汚物マニア
1:優美夫人
投稿者:
圭一
◆QhdLAF3pu.
2010/11/08 12:06:56(Dh6sS4aD)
なぜその時,初めて会った男に話す気になったのか‥
今でもわからない。
「北海道のどこへ?」
それさえも決めていなかった。
ただ憧れに近いものを感じていた小樽と言う街を見てみたかった。
「小樽と言うところを‥」
「そうですか。何か困った事があったら連絡をしてきなさい。」
そう言って名刺の裏に連絡先の電話番号を書いて渡してくれたのだった。
「私は‥」
その時になって免許証しか身分を証明するものを持ち合わせていない事に気づき,恥ずかしくなりながらペンを借りて備えてあった案内の紙の裏に携帯電話の番号と名前を書いて渡したのだった。
「あれには‥」
初老の男がこぼす様に漏らす言葉に耳を傾けていた。
意味ありげなカップルと思っていた夫人とは3度目の再婚相手である事。
成人した子供達からは反対された事を聞かされたのだった。
男も旅先の気安さもあったのだろう。
初めて会った私に愚痴に近いものをこぼしながらも,夫人への愛を語っていた。
「良かったら朝食を一緒にどうですか?」
遠慮をしていると
「携帯電話を鳴らさせてもらいます。つまらない話しに付き合ってもらったお礼をしないと。」
断るより先に男は立って出て行ってしまったのだった。
差し出された名刺には聞いた事のある乳製品メーカーの会長職となっていたのを見て驚いた。
景色の中に横に流れる雪が映り始め,何もない大地が白く染まっているのが時折見える街路灯に映っていた。
個室に戻り,本を読んでいるうちにいつしか寝ていた。
うとうととしながら青函トンネルに入るのを車内アナウンスに流れたのをおぼろげながら覚えている‥
失業してから早起きする習慣もなくなっていた。
列車の揺れに何度か目を覚ましながら旅をしているのだと思い起こされては眠りの中にいた。
そして‥
携帯電話の呼び出し音に起こされて見ると見覚えのない主からの番号が執拗になっていた。
「牧方です。まだ寝ていましたか?」
牧方‥?
間違い電話かと思い返事をしようと思った時,昨夜の男からの誘いを思い出した。
「いえ‥大丈夫です‥」
「失礼とは思いましたが‥いかがです。30分後に予約してあるので。」
図々しくも朝食をご馳走になる事にして,約束された時間に食堂車へと向かったのだった。
10/11/08 12:51
(Dh6sS4aD)
はじめまして続きが気になりますね
10/11/08 14:47
(DaFnzJF3)
しゅんさんレスありがとうございます。
板にはかけ離れた始まりですがもう少しお付き合いください。
食堂車に約束の時間に向かうと夫人を従えた牧方氏が入り口前のソファーに座り,既に待っていた。
昨夜サロン車で見た夫人の印象とは明らかに違い,上品な優しい微笑みで迎えてくれた。
食事をしながら氏から自分の事を聞かされると
北海道の冬の厳しさ,就職難は本土以上である事を聞かせてくれて,
「あなたの所で何とかならないの?」
と心配してくれたのだった。
氏も同じ事を考えてくれていた様で夫人と一緒に誘ってくれたのだったが,まだその時は何とかなるだろう位の軽い気持ちで丁重に断りをしたのだった。
私とは一回りと違わない夫人とはなぜか話しがはずみ,私と同じく東京から出た事を。
氏の側の親戚筋からは認めて貰えない寂しさを話してくれたのだった。
食堂車を出てサロン車に移ってからも専ら夫人の堰を切った様に話すのを氏と共になだめながら聞いてあげていた。
「あら‥もう長万部‥用意もしてないのに。」
慌てて出て行った夫人を見送って氏と話しをしていた。
「あれが随分,君を気に入った様で珍しい事だ。落ち着いたら遊び来ないかね。」
「はい。ありがとうございます。」
何の身よりもない土地で私にも心強い言葉だった。
終点の札幌駅のホームで牧方夫婦と別れる時も,
「困った時は必ず連絡する様に。落ち着いたら遊びに来る様に。」
と念を押されたのだった。
一期一会‥
運命,出会いとは不思議なものだと思いながら小樽に向かう列車に揺られていた。
写真で見た小樽の街は想像していたよりずっと小さいものだった。
雪の舞う運河沿いを歩き,赤レンガの倉庫を見て回るのに半日と掛からなかった。
ガラス細工の工芸品の店を廻りながらいったい自分は何をしたいのかと疑問を感じ始めていた。
土地の人に職業安定所の所在を聞くと,口々に
「札幌へ出た方が良い。」
と勧められて,観光と漁業の中心のこの街に自分の居場所はないのだと痛感したのだった。
街を歩きながら雪で濡れた革靴から水が染み込み長靴を買う事にした。
取りあえず今夜寝る場所を捜そうと駅前に戻り案内所で聞くと旅館を勧められた。
「ビジネスホテルは?」
何もかもが札幌に出た方が良いと言われて札幌に戻る事にしたのだった。
10/11/09 08:39
(A42YBVFs)
自分も北海道いってみたいです。
10/11/09 14:23
(mKmUdiCa)
挫折‥
しかも1日で。
札幌に向かう列車に揺られて感じずにはいられなかった。
誰も知り合いのいない‥
雪が舞い散る車窓の景色を見ながら不安さえ感じてしまったのでした。
早めに住む場所と仕事を決めなければ‥
札幌の街に戻ると夕方と呼べる時間なのに,既に辺りは真っ暗になっていた。
駅前のビジネスホテルに取りあえず落ち着いて明日からの事を考えている時に携帯電話が鳴った。
番号を見て見慣れない局番に首を傾げながら出てみると牧方氏からだった。
「どうですか?良い就職先は決まりそうですか?家内が心配して電話してみろと。」
その時の電話ほど心強く,温かく感じた事はなかった‥
まるで父親と話している様に‥
小樽では就職先は望めない事‥
札幌に戻りビジネスホテルへ泊まっている事を話すと
「失礼だが‥何のツテもなく東京での仕事以上を望むのは難しいと思う。これは現実なんです。悪い事は言わないから私に任せてみないか。」
と諭す様に話してくれて,聞いているうちに涙が出てきたのでした。
「何も恥じる事はない。人と人とのつながりとはそう言うものだから。」
その言葉を聞いて甘える事にしたのでした。
「気を使う様なら,うちでなくても知り合いの所に聞いてあげる事もできるから。」
「ありがとうございます。」
ありがたく思いました。
「札幌のビジネスホテルにいるのかね?」
「はい。」
「良かったらうちへ来ないか?」
「いえ。そこまでしていただいては。」
「構わないよ。空いてる部屋もあるし,暇な年寄りの話し相手になってくれれば私も嬉しいから。家内も喜ぶし,そうしなさい。」
「でも‥」
「嫌じゃなければそうしなさい。気を使う事もないし。」
迷っていると
「今から迎えに行くよ。」
「え?今からですか?」
「よし。そうしよう。」
「そんな,明日でも‥」
「気が変わるといけないから今から行く。」
年配の人にありがちな言い出したらきかない様なところを感じて,迷っていると
「少し遠いから君も途中まで出てきてくれるかね。」
話しぶりで同じ札幌市内だと思っていたのですが話しを聞くと北海道の中央,美瑛と言う所に住んでいるとの事でした。
「どう行ったら良いのですか?」
札幌から列車でもかなりかかる所の様で不安になったのでした。
10/11/09 19:02
(A42YBVFs)
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