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君に呪いをかけられて。
カテゴリ: 官能小説の館    掲示板名:ノンジャンル 官能小説   
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1:君に呪いをかけられて。
投稿者: はるまき
ファンタジー要素、ショタ要素出てきますので、苦手な方はスルーしてください。

*************


神さま仏さま、魔王さま閻魔さま…

えーと、えーと…

この際誰でも構いません。

私の気持ちを踏みにじったあの男を、思いきり痛い目にあわせてください!

どうか、どうかお願いします。


*********

「おーおー、今日もモテてるねぇ。あんたの元カレ」

「…あんなやつ、元カレでも何でもないよ。あんなの付き合った内に入んない!」

「まぁまぁ。確かにあの別れ方は腹立つけど、あんまり騒いでると『取り巻きたち』に睨まれるよ」

「うぐっ……うぅ~悔しいよぉ~~あの性悪男めぇぇ」

賑やかな社員食堂。

1番人気のテラス席を陣取って、楽しそうにランチタイムを過ごしているのは、私の「元カレ」である来島遼太(くるしま りょうた)と、美人で華やかな取り巻きの女性社員たちだ。

窓から離れた日の当たりにくい席で、肉うどんを食べている私の名前は、榊塔子(さかき とうこ)。

今年で25歳、可もなく不可も無くな容姿、仕事の出来も人並みの平凡なOLです。

そんな私が、部署内イチのモテ男、来島くんと付き合うなんてこと自体、今思えばおかしなことだったのだ。

彼とは3年前、新入社員の研修で出会った。

顔が良いだけでなく発言力もあり、リーダーシップも取れる。

私とは住む世界が違うなぁと思っていたが、こんな平凡女にも分け隔てなく優しく接してくれるので、私は簡単に恋に落ちてしまった。

偶然にも同じ部署に配属され、私は毎日がとても楽しくて充実していた。

しかし平凡な故に彼にアプローチする勇気もなく、私は「気の良い同期」として接することに徹していた。

そんな私たちに間違いが起こったのは、今年の3月末。

『俺さ、榊のこと…前から良いなぁって思ってて』

職場で花見をした後、片付けたごみ袋を抱えているところで来島くんから突然の告白を受けた。

驚いてぶちまけてしまったごみを、笑いながら拾ってくれた顔が今でも頭から離れない。

私に断る理由もなく、晴れて恋人同士になれたのに、付き合って2週間も経たない頃…

『ごめん、やっぱ付き合うの無しにしてもらって良い?なんか…いざ付き合ってみたら何か違うかなぁって…』

という訳の分からない理由でフラれてしまった。

付き合っている間、彼は1回家に来てくれたので私は精一杯の手料理を振る舞った。
その夜に初めてセックスして、夢のような時間を過ごした。
それなのに「何か違う」ってどういうこと!?

突然の別れを私は受け入れられず、悲壮感にうちひしがれていた時に追い討ちがかけられた。


『本当に付き合ってないのぉ?榊さんと一緒に帰ってるの見た人たくさんいるんだよ~』

『付き合ってないよ~こんなに可愛い子たちに囲まれてるのに、何でわざわざ榊さん選ぶの?』

『ぷっ…やっだ、遼太くんひどーい(笑)』

『本当のことじゃん(笑)俺、みんなと遊んでる方が楽しいもん~』

休憩ラウンジで楽しそうに取り巻きとしゃべっているところを偶然聞いてしまい、私は愕然とした。

あんなに素敵な人だと思っていたのに、私はからかわれていただけなんだ。

悔しくて悲しくて、私は一晩中泣いた…

「…ていうのにあの男は!
相変わらず女はべらせて!良いご身分よね!!
っとに…腹立つわぁぁぁ~」

「そんな嫌な人に見えないけど…人って分かんないもんだね」

よしよし、と同期のみなみちゃんが頭を撫でてくれる。

「…私、あれからあいつに怨念送ってんの」

「は?」

「ネットで毎晩『呪い』『仕返し』って検索してるから!
あいつの下半身が爛れて、使い物にならなくなってしまえって思ってるから~~!!」

「平凡な顔して考えることがエグいわぁ」


良いでしょ、これぐらい思っても。

私はそれ以上に傷つけられたんだから。

どうせ気休めでしかないけど、あいつが痛い目にあうように願うことで、私は正気を保っているのだ。

*********

翌日、彼はオフィスに来なかった。

「え~来島くんだけど、急な体調不良で今日は休みだから」

(ま、まさか本当に爛れた!?)

ちょっと寒気がしたものの、良い気味だと思い直した。

彼のいないオフィスで、目の前の仕事を淡々とこなし、定時まで働いてまっすぐ家に帰る。

こんな平凡な日々を過ごしていけば、私の傷もいつか癒えるはすだ。


「みなみちゃん、帰れる?」

「ごめーん、まだかかりそう。先帰ってて」

「分かった、お疲れさま」

有能なあいつが休んでいたため、今日はいつもより忙しかったのが何だか悔しい。 

ため息混じりでオフィスを出たところで「おい」と声をかけられた。

視線の先には、見たことのない小学生か中学生くらいの男の子が立っている。

そして思いきり私を睨んでいた。

(え、私?だ、誰この子…)

「おっせーよ!」

「あ、あの人違いかなぁ?」

「…ったくお前なぁ、何てことしてくれてんだよ!」

少年は私に向かってズイズイと向かってくる。

「っ!!?」

びっくりして私は思わず逃げてしまった。

「おい!待てよ!!」

(なになになに?あの子なに!?こ、こわ~何で見ず知らずの子どもにキレられてんのぉ!?)

何度も迂回しながら、後を付けられていないことを確認して家についた。

ほっと安堵したのも束の間。

「お前~~どこほっつき歩いてたんだよ!」

「ひいぃ!!」

さっきのキレる少年は、さっきよりもキレた顔で私の部屋の前に立っていた。

「け、け、け、警察~!」

「落ち着け!榊、話聞けって!」

「な、名前まで知って…えぇ~ストーカー!!?」

「んぁ~もぉぉ…俺だよ!来島!!お前の元カレの来島だって!」

少年は真剣な面持ちでそう叫んだ。

「………は?」

「だからぁ、来島なんだって。朝起きたらこんなことになってたんだよ!」

「あ、悪の組織に、何か毒物を…」

「名探偵の話じゃねぇんだよ!!」

落ち着け。落ち着け私。

この戯れ言少年はきっと来島くんの悪戯だ。

何らかの理由でこの子を使って、私に嫌がらせを…

「…あのね、その来島って人に頼まれたの?
悪いけど私とその人は何の関係もないから。
もう暗いんだから、早くおうちに帰りなさい」

「…やっぱ信じねぇよな」

「いくら頼まれたとは言え、知らない人の家まで来て騒ぐなんてダメなんだからね」

「ピンクのレース。真ん中にちっちゃいリボン」

「え?」

「半月前、俺とセックスした時に榊が着けてた下着の色!」

「……えぇ??」

「あと、へその右側にほくろ。くすぐったいから触らないでって笑って…」

「ちょっ、まっ!…え、えぇぇ!!?」

「まだ信じない?他にもあるよ。首筋には」

「わーー!わ、分かったから!ちょ…い、1回入って!」

有り得ない、そんな漫画みたいなことあるわけない、と混乱しながら、私は少年の手を引いて部屋のドアを閉めた。

「やっと信じたか」

ふんっと腕を組みながら、混乱している私を見る少年。

「く、く、来島…くん?えぇ~~」

神さま仏さま、魔王さま閻魔さま?

こ、これって私のせいなのでしょうか?


つづく
 
2018/05/21 21:08:39(thh7PhBH)
17
投稿者: はるまき

*********

「ただいま~」

ガーー、ガコッガコッ、ガーガー…

家に帰ると、来島くんは鼻唄混じりで掃除機を掛けていた。

「た だ い ま !」

「わっ!あ、おかえり」

「…掃除してたの?」

「うん、掃除くらいは~と思って」

何だか、一緒に過ごした1週間の後片付けをされているみたいだ。

ここを出ていく準備をしているのかな…

じわっと視界がぼやける。

慌てて「ちょっとトイレ~」とその場を離れたが、途端にポロポロと涙が落ちてくる。

あぁもう、涙腺がバカになってる。

気持ちもぐちゃぐちゃで落ち着かない。

普通にしなきゃ、普通に普通に…

私は心臓を押さえながら、一生懸命に息を深く吸ったり吐いたりする。

ふぅぅ……うん、大丈夫。


「腹へった~夕飯なに?」

「今日はね、しょうが焼き」

「やった!俺すげぇ好きー!」

無邪気に笑う来島くんを見ると、胸がチクチクと痛む。

「…すぐ作るから、待ってて?」

「はーい」

バタンッ

「ん、何これ?」

冷蔵庫を開けると、そこにはピンク色の箱が入ってあった。

「あ、見つけた?」

来島くんはニヤニヤしながらこっちを見ている。

「その~何て言うか、お礼って訳じゃないけどさぁ、榊には迷惑かけたし…」

「これって…駅前の…」


『来島くん!ここ最近できたんだよ!チーズケーキがすっごい美味しいんだって!食べたいなぁ~』

『へぇ、こないだダイエットするって言ってたの、もう終わったの?』

『う……それは、えっと…でも、みなみちゃんが美味しいって…』

『へぇ~ふ~ん、榊のダイエットはすぐ終わるなぁ~』

『…っ、そんなことないよ!ちゃんとするもん!』

『はは、冗談だって。食べれば良いじゃん。行こうよ』

『行きませんっ!食べませんっ!来島くんひとりで行けば良いじゃん!』

『えぇ~榊が食べたいって言ったんじゃん』


「食べたいって言ってたじゃん。そこのチーズケーキ、絶品なんでしょ?」

来島くんが指差しながら、笑ってこっちを見ている。

「っ…!」

やばっ、と思うより先に、涙がボロボロッとこぼれた。

「え」

「あ、や、違…」

私は慌てて顔を隠したが遅かった。

「どしたんだよ、何泣いて…」

「ご、ごめん、違うの。こ…コンタクト!…が、ずれちゃって…やば、痛い…はは」

慌てて洗面所に行こうとしたら、後ろから腕を掴まれる。

「…コンタクトずれたって顔じゃないだろ」

だめ、見ないで。

「何かあったの」

何もない。何にもないんだよ、来島くん。

私たちの間には、もうすぐ何もなくなるんだよ。

来島くんは、この生活を終わらせようとしている。

それは当然のことなんだけど…だけど…

「榊?」

「…来島くん、会社に復帰するって連絡したんだね」

「へ?あ、あぁ。今週のうちには戻れるかなと思って。引き継ぎしかけてた仕事もあるし、なるべく早く…」

「っ…!」

『あいつ、俺たちに仕事の引き継ぎ頼んできてさ。もしかして、本社とかに異動じゃないよね?』

「え、それがどうか…」

「ごめんね!さっさと戻りたいよね!私のくだらない呪いのせいで、生活めちゃくちゃにしちゃってごめんっ!
あと1回セックスすれば終わるもんね?
は、早くこんな生活から…解放されたいよね」

「え、どしたの」

「もぉ~本っ当、ごめんね~
いくら元に戻るためとは言え、フッた女と何回もセックスするなんて、絶対精神的にキツいよねぇ。
あー本当、私が変な呪いなんかかけたせいで…」

「榊?いや、むしろ俺の方がいろいろ迷惑…」

「でもごめんっ!……ごめんね、来島くん」

もうだめだ。隠せない。

ボロボロと涙を流しながら私が顔をあげると、来島くんはびっくりした後、とても困った顔を見せる。

そんな顔させちゃってごめん。

だけど、もう…

「…もう、私…来島くんとセックス…したくない」


好きだから。

来島くんのことが大好きだから、これ以上できない。

自分から終わらせることが出来ない。

ごめんなさい。

来島くん、迷惑かけてごめんなさい。

私の涙は止まらず、喉は焼けるように熱くて言葉が出ない。

来島くんの手は私の頬に触れそうな位置にあったが、その手が涙を拭うことはなかった。

ザーーーー

外はいつの間にか雨。

もっともっと、大きな音を立てて降って欲しい。

私の情けない泣き声をかき消して欲しい。

**********

〈…で?私が空中散歩している内に、君は何をやらかしたわけ?〉

雨で濡れた羽をパタパタと振りながら、コニーは怖い顔をして俺を睨む。

「べ、別に変なことはしてない…と思う」

〈はぁ!?何もしてないのに、急に『セックスしたくない』なんて言う?〉

「シーッ!!あいつ部屋で休んでるんだからデカイ声出すなよ!」

泣きじゃくる榊を前にして、俺は何も言えず、何も出来なかった。

『…ごめん、今日は……ごめん』

フラフラとよろけながら、榊はそう呟いて部屋に入ってしまった。

「どうしよう、俺…相当榊に無理させてたのかな」

はぁ~とため息をつくと、コニーはトスッと頭に乗ってくる。

〈…全部が嫌々なら、ここまで呪いが解けることはないわよ。
ちゃんと、塔子ちゃんは来島くんのこと想ってたはずよ〉

「だけど…あんな泣いて、もう俺とはしたくないって…あぁ、でも普通そうだよな。自分をフッた男となんて…」

榊が俺に優しくしてくれるから、自分がどんなに傷付けてしまったか、つい忘れていた。

いくら事の発端は榊の呪いでも、そうさせたのは俺のせいなのに…

〈うーーーん…〉

唸るような声を出しながら、コニーは俺の頭の上で足をバタバタさせている。

「…今の俺、24歳なんだよな?もうほとんど変わらないから、別にこのままでも…」

〈ダメよ!完全に呪いが解けないと、エッチしない時間が続くほど、来島くんの身体はまた若返っていくわ〉

「…まじかよ」

〈おそらく…1週間で1~2歳くらい。1ヶ月もほっとけば、あっという間に元通りよ〉

「うーん、でもなぁぁ~」

はぁ、とうなだれる。

〈まぁ…逆に言えば少しは猶予があるから、ちょっと様子みてみたら?塔子ちゃんにも冷静になる時間が必要でしょ〉

「…そうだよなぁ」

ごめんな、榊。

傷つけてごめん。

早くちゃんとしたいのに、うまくいかない。

*********

昨日はいつの間にか寝てしまっていた。

腫れぼったい目を冷やそうとリビングに行くと、そこに来島くんの姿はなかった。

作りかけのしょうが焼きはラップをされて、キッチンはきれいに片付けられている。

「………っ…ぐすっ」

自分から拒んだくせに。

自分の方が苦しめてるくせに。

涙が止まらない。

ふとテーブルを見るとメモが置いてある。

『今日は家に戻ります。
また明日来るけど、
嫌だったら無視してくれて良いから。
ごめん。 来島』

〈…来島くんのこと、嫌いになっちゃった?〉

いつの間にかコニーちゃんが私の肩にとまっている。

「違っ…嫌いになるわけ…す、好きだよ…すごく、大好き…」

〈それなら何でエッチしないの?〉

「……全部終わっちゃう…来島くん、また離れていっちゃう…」

〈塔子ちゃん…〉

子どもみたいに泣きじゃくる私を、コニーちゃんは小さな小さな手で一生懸命撫でてくれた。

〈塔子ちゃん、この1週間来島くんと過ごして何を思った?〉

「え、何をって、…」

〈淫の気だけじゃないでしょ〉

「あ、当たり前じゃない!」

〈だったらその気持ちに向き合って、ちゃんと決着つけなさい!
…逃げても先延ばしにしても、何の解決にもならないわよ!〉

「…そうだけど」

〈自分の気持ち、ちゃんと伝えたら良いじゃない〉

「そ、そんな簡単なことじゃないんだよ。どうせ来島くん困らせることになるし…」

〈あーーーもうっ!!!〉

コニーちゃんの大きな声に私はビクッとなる。

〈塔子ちゃんも来島くんも面倒くさいわねぇ!
何なの人間って、こんなにウダウダしてる生き物なわけ!?

結局本当のこと言って、自分が拒まれたり傷つくのが怖いだけじゃない!
…困らせるって、こんなことになって今さら何言ってんのよ!
言い訳ばっかりして、逃げてるようにしか見えないのよーー!!!〉

ハァハァと息を荒くするコニーちゃんは、キッと私を睨み付ける。

〈…こんなんじゃ、一生呪いなんて解けないよ。
自分でかけた呪いに、塔子ちゃんずっと苦しむことになるわよ!〉

「……」

〈…来島くん、今日仕事に行くって〉

「え…」

〈どうする?仕事ずる休みでもして逃げちゃうの?〉

コニーちゃんが意地悪そうに笑う。

「……行くよ。顔洗ってくる」

私は腹をくくって洗面所に向かう。

〈…はぁ~本当面倒な人たちねぇ~〉

コニーちゃんは来島くんの書いたメモをペシッと蹴飛ばして呟いた。


つづく
18/06/15 06:10 (ZVHFfbuY)
18
投稿者: コロ
続きを 続きを是非にお願い致します!!
18/06/19 07:32 (qQsa97SV)
19
投稿者: (無名)
非常~に愉しみに待ってて、
ハッピーエンドで終わって欲しかったけど…

18/07/07 21:36 (.ZXKapl9)
20
投稿者: はるまき
コメントありがとうございます!
とっても嬉しいです(^-^)

仕事が立て込んでてなかなか書けず…
落ち着いたらまた続きを書きたいと思います!
またよかったら読んでください。
18/07/11 15:21 (GRYYRWuK)
21
投稿者: コロ
楽しみに待って居ります!!
18/07/12 07:18 (jWv3kF2M)
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