お昼前に待ち合わせようという事で、集合時間は11時30分でした。
そして待ち合わせ場所のショッピングモールまでは、家からバスで20分は掛かりま
す。
ところが翌朝目が覚めたのは10時半過ぎ。
すでに時間ギリギリ。慌てて部屋を飛び出しました。
するとドアに挟まっていたらしいメモ紙が落ちてきて、

遅刻したら
お昼ゴチね＾▽＾
ｺﾞｯﾁｬﾝﾃﾞｽ!

なんて事がアーの字で書いてあります。
これは絶対に遅刻できません。
タイミング良く来たバスに飛び乗り、道が予想外に空いていた事もあって、待ち合
わせ場所に着いたのは時間の５分ほど前の事でした。

「あれぇ、もう来た・・・」
声に振り返ると、アーが驚いた顔で立っていました。
「ぜーったい遅刻すると思ってたのに・・・ゴチなりそこなったな」
と、イタズラっぽく笑います。

僕は思わず見惚れてしまいました。
この時のアーは特別おしゃれしていた訳ではありません。
いつも通りのカジュアルな格好で、化粧もしていません。
それなのに眩しいくらいに輝いて・・。
やっぱりアーはカワイイと思いました。
『俺はこの娘とセックスしたんだ・・・』
その事実だけで十分な気さえしてきます。
ふとそこで、ある事に気付きました。
「おまえ、スカート持ってたんだな・・・」
アーがスカートを履いていたんです。
「っ！・・・スカートくらい持ってるわよ、失礼ね・・」
出掛ける時はたまに履いているとの事でしたが、僕は見た事がありません。
「ホントか～？」
アーのスカート姿で覚えているのは、中学の制服と、親戚の結婚式とお葬式くらい
です。
「あ、あと七五三か・・・」
私服でのスカート姿は小学時代を通しても記憶にありません。
「もう、いい！家帰って着替えてくる！」
さすがに言い過ぎたのが、アーが怒り始めました。
「あ～、わりぃ！ゴメン、言い過ぎた」
スタスタと歩き出したアーの手を掴んで振り返らせると、ふて腐れた顔で僕をジー
ッと見つめた後、
「・・・・・じゃあ、なんか食わせて・・腹減った」
と、ブスリと言いました。

フードコートのマックで食べようかと思ったのですが、アーがその隣の讃岐うどん
を食べたいと言い出したのでそちらに変更。
トッピングの天ぷらやいなり寿司をチョイスしましたが、マックで食べるより安く
済みました。
『一応、気を使ってくれたのかな？・・』
その後は「映画でも観ようか？」という話も出たんですが、その時にやってた映画
は二人の好みに合わなかったので断念。モール内の店を見物して歩く事になりまし
た。

アーとこのようにゆっくり歩くのは本当に久し振りの事でした。
以前は時々二人で買い物に出掛ける事もあったんですが、アーがバレー部の部長に
なってからは一度もなかった事です。
次第に僕の頭からあの日の事がなくなって、屈託無く笑うアーと一緒になってウィ
ンドーショッピングを心から楽しんでいました。

「ねぇ、ター・・・どうする？・・・そろそろ帰る？」
気が付くと時刻は夕方の６時近く。
ウチは特に門限はありませんが、７時位がなんとなくの目安になっていました。
でも僕は、あの日からの事をアーと何も話していませんでした。
しかし今さらなんと言えば良いのでしょう。
呑気に遊んでいる内に、すっかりタイミングを逃してしまった感じです。
結局、
「・・そうだな・・・そろそろ帰らなきゃな・・・」
としか言う事はできませんでした。
そうして、最後にアーのリクエストで本屋を覗いて、僕達は帰路に就いたのです。

『まだアーに何も言ってない・・』

このまま帰る訳にはいきません。
といってバスの中で話せるような事でもありません。
隣に座ったアーに何か声を掛けようと思ったその時。車内に次のバス停を告げるア
ナウンスが流れ、直後思わず僕は叫んでいました。
「アー、次で降りよ！」
「え、なんで？」
驚くアーの手を掴んで、僕はバスを降りました。
「ちょっと！・・・ター、どうしたの!?」
「いいから・・・久し振りに◎※でも散歩してみようぜ」
「えー!?」
戸惑うアーを無視して、僕はアーの手を引いたまま歩き始めました。

バス停からしばらく坂道を登った高台に◎※公園はあります。
桜で有名な公園で、春には花見客でいっぱいになりますが、夏のこの時期の夕方に
は近所から散歩に来た人達が何人かいるだけ。
途中の自販機でジュースを買って、僕達は公園奥のベンチに座りました。
「へ～、結構ここ眺めいいね・・」アーが景色を眺めながら感嘆の声を上げまし
た。

「・・・・・・今日はありがとね」
ベンチに座ってしばらくすると、アーの方から話し掛けてきました。
「え？」
「・・付き合ってくれて・・・嬉しかった・・・・・久し振りにたくさん話せた
し・・」
「あ・・・いや・・・・俺の方こそ・・・」
アーが子供っぽい笑顔を浮かべて、僕を見ていました。
「・・俺・・・一生許してもらえないかも・・って思ってたから・・・・誘っても
らえて・・嬉しかった・・・」
「え～？・・なによ、それぇ・・・」
「だって、アー・・あん時・・・・」
「あー・・まぁ、あん時はねぇ・・・アタシもちょっと・・言い過ぎたかな～・・
なんて・・・」
「・・・そんな、痛かったのか？」
「う～ん・・・痛かったのもあるけど・・ターが全然止めてくんなかったから、な
んかムカついちゃって・・ね・・・」
「あ・・・それはホントごめん・・・謝る・・・」
「もういいよ～・・・・・それより、アタシこそ酷い事言ってごめんね」
「そっちこそ、謝るこっちゃねぇよ・・」
謝りたかった事を謝り、そしてアーが許してくれた事で、僕の気持ちは一気に晴れ
やかになりました。
あの日以来の、心にのし掛かってた重しが取り除けられて、やっと一息つく事がで
きた気分です。

「・・・ねぇ・・ターって、そんなにエッチしたかったの？」
突然アーがとんでもない事を聞いてきました。
「・・・別に、俺くらいの年の男なら、みんなそうだろ・・」
「あ、そうじゃなくて・・アタシとって事・・・・姉弟なのに、そんなにアタシと
したかったの？」
あまりにもストレートに核心を突いてきます。
「それは、前にも言っただろ・・・中一ん時からそう思ってたって・・・」
「・・・うん・・・・・まぁ、そうなんだけど・・・」
「アーはどうなんだよ・・・あん時・・最後の方なんて、あんま嫌がってなかった
んじゃねーか？」
「え～～・・・それは・・・・だって・・・・」
アーが僕を伺うように見ました。
「・・・・・なんだよ」
「・・・あん時のター・・・すんごい恐い顔してて・・・イヤだなんて・・言えな
かったと思う・・・」
「・・・・・え・・・そんな恐い顔してた？」
「してたよ～・・・あんな顔したター、初めてだったから・・・ホント恐かっ
た・・・」
「・・・・・・」
「エッチはすごく痛かったし・・・」
「・・・・・・」
「痛いって言っても止めてくんなかったし・・・」
アーが責めるように横目で僕を見ました。
「・・・あんなター・・やだ・・・・」
大声で責められるよりキツい一撃でした。
「・・・・・・そうか・・・ごめん・・・」
僕には謝る事しかできません。
そしてまたしばらく無言の時間が流れました。
「・・・・・でも」
「・・？」
「・・・なんか・・かわいい気もした」
「え？」
「・・・・・・・ターが・・あんな恐い顔するくらい・・エッチしたいのかな～っ
て思ったら・・・なんかかわいく思っちゃった・・」
アーが照れたように笑いました。
「だから・・・・・ターが、アタシとエッチしたいって言ってくれたか
ら・・・・・そんなにアタシとエッチしたいって思ってくれるなら・・・ターのし
たいように・・させてあげようって思った・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
胸がいっぱいで何も言う事ができません。
「・・・まぁ、あんなに痛いって知ってたら、絶対許してなかったけど」
最後は照れ隠しなのか、おどけたように笑って話してきました。
「あ・・・・・そんな風に思ってくれてたって・・知らなかった・・・・・ずっと
避けられてると思ってたから」
「・・なにが？・・・アタシ、ターの事避けてなんかないよ？」
「だって！・・あれから勉強の時だって来ないし・・・・」
「あー、あれね・・・・・あん時、痛かったら止めるって言ってたくせに・・・痛
いって言っても止めてくんなかったから・・・・・謝るまで絶対許してやんないつ
もりだったんだけど、ター全然謝りに来ないし・・・」
「あ、ごめん・・・・そうか・・・そうだったんだ・・」
「もういいよ、ちゃんと謝ってくれたんだし」
「あぁ・・・ありがとう・・・・よかった・・・嫌われた訳じゃなかったん
だ・・」
「なに？嫌われたと思ってたの？」
と、アーがおかしそうに笑った時、不覚にも涙が出てきました。
「ちょっと、ター！なに泣いてんのよ!?」
「・・うるせぇな・・しょうがねぇだろ・・・・・嫌われたと思って、本気で心配
してたんだから・・・」
慌てて涙を拭いながら言い返しました。
すると、
「え～、ホントに～？・・アタシとエッチな事できなくて、欲求不満溜まってただ
けじゃないの～？」
とニヤニヤ笑いながら更に言い返してきました。
「バッ！・・・そんな事ねぇよ!!」
「ふ～～ん・・・じゃあ、エッチな事はもうしないんだ～」
「あ・・・いや・・それは・・・・」
途端にアーが笑い出しました。
「・・・・・なんだよ・・・つか、またあんな事してもいいのかよ」
「え？・・・あ～・・・うん・・・・」
笑うのを止めたアーが、顔を赤くして言い淀みます。
「・・・あんな・・痛くしないなら・・・少しなら・・いいよ・・」
『少しって、なんだよ・・』
そう思いましたが口には出さず、
「いいのか？」
「・・・・・まぁ・・・うん・・・・・・でも、痛いって言ったら、今度はちゃん
と止めてよ！」
「あぁ、分かった・・・それは約束する」
アーが僕を見ています。
「・・・・・俺、アーが好きだ」
今更の告白ですが、なんとなくここで言うべき気がしました。
「姉弟だとか、他人だとか、そんなんじゃなくて、俺やっぱりアーが好きだ」
アーは黙って僕を見ていました。
「だから、俺・・・アーの全部が欲しい・・・・体も、気持ちも・・だか
ら・・・・」
なんと言ったら良いのか、言葉が続きません。
すると、
「・・・いいよ」
アーがその先を続けてくれました。
「アタシの全部、ターにあげる・・」
顔を上げると、アーが優しく微笑んでいました。
「・・・ターになら・・・・」
その目には涙が溢れています。
「・・・ありがとう！」
アーの体を力一杯抱き締めると、アーも僕の背中に手を回してくれました。
「・・・ホント言うとね」
「うん？」
「ターと裸で抱き合ってるのって、結構好きだったんだ・・・」

そのまま、かなりの間、僕達は抱き合ったままでいました。
公園の外れのベンチなのであまり見ている人はいなかったと思いますが、自分達の
大胆な行為に僕達自身が真っ赤になってしまった程です。
「・・じゃあ、帰るか」
「・・・うん・・・・・あ、待って・・」
「？」
僕が振り返ると、アーが少し恥ずかしそうに、
「あのね・・・・キスして・・くんない？」
と言いました。
「え？・・・・あ、うん・・・いいよ・・・」
辺りを見回し、近くに人がいない事を確かめます。
アーを見ると、もう目を閉じて顔をこちらに向けていました。
「・・・・・」
妙に辺りが気になります。
僕は周囲を見ながら顔を近付け、

――チュッ

軽く唇が触れただけで、慌てて顔を離しました。
しばらくして目を開いたアーが、これ見よがしに不満顔で、
「えぇ～～、今ので終わりぃ!?」
と声を上げます。
「うるせぇな、そんなの人前でやるこっちゃねぇんだよ・・・・・家に帰ったらい
くらでもやってやるから、もう少し待ってろ」
「・・・・・・チキン」
アーがぼそっと呟きました。
「！・・・いいから、帰るぞ！」
僕が背を向けると、
「もう、待ってよ・・・」
アーが自然に手を繋いできました。
僕もアーのひんやりした手を握り返します。
恥ずかしいような、それでいて嬉しいような不思議な気分・・。
僕達はそのまま仲良く手を繋いで歩き始めました。


こうして、僕とアーは恋人同士になりました。

更新が遅れに遅れてしまって申し訳ありませんでした。m(__)m

もう少し続きますので、よろしければお付き合いください。
（ペースは相変らず、ゆっくりボチボチだと思いますが‥。）

待ってたよ！
のんびり自分のペースで続けてくださいな

あきらめていたところでまさかの続編
待っていたかいがありました
ゆっくりでいいのでこれからもよろしくお願いします

こんなに待ち遠しいモノは久しぶりです。
マイペースに頑張って下さい
応援しています。