8年前の夏だった。大学三回生だった俺は夏休みの短期バイトとして、病院のカルテ整理のアルバイトに応募しんだ。
時給850円。朝の9時~17時までの休憩入れて8時間。なんでもそのA市立病院では何年も前から電子カルテに移行しており、それまで使っていた紙カルテは今となっては無駄に場所を取るだけの邪魔な紙束以外の何物でもなく、病院側として処分するものと保留するものに仕分けたいが為のバイト募集だった。
やり方としては簡単。一人の人間が実際にカルテ棚の前に脚立を立ててその上に乗り、棚の端っこから順番にカルテ番号を読み上げていくことから作業が始まっていく。
「Aの112445 ヤマダ」といえば、下でリストを持っているもう一人が、「その人は処分です」(電子カルテにデータ移行済)と、処分するのか保留するのか指示を出し、そしてもう一人が、最終確認した上で「では処分の箱に入れますねー」と実際に破棄をするのが仕事内容だった。
やっている事は超単純。飽きて来たら棚からカルテを手に取るやつと、下でリスト見るやつと、実際に破棄するやつのポジションを変えていくだけ。ただ注意点としては99.9%処分するカルテの山なのだが、万が一、電子カルテに移行されていない患者データがあるかもしれないので、間違って処分する事だけは要注意だった。
そんなアルバイトをやっていたのが、これからお話する「沢田めぐみ」(当時26歳)そしてバイト学生の俺(当時21歳)そしてもう一人、バイト学生の男(当時20歳)の3人でやっていたんだ。
これを楽な仕事と思うか、それとも苦痛な単純作業と思うかは人それぞれなんだと思う。このバイトが始まって3日目に、、もう一人のバイト男は急に来なくなってしまったんだ。
それから俺とメグミさんの2人でその作業をやる他なかったのだが、それがきっかけとして俺とメグミさんは男女の壁を越えたお友達になっていくのであった。
沢田めぐみ(当時26歳)かなり整った顔をしていると思う。目、鼻、口といったあらゆるパーツが小さくて可愛らしく、身長から体格も小柄で可愛らしい人だった。だけど妹系か、姉系かでいえばハッキリと黒髪ロングの姉系。そんな人柄がメグミさんの第一印象だった。
だけどメグミさんは正直、かなり変わった性格の持ち主だと思う。女性なのに世界史、人類史、そういった小難しい分野の学問が大好きで、今でも俺に「とりあえず「銃・病原菌・鉄」それと「サピエンス全史」を読んでみなよ。」と、小難しい本を進めてくる人だった。ちなみに好きなゲームはシヴィライゼーションシリーズ。
サピエンス全史、シヴィライゼーション。これらが好きな女性と説明するほうが、メグミさんがどういった分野のものに興味を持っているかというのを表すのに手っ取り早いと思われる。
8年前、そんなメグミさんと俺が仲良くなっていく切っ掛けになったのが、すでに冒頭でお話した紙カルテの処分整理のアルバイト。最初は3人で開始した作業だったが、3日目にもう一人の男が挫折。きっとあの単純作業に耐え切れなくなったものだと思われる。
それから俺とメグミさんは二人で趣味の話を交えながらおしゃべりをし、そして一緒に作業を始めていった。夏休みの2か月。土日を除いて朝の9時から夕方の17時まで、ずっとメグミさんと同じ時間をすごしていた。
だが俺には、恋愛感情といったものに発展する事はなかった。それには理由があった。そもそも俺もその時、同じ大学の女子と付き合っていたというのが大きいと思う。
確かにメグミさんは可愛い。だけど話が小難しいのと「癖のある性格」もあって、師匠や姉御。と呼ぶ事は出来ても彼女にするなんていうのは考えもしなかったんだな。
俺にはそんな背景があって、メグミさんの事を「師匠」やら「姉御」という具合に慕っていたし、向こうは向こうで俺に事を「弟分」としてよく面倒を見てもらっていた。
俺が失恋して悲しみのどん底にいるときにそっと励ましてくれたり、、または調子にのってクレジットカードを作って豪遊し、それから利息で首が回らなくなった時に、説教を交えながらもそっと助けてくれたり・・・と。
今では俺は月に2度3度のペースでメグミさんの家に訪問し、軽く酒なんかを飲みながらメグミさんが最近読んでる本とか、最近はじめたゲームとかの話を聞きながら、俺は俺で身の回りの話を聞いてもらうような関係が続いている。今ではメグミさん34歳。俺29歳となってしまったが。
そんな外見も可愛くて、そっと人助をしてあげれる優しさを兼ね備えたメグミさんではあるが、コノヒトにはかなり深刻な問題を抱えていた。それは俺はさっき、「癖のある性格」と軽く表現しておいたが、実際には「極度の潔癖症」の持ち主だったんだ。
そもそもカルテのバイトをしている時から、その潔癖症は発揮されていた。作業中、つねにゴム手着用なのである。
本人があっけらかんと「ワタシ潔癖症なんだよねー」と言っていたが、そんな軽いものではなく、とにかく「目の前でさっきまで他人の指が触れていたもの」には触れないくらい重篤な潔癖症なのであった。
他人の指が触れたものの中で、せいぜい触れるものといえばお金くらいのものだった。常にアルコール除菌テッシュを持参しており、何をするにもどんな作業の後にも手洗いを欠かさないという徹底ぶりであった。
つまり言い換えれば、男とキスをするなんて想像する事もできない。その男の陰部が自分のカラダの中に入るだなんて・・・。という具合に、男性経験もゼロ。付き合った経験もゼロなのである。(医学的には△△性〇〇症とかいって、ちゃんと障がい者手帳も持っているらしい)
本人はその極度の潔癖症の事をペナルティと考えている節はなく、「他の人ってすごいよね。免疫力が強いというかw」と、もう悟りの境地に入っているレベルであった。なので彼氏がいる人をうらやましい。なんて思った事すらないといっていた。
俺がそんなややこしい性格を持っているメグミさんと仲良くなれた理由の一つとして、俺がその彼女の潔癖症であるところに理解を示せた?というか俺自身「ふーん。そうなんや」くらいにしか思わなったという点も大きいと思う。
メグミさん曰く、今までの知り合いはそういった極度の潔癖症の部分を垣間見て、だんだんと「この子めんどくさ・・・」と思われてしまい、人間付き合いを上手に構築する事ができなかったとの事だ。
だが俺は例外であり、俺はそんなメグミさんの癖をよく知っているから、俺はメグミさんが本能的に嫌がることというものをしないし、やたらと家の中のものを触ったりもしないので、潔癖症のメグミさんと人間付き合いができる数少ない人種であるらしい。
長くなったが、そんな理由があって俺はメグミさんと師匠、姉御、友達にはなれても絶対に彼氏彼女の間柄にはなることができない関係でもあったのだ。
そして俺がメグミさんの家に、堂々と出入り自由の身となったのは知り合ってから半年くらい経過した頃だったと思う。それまでの半年は普通に暇つぶしに電話で話したり、ちょっと外で買い物に付き合わされたりするくらいの関係であったのだが、8年も前の出来頃なので理由は忘れたが、(確かインターネットがつながらなくなったとかの理由だったか?)家に呼ばれる事になったんだ。
そして家でにいったん、家に上がることが出来てからはもともと外出するのが億劫だと感じるメグミさんに合わせて、何か要件がある時は俺がメグミさんの家に訪問するというのが俺たちの付き合い方となっていったんだ。
それからただの「友達」だからこそ・・・その絶妙な距離感だからこそ享受できるほんのりHな体験の数々・・・・。をしていく流れになっていき、最終的にはそんな潔癖症であり、他人の指紋。がやたらときになるメグミさんに対し、どうやって俺は彼女を説得し、なんとかその気にさせ、、、「ちゃんとゴムつけるなら入れてもいいよ。その代わり、途中でホンマ無理!!ってなったらすぐやめろよ。」とまで言わせる事が出来たのか。
この文章は筆者の個人的な暇つぶしであるため、「当時の記憶を回想し、あんなこともあったなーw とニヤニヤするための自己満足のため」の文章です。したがってあえて誰も読まなさそうな場所に投稿しております。エロシーンまでほど遠いかもしれません。定食の中の漬物程度の感覚で読んでくれたら幸いです。
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