そうして田中家に入ると少し背中は曲がってしまったが、背の高いおばあさんがいてすぐに田中の母親とわかった。
田中がほら、鈴木だよというと、あらあらやす君すっかりおじさんになって!と笑っていた。
そして田中の部屋へ入るとキレイに整頓されていて、さっとアルバムが出てきた。
『田中の部屋に入るの初めてだな』
「そういえばあんたんちに入ったこともないわ」
『俺は何度か用事で玄関先まではあるけど、女の子の家ってだけで、なんか照れくさかったわ』
「今どきとは違って異性の同級生と一緒に遊んだり仲良くしなかったもんね」
『すぐにできてるー!とかからかわれるしな』
「そうそう、今考えると意味不明w ほらかわいいあたしとご対面」
『うーん…何?まぶしいの?』
「まぶしかったw」
『小学校の卒アルも眩しそうにしてたろ?』
「よく覚えてるね、あたしのこと好きだったの?」
『いや好きではなかったな?w てかやっぱりかわいいな、モテたろ?』
「はっきり言うなぁw ま、あんたはオカが好きだったもんねw 彼氏はいたね」
『バレバレだったかw 何人?片手で足りる?両手必要?』
「おい!w人聞き悪いw」
『で?何人?』
「まだ聞くか!w」
「この時点では2人w」
『どの2人?』
「1人はバイト先の先輩で写ってない、もう1人は…へへ」
『知ってるヤツか…てかヨッチか!』
「ま…まぁ…ヤバい照れるね」
『そうかヨッチが田中の処女を奪ったか』
「それは先輩の方…って何言わせんのよw」
『ヨッチちょっと羨ましいな』
「え?」
『いや、だってこのかわいい女の子を抱いてたわけだろ?そりゃあ羨ましいさ』
「ハイハイ50過ぎたおばちゃんじゃ羨ましくないってわけね」
『今は今だろ?今だって田中を抱いた男がいたら羨ましいさ、この当時の田中はこの当時しか抱けないからな、そして今の田中を抱けるのも今しかない』
「哲学だねw」
『まぁぶっちゃけいうと、この頃俺は童貞だったのにって嫉妬心さw』
「そうなの!?w」
『そ。恥ずかしながら』
「ていうか、何の話してんのうちらw」
『人に歴史ありって話?』
「40年ぶりに会って小一時間でする話?w」
『だからこそできるんじゃね?ちょいちょい会ってたら余計恥ずかしいだろ?少なくとも高校の同級生に、当時童貞でしたなんて言えんわ』
「確かにw」
そこからは小中学生の時のアルバムを見て、当時好きだった子をお互い教え合い、その子はこいつとつきあってたたぶん奪ってる
こっちの子はこいつと中学からずっとつきあってたから、たぶん初めてはこいつ。ていうかやっぱりこの子のこと好きだったのねw
なんて笑われたり、田中は初恋はうちの兄貴だったとカミングアウトされて驚いたり、話は弾みに弾んで2時間程時間が過ぎ、時間は昼に差し掛かっていた。
片付けもあるしそろそろ退散と思っていると
「お昼は?」
『コンビニで買うかな?』
「お母さんのお昼の支度するから、その後一緒にお昼行かない?」
『OKいいよ、少し片付けしてるから連絡して』
「OKじゃあまた後で」
そしてお母さんに挨拶して、自宅の片付けに戻った。
1時間ほどして田中から連絡があり、車出すか?と言うとちょっと飲まない?となった。
土曜日だったので我が故郷の小さな町の駅前にも昼飲みできるところがあり、ホルモン焼きをしながら乾杯した。
居酒屋ではどちらかというと近況報告会といった感じで、田中は7年前に離婚してこの団地に戻ったそうだ
『なんで別れたんだ?』
「子供ができなかったからかな?それでだんだん冷めていって、お互い浮気してた。」
『なかなかダークな展開だな』
「同窓会で吉野と会ってさ、なんか盛り上がっちゃったのよ、でまぁ…そういうこと」
『つくづく羨ましいやっちゃな』
「鈴木はどうなのよ?」
『俺は田中と交代に結婚した感じ』
「7年前に?2度目?」
『いや初婚』
「へぇ…そこで初体験?w」
『まさかwうちがあんなだったから結婚に希望を持てなくてね、嫁には拾ってもらった感じ』
「へぇ…初体験は?」
『21』
「遅かったね」
『なんかね、傷つきたくなかったのかな?』
「ふられるのが怖くて?」
『そうそう、あと仮性包茎なのが恥ずかしくて…かなw』
「小さいの?w」
『たぶん普通なんだけどね、昔は包茎は恥みたいな包茎手術の広告が多かったしさw』
「ふーんwその後は?」
『ちゃんとモテ期もあったし、やりまくってたこともあるw』
「結婚してからは?」
『浮気?ないない』
「するつもりは?」
『機会があればね、自分は?』
「吉野とももう終わって、もう50過ぎたおばちゃんに声かけるような男はいないよ」
『俺はすれ違った時にいい女と思ったけどな』
「機会作ってみる?」
『いいね、作りたいと思ってた』
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