27歳の独身女です。
至らぬM女の独白となりますが、誰かの目に留まれば幸いです。
…留まらない方が良いのかも知れないけれど。
ある春のはじまりの、朝方のことでした。
夜の仕事を終えていつもの飲み屋に行く。
この職場に就いて3カ月もした頃だっただろうか、その日は上司と一緒だったけれど既に酔っ払っていた。
その日まで、私は私の酒癖の悪さを知らずに生きてきた。
そして良くも悪くも、その日はいつもとは違う巡り合わせがあった。
いつもの飲み屋には後にご主人様未満のような存在となるMさんがいた。
先客として既に席に着いていたMさんは、まだ正気ではあるが程良く酔いが回っていた…という具合であった。
朝方の飲み屋、集まる人種も様々で、人間性もそれに同じ。
仕事先でももう既に様々な人種を見てきた。どのような人からどのような話を聞いたとしてもさほど衝撃は受けない位には、もうこの土地への耐性は付いていた。
Mさんはいわゆる「大人の社交場」に携わる人であった。
もとよりその世界に関心のあった私は目を輝かせていたことでしょう。Mさんの正面席に陣取り、Mさんの腹の底を探りたいという欲求のまま彼に話かけた。
「SMについて、知りたいんです。」
そうかそうか、と、Mさんは私に興味を持ったようでした。その時彼は私を穴として認識したのかも知れません。
私はと言うと、まだ知らぬ世界、そしてその世界に身を置く彼への興味が抑えられない、そういう衝動に心を奪われていました。
酔いがもう少し進んだ、小一時間後。
「近くで待っていられるか?」
そう問われました。
Sに好まれるには従順であることが必須である、そう感じた私は彼にこう返しました。
「近くの交差点で待っています。飲み終わったら電話下さい。」