬきを三たび受け、私は儚く声を上げて悶
えた。
 もう逃れるすべはなく、私の窄まりへの指での愛撫も
続くこととなった。
 唐突にひんやりとした粘液のようなものが青木の手で、
臀部の窄まりのあたりに塗り込まれるのを私は感じた。
 それは乳液のような粘い感触だった。
 「ああっ…だ、だめっ…いやぁっ」
 青木の指の先端が私の窄まりの中に埋没してきたのが
わかり、これまで以上の高い声を私は上げた。
 急激に私を襲った、声を出さずにはいられないくらい
の、初めての激し過ぎる体感だった。
 ぬめぬめとした感触の中で青木の指が、私の窄まりを
出たり入ったりしているのがわかった。
 全身を激しくうち震わせるような体感は長く続いた。
 やがて青木の指が抜け、間髪をおくことなく、私の身
体をつらぬいていたものが、指の代わりに窄まりの先端
に突き当てられるのがわかった。
 「ああっ…いやっ…い、いたいっ」
 身体をを引き裂かれるような激痛が一瞬全身に走った。
 まるで違う部分に青木のものが、強烈な圧迫感を伴っ
て押し入ってきているのを私は実感させられていた。
 そして私を襲った激痛は長くはなかった。
 激痛のすぐ後に、生まれて初めての愉悦的な深い体感
が、私の身体をとって変わって支配していた。
 恥ずかしいことだったが、堪えのようのない悦びだっ
た。
 「ああっ…お、犯されて…私、犯されてるっ」
 あられもない言葉を私は叫んでいた。
 「し、死ぬっ…死んじゃうっ…ああっ」
 青木の腰の律動はまるで勝ち誇ったようにそれから長
く続き、私は意識をどこかで遠のかせていた。

 そこまでを読み終えた僕の心の中に、ある思いが湧き
上がってきていました。
 それは失望感に似たような感情でしたが、それはもし
かして裏返していうと、青木という会ったこともない男
に対しての、僕の嫉妬心だったのかも知れません。
 今朝、義母を車に乗せた時の妙に嬉しかった気分が半
減したような気持ちになり、もう続けて義母の日記を読
みたいという気持ちが何故か失せていました。
 何となく白けたような嫌な気分になり、室を一度出よ
うとしていた時、義母の机の上に置いていた携帯がけた
たましく鳴り響きました。
 着信メロディで、それが義母からだというのがすぐわ
かりました。
 「もしもし、浩二さん?」
 僕の不埒な行いを何も知らない、朝の車の中と同じよ
うな明るい義母の声でした。
 「亜紀子、どうしたの?」
 嫌な日記を読んだ気分のままの声で聞くと、
 「雨が急に降り出してきてね、バザーが中止になった
の。もう少しで片付け終わって、お昼には帰れるわ」
 まるでバザー会場にいるよりは、僕と一緒にいるほう
が嬉しいといわんばかりの、無邪気で浮き浮きとしたよ
うな義母の声でした。
 ある考えが咄嗟に僕の頭に浮かびました。
 「すぐに迎えに行くよ、亜紀子。外で一緒にご飯食べ
よう」
 とそういって僕は、
 「でも…」
 と言葉を濁す義母を制して、
 「親子だからいいじゃない」
 といって一方的に携帯を切りました。
 朝、義母を降ろした駅裏公園の駐車場で彼女を乗せる
と、そのまま郊外に向けて車を走らせました。
 「最近できたばかりなんだけど、美味しい讃岐うどん
の店があるんだよ」
 「そう…」
 きっと初めてなはずの僕と二人での外食に、義母はま
だ少し浮かなさそうな顔つきで、しきりに眼鏡の細いフ
レームに手をやっていました。
 義理とはいえ親と子ですから、誰に憚ることもないな
いはずですが、やはり義母は僕との特殊な関係をどこか
で意識しているようでした。
 讃岐うどんを二人で食べるというのが、僕の目的では
ありませんでした。
 そのうどん店は郊外を少し走りきったところにありま
した。
 店の中は休日のせいもあってそこそこに混んでいまし
たが、長く待つこともなく席に座れることができました。
 釜揚げうどんを二人で食べている時、
 「僕たちのこと、みんなどう見てるんだろうね」
 と僕が義母に声をかけると、彼女は色白の顔を見る間
に朱色に染め、深く俯いてしまっていました。
 そして帰路。
 行く時に事前に目星を付けていた交差点を、僕はウイ
ンカーランプを点けないまま左折しました。
 幅五、六メートルほどの農面用道路のすぐ向こうに、
大きな看板の立つ建物が見えました。
 その看板には、夜なら点いているネオンの細いガラス
管が縦横無尽に走るようにへばりついていました。
 地中海にある都市の名がホテルの名前になっていまし
た。
 横目で義母の顔を見ると、驚きの表情が露わになって
いて、見る間に蒼白になり強張ってきているのがわかり
ました。
 「どこに行くの?」
 と義母の慄いているような固い声を僕は無視して、車
を目の前の建物の入口に進入しました。
 「ね、何?…何するの?浩二さんっ」
 大きなシャッターの中へ車をねじ込むように入れると、
薄暗い空気の中で義母は、驚きから怒りの表情に一変さ
せているのがわかりました。
 「亜紀子を抱きたくなってきた」
 そういって僕は義母の震える肩に手を置きました。
 「いやっ…いやよ、こんなところでっ」
 義母は僕の手を振り切るように肩を強く揺すり、明ら
かに憤怒の表情を満面に滲ませていました。
 すったもんだのやり取りが薄暗い車内でしばらく続き
ましたが、
 「亜紀子…ここが青木との思い出の場所だからか?」
 という僕の非情で冷徹な殺し文句で、義母は言葉を失
くし、哀しい表情を一杯にして車を降りました。
 このことは以前に義母に青木との情交写真を見せて詰
問した時に、ホテルでの逢瀬を彼女自身の口から白状さ
せていましたが、実際の場所がここだということは、僕
は知らぬふりを決め込んでいて、日記のことは億尾にも
出さずにました。
 このホテルがまさしく青木との情交の場であるという
ことは、従って義母しか知っていない事実になっていた
のでした。
 人気のないロビーで室内写真付きのボードで三階にあ
る丸いベッドの室を見つけると、僕はさも何も知らぬ気
で使用開始ボタンを押しました。
 義母には堪え難い僕の選択だったと思いました。
 義母の日記の通りの室でした。
 丸い大きなベッド、ガラス越しに丸見えの浴室、そし
て見上げると天井一面が鏡張り。
 車を降りてから義母はずっと蒼白な顔で、無言で沈鬱
な表情のままでした。
 午前に読んだばかりの義母の日記の一文を僕は思い起
こしていました。
 (…室に入ると青木の前に私は膝まづく。そうしろ、と
いう青木の命令だった)
 内ドアの入口付近で沈鬱に萎れて立ち竦む義母の前に
僕は進み出ました。
 固く縮みきっている義母の肩を抱き、そのまま下へ押
し下げるようにしました。
 義母の膝が力なく折れ床に膝まづきました。
 四年前の青木のことを義母が思い出しているのかどう
かは、その時の僕にはわかってはいませんでした。
 僕が自分の手でズボンのベルトを外しトランクスと一
緒に脱がし下ろすと、義母の目が小さく驚くのが見えま
した。
 義母の側に寄り彼女の肩を抱いた時に、かすかに鼻腔
を刺激した心地よい匂いで、僕の下半身のものは一気に
勃起状態になっていました。
 真横にそそり伸びた僕のものの先端の近くに、まだ蒼
白なままの義母の顔がありました。
 義母のうなだれていた細い両肩が何かを諦めたように、
さらに小さく竦み、握り持っていたバッグから離れた手
が、僕の屹立したものに触れてきました。
 やがて僕のものは義母の小さな口の中に埋没しました。
 義母は眼鏡の奥の目を深く閉じ、何かを振り切るかの
ように一心不乱に僕のものを、小さな口で長く愛撫し続
けました。
 義母の熱心で丹念な愛撫に、不覚にも暴発寸前という
ところまで追い込まれた僕は、途中で自分から彼女から
離れ、そのまま四年前に青木がしたように、小さな身体
を抱え上げベッドに投げ下ろしました。
 義母の衣服の全てを脱がし全裸にし、鏡張りの天井が
彼女の視線に入るように、ベッドに仰向けにしました。
 すぐに義母の眼鏡の奥の目に、驚愕の表情が浮かびま
した。
 「綺麗だよ、亜紀子」
 そう優しい声でいって、僕は義母の真横に添い寝しま
した。
 「ひどい人…」
 自然な動きで義母の片手が僕の首に巻きついてきてい
ました。
 「何が…?」
 「知らない…」
 「こういうところって、僕もあまり慣れてないけど、
女の人を殊更に綺麗に見せるね」
 「………‥」
 「由美と…結婚前に一度だけ入ったことある」
 「由美のことはいわないで…」
 「妬ける?」
 「そんなじゃない…嫌なの」
 「青木のこと思い出さない?」
 そこで僕は初めて青木のことを口にしましたが、義母
はその言葉を遮るように、
 「抱いてっ…」
 といいながら両腕を僕の首に巻きつけてきました。
 僕もすでに素っ裸になっていて、体験のほとんどない
といっていい妖しい空間の中にいることと、義母からの
かすかな女の匂いで昂まりは一気に増幅していました。
 「ああっ…こ、浩二さんっ…いいっ」
 僕の固い屹立が義母の身体に突き刺さった時、義母も
一気に昂まりが増幅されたのか、いつにない激しい悶え
の声を上げて首に巻きつけた手に力を込めてきていまし
た。
 「亜紀子、素敵だ…」
 「ああ…浩二さん、私も…もうどうなってもいい」
 本当の恋人同士が愛し合うように、僕と義母の身体は
丸いベッドで激しく抱擁し合い、幾度となく唇を深く長
く重ね合いして、めくるめく絶頂の熱く大きな渦の中に
沈み堕ちたのでした…。
 「…私がお昼前に電話入れた時から、こんなこと考え
てたの?」
 お互いが茫然自失とした時間の中で、義母が僕に尋ね
てきました。
 「えっ?…あっ…まぁ、そうだったかも」
 「悪い人…」
 「今日は…もう我慢の日だと思ってたから」
 「…私もよ…バザーが中止と決まった時ね…すぐに、
浩二さんの顔が浮かんだ」
 「それは嬉しいことだ」
 「お昼から二人でいれるって…」
 「抱かれたいって思ってた?」
 「いや…そんな」
 「なんだ、違うのか」
 「…少しは…」
 「僕はすぐに思ったよ。だからここに来た」
 こんなところに来たいと考えた僕の本当の動機、つま
りは義母の日記に触発されたとは、さすがに彼女には正
直にはいえませんでした。
 「そういえば亜紀子、例の自治会長の小村さんだっけ?
あの人とのこと、前に聞いた時はぐらかされたけど…何
かあるんじゃないの?」
 不意に話題を変えて、以前から気になっていたことを
義母に尋ねた僕でしたが、
 「な、何もないわ…」
 とまたしても素っ気なく冷ややかに返答されたことで、
そのことへの僕の疑心暗鬼はいやが上にも増幅するばか
りでした…。

         続く
 
2015/08/05 01:24:49(V6/fPNrC)
7
投稿者: コウジ
それから数日後の我が家の夕餉の食卓に、久しぶ
りに三人の顔が揃いました。
 学校の体育館が緊急の床工事か何かで使えなくな
り、部活動ができなくなった妻の由美が早く帰宅し
ていたのです。
 義母の特製の温かい豆腐鍋に舌鼓みをうちながら、
義母、妻、僕の他愛のない会話が続きます。
 こういう時の会話の主導権は大抵、妻の由美にな
ります。
 「…陸上部の男子生徒がね、体育館でふざけて砲
丸の玉転がせて遊んでたらしいの、昨日」
 「それでドスンと床に落としたってこと?」
 「昨日は雨でグラウンドが使えなくて、体育館が
部活の生徒たちでごった返してたのに、まぁ、生徒
に怪我なくてよかったんだけど、陸上部の先生、職
員室でも平謝りよ」
 「先生も大変だね…」
 僕と由美との掛け合いを、義母が静かに聞き入る
というのが通常の流れでした。
 それは僕と義母が特殊な関係になっても、特段の
変化はありませんでした。
 「由美の顔見るのがつらいの…」
 と以前に布団の中で二人でいた時、義母はそうい
って表情を曇らせたりしたのですが、家族の安寧の
ためにと、身勝手な僕がいった『美しい嘘』という
ことを、彼女は健気に守り通しているようでした。
 妻の由美はO型血液のせいでもないのでしょうが、
どちらかというと鷹揚な性格で、些細なことは気に
も止めず、人を疑うということもあまり知らない感
じでした。
 「そういえばね…あまりこのことは話したらいけ
ないんだけど…前に女子生徒の援交問題ってあった
でしょ?」
 由美の話はいつも急に変わったりするのは、僕も
義母も慣れっこでした。
 「うん?」
 「やっぱり、その子の家庭が複雑になってたらし
いの」
 僕と義母の顔がほとんど同時に、由美のほうに向
けられました。
 「ご両親の間で離婚問題が持ち上がっていて、お
母さんが家を出てってるらしいの」
 義母もおそらく同じ思いだっと思いますが、由美
の話は次第に嫌な方向へ進みかけそうな感じでした。
 「その子のお母さん、不倫か何かで家出してるみ
たい」
 僕の斜め前の義母の顔が見る間に曇り出している
のがわかりました。
 しかし、ここで由美の話を遮断する口実を、僕は
持ち合わせてはいませんでした。
 「その子のお母さんって、私と一つ違いの年齢ら
しいわ…何か、若い彼氏との駆け落ちみたいらしい
わ」
 違う意味で、僕と義母には耳と胸の痛む話でした。
 「娘さん、可哀想だね…」
 あまり深刻な顔をして黙りこくってしまうのも気
が引けて、僕は溜め息混じりに少し上ずった声で言
葉を挟みました。
 「大人の勝手な揉め事でいつも被害に合うのは、
子供なのよね」
 義母はそれまでずっと終始無言のままでしたが、
 「…そういうお話は、例え身内同士の場でもあ
まりするものじゃないわよ」
 と娘を嗜める親としての言葉を発しましたが、
心なしか気弱げで力のない響きに、僕には聞こえ
ました。
 「はぁい、ごめんなさい」
 由美は舌をぺろりと出して、幼女のように素直
に頭を下げていました。
 僕も少し以上に、気もそぞろでない気分で、義
母の特製の豆腐鍋の旨さも、正直なところ半減し
たような気分でした。
 その夜、夫婦の寝室でもう一つ薄氷を踏むよう
な思いに、僕は遭遇する羽目になりました。
 由美が食卓での話をまた持ち出してきて、あれ
これと思いの丈を話し出したのです。
 ほとんど僕は聞き役で、短い相槌をうつだけでし
たが、
 「不倫は絶対に許せない」
と語気を強めて僕にいった言葉に、風呂上りの身体
の肝が大きく冷え込んだのは間違いのない事実です。
 そして就寝前の闇の中で、由美がぽつりと独り言
のようにいった言葉に、僕はまた違う意味で胸がひ
どく痛んだのです。
 「お母さん…最近、元気ないように見えるんだけ
ど…娘としてもっと私がかまってやったほうがいい
のかしら…?」
 そして週末の金曜日の午後でした。
 僕の職場へある男から電話がありました。
 もう何年も会っていない、中学時代の同級生の小
村武で、義母も知っているあの町内会長の一人息子
です。
 たしか今はどこかの芸能プロダクションみたいな
ところに勤めているとのことのようですが、交流も
ほとんどなかったので、それ以上のことは詳しくは
わかりませんでした。
 同級生としての久方ぶりの挨拶のやり取りの後、
小村のほうから唐突に、
 「話変わるけどさ、浩二、お前…」
 とそういって少しいいにくそうに、一度言葉を区
切ってきました。
 その時、僕は直感的に嫌な予感みたいなものを感
じていました。
 「何だよ、相談って?」
 「お前さ、野村加奈子っていう女の子知ってるだ
ろ?」
 何年ぶりかで会う同級生の口から出た意外な人物
の名前に、一瞬僕は絶句しかけましたが、
 「野村加奈子?…あっ、ああ…それが?」
 「その子のことでさ、ちょっとお前に相談あるん
だけど、今晩でも会えないかな?」
 不吉で嫌な予感を拭い去れないまま、僕は小村の
依頼を断わり切れず、その夜、帰宅途中にある喫茶
店で会うことになりました。
 不吉な思いをずっと抱いたまま終業時刻を迎えた
僕は、車に乗り込むとすぐに野村加奈子に連絡を取
りました。
 加奈子は僕からの電話にすぐに出て、すぐに無邪
気で嬉しそうな声で応答してきましたが、会うこと
の話ではないと先に断わると、忽ち声を悄気させま
した。
 「君に少し尋ねたいことがあるんだけど…小村武
って男知ってる?」
 「コムラタケシ…さんですか?」
 「ああ、そうだ。歳は僕と同じ」
 「あっ…ああ、知ってます。つい最近までうちの
病院に入院してた人です。肩を脱臼したとかで五日
ほどの入院でしたけど…ああ、そ、そうです、私が
あなたのことつい話したら、あなたと中学の同級生
だって」
 「僕のことを?…どう話したの?」
 「あ、ごめんなさい。私とのこととか、そんなこ
と何も話してなんかいないですっ」
 加奈子は僕が露骨に嫌そうな声で問い質したのに
驚き、ごめんなさいを何度も繰り返してまた悄気た
声になっていました。
 「あの人、どこかのプロダクションかに見えて、
映画の監督してるとかいってて…それで、私に突然、
映画に出てくれって何回も誘われて…どんな映画な
のかもわからないので、お断りしました」
 「たった五日ほどの入院で、もう仲良しになって
るんだ…君は可愛いし」
 「ごめんなさい。私、始めからあなたのことなん
かいうつもりなくて…その小村さんもあなたのお義
母さんの教え子だったといってたから」
 加奈子はどこで電話に出ているのかわからなかっ
たのですが、鼻をぐすぐす鳴らしてもう半泣き状態
のようになっていました。
 「いいよ、いいよ。もうわかったから…」
 ここで加奈子をさらに強く詰問してもだめだと思
い、彼女の半泣きの声を信じるしかなく、僕は彼女
に、また近い内に連絡するといって携帯を切りまし
た。
 チェーン店化している大きく広いスペースの喫茶
店で、小村は僕よりも早く来ていて窓際の席で煙草
の煙りをくゆらせていました。
 小村とはたしか五、六年ほど前の同窓会で会った
きりでした。
 薄茶色に染めた髪を長く伸ばしていて、顎の下に
短い髭を生やし、ほっそりとした長身を黒革のハー
フコートに包んでいて、僕のような平凡なサラリー
マンとは、如何にも異質の世界の男のようでした。
 「…で、何だい、相談事って?」
 一頻りの挨拶言葉の後、僕は単刀直入に小村に尋
ねました。
  小村の相談事というのには、加奈子との電話で
の話から、僕には薄々とは気づいていました。
 「ああ…ごめん。電話でもいったけど、お前、野
村加奈子と親しいんだって?」
 「親しいって、そんなんじゃないよ。うちの義母
が病院に入院した時に、何度か話したくらいで…変
な勘繰りするなよ」
 「いや、俺もその病院につい最近まで入院してて
な。彼女が俺の病室の担当だった。彼女、可愛い子
だよな。…それが何かの話から、お前の名前が彼女
の口から出たんでな。…その時、でも彼女、すごく
嬉しそうな顔してたぜ」
 小村は口元に妙に揶揄的な薄笑みを浮かべながら
いってきました。
 「そんなことはいいから、相談って何?」
 僕が少し深いな表情になっていたのか、小村は慌
てて襟を正すように座り直して、
 「いや、相談事っていうのは、実はその野村加奈
子のことなんだよ。…俺、今ある芸能プロダクショ
ンに勤めてて、主にムービー部門の企画や製作担当
してるんだけどな、そこのモデル部門の責任者の奴
に、半分冷やかしで彼女を病院で撮った画像を見せ
てやったら、えらく興味示してきやがってな。スタ
イルもいいし、何よりも既製のモデルにはない素人
っぽいコケティッシュな顔立ちが素敵だとかいって、
かなりご執心なんだよ」
 「そうか…」
 狐のような細い目を一杯に開いて喋る小村に、僕
はわざと大袈裟に興味なさげな声で呟き返しました。
 「そいつは若い女の子向けのファッション雑誌の
カメラマンしていてな。…結構、眼力は確かなんだ
よ。今までにも何人かスカウトして、雑誌のモデル
かにもなってる。…それで、俺も何度か彼女にアタ
ックしてるんだけど、ああ見えて結構身持ちが固い
っていうかさ、難儀してんだよ」
 「それで…どうして僕なんだよ?」
 「いや、彼女と病院で話してる時、お前のことに
なるとすごく嬉しがっていたのが、強く印象に残っ
たもんでな。…何とか、彼女を説得してもらえない
かと思って」
 「そんなこと、できるわけないじゃないか。病院
で二、三度話したくらいで…それからは一度も会っ
ていないのに」
 「真面目なお前はそうかも知れんが、彼女は相当
に気に入ってるみたいだぜ」
 「よせよ…」
 「何とか頼めないか?俺も事務所で啖呵切ってしま
ったもんで、引っ込みつかなくなっちまっててな…
ああ、そういえば、お前の義理のお母さんってさ、
前に第二小学校で教師してたんだってな。実は俺も
そこの出身なんだ。その先生のことは担任でもなか
ったんで、申し訳ないがあんまり記憶にはないんだ
けど、野村加奈子の話ではかなりの美人だったみた
いだな」
 小村の話がまたあらぬ余計な方向に向かい出した
ので、僕は尚更に不快な気分になり、早くこの場を
去りたいと思っていました。
 僕のそんな不機嫌な表情を察したのか、小村はそ
れ以上無理強いすることはなく、また連絡するから
もう一度考え直してくれといって、自分から伝票を
取って先に出て行きました。
 僕はしばらくそこに座り込んで腕組みをしながら
考え込みました。
 目に見えない不安が心のどこかに湧き上がってき
ていました。
 野村加奈子の動向如何では大変なことになるとい
う予感が、僕の頭の中を駆け巡り、無意識に携帯を
取り出し、画面で彼女の名前を探していました。
 「もしもし、僕だけど…」
 と少し声を潜めながらいうと、
 「嬉しいっ…ずっと…ずっと、私、悩んでたんで
す。あなたを怒らせてしまって…私」
 加奈子の声はもう涙声になっていました。
 「まだ、仕事なの?」
 「いえ、もう家に帰ってます。あなたの電話の後、
気分悪くなって早退してきました。…あっ、あなた
のせいじゃないですよ。私が…」
 「今から…そっちへ行っていいかな?」
 加奈子の言葉を遮って僕はそういってました。
 口封じではないですけど、彼女に強くいい聞かさ
ねば、と僕は咄嗟に考えていました。
 加奈子のほうにその気はなくても、これからも小
村の強引なスカウト活動は続くと考えられ、どこか
で揚げ足を取られてしまう可能性があるかも知れま
せんでした。
 三十分ほどでそちらへ行くと約束して、僕は携帯
を切りました。
 外に出て駐車場の車に乗り込むと、妻の由美の携
帯音を鳴らしました。
 高校時代の同級生と久しぶり会って食事して帰る
けど、多分話が弾みそうだから遅くなるかもと、心
苦しい嘘をいって、僕は力なく携帯を切り、車を始
動させました。
 加奈子の室のドアを開けると、彼女はすぐ目の前
に立っていて、もう涙顔になっているのがわかりま
した。
 ソファの前の小さなテーブル一杯に、急いで作っ
たらしい料理の盛られた大小の皿が並び置かれてい
ました。
 何からどう切り出していいのか考えながら、加奈
子の心尽くしの手料理の何品かに、僕は箸をつけ口
に運びましたが、精神的な動揺もあり、味の旨い不
味いはほとんどわからないままでした。
 加奈子はこの前に僕が、よく似合ってると褒めた
服装で、ショッキングピンクのざっくりとしたセー
ター姿でした。
 「加奈子、話があるからしっかり聞いて」
 ようやく気持ちを決めて、僕は加奈子にゆっくり
と事態の深刻さを説明しました。
 その前提条件として、決して加奈子が嫌いになっ
たのではないと、何度も諭した上での説得でした。
 小村武という異質の世界の男が、加奈子に相当以
上の興味を示していて、強引なスカウト活動に出て
くる可能性が高いこと。
 加奈子がモデルかタレントとして人生を再スター
トさせる気があるのなら、それは関知しない。
 しかしそうでないなら、毅然と断わること。
 その過程でおそらく相手側はあらゆる手段を駆使
してくる可能性があり、その中で自分と加奈子の関
係が暴露されることのないように最善の努力をする
こと。
 今後、彼らと交渉の場があったとしても、自分の
ことは一切口にしないこと。
 …そのようなことを、ある意味では身勝手にも自
分自身の保身ばかりを優先させたようなことを、僕
はさも大儀のように加奈子に噛んで含んでいい聞か
せました。
 僕のその身勝手すぎるどの言葉にも、加奈子は真
剣に耳を傾けて聞いていました。
 夕刻の携帯で僕を深いな気持ちにさせたことを、
こちらが思っている以上に深く後悔しているという
風な加奈子の所作でした。
 「どんなことがあっても、もう他の人にあなたの
ことは二度と話しませんっ」
 と加奈子は真摯な眼差しで僕にそう誓いました。
 それをさらに疑うというのは、それこそ下衆の勘
繰りになると思い、僕も彼女の言葉を信用しようと
心に決めました。
 加奈子が炒れてくれたコーヒーを啜りながら、何
気に腕時計を見ると、九時を少し過ぎていました。
 僕のその仕草を見て、斜め前に座っていた加奈子
の腕が素早く動いてきて、僕の片方の二の腕のあた
りを掴み取ってきたのです。
 「まだ帰らないでっ…」
 叫ぶようにそういって、加奈子が僕の掴み取った
二の腕のあたりに、そのまま細い上半身を預けるよ
うに倒れ込んできました。
 僕の顔を真顔で見つめながら、何かを訴えるよう
な加奈子のくるりとした目が泣きそうになっている
のがわかりました。
 僕の顔の下あたりに、さらに近くにじり寄った彼
女のふわりとした栗毛色の髪の毛が擽るように触れ
てきていました。
 若い女の子の清潔で石鹸に似たような匂いが、僕
の鼻腔を心地よく刺激します。
 まるで自然な流れのように、僕は加奈子の全身を
抱き締めていました。
 その時ふと、妻の由美と義母の愁いのある顔が脳
裏に浮かびましたが、馬鹿な僕はそれよりも動物的
本能が勝り、衝動的にすぐ目の前にあった加奈子の
唇を唇で奪い取りにいっていました。
 こんな事態でありながらも不覚にも、愚かな男の
本能が息吹き出してきているのが自分でもわかりま
した。
 言い訳にもなりませんが、会った時からの加奈子
の涙目が、僕を非常識極まりない男にしていました。
 不意に思い浮かんだ妻と義母の顔を振り切るよう
に、座ったまま僕は長く加奈子を抱き締めて、唇も
長く重ね続けました。
 全身の力を抜き僕に身を委ねたままの、加奈子の
息が荒くなり出していました。
 薄く毛羽立ったカーペットに二人の身体は抱き合
ったまま倒れ込み、僕はまるで焦った強姦魔ように、
荒々しく加奈子の衣服を剥ぎ取り、自らの衣服も慌
てふためくように脱ぎ捨てました。
 無駄肉のない細くくびれた腰と、滑らかにピンと
張り詰めた肌の感触、薄い胸板とは不釣り合いなく
らいに膨よかで、丸くかたちのいい乳房を目の前に
した僕の自制心が、ガラガラと音を立てて崩れてい
っているのを、僕は自らの下半身の変動で愚かにも
自覚させられていました。
 カーペットに細くすらりとした裸身を晒した加奈
子は、まるで少女のような愛くるしい喘ぎ声を弛ま
なく上げ続けていました。
 暖かい暖房の入った室で、僕は加奈子の身体を狂
った獣のように抱き締め、彼女の身体に深く覆い被
さったり、翻して胸板の上に載せたりして、唇とい
わず、耳朶から首筋、そして弾力豊かな乳房までを
激しく愛撫し続けました。
 「ああっ…こ、浩二さんっ」
 加奈子の一際高い喘ぎの声が上がったのは、仰向
けにした彼女の両足の膝を折り曲げて、身体を海老
折りのようにして、露わになった股間の漆黒の茂み
の中に僕が顔を深く埋めた時でした。
 加奈子のその部分からは、すでに熱くぬめぬめと
した滴りが溢れ出る寸前のようでした。
 茂みの中の肉の裂け目の頂点あたりにある、薄い
ピンク色をしてつんと突き上がった、小さな豆のよ
うな粒に舌先を当ててやると、加奈子はさらに大き
な声を上げて、全身を左右上下に揺り動かせ激しく
悶え狂うのでした。
 馬鹿な男の僕の下半身のものは、何の恥ずかしげ
もなく固くいきり立っていて、痛いくらいに獲物へ
の到達を急かしているようでした。
 暖かく柔らかいカーペットの上で、すでに我慢の
限界にきていた僕は、加奈子のしとどに滴り濡れた
箇所にいきり立った屹立を突き立て、一気に挿入し
たのです。
 加奈子のその部分の熱い滴りは、内部のほうも潤
沢に濡れそぼっていましたが、若い女としての狭窄
感は充分過ぎる刺激を、僕の屹立したもの全体に心
地よくめくるめくような快感を与えてくれていまし
た。
 「ああっ…浩二さんっ…いいっ…いいわ…死にそ
うっ」
 「加奈子っ…」
 「す、好きっ…大好きっ」
 「ぼ、僕もだよ、加奈子っ」
 「わ、私を…捨てないで…ああっ」
 ある瞬間のところで、加奈子を突き立てていた僕
のものの先端のあたりに、身体中の血液が一気に集
中する気配があり、僕は最後に強く一突きして、自
分のものを彼女の体内から抜き取り、大きく波打つ
彼女の白い腹の上に置くと、堪えに堪えていた迸り
がドクドクと激しく溢れ飛びました。
 僕の身体の下で唇に手を当て、ヒクヒクと顔を震
わせていた加奈子の目に涙が一杯溢れ出ているのが
見えました。
 加奈子のその涙を見て、言葉では表現のできない
やるせなさが、僕の胸を痛く覆いました。
 加奈子はまだ深い快感の余韻の中でしたが、僕は
違うことを考えていました。
 果たして自分は、この女とも、無事に別れること
ができるのだろうか、という不埒な思いが沸々と心
の奥底のあたりに湧き上がってきていたのでした。
 しかし、さすがにそんな不遜な素振りは加奈子の
前で見せるわけにはいかず、心苦しくも嘘の言葉で、
それなりに思いやりのある言葉を幾つか残して、内
心で気持ちを重くして彼女の室を辞したのでした。
 車に乗り時刻を見ると十一時前でした。
 妙に恐る恐るの思いで妻の由美に電話を入れると、
彼女は眠そうな欠伸声で、今から寝るところだった
ということでした。
 僕は予め用意していた言葉で、
 「五、六年ぶりに会った友人でさ、食事の後、パ
ブみたいなとこ連れてかれてね。勿論僕はウーロン
茶だけで、もうお腹がダブダブだよ。今から帰るか
ら先に寝てていいよ」
 と澱みなくいって携帯を切りました。
 由美は何の疑いを持つことなく、気をつけてと眠
そうな声でいうだけでした。
 夜の闇と同じで、僕の心も暗く沈んでいました。
 義母に連絡することはありませんでしたが、何だ
か二人に嘘をついている気持ちで一杯でした。
 加奈子の涙顔と義母の優しい眼差しの顔が、ハン
ドルを握る僕の脳裏で何度となく交錯し、浮かんで
は消え、消えては浮かびしていました。
 明日の休日には義母に思い切り甘えよう、と僕は
心の中でそう決めていました…。

         続く
  
 

15/08/06 22:26 (pvqe7/SY)
8
投稿者: kkk
心配になる展開ですね~友人の絡みというか、かかわりが・・。
更に加奈子さんはこの後どうなるのだろう? と・・
明日の亜希子さんとの絡みと会話を楽しみにお待ちしています。
由美さんの悟られないように・・・と余計な心配をしてしまう(^^)
15/08/07 04:31 (XBv2R35E)
9
投稿者: (無名)
とても素晴らしい作品ですね、思わず過去の作品も読み漁りました。これからも是非、続編を期待しております
15/08/08 00:46 (Xf3k/X6p)
10
投稿者: ジュン
前から読んでおりました。
非常に面白く、情景が浮かんできます。
引き続きを楽しみにしております。
これからも、お願いします。
15/08/08 18:25 (j/BSO1fS)
11
投稿者: コウジ
翌日の土曜日の朝。
 九時少し前くらいに目を覚ますと、隣りに由美の
姿はなく、昨夜の遅い帰宅のせいもあって、僕は少
しホッとした気分で階段を降りていくと、あにはか
らずもダイニングで女二人の声が聞こえてきました。
 ドアを開け中に入ると、流し台付近で義母と並ん
で立っていた、珍しいエプロン姿の由美がこちらを
振り向き、
 「あら、おはよう。もう起きたの?」
 と妙に明るい笑顔で迎えてくれました。
 半分寝ぼけ眼でこちらが言葉を返そうとする前に、
 「昨夜は午前様で、さぞお疲れだと思ってたのに」
 と機先を制する言葉を続けられたので、何気に義
母の小さな後姿に目をやると、かすかに見えた唇の
あたりが、薄笑みを浮かべたように少し緩んでいる
のが見えました。
 「午前様って、昨夜は十二時までには帰ってるよ」
 僕は少しムキになったように口を尖らせて反論す
ると、
 「ほぅらね、お母さん、ちょっと怪しくない?」
 と由美が隣りの義母に顔を向けて、冷やかすよう
な声でいってきました。
 「昨夜はね、お友達に誘われてのパブ遊びだもん
ねぇ」
 由美の冷やかしの二の矢が飛んできて、内心では
僕は少しばかりうすら寒い気さえしたのですが、わ
ざと大袈裟に溜め息をついて、踵を返して洗面所に
向かいました。
 顔を洗って歯磨きをいつもより少し長めにしてか
らダイニングにまた戻ると、テーブルの上には妻の
由美が用意した朝食の準備が整えられていました。
 といっても、野菜サラダと卵焼きに、湯気の立つ
コーンスープと焼きたてのトーストが並んでいるだ
けでしたが、ここは妻が久しぶりに用意したという
ことが評価の対象でした。
 「へぇ、やればできるじゃん」
 先ほどのお返しとばかりに、横でコーヒーカップ
にいい香りのコーヒーを注いでくれてる由美に声を
かけると、
 「今日はね、部活が十時からなの。あなた、予定
は何かある?…なかったら送ってほしいんだけど」
 と僕の冗談をやり過ごして、少し真顔でいってき
ました。
 僕は視線の片隅に義母をおいて、
 「あ、ああ、いいよ。何も予定ないから」
 僕はつとめて明るい声で言葉を返しました。
 「今夜はね、私が遅くなりそうなの。部活の顧問
をしている先生たち数人で、急に食事会することに
なって…」
 あまり気が乗らなさそうな由美の声でしたが、僕
は咄嗟にここは自分の出番だと思い、
 「昨夜の午前様、いやほんとは違うんだけど、早
速のお返し、謹んでお受けいたします」
 とわざとひょうきんな声でいって、その場を少し
和ませたのでした。
 僕の斜め前で僕と由美のやり取りを聞き入りなが
ら、優しげな薄笑みを浮かべて、物静かにコーヒー
を口元に運んでいる義母は、白の清潔そうなブラウ
スに濃紺のVネックのセーター姿で、ルージュの赤が
普段より少し濃い感じがしました。
 由美を送る車中で、彼女が何か少し浮かなさそう
な顔つきで、
 「お母さんね…さっきは明るい顔してたけど、昨
日の夜は少しおかしかったの」
 と助手席で前をぼんやりと向いたまま、独り言の
ように呟いたので、
 「おかしいって?…どういうこと?…何か身体の具
合でも?」
 と問い返しながら、僕はまた内心をかすかに波打
たせていました。
 「昨日、私が帰宅してすぐだったから、六時半頃
だったかしら?町内会長さん、小村さんっていうの?
…から電話あったの。それも二度も」
 「うん、それで?」
 「私、別に聞き耳立てていたんじゃないけど、お
母さん、何度も困ったような声出して…何かを一生
懸命断わっているようだった」
 「そう…」
 僕はこの前に集会所に義母を迎えに行った時の光
景を思い浮かべていました。
 あの時もたしか、義母は町内会長に腕の裾を掴ま
れて何かを懇願されているような感じだったし、つ
い先日も彼女に町内会長とのことで直接尋ねても、
曖昧に話を逸らされたばかりでした。
 そのことはしかし、今ここで僕の口から話すべき
ことではないと思い、
 「心配だね…」
 とありきたりの言葉を返すしかありませんでした。
 「町内会のことで何か揉めてるのかしら?…あなた
にそれを探ってっていってもだめだしね」
 それは由美の悪意のない言葉で、婿と義理の母と
いう微妙な関係は、一年ほどの同居生活で、胸襟の
全てを開けられたり、遠慮や忌憚のない言葉のやり
取りが普通にできないのを、由美は見越していって
いるのは、僕にはわかっていました。
 「もう、足のほうは日にち薬ですっかりよくなっ
ているようで心配なさそうなんだけどね…でも、そ
の町内会長さんのことばかりじゃなく、最近なんだ
か元気なさそうだから、健康診断でも受けたら?っ
ていったんだけどね」
 「ごめん、あんまり気がつかなくて」
 「男の人だもの、仕方ないわ」
 妻の由美にそういわれると、何だか妙に背筋が痒
くなるような気分でしたが、義母の内心の一端が僕
にはわかるような気がしてました。
 帰宅は九時頃になるという由美に、迎えにきてや
るからどこからでもいいから連絡しておいで、と優
しくいって、彼女を学校で降ろして、帰宅する途中
で僕はコンビニに寄りました。
 何を買うというアテもなかったのですが、由美の
義母についての言葉がどうにも気になって、缶コー
ヒーを一個買って、駐車場の隅に止めた車に篭りま
した。
 娘が最近の母の元気のなさを案じることは、これ
は通常にどこにでもある話です。
 親子としての血の繋がりの深さは、当事者同士の
間では他人にはわからないことでも、本能的な感覚
で察知するのは当然でした。
 理知的で清廉な義母は、僕とのあってはならない
関係について、日々悔恨を深め慙愧しているのは想
像に固くありませんでした。
 いわば義母の元気のなさの要因のかなりの部分は、
その加担者の一人である僕の責任でも、大いにある
わけでした。
 このことは妻の由美に対しては、詫びても詫びき
れる筋合いのものではありません。
 そうは反省的に思いながらも、身勝手で愚かな保
身主義者の僕は、卑怯にもそのことをさらに突き詰
めて考えることから逃避し、それよりも今最も気に
なる義母と町内会長との間の、何か胡散臭げないざ
こざについて思いを馳せました。
 ふと気づいたことですが、そういえば自分も昨日、
その町内会長の息子からやっかいな話を持ちかけら
れていたのでした。
 義母は一体、その息子の親に何を絡まれているの
か?…帰宅したらそのことを最初に聞かねばと思っ
たのですが、どう切り出せばいいのかが凡人の僕の
頭ではすぐには浮かんではきませんでした。
 それどころか、若い加奈子の身体を昨日抱いたば
かりだというのに、愚かな僕はもう何日も義母のあ
の艶やかな肌に接していないなどという、あらぬ方
向へ思考が飛び、自分自身の馬鹿さ加減に一人で情
けなく苦笑してしまうのでした。
 結局、コンビニの駐車場に車を止めた意味もあま
りないまま、僕は車を始動させ、浮かぬ気持ちのま
ま帰路につきました。
 十一時過ぎに帰宅すると、義母はエプロン姿で調
理台と流し台の間で忙しなげに動き回っていました。
 「亜紀子、ただいま…」
 ダイニングのドアを開けて、久しぶりに義母を名
前で呼んだのですが、彼女は振り返ろうともせず、
 「お帰りなさい」
 と短く声を出しただけでした。
 僕は次にかける言葉を失っていて、同時に自分の
居場所まで迷ってしまい、ダイニングの椅子に座る
か、居間のソファまで行くかを躊躇してしまって、
ドアの前で所在なさげに立ち竦んでしまっていまし
た。
 「どこかに寄ってたの…?」
 しばらくの沈黙の間の後、義母が背中を向けたま
ま小さく呟くような声を出してくれました。
 「あっ…ああ、ちょっとコンビに寄ったら、昨日
の友達から電話あって…駐車場で長く喋っていた」
 妙に言い訳めいたような口調で、僕は言葉を返し
ながら、目の前の椅子を引き寄せてゆっくりと腰を
下ろしました。
 義母の前で、自分がどうしてこんなにドギマギし
てしまっているのか、当の僕自身がわからないまま
でした。
 椅子に座っても何もすることなく、呆然としてい
るだけの僕でしたが、義母は相変わらず流し台と調
理台に向かったままで、濃紺のセーター姿の小さく
て細い後ろ姿を見せているだけでした。
 また妙に重苦しいような空気がダイニングに流れ、
これなら居間のソファまでいってテレビでも点け
たらよかったと、少し後悔しかけていた時、
 「お昼はオムライスでいい?」
 と今度は義母は僕のほうに身体を向けて、視線を
合わせていってきました。
 僕の好物料理の一つでした。
 「あ…ありがとう」
 食器乾燥機から取り出した何枚かの皿を棚にしま
い込みながら、
 「食事の後、お話があるの…」
 と細いフレームの眼鏡の奥の目に、何か思い詰め
たような光を放って、義母が僕にいってきました。
 「話…?」
 「…ええ」
 胸の中に黒雲が急に湧き出してきていましたが、
その場では言葉を続けず、僕は椅子から立ち上がり
居間のソファに向かいました。
 テレビのスイッチを入れると、正午前のニュース
画面が流れていましたが、僕は目を向けているだけ
で内容はほとんど頭には入っていませんでした。
 義母の話というのが何なのかを、僕は一生懸命考
えていました。
 二人の特殊な関係についてのことだという予測は
すぐにできました。
 実をいうと先週の土日も、都合悪く二人きりの時
間が取れていませんでした。
 土曜日が僕が急遽、休日出勤になり、日曜日は前
に雨で中止になったバザーがあり、義母が近所の知
人の車に同乗させてもらって出かけていたのです。
 二週間ぶりの二人きりの時間でしたが、この長い
間隔で義母は明らかに、ある意味で正常な精神を取
り戻しているのが予測に固くないことでした。
 清廉で聡明実直な元聖職者の義母に立ち返ってい
るのは、この二週間の僕への接し方でもわかるくら
いでした。
 義母の心の中にある理性や道理道徳も、しっかり
と復元しているのは確かでした。
 堅固な城壁を復元した強固な牙城をどう取り崩す
か、それを考えて僕が達した結論は、特段なものは
何も浮かばなかったというのが、正直なところでし
た。
 自分が義母に対する欲望さえ失っていなければ、
そしてそのためなら少々の強引な手管でも、臨機
応変に使うしかないと、僕はそう心に決めて昼食
のオムライスを待ちました。
 テーブルの上の白い皿の上にかたちよく丸まっ
た黄色のオムライスが仄かな湯気を立てていまし
た。
 僕がケチャップは少なめがいいというのも義母
は知っていて、黄色の中央あたりに赤いケチャッ
プが三本ほどの細い線状でついていました。
 「いただきますっ」
 と大きな声でいって、僕が大きく口を開けてぱ
くつくと、
 「ゆっくり食べて…誰も獲らないんだから」
 と斜め前に座った義母が小さな笑みを浮かべて
いうのを、僕は内心で、おや、という思いになっ
ていました。
 それまでの無口な感じで重々しい表情とは、ま
るで違う雰囲気に僕は少し驚いたのです。
 「…久しぶりだわね、二人になるの」
 またもや予期しない義母の独り言のような呟き
に、僕は思わず喉を詰まらせそうになり、慌てて
コップの水を口に運んでいました。
 「あ、ああ、そうだね…」
 僕のものよりかなり小さめのボリュームのオム
ライスに、上品にスプーンを入れながらかたちの
いい唇に運んでいる義母の表情は、つい今しがた
までとは雲泥の差くらいに柔和で穏やかでした。
 「さっきいってた話って…食べながらではでき
ないの?」
 義母の意外なほどの柔和な表情を見てとって、僕
はすかさず聞きました。
 「あ、…お話?…ごめんなさい。もういいの、そ
のことは」
 「いいって、どういうこと?」
 「あなたに相談しようかと思うことあって…ずっ
と今まで考え込んでいたの。でも、もういいわ。…
折角の二人きりの時間だもの」
 勿論いい方向にですが、義母の態度や表情が、僕
の想定とまるで真逆なものに、僕はまだ驚きを隠し
きれずにいて、逆に彼女に訝しげな表情されるほど
でした。
 「スプーンが止まっているわ。…美味しくなかっ
た?」
 といわれるほどに、僕は自分の取り越し苦労を恥
じ、同時に気持ちが大きく明るい方向に向くのを感
じました。
 「いや、美味しいよ、とても。…ちょっと僕も他
のこと考えてたもんで」
 「何を…?」
 「何をって…」
 「昨夜のパブのことだったりして…」
 「馬鹿なっ…そんなんじゃないよ」
 「ふふっ、ごめんなさい」
 「正直いうとね、亜紀子とは二週間ほども話らし
い話できなかったし…それに…抱くこともできなか
ったし…亜紀子が元の…っていうか。…それで」
 「それはその通りよ。…もう、あんなことはしな
いほうがいいに決まってるわ」
 「やっぱり…」
 「これでこのまま何もなくなって、元通りのお婿
さんと義理の母親に戻れたら何よりのことだわ」
 訥々と落ち着いた口調で話す義母の顔に僕は、し
ばらくの間見とれていましたが、久しくこうして長
く彼女の顔を見ていなかったこともあって、僕の内
心にまたよからぬ妄想が沸々と湧き上がってきてい
ました。
 「僕は嫌だね―」
 「…いけないことだわ」
 義母の色白の顔に次第に真剣味が増してきている
のがわかりました。
 「亜紀子、もう何度もいってるが、していること
の善し悪しを最初に考えて、僕は亜紀子を抱いては
いない」
 と僕が少し意図的に強い口調で言葉を返すと、義
母の細い肩がぴくりと小さく震え動くのを見て、
 「亜紀子は…僕を嫌いになった?」
 と追い討ちをかけるように言葉を続けました。
 「そんな…そんなこといってない」
 「この二週間がどれほど長かったか…」
 僕には不似合いな気障な台詞をいって、悄気たよ
うに顔を俯けさせると、義母のほうが慌てたような
顔になって、
 「わ、私も…私もよっ」
 と椅子から身を乗り出すようにしていってきたの
でした。
 それから十数分後、僕は義母の寝室にいました。
 僕が敷いた布団の上で胡坐をかいて、何日かぶり
の室の整然とした景色と懐かしい女の室の空気を感
じながら、義母が来るのを待っていました。
 義母の机の一番下の引き出しに目がいき、ふと、
あの青木のことを思い出したりしてると、入口の襖
戸が静かに開き、エプロンを外した義母が顔を俯け
て入ってきました。
 この室でこういう風に改まっての対面は初めての
ように思い、僕も少し照れ臭いような感じがありま
したが、義母のほうはもっと気恥ずかしい思いに陥
っていたようで、頬と首筋のあたりをもう朱色に染
めて、自分の居場所がなさそうに、襖戸の前から動
けないで心細げに立ち竦んでいました。
 「こちらへおいでよ」
 と僕が言葉をかけても、しばらくは動こうとはし
ませんでした。
 もう一度同じ言葉をかけると、やっとおずおずと
足を小股に動かせて、布団の端っこに静かに腰を下
ろしてきました。
 「あっ…」
 義母が気恥ずかしげな表情を露わにして座り込ん
だ時、僕は素早く動いて彼女の細い両手首を掴み取
り、自分のほうへ引き込みました。
 義母の小さくて華奢な身体は他愛もなく僕の胸の
中に引き込まれ、かすかに慄きを滲ませたような白
い小さな顔が、僕の顔のすぐ前にありました。
 朝見た時に、普段よりも少し赤いと思っていた彼
女のルージュが小さく震えていました。
 僕と義母の唇と唇が自然な動きに近いかたちで重
なりました。
 義母の肌から発せられる匂いか、心地よくて妖し
い香りが僕の鼻腔をつき、男の本能が身体全体の血
液を沸々と逆流させるように熱く湧き上がってきて
いる気がしました。
 義母はかたちよくつんと尖った鼻先をふんふんと
小さく鳴らしながら、塞がれた口の中で激しく動く
僕の舌にも然したる抗いも見せず、それとなくです
が従順しているような感じでした。
 セーター越しに義母の胸をまさぐると、大きくは
ない丸い膨らみの感触が僕の手に心地よい快感を伝
えてきていました。
 しばらくして僕は義母のそのセーターから順に、
ゆっくりと一枚一枚を脱がしていきました。
 ブラウスのボタンを外し取り、ブラジャーのホッ
クを外し取った時、露出した義母の肌理の細かい
艶やかな白い肌に、僕は軽い眩暈のようなものを
覚え、体内の血液がさらに熱く昂まるのを感じて
いました。
 スカートのホックを外した時と、最後の布のショ
ーツに僕の手がかかった時は、さらに一際高い喘ぎ
の声を上げて、さすがに抗いもそれなりに強くあり
ましたが、思い上がりかも知れませんが、どこかで
彼女は僕を許しているような、そんな気がしました。
 自分も衣服の全てを脱ぎ、布団の上で全裸で仰向
けになった義母の両足を割り、すでに彼女の体内を
つらぬいた状態で、覆い被さり唇をむさぼり吸う僕
の首に、彼女の白く細い腕がきつく絡みついていま
した。
 「抱きたかった…抱きたかったよ、亜紀子」
 「ああっ…こ、浩二さん」
 「好きだよ…好きでたまらない」
 「わ、私も…ああっ…好きっ」
 下半身を深く密着し合い、熱く抱擁し合う間に交
わす僕の言葉に嘘はありませんでした。
 三十もの年齢差も、僕には何の支障にもなっては
いませんでしたし、願わくば義母の思いも自分と同
じであってほしいと念じながら、僕は不覚にも二週
間ぶりの彼女の身体やフェロモンというのか、女の
体臭や艶やかな肌の感触に、時早くに興奮の頂点を
迎えてしまい、あえなくも撃沈の憂き目に遭ってし
まったのでした。
 それでも義母はそんな僕に充分に呼応し、
 「ああっ…こ、浩二さんっ…わ、私も…もうっ」
 と熱い極まりの瞬間を合わせてくれ、僕の二の腕
を、爪を立てるくらいに力を込めて強く掴み取って
きたのでした。
 お互いが肩を揺すり熱く高い息を吐き合って、布
団の上で仰向けに並んで寝ながらともに茫然自失と
なり、絶頂の快感に長く酔い痴れました。
 一時間近く、寝たような眠らなかったような、茫
洋としたまどろみの中に、義母と僕の二人はいまし
た。
 「亜紀子…」
 と最初に口を開いたのは僕でした。
 「はい…」
 「僕は…悪い男だ」
 「…あなただけじゃないわ」
 「悪くて、卑怯で…どうしようもない男だと自分
でも思ってる」
 「あなたがそうなら、私もよ…いえ、もっと悪い
のは私…」
 「それでもね…こんなことしておいていうのもお
かしいけど…亜紀子とこうして繋がって、初めて亜
紀子の息子になれたような気がしてるよ」
 「…嬉しいっていったほうがいいの?」
 「いいよ、そんなこと。僕自身の気持ちだけだか
ら」
 「あなたを地獄に落としてる…」
 「亜紀子、そういういいかたは二度としないでく
れ。僕はそんな風には微塵も思っていない」
 「ごめんなさい…」
 「ところで亜紀子、この前にも尋ねたけど…例の
町内会長とのこと…何かあるんだろ?」
 「…………」
 「僕は…亜紀子の息子として心配してる。亜紀子
一人で悩まなくていい」
 「…………」
 「こんな僕が力になれるかどうかはわからない。
わからなくてもいいから亜紀子の力になりたい…
ごめん、何いってるかそれこそわからなくなりそう
だけど、亜紀子の支えの一つになりたいんだ」
 「ありがとう…あなたの気持ち、とても嬉しいわ。
ほんとよ」
 「亜紀子の力になりたい…」
 「実はね…」


    続く
 


15/08/09 00:40 (1Vsj8xl5)
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