2017/07/08 14:56:32
(kciA/FWf)
春になろうとしてた3月の半ば。
突然、呼び出されて、瑞希の部屋にいた。
この頃には瑞希に対する特殊な感情も、自分では制御できなくなりそうになっていた。
落ち着きなく座ってると、部屋の照明を消されて、慌てふためいていた。
「ハッピーバースデイ」
「そっちか」
「ん?そっち?」
蝋燭の着いたケーキが運ばれてきた。
瑞希のことばかり考えていたあまり、自分の誕生日も忘れていた。
高3の時に1度話しただけなのに、覚えていてくれたことが嬉しくて、少しだけ涙が出た。
「泣いてる?」
「ありがとう瑞希」
感情が高まった時、男同士でハグする感じで抱き締めていた。
大学に合格した時に抱き合って歓んだ以来だった。
「でもプレゼントは無い」
「物なんて要らないよ」
「一応リボンが付いたパンツ穿いてる」
「ケーキ食べよう」
手作りのケーキと手料理を御馳走になって女子力の高さに驚いた。
こんな特技があるなんて知らなかったし、あらためて瑞希をもっと知りたくなった。
「彼氏とかこんな事されたら歓ぶよね?」
「僕は誰とも付き合ったことない」
瑞希から男でも女でも、恋愛の話を聞いたことが無いことに気付いた。
他の男友達とは、どこそれの女が、なんて下品な話しかしないけれど、瑞希とは無意識にそう言う話を避けていたのかもしれない。
「僕みたいのと遊ぶ男は後腐れなく性処理したいだけなんだ」
「そんなんでいいの?」
「僕もそうだから」
「虚しくならない?」
「余計なお世話だ」
変な事を聞いたことを後悔していた。
たかが1年の付き合いで、凄く親しくなった気になってたけれど、何も知らないことを思い知らされた。
「性欲以外は陽翔が満たしてくれてる」
「ねぇ?また泣くよ?」
「僕ね、陽翔に一目惚れだった」
「本気で言ってるの?」
「惚れたは冗談、友達になりたいと思った」
「冗談かよ」
「惚れたがよかった?」
「それはどうだろ」
よくわからないけれど、涙腺が崩壊しそうだった。
冗談と言われてホッとするよりも、少しガッカリした自分がいた。
「まだ言えてない最大の隠し事がある」
「なにそれ?聞くの怖いな」
「陽翔が寝てる時に一回キスした」
女装のカミングアウト以上に衝撃を受けた。
脳震盪おこして倒れるんじゃないかくらい、凄まじい衝撃だった。
「ごめんね、こんなんが友達って気持ち悪い?」
「なんで起きてる時にしないかな?」
「え?」
衝撃を受けた後遺症、自分でもよくわからない質問を返していた。
どんな話も即答で返してくる瑞希が言葉に詰まるくらいだから、そうとう可笑しな質問だったんだと思う。
「今、瑞希にキスしていい?」
「急にどうした?」
今まで見たことない困惑した顔になった瑞希を抱き締めていた。
さながらBL物のラノベか少女漫画みたいな展開だけれど、そんなシチュエーションに酔う余裕はなく、大切な友達を失うかもしれない瀬戸際で、自分の鼓動に酔いそうなくらい心拍数が上がっていた。
抱き締めてる一瞬の間に、色んなことを考えたけれど、考えても答えの無いことばかりだったから、瑞希に対する気持ちを優先してキスをした。
ただ唇を合わせただけのキスだったけれど、今までのどのキスよりも重く感じた。
「なんのつもり?」
「瑞希を気持ち悪いなんて思わないよ」
「うん、ありがとう」
このまま離れるのが惜しくなって、もう一度唇を合わせた。
二度、三度と繰り返す内に物足りなくなってきて、瑞希の口の中には舌を伸ばした。
一瞬、顔を引かれたような気がしたけれど、すぐに瑞希の舌が絡み付いてきた。
ただ興奮してるだけだった頭が、やっと冷静になってきた。
普段の言動や仕草、幼い感じの見た目、それまで持ってた瑞希のイメージからは想像できないくらい、ねっとりとエロく絡み付いてくるキスに、多少の敗北感を覚えながら、男とか女とか、そんなのどうでもよくなった。
「陽翔、待った」
こんな事を書くと怒られるかもしれないけれど、ずっとストレートだと思って育った自分にとって、いくら好きな相手とは言え、一歩踏み出すにはそれなりの覚悟が必要だった。
その覚悟ができたタイミングで、瑞希に体を押し退けられた。
「僕の根本は同じ歳の男だって解ってる?」
「うん」
「これ以上続けたら抑え効かなくなるの解るよね?」
「うん」
「だったらもう止めたがいい」
むしろ望むところだと思った。
拒絶されなかったことに安心して、そのままベットに押し倒した。