急変
なぜだか『最悪』と言うヤツは、そうなって欲しくない方向にズンズン転がっていって、ホンの些細なコトがあっという間にデカくなってしまいます。
だから『最悪』と言うのでしょうが、この『最悪』は『最悪』の中の『最悪』でした。バカが吹き出した吐瀉物が、僕が『あっ!』と驚いた拍子に開けてしまった口に、狙いすましたように入ってしまいました。
「うげっぐほぉっ!!!!」
今、『辛い』と難癖付けてバカが飲み込んだ僕のアレと、さっきハフハフして食べていた『鍋焼きうどん』が、(…と、ここでメールが届いておりますので、読ませていただきます。
『ともゆきさん、初めまして。広島の比婆山中に住む「カネ婆」です。いつもお爺さんと身体を熱くして読んでおりますよ。宝蔵院流の鑓との対決場面には、年甲斐も無く子宮がキュンとしてしまいまして、お爺さんと十二年振りの子作りに及んでしまいましたよ。でも、「向き合ったままの見開き画面だけで、引っ張り過ぎじゃろう」とお爺さんが言ってました。お爺さんはすぐにイッてましたよ。これからも頑張って子作りに励みます。では、ごきげんよう。』
お婆さん、それは井上センセの『バカ〇ンド』じゃないですか? 僕が投稿させてもらってるのは、バカはバカでも『バカ姉』ですよ。)…と、お風呂場が大変な事になってしまいました。
僕のマウントをとったままのバカは、出す物を出した後でも跨がったまんまで、退けるどころか僕の上にブッ倒れてきました。僕の身体にブチまけられた〇〇は、密着してきた肌の間で押し伸ばされて『不快感』が極まりました。
僕は慌ててバカを押し退けて立ち上がりました。シャワーを開けて、〇〇まみれの顔面と肩から胸に掛かった汚れを全力で洗い流しました。姉はうずくまったまま『ゼエゼエ』、『ゲホゲホ』と呼吸を荒げていました。
今ここで冷静に考えたら、吐き戻して倒れたままの姉が居るんですから、すぐ介抱してやるのが『筋』ってモノだとは思います。けど、〇〇にまみれた僕に、そんな余裕はミジンコほどもありませんでした。
取りあえず上半身だけでも綺麗になりたかったのに、肌を伝い落ちる〇〇は、より一層身体に纏わり付いてくる感じがして、気持ち悪さが倍増しました。
さらに追い討ちをかけるように排水溝が詰まってしまったのか、〇〇混じりの水が溜まりだしてきました。水に浮き沈みする吐瀉物がリアルな〇〇の破壊力を発揮しだしました。僕の精神的『防御壁』は一気に破られ、『崩壊』の方向に大きく傾いてしまいました。
「うっ、ううう…、」
バカがダメ押しでリアルな吐き戻す音を立てました。また嘔吐が始まると、僕はもう踏ん張りが効かなくなりました。悪臭が鼻の穴の中で大暴れして、僕の脳みそを破壊しに押し寄せて来ました。
『うぐぇ…、や、ヤバい…』
僕はたまらずお風呂場を飛び出し、洗面台に顔を埋めました。
『実存的不安』を感じても僕のお腹には、さっきの『食べ残しのエビ』さえ、もう入っていなかったので吐瀉物の出ない、ただ苦しいだけの内臓の『リバース運動』をウゲウゲとさせられました。
「う~~~ん、う~~~ん、」
お風呂場に取り残されたバカが苦しそうに唸るのを、僕は嘔吐に苦しみながら見てました。全裸の足元で〇〇の濁流が、ドンドン水位を上げてきました。また僕は『もらい〇〇』を釣られそうになってしまったので、思いっ切り歯を食いしばって耐えました。
それでも危なかったので僕もワザと『う~、う~』と唸って、嘔吐気分を発声でごまかして我慢してました。立っても、座っても、寝転んでも吐きそうだったので、無意味に屈伸を続けてました。
「何やってんのよ、ともゆき。」
ふと僕の頭越しに誰かが声を掛けました。『ふえっ?』と後ろを振り向くと、目の前に入院したばっかりで居るはずのない母が立っていました。僕は頭が真っ白になりました。
「何してんの? 素っ裸で…、」
そう言いながら母は、僕の顔から僕が遮っていた、お風呂場の奥に目を向けました。母の怪訝な顔つきがハッキリと『驚愕』の顔に変わってくると、見る見る内に紅潮してきました。
素っ裸の息子の奥に、全裸で倒れ込む娘を見てしまった母は、『驚愕』の形相で僕に向き直りました。大久保佳代子似の『埴輪』みたいな目が、飛び出さんばかりに真ん丸になってました。
「何やってんのよーーーっ!! アンタぁーーーッ!?」
僕の眼前で、いや『顔前』で怒鳴り声を張り上げた母の顔が、一瞬で『憤怒』の形相に変わりました。あまりの恐怖に僕はちょっと漏らしてしまいました。
『うわあああああっ!!』
確か急病で入院したはずだった女性が、思いっ切り力強く僕にビンタを食らわしました。色んなコトに疲労困憊(こんぱいってこう書くんですね?)していた僕は、ビンタをモロに食ってしまいました。
昨日の今日で、また僕を殴り始めた母は一発入ったら勢いが付いたらしく、二発、三発とビンタするスピードが上がり始めました。
「ぐおぉーらああぁーーーーーッ!!!!!」
良く解らない言葉を叫びながら、僕の顔面に母の放つ連打音が鳴り響きました。決して広くない脱衣所のスペースで母の両腕が大回転し、最後は『デンプシーロール』みたいになってました。
「ぐううううう…。」
母のビンタを『バッチン、バッチン』と、全部もらってしまった僕は腰が砕けました。ストンと尻餅をついたので母のビンタが止まりました。
尻餅をついた拍子に、『ガンッ!』と洗面台に頭をぶつけた僕の前に、〇〇カスが所々にくっついた姉の裸体が、ゆっくりと四つん這いでやって来ました。
「あっ、おかえり~、『リッちゃん』。」
やっぱり、『バカは強いな』と僕は思います。姉は僕との『近親相姦の現場』を母に見つけられたとは、これっぽっちもミドリムシほども考えずに、いつも通りのトーンで母に話し掛けました。
母が息子を殴り倒した緊迫しまくりの現状で、素っ頓狂な姉のセリフは余りに場違いでした。そのおかげで母は拍子抜けしたらしく、冷静さをちょっと取り戻しました。
「ええっ!? ああ…、う、うん。…ただいま。」
バカは素っ裸に〇〇まみれのままでも、何も動じる事無く、いつものバカトーンでしゃべり出しました。僕は何にも考えられず、ただ成り行きを見守りました。
「何で、『リッちゃん』、帰って来たの~? 入院したんだよね?」
「…したけど、ただの検査だけよ。病気じゃないんだから、検査が済んだら『お帰り下さい』って言われたの。」
「へえ~、病気じゃなかったの~? 良かったじゃ~ん。」
殺伐としていた空気が、バカのおかげでちょっと和みました。でも、ゆる~くなりかけた雰囲気を、母が慌ててまた元に戻しました。
「それよりもっ! 何で、こんなコトになってるのか、説明しなさいよっ!」
僕は『こんなにも早く「最後の審判」が下されるのか?』と絶望しました。何もかもが全て『終わらされる…』と思ったら、なぜか『あいこ』の顔が思い浮かびました
そんな『人生の終焉』を感じて身動きが取れない僕なんて、完全に無視した母の尋問とバカの返答が始まりました。
「何でって、何が~?」
「『何が?』じゃないでしょっ!? アンタたち、裸で何やってたのよっ!?」
「え~? ゲロ吐いてた。」
バカが、身も蓋も無い言い方をしました。
「な、何で、裸でゲロ吐いたりしてるのっ!?」
「お母さんが、昨日倒れたからでしょ~?」
「何でよっ? お母さんは関係ないでしょ~よっ?」
「お母さんが~、倒れたからあ~、アタシが吐き戻しちゃったの~ぉ?」
「えっ、そうなの? お姉ちゃん、『お母さんが心配なあまり…』とか?」
「ううん、『鍋焼きうどん』食べたから~。」
「アンタ…、このクソ暑いのに、何で、さらにクソ熱い『鍋焼きうどん』なんか食べんのよっ!? バカじゃないのォ!? ホントっ、この娘は…」
「だからぁ~、お母さんが倒れちゃったからじゃないのよ~っ!」
「もおーーーっ!! アンタの言ってるコト、お母さん、全然分からないわよっ!! ともゆきっ! アンタ説明しなさいっ!」
両頬がパンパンに腫れたおかげで、窮屈に口内で折り畳まれたベロが、鉄分の味を感じる事しか出来なくなっていました。なのに、そんな僕に向かって、母が『無茶振り』をしてきました。