少し長くなりますのでご容赦下さい。
まだ私が2歳になる前に実母が病気で亡くなりました。記憶はもちろんありません。
私を抱いている写真でしか知らないのです。
なので私は父親の実家で育ちました。祖父・祖母・父親・そして私です。
幼心に母親の居ない寂しさはありましたが、仕事で不在がちの父親に代わって
祖母や祖父が面倒を見てくれていたのでその状況を受け入れていました。
幼稚園、小学校、中学校と授業参観や運動会、保護者会などは主に祖母が来てくれて
時に時間があるとたまに父親も来てくれる事がありました。
その頃になると、自分に母親が居ない事はそれが当り前になっていて、特に寂しさを感じる事も
無くなっていました。
そんな中、私が高校2年生の秋でした。父親から改まって話があると言われ、祖父、祖母も含めて
居間に座ると「実はお父さん、結婚したい女性が居るんだ」と言われ、驚きました。
その時の話を要約すると、祖父・祖母も賛成していて父親もまだ若いからパートナーが必要だと。
それについて私に意見を求めてきたのですが、あまりに突然の事だったのでどう答えて良いのか分らず
戸惑いました。それに今まで4人での暮らしが当り前でしたので、そこに見ず知らずの人が入ってくる事に
抵抗を感じたのは確かでした。
私は素直にその事を言うと、祖母から「一度会ってみないか?」と言われ、父親も
「是非会って欲しい、決めるのはそれからでも良いから」と言うのでそれに従う事になりました。
数日後、その日は土曜日でした。午前中に部活(ラグビー部)の練習が有りお昼頃に腹ペコで帰宅すると
玄関に見慣れない女性の靴があり、それを見てピンときました。
「あぁ、そう言えば連れて来るって言っていたな」とその時思い出したのです。
家に入り居間を覗くと中から父親に「ちょっと来なさい」と呼ばれ、居間に入ると見知らぬ女性が座っていました。
「紹介するよ。この前話した人で○○早苗さん」そして「息子の富貴だ」と。
その女性(以後、早苗さんと書きます)は立ち上がって私の正面に立ち「富貴君、早苗です。宜しくお願いします」と
実に丁寧に挨拶をしてくれたので私も「富貴です。宜しくお願いします」と答えました。
長くなりましたので、一旦切ります。