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1:春眠の花
投稿者:
いちむらさおり
2012/04/15 22:34:55(sBOolPf9)
投稿者:
ThirdMan
相変わらず面白い作品ですね。
あっという間に読んでしまいます。 本当に引き込まれます。 まったくいちむらさんの才能が羨ましいかぎりです。 書いているうちに暴走するのはよくあることです(笑) 作品に愛情がありますもんね。 いい物を作ってみたいと思ったら、止まらなくなるのは必然ですよ。 こっちも案の定、暴走が始まりました(泣) も、知らん ・・。 肩肘張らないとわかっているのにオトせなくなる。 ちゃんとオトせるいちむらさんは、やはりすごいと思います。 これからも、頑張ってください。 一ファンとして応援しています。
12/05/09 09:40
(Zx1Ickpt)
投稿者:
いちむらさおり
18
「私、この機械知ってます」 分娩台の隣で不気味な沈黙をつづける機器に視線を向け、私はつぶやいた。 それなら話が早い、と院長は顎髭をざらりと撫でた。 ヘラクレス──。 私は夢の中で、その能力を嫌というほど思い知らされた。 不妊治療という名目で受けた慰めに女性らしさを取り戻し、私の胎内で何かが実ったのも否めない。 「私は小村さんには一切手を触れない。やるのはこのヘラクレスです。では──」 院長は軽く咳払いすると、ディルド型の挿入部を私の性器にあてがう。 シリコン素材のスキニーな肌触りが、膣口径よりも太い圧力をあたえてくる。 その先端からローションを噴き出しながら、いよいよじゅるりっと入ってきた。 「ん……、うん……、ふっ……、はっ……」 これ……、すごい……。 「小村さん、これを口に──」とハンカチを渡してくれたのは佐倉麻衣さんだった。 私は相当変な声を漏らしていたのだろう。これを噛めという、エチケットの意味だ。男性に聞かれたくない女性の声にも色々あるのだ。 「んっんんっ……、んくんく……」 幾分ましにはなったものの、今日に限って体調も良好で、膣の奥から出てくるような声がしぜんに溢れてくる。 「子宮口まで届きましたね?」 院長に尋ねられて、私は微妙に頷いた。 「それではアプリを起動させます。気分が悪くなったら遠慮なくおっしゃってください」 縮こまって身構える私。 出海森仁がタッチパネルをたたいた。その次には私の中の異物が動き出し、愛液がはじけた。 私はハンカチをさらに噛みしめる。 「これから内視鏡が入りますので、膣には音波振動がつたわっているはずです」 彼の言葉どおり、すごい振動が体の内側を揺らしていた。 そして何やら蠢くものが穴の粘膜を舐めはじめた。何本もの触手に犯されているような、陰湿な快楽。 「うぐっ」 挿入部本体から生えた触手状の物体が、私のDNAをかきまぜる。 「臍(へそ)の下あたりを触ってみてください」 佐倉麻衣さんに言われてそこを触ると、膣の中でうねっている器具の動きが指先につたわってきた。 恥ずかしくて目眩がして気持ち良くて、アブノーマルな快感はとても甘い味がした。 白い肌に突き刺さる異物は、ヘラクレスという名の怪物だった。 「んぐっ、んっ、んん……ふぅ」 脳が喘ぐ。頭の中がぐちゃぐちゃなら、局部もぐちゃぐちゃだ。 気づけば私は、いくつもの手によって全裸に剥かれ、乳房と陰部に群がる男たちの餌になっていた。 膣を満たしていた器具も引き抜かれ、そこから湧き出る粘液で喉を潤そうと、誰もが舌をのばしている。 「あんっだっ、だめっあっああっ、いや……ひっ、やんっやめっ、てっあっあっ」 腰を逃がしてもクンニリングスが追いかけてくる。 「ううっ、おねがいしま……す、ふうん……、ああい、いい、いい、いい」 胸の先端は柔軟にころがされるし、乳房は彼らの私物となっている。 「患者の汁の甘いところだけが味覚に染みる」 「奈保子さんのような女性がいちばん甘くなる時期だ」 「このねばつき、この感度。ほら、僕の指なら四本でも足りないくらいに膣も成熟して」 「このクリトリスもまた興味深い」 「こんなに濡れるのなら、検査の前に言ってもらわないと駄目ですよ」 「こういう事をされるのが好きか嫌いか、僕らにはわかりますよ。婦人科のにんげんですからね」 それぞれに好き勝手なことを言いながら、自分の趣味を私に押しつけてくる。 でもしょうがない。だって……、気持ちがいいんだもの……。 口では拒絶して、逆に体は受け入れてしまう。その矛盾は彼らを興奮させるだけさせて、ついに本気にさせるのだった。 「卵子には精子が必要ですよね?」 「健康な子宮があるうちに、産める体づくりをしておきましょうか」 それは何か違う。不妊の原因は別れた夫のほうにあったのだから、いま射精されれば私は妊娠してしまう。 「いや……、だめ……、やめたほうが──」 「あなたらしくないですね、小村奈保子さん」 院長の出海森仁が厳格な口調で言った。 「不妊治療を望んだのはあなたじゃないですか」 「え、でも、それは確か夢の中の話で、今日はただの検診だけのはずです。……あれ?」 「どうして私が不妊治療のことを知っているのか、という顔ですね」 「もしかして、じゃあ……、あれも夢じゃなかった……ってこと?」 「時は熟したようですね」 そう言って白衣をひるがえした彼は分娩室を出ようとして、右手で拳をつくり、人差し指と中指のあいだから親指を突き出した。 それは何かのメッセージなのか、それとも気まぐれから出たリアクションか。 彼の姿が扉の向こうに消えた直後、三日月みたいな鋭い目をした男性スタッフは私を真上から見下ろし、露出した下半身で私の骨盤を突き上げた。 私、犯されちゃう──。 グロテスクな男性器は私の膣を軽々と貫いた。 余分な皮のたるみもない黒いペニスは、私の視界のすぐそばで、盛りの膣穴をずぶずぶと埋めていく。 私は砲丸投げの鉄球を思い出した。ちょうどそれが膣から入って子宮にぶつかるような危ない快感が、胃袋のすぐ下に衝突していたのだった。 私はただへらへらと舌を出して、犬みたいに「はぁはぁ」言うのが精一杯だった。 誰も助けてくれない。このまま精液を注がれて卵子と結びつき、子宮に着床してしまったらそれで終わりだ。 産めるだけ産め、精子ならいくらでもある。 そんな彼の腰づかいに私は気絶寸前まで上りつめようとしていた。 イク……、だめ……、イク……、いやだイク……、もう……。 成人男女の肉体と肉体が交わる音は、おぞましくも女々しい性愛の奏でだったのかもしれない。 雄しべから吹き出した種子の流動を雌しべに感じたまま、私はとうとう快感の天井を越えたのだった。 目を閉じると膣の痙攣がはじまり、子宮の収縮とともにオーガズムはセカンドオーガズムへとつづいていく。 生殖器官が震え、女性ホルモンが増殖しているみたいに全身が潤う。 きっとこれで良かったんだ。 そう自分に納得させて、私はふたたび目を開けた。
12/05/09 23:18
(3kpSo2H2)
投稿者:
いちむらさおり
19
部屋の中は、しんと静まり返っていた。さきほどまでとは明らかに違う景色が、ふたつのレンズに映っている。 昼間の明るさが窓から射し込んで、レースのカーテンの向こうに青空が見える。 私はひとり、病室のベッドから身を起こして、まずは両手を、そしてパジャマの胸元や内股のあたりをぼんやりと確かめた。 どこにもおかしいところはない。それどころか、気分はとてもおだやかに晴れている。 ハーブガーデンを眺めながらアールグレイを楽しんでいるような、贅沢な時間の中に私はいた。 欠伸(あくび)が込み上げてくることもないほどに、確かな目覚めだった。 さっきまでのアレは全部夢だったのだろうか。それとも私は、レム睡眠とノンレム睡眠を規則正しく繰り返していただけだったのか。ところで今日は何月何日の何曜日で、私の不妊治療はどのあたりまで進捗しているのだろう。 はっきりさせたい事がいくつも頭に浮かんで、そのどれもがまだ曖昧だと思っていたときだった。 コンコン……、と病室のドアがノックされた。私は返事もできずにそちらに視線だけを向ける。 ドアが開き、白衣を着た男性が入ってきた。 「小村奈保子さん、おはようございます。気分はいかがですか?」 出海森仁医師だった。 「目が覚めたら体調がとても良くて、それで、素敵な夢を見ていたような気がします」 「うんうん、催眠アプリを選択したのが正しかったようだ。とても良い顔をしています」 彼はベッドの私に寄り付き、骨董品でも扱うような手つきで私の顔の輪郭を撫でた。 医師はさらにこう言った。 「あなたは二つの夢を見ていましたね?夢のような夢と、現実のような夢」 「はい」 「どんな夢だったのかは私にはわかりません。ただ、その夢のおかげで小村さんの女性ホルモンに変化があらわれたのは確かです」 「それはもしかして……、不妊治療のことですか?」 私の問いに対して彼は、肯定でも否定でもない微妙な笑みを口元に浮かべ、愛おしい者を見る眼差しで迫ってくる。 不思議だった。ただの医師と患者の関係なのに、彼に髪を撫でられ手を握られても、嫌な気はしなかった。 「まだ夢の残像が消えませんか?」 「いいえ、大丈夫です。なんだか気持ちの整理がつかなくて……。ここは本当に現実の景色なんだ、ってようやく気づいたばかりで、もう少し時間が──」 「急がなくてもいいですよ。私がじっくりと現実を見せてあげますから」 そうして出海森仁医師は病室のドアに向かい、内側から鍵をかけた。 密室に二人きり──。 「いつ退院できますか?」 私が訊くと彼はふたたび私に半身を寄せて、「不妊が改善されたかどうか、私が確かめてさしあげましょう」と言って白衣を脱ぎ捨てた。 その視線は私の全身を隈無くたどり、それからゆっくりと私の肩を、背中を、そしてお腹を手でやさしく撫でてきた。 「奇跡は待っていても起きない。自ら起こすものなのです」 「先生、私の卵子に奇跡をください」 「奈保子さん──」 彼は私の着衣を大人しく脱がして、欲求の溜まった目をしたままブラジャーとショーツに指を忍ばせる。 唇を奪われそうなほど体を密着させているのに、それはしない。 けれども出海森仁氏の指は確実に治療とは無関係な動きで、入院患者である私のマイナス部分を取り払い、プラスの愛撫を体中に加えてくる。いや、むしろ掛け算の愛撫かもしれない。 わざとらしいといえばわざとらしいが、女性の扱いに迷いがない。 「はっ、はふっ、ふっ」 私の息はもう熱い。ブラジャーの上から乳房を揉み揉みされ、脚の付け根からショーツの中に潜り込む指はクリトリスにいたずらを仕掛けてくる。 じゅわっと果肉がほぐれて、くちゅくちゅと果汁を出す。 すごく濡れていると、彼は言った。 そんなはずはないと、私は否定した。 賢くて美しい女性だと、彼はさらに言った。 女は産む性であり、男は産ませる性である。だから自分は悩める女性に手を差しのべるのだと、出海医師は熱く語った。 私はおそらく彼に洗脳されているのだと思う。なぜなら私にはその自覚症状があるからだ。 体の関係を求められても拒めないように、例のアプリケーションで洗脳したに違いない。その証拠ならもう私の体の反応に出ている。 女が女であることを自覚する瞬間は、男に抱かれて愛をささやかれている時に他ならない。 私はいま、女以上に女になっていた。カップをずらされたそこに乳房も乳首も目立ち、ショーツのデリケートな生地を指ごと膣に押し込まれる。 「あんだっ……だめ、はあ……」 指はさらに奥へ通され、不潔な快感が下腹でくすぶっていた。 「奈保子さん……、とても素敵だ……。あなたのような女性はほかにはいない……」 出海医師がささやく。その口が私の乳頭をかじり、舌は粘着して転がる。 彼は私のことを全裸に脱がせて、肌の上から下までを丁寧に舐める。全身をクンニリングスされているような、鳥肌の立つ行為だった。 「そんなに可愛らしい声で喘がれると……、はあ……はあ……、意地悪してあげたくなりますよ……」 そう言って彼もとうとう全裸になると、信じられないものがそこに存在していた。 彼は40歳を越えているはずだった。いや、50歳にも達しそうな面構えだ。 それなのに、服の上からではわからなかった若々しい肉体と、その年齢に比例しないペニスが彼をより凛々しく見せていた。 二人してベッドから下りると、これを口にくわえろと言わんばかりに彼は腰を突き出し、私はその前にひざまづいた。 そして──、口に運んだ。 フェラチオからつたわってくるのは、彼の体温と異臭と体液の味。 よだれが顎から首すじをくびれながら伝う。 陰嚢まで茂った恥毛を見つめ、男を満足させる行為をつづける私。 「素人とは思えない良い仕事ができるじゃないですか。うっ……、うっ……。あなたはこれを使いなさい」 性欲の衰えを感じさせない医師は、私に道具を手渡してきた。それは長くて太いバイブレーターだった。 「アプリでの遠隔操作が可能なタイプです。さあ、遠慮はいらない」 彼に促されるまま私は軽く頷いて、とっくにできあがっていた女性器に目掛け、またがった。 「あん……、ああ……うん……」 バイブレーターの先端を感じるのと同時に、甘い刺激が脳内で分泌された。 さらさらした愛液のあとから、ぬるぬるした愛液が溢れ、私はその異物を膣に挿入していった。 がくん、と腰が落ちて、直後には体を裂かれるような悦楽に犯された。 「奈保子さんはそうやって、いつもひとりでしているんですね?」 「いいえっ、あっあっ……、ちっがいます」 「セックスも好きだけど、オナニーも好きなわけだ?」 「知りっません……、うっふっ……」 「私の理想に適った女性が自らの意思でオナニーをしてくれている。私は産婦人科の医師をやっていて本当に良かった」 そこまで言ってから彼は、脱ぎ捨てた白衣のポケットからスマートフォンのような端末を取り出し、ひらめいた顔で画面を操作した。 私の中でなにかが起こった。じゅわっと唾液が染み出し、脇の下に熱い汗を感じ、涙腺から感情が滲む。 そして子宮から膣に向かう生理現象の流れは、オーガズム以外の何ものでもないのだと実感した。 バイブレーター本体の振動や回転だけではない、それ以外の何かが作用しているのかも知れない。 私の体は絶頂した。 力なくへたり込む私の中で、バイブレーターは尚も乱暴な能力を見せている。 「一度イったぐらいで満足する体ではないでしょう?」 「はい……、先生……」 出海森仁は両腕で包容しながら私を立ち上がらせると、膣からバイブレーターが抜け落ちないように手で支え、そのまま窓際まで連れて行かれた。 「この病院からの眺めは最高ですよ」 彼の肉声が私の耳元で聞こえ、次にはカーテンが全開にされていた。 外の景色がよく見える。ということは、外からもここが少なからず見えているはずなのだ。 この病室は上層階にあるようだが、全裸の男女の上半身が絡み合う様子は、特定の場所からならば肉眼でも確認できるだろう。 私と彼は向かい合わせで窓辺に立ち、彼が私の乳房にしゃぶりつくと、私の背中は窓ガラスに張りついた。 「やっ、先生……、こんなところで……、誰かに見られたら……、はうあん……んふん……」 「いいじゃないですか……、この方がお互い興奮できて……、完全燃焼できるのだから……」 出海氏は何度も私にキスをしては、左肩に私の右脚を引っ掛けさせ、つり上がった陰唇にサンドイッチされたバイブレーターを、ごしごしと出し入れさせる。 恥ずかしいくらいに愛液が匂う。もう潮を吹かずにはいられない。 窓の外から背中に感じる視線も私を犯している。 「こんな淫らな行為が、罪に問われると思いますか?」 全裸の医師はそう言って、私の応えを待った。
12/05/13 23:55
(Qp.S4HoK)
投稿者:
いちむらさおり
20
「い……いいえ、あんもうだめえん……、先生だめぇ、イクぅ、ひイクぅ、イぃ……クぅ……」 「どこがどうイクのか教えて欲しいですね、ほら」 彼の突きの強さに子宮も圧しつぶされる。 「あ……あそこ……、く、クリトリス……が……、イク……ん……」 「女性の秘密を教えてください、もっと、もっと」 「はぁ……あう……、ゆ、ゆるして……、お……お……まん……こが……、だめに……なっちゃう……んっ」 「奈保子さんが言うと余計に色っぽい。言わせたこっちが照れてしまいますよ、まったく」 彼はまたその脂ぎった顔面を私の胸にうずめ、左手で背中を引き寄せ、右手のバイブレーターで女性器の深いところを物理的にいじくりまわす。 いつまでも終わらない、二度と引き返せない、一度目を上まわる肉体の絶頂が、失恋に似た未練とせつなさを私にあたえた。 もしも今日が桃の節句ならば、お内裏様に見初められたお雛様は、言い寄られるままに女の杯を男の甘酒で満たし、あれよあれよと夫婦(めおと)の契りを隠密に交わす。 そんな物語があってもいい。お雛様だってセックスもするし、オナニーもするだろう。なぜなら、女性は誰もがお雛様なのだから。 「なかなか派手にイク女だ、君って人は。安全日や危険日なんてものは存在しない。今日は君と私の記念日になるんだよ、奈保子」 出海森仁の態度が微妙に変わった。彼は私からバイブレーターを引き抜いて、無造作にそれを投げ捨てる。それから私を床に這わせた。 『orz』の格好にさせられた私の背後から、獰猛な生殖器が飛びかかる。 じゅぱん、びちゃん、ねちょ、ねっちねっちねっち──。 腰と腰が衝突して、ペニスはヴァギナを掘り進む。彼が唸れば私が喘ぎ、首を左右にいやいやさせる。 彼の骨盤が私のお尻を揺すれば、性器のつなぎ目からは熱い体液が糸をひいて飛び散った。 夢の中で味わったどの快感よりも、現実のそれは容赦がなかった。 私は何度も絶頂し、何度も許して欲しいと懇願した。彼は何度も射精し、何度でもやらせろと威張った。そして、愛しているとも言った。 私はもうだめだ。気絶から立ち直ったとしても、彼はまた私を失神させようとするだろう。それだけのものを彼は持ち合わせている。 膣がはちきれそうな性的ストレスを感じ、大量のザーメンは子宮口を塞いでいる。 そんな時だった──。 病室のドアの鍵がガチャリとはずれ、開け放たれたそこから誰かが飛び込んできた。 そして私たちを見つけるなり、こう言うのだ。 「パパ、もうやめて!」 そこにいたのは、夢の中で出会った女子高生、愛紗美ちゃんだった。 出海森仁医師の狼狽(うろた)えようを見れば、彼と彼女が親子の関係にあることは疑いようがなかった。全裸の私もとうぜん狼狽えた。 「愛紗美、ここには来るなと言ったはずだ。はやく出て行きなさい!」 「なんでそういうことをするの?その人にひどいことしないで!」 少女は父親に向かって興奮気味に訴えている。 「違うんだ。彼女は、小村奈保子さんは不妊治療をするために私を頼ってきたんだ。私だって一応産婦人科の医師だからね。愛紗美にはまだ理解できない世界かもしれないけど、大人には大人の事情があるんだ」 「事情事情って、結局セックスがしたいだけじゃない!そうやってあたしのこともレイプしたくせに……。ひどいよ……、パパ……」 彼女は涙で顔を濡らしながら、こちらに歩み寄ってくる。そして私をかばうように彼から離すと、その清純な制服に自ら手をかけていく。 「愛紗美ちゃん……、なにしてるの?」 「奈保子さんはあたしの夢を見たんでしょ?あたしも奈保子さんの夢を見たんだ。あたしを痴漢から助けてくれた。だから今度はあたしが──」 あどけない下唇を噛んだまま俯いて、順調に発育した体をさらけ出すように、彼女は下着姿になってはにかんだ。ふわっと、若いホルモンの匂いがした。 私の代わりに、実の父親である出海森仁に抱かれようというのだ。 「だめよ、愛紗美ちゃん。あなたはもうこれ以上汚れちゃいけない」 しかし彼女は私の声を聞き入れようとはしない。 花瓶のように白い肌から白い下着がすべり落ち、かつての自分みたいな淡麗な理想肌がそこにあった。 「私は愛紗美をレイプしたつもりは一度もないよ。だって、あんなに愛し合ったじゃないか」 彼は異常な目で言う。彼から受けた淫らな治療のせいで、私の体はもうくたくたに疲れ果てていた。いまの私では彼女を止められそうにない。 その初(うぶ)な乳房と、くびれた股間の割れ目を、彼はその肉親の手で溺愛するのだった。 「可愛い愛娘をレイプする父親がどこにいるというんだ。そうだろう?どうなんだ?こうして欲しいのか?」 出海森仁は愛紗美というかけがえのない存在を、自分の思い通りの色に染めていく。彼が愛撫した部分は明らかに火照って、生々しく紅潮していった。 「先生、やめてあげてください。彼女はまだ高校生です。もっと別な愛し方があるんじゃないでしょうか?」 「どんな愛し方をしようが私の勝手だ。それとも奈保子さん、君が私の新しい妻になってくれると言うのなら、愛紗美を許してあげてもいいのだが」 「そんな……」 私が絶句するそばで、彼の指は未成年の膣をぐずぐずとこねている。そこから透明な液がたらたらと滴り、彼女は細い体をよじってすすり泣く。 「それならこうしよう。もう一度だけ、君なりの言葉で私を誘うんだ。私が奈保子さんを諦められなくなるくらいの台詞を」 出海森仁は筋肉を汗で光らせながら、私を見下ろした。 しかし、なにを言ったらいいのかわからない。果たして彼の望むものが私の中にあるのだろうか。 私は床にお尻をついて両脚を外側に開き、左手で乳首をまさぐり、右手で性器に乱暴した。 そして──。 「私……、私は……、無理矢理犯されてもイクし。ええと……あれは……その……、フィストファック……だと思うんですけど、それも経験済みで。可愛い雑貨だって……、オナニーに使ってしまいます。だから──」 「だから?」 「私は自分で濡らした、お……、おまんこをひろげていますから、だから、私のおまんこを貰ってください、先生」 「そうですかそうですか。クスコやペンライトにも興奮しますか」 「はい、先生……」 「着せ替え人形の手足で、ひとり遊びをするのですね?」 「はい、おもちゃにします……」 「臨月だろうと、ぎりぎりまでは私に抱かれたいと言えますか?」 「はい、かまいません……」 「生理から解放されるなら、私の子どもを妊娠してもいいのですね?」 「え……と、それは……」 私はそこで口ごもってしまった。彼の洗脳に流されてしまいそうになるところで、ある人物の顔が浮かんだからだ。 「篤史さん──」 もうずいぶんと久しぶりにその名を口にしたような気がする。 そう、あれは夢の中で会ったのが最後だった。 片方の夢では、私と風間篤史は恋人の関係にあった。 もう片方の夢では、私は彼との結婚と離婚を経験し、人生の歯車を狂わされてしまっていた。 そして今、現実の彼はどうしているのか。それは私の左手薬指で光り輝いていた。 いや、私たちは入籍と挙式を目前に控えながら、彼だけが不運な事故の被害者になったのだった。 受け入れなければいけないのは淫らな夢ではなくて、今ここにある現実なのだ。 なぜだか私の頬を熱い涙がつたう。 ごめんなさい。あなたの子どもが欲しかったのに、こんな男の汚い精子で尊い卵子を浪費してしまう私を、どうかゆるして。 出海医師は自分の娘をベッドに運ぶと、振り返りざまににやついて、無防備な私を正面からレイプした。 「いやあああ……!」 太いペニスの頭は、女性のいちばん感じる部分を局地的にすり減らしていく。 そこにはオーガズムのスイッチが眠っていて、彼はそれを知っている。 卑怯な行為だけれど、彼の肉体と離れたくない、そう思う自分がいた。 脳が酸欠になり、アルコールがまわるような感覚に体が揺れる。 全裸に布団を重ねただけの出海愛紗美は、潤んだ目でベッドの上から私たちの行為を見つづけている。 愛紗美ちゃんにも、ごめんなさい。 私は快楽の中で彼女に謝罪した。
12/05/16 11:53
(LTkWa/ky)
投稿者:
いちむらさおり
LAST
するとどうだろう。開けっ放しの病室のドアの向こうから人影があらわれ、スマートな身のこなしで私たちにこう言う。 「やっぱりここにいたのか、父さん」 いずみ記念病院の医師であり、出海森仁の息子、出海陽真その人だった。 森仁はとっさに私を突き放し、この有り様を「なんでもない」と言った。 しかし陽真は詰め寄る。 「医師の免許もないくせに、父さんはまだこんなことをしているのか!」 医師の免許がないとは、聞き捨てならない言葉だった。陽真はさらにつづけた。 「想定外の医療ミスだったかもしれないけどさ、それが原因で医学会から追放されて、どうしてホームレスなんかしてるんだよ!いったい誰の背中を見て俺が育ったと思ってるんだよ、ちくしょう!」 やるせない思いが森仁の表情に滲み出ていた。もう私をレイプする気力も失せたようだった。 そして私はようやくわかった。出海森仁がなぜ私の夢の中でホームレスの姿をしていたのかが。 「愛紗美にまでこんなことをしておいて、恥ずかしいと思わないのか?」 「もういいよ、お兄ちゃん。あたしなら大丈夫だから」 「愛紗美に謝れよ」 「いいってば」 兄と妹と父親それぞれが言い終えたあと、森仁がもう一度口をひらいてぼそりと呟いた。 「すまない……、愛紗美」 許したいけど許せない部分がある、そんな複雑な思いが彼女には漂っていた。 「すみません、小村奈保子さん。見るつもりはなかったんです」 そう言って陽真医師は全裸の私にシーツをかけてくれた。 私が礼を述べると、彼の業務用モバイルフォンに着信があった。 「はい出海……、ええ……、そうですか、わかりました」 彼は真剣な目をさらにきりりと引き締め、父親に告げた。 「父さん、佐倉麻衣さんの陣痛がはじまったみたいだ。言っておくけど、正真正銘父さんの子だからな」 まさか、と森仁はその可能性を思い起こしているようだった。 「出産に立ち会わないなら、今度こそ許さないからな、父さん」 「パパ……」 兄妹ふたりして父親の後押しをする。そこには、切っても切れない家族の絆があるのだと思った。 身なりを正した森仁は父親の顔を取り戻し、振り返りもせずに病室を出て行った。 陽真も一度病室の外に出て、それから私と愛紗美ちゃんが着替えを終えた頃にドアをノックして中に入ってきた。 「小村さんにはなんと言ってお詫びすればいいのか。父が失礼なことをしたようで、僕が代弁して謝罪します。すみませんでした」 彼の態度は気持ちいいほどに私に伝わってきた。 訊きたいことがあるのだと、私は彼に質問してみた。 「僕がお答えできる範囲であれば伺います」 「不妊治療のアプリのことなんですけど」 「ああ、『ヘラクレス』のことですね」 「はい」 「あれは元々僕が所属する学会チームがあたためていたものなのです。ですから今回父があなたに使用したアプリは、父が勝手に書き換えた偽物なわけでして。これも重ねてお詫びします」 「そんなものがあるんですか。それで私の体は今どんな状態にあるのでしょうか?」 「父が使用したアプリはおそらく、催眠だとか洗脳の類のものかと思われます。後遺症はしばらく残りますが、実生活に支障はない程度だと思っていただいてかまいません。つまり、今まで通りの綺麗な奈保子さんのままだということを、僕が保証します」 「それはどうも──」 彼の優しさに触れて、私は赤面した。 「お兄ちゃん、ひょっとして奈保子さんが好きなんだ?」 妹の方が口を挟む。 「素敵な女性だとは思うが、既婚者だしな」 兄の方は私に好印象を抱いているらしい。スルーし難い話題を私はスルーした。 そして話は『いずみ記念病院』のロゴマークについても語られた。 四つ葉のクローバーに秘められた意味。それには父親、母親、長男、長女の四人が集って、医療の未来をクリーンにするという思いが込められているらしい。 両親が離婚して母親とは離れ離れになったが、看護師の佐倉麻衣さんのお腹には父親との子どもがいて、賑やかな家庭がもうすぐ戻ってくるということだった。 「ところで、あらためて不妊治療のお話をさせていただきますが──」 若い医師は手を前で組み、姿勢を伸ばした。 「体外受精という選択肢もありますが、いかがですか?」 「はい……え?ということは、私の卵子は受精できるってことですか?」 「不妊治療が実を結びました。おめでとうございます、小村さん。あなたの体はいつでも妊娠できる準備ができていますよ」 そうなのだ。私の卵子はかなり弱っていて、精子と結びつくことが難しいと診断されていた。 でも彼らのアプリ治療のおかげで卵子が再活性化し、自然妊娠はむずかしいものの、体外受精した受精卵をふたたび子宮にもどしてあげれば、私は晴れて母親になれるということだった。 女性であることを尊重された喜びと、今まで積み重ねてきた治療の副作用を思い出し、私はまた涙した。 「余談になりますが、精子バンクに保管されている精子は『冬眠状態』と呼び、また卵子の場合は『春眠状態』と言います。我々医師のあいだでしか通用しない隠語のようなものですが、なかなか良い表現だとは思いませんか?」 彼の口調には女性の緊張を解く何かが含まれていて、涙腺の弱くなった私はもうハンカチが手放せなくなっていた。 今ではまったく使われなくなった病棟の一室に幽閉され、レイプ同然の忌まわしい不妊治療を受けたことも、忙しい日々の中でいつか風化していくことだろう。 退院を見届ける病院スタッフの前で重ね重ね腰を折り、私は華々しい気分で春の陽気の中を歩き出す。 「おかえり、奈保子」 木の枝の恒(ひさし)の下、萌えるような新緑を傘にかぶった彼がそこにいた。 「ただいま、篤史さん」 恋しい思いを募らせた私は、車椅子の彼のもとへと駆け寄る。 ありふれた出会いから恋愛を成就させ、あの日、お互いの未来を約束した直後に私たちは事故に遭った。 私は無傷で済んだけれど、彼の方は下半身不随になってしまい、同時に生殖能力も失った。 しかし彼はこうして生きている。 それからこれも奇跡的な事実だが、事故に遭う前に彼は精子を採取されていて、それは今も精子バンクで冬眠しているのだった。 だからこそ私は不妊治療を望み、賭けて、あたらしい生命を育んでいこうと決心できたのだ。 「なんだか今でも信じられない気分だけど、あなたの言うとおり、もっと早いうちに不妊治療を始めていれば良かった。だって私、こんなにも幸せなんだもん」 あの夢のはじまりで私自身が言った台詞を、今度はなんの疑いもなく彼に報告できていた。 私は思った。これが夢なら覚めないで、と。 ふと、道端の雑草の中に四つ葉のクローバーがあるのを見つけた。 するとどこからか赤いてんとう虫がやって来て、迷わずその葉にとまった。 それはあの病院で出会った四人の面影と重なり、姿なき産声を私に聞かせた。 きっと、かけがえのない命が産まれたという、虫の知らせだったのかもしれない。 おわり
12/05/17 11:59
(U99ekj5Y)
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