2010/11/15 12:20:40
(laIY8oke)
みなさま励ましのレスありがとうございます。
息も凍る雪の積もった道を晴れた日に牧方氏と散歩をし,集落の農家に手伝いに行くのと,風呂を沸かすのが仕事と言えないですが日課となりつつありました。
集落の人々は牧方氏の事を
「社長さん」
と呼ぶのを以前から不思議に思っていたので,牧方氏に聞いてみた事がありました。
「呼びやすいからだろう。」
笑っていたので手伝いに行った農家で聞いてみると
「そのままさ。俺たちにとってはあの人がいなかったら生活できない位,恩を感じているからさ。」
他のどこの農家よりも集落の人達の乳製品や産物を優先的に買い付けできる様に便宜を計ってあげた事を知りました。
「あの人には足を向けて眠れねぇよ。」
笑いながら話していたのでした。
牧方氏の家に居着き一月ほどした暮れの事でした。
集落の人達が集まり屋根に積もった雪を下ろし,家中の大掃除に朝から集まってくれました。
各家の都会に出ていた子供達や孫達まで午後には集まり,餅つきをしてはしゃぐ姿に東京では味わえない幸せを感じたのです。
「良いお年を。」
大きな鍋を囲み飲み明かし,最後の人が帰って行ったのは夜も遅い時間になっていました。
「楽しかったですね。」
「そうだね。」
「みんな良い人達で。」
「私には家族みたいなものだよ。」
話す氏の顔を見ていて,本当の息子さん達とまだ会った事がなかったのに気付きました。
「圭一は帰らないで良いのかね?」
私もずっと考えていた事でしたが,言い出せないままでした。
北海道に来た頃,一度電話をしたきりで,毎年正月には帰っていたのですが。
「大丈夫ですよ。」
「故郷はどこかね。」
「はい。遠いです。四国です。」
「四国のどこら辺?」
「松山です。」
「帰ってくるの,待ってるんじゃないのかね。帰ってあげた方が良い。」
あと三日で新年を迎えると言う時期に‥
予約もなくチケットも無理だろうと思いました。
「今年は電話にしておきます。飛行機ももう無理でしょうから。お盆にでも帰ってきますよ。」
「いや。帰った方が良い。松山だね。なんとかしてみるから。」
そう言いどこかへ電話を掛けてくれたのでした。
翌朝,目覚めて下へ降りて行くと
「明日の早い便で取れたから午前中のうちに支度をしなさい。」
氏が言ってくれたのでした。