兄良一と俺は10才の年の差があった。
兄は体が弱かった。
腎臓の病があり、ひどくなると入院、入退院を繰り返していた。
俺のイメージは弱い兄、それしかなかった。
風邪をひけば悪化し肺炎、入院。
逆に俺は、風邪もろくにひかない、強い体だった。
体が弱かった兄は、とにかく勉強していた。
一流の国立大を出て、名前を聞けば、誰でも知っている一流企業へ入った。
努力している姿を知っている俺は、体は弱いが、心の強い兄だと尊敬していた。
兄は26で結婚した。
保志子さん、兄より三つ下の開業医のお嬢様だった。
美人で、俺も将来、あんなお嫁さんもらいたい、そう思った。
詳しいことは知らないが、兄夫婦は子宝に恵まれなかった。
どうやら兄に原因がある、そのくらいしか知らない。
俺はバカだから結婚はしたが、自ら巻いた種で離婚した。
兄厄年のとき、大腸に癌が見つかり手術。
数年後再発、手術。
そのまた数年後再発、もうダメだった。
兄は若干50で亡くなった。
兄が亡くなった二年前には母が亡くなっていた。
父は俺が結婚したのを見届けるように亡くなっていた。
兄の一周忌が今年の五月上旬に行われた。
そのとき、義姉保志子さんに言われた。
「話しがあるから、近いうちに、家に行っていいか」
俺はいつでもどうぞと言った。
五月も下旬、保志子さんがきた。
俺が兄と良く似ているとか、兄弟なんだから当たり前だが、そんな話しをしていた。
体は弱かったが頭脳は抜群の兄、体は強いが頭脳はからっきしの弟。
似てるのは顔だけ。
俺はバカだから、話しの本題に入らない保志子さんにイライラした。
「話しってなに?」
イライラしてるのがわかったのだろう、本題にようやく入る。
要求はズバリ、セックスだった。
体の弱かった兄は、セックスも弱かったらしい。
昔よく兄は保志子さんに言っていたそうだ。
「勝治ならお前を満足させられただろう。すまんな」
癌を患うちょっと前からセックスがなくなり、もう10年以上していないと言う。
48才保志子さん、30後半からセックスと無縁だったのかと思うと、辛かっただろうなと思った。
先ほど書いたが保志子さんは美人だ。
年を重ねて、艶やかさが加わり、高級旅館の女将といった風貌だ。
兄嫁と言えど、こんな女性から誘われ、バツイチの俺は据え膳食うに決まっている。
即OKした。