俺が中学三年の時の話である。
ある大雨の日の学校帰りの時、俺は傘がなかったので、近くのコンビニの傘立てから傘をパクった。コンビニの店内には人がいなかったので忘れ物だと思ったからだ。
ちょっと歩いて、なんとなく気になって後ろを振り返ったら、コンビニから気が強そうなギャルっぽい女子高生が出てきたのが見えた。
「まずい」
俺は早足になり、そしてだんだん駆け足になり、全力疾走した。
しばらく走ってもう大丈夫だろ?と思い後ろを振り返ると、ギャル女子高生がチャリで立ちこぎして追いかけてきた。
(終わった)
俺はあきらめてゆっくり息を整えながら歩いていると、俺の横でチャリが急ブレーキをかけた。
キキイィィィー!!
前髪がずぶ濡れで目が開いてるか開いてないかの状態で、俺に呼び掛けた
「君!!」
俺は震えた声で答えた。
「は、はい…」
「財布落としてるよ」
ギャル女子高生は俺にまっすぐ財布を差し出した。
俺は財布を受け取ったまま言葉が出ないでいると、「雨ヤバイねー」と言ってニコっと笑いチャリをこいで住宅街に消えていった。
俺は雨でその子の透けたブラ紐を見ながら一目惚れした自分に気付いていた。
次の日、あの子にお礼を言おうと思った。
そしてギャルに敬意を示すため、日焼けサロンに行って真っ黒になるまで焼いた。
端から見たらテニスの試合帰りの中学生にしか見えないが、全身で気持ちを表したかった。
面白がってついて来た友達と一緒にコンビニで待っていたが、その子はいつまでたっても来なかった。
しびれを切らして友達が帰った30分後に、あの子は来た。
キキィー!
黒光りした外車からグラサンにタンクトップでマッチョの恐い彼氏と一緒に。
俺に気付かず手をつないで、幸せそうに店内に入っていった。
俺はあらかじめ用意してた自分のアドレスのメモとラブレターをコンビニのゴミ箱に捨て、晴れの日なのに顔を濡らして帰った。
自分が無力過ぎた。
あの子が求めるものが何一つ自分にない気がした。
家に帰って鏡にうつる真っ黒な自分に中指を立てて、変な顔をしてウッヒョッヒョという声で笑った。
母親に心配された。