以前に「お正月♪」「お義兄さんとのその後♪」といった投稿をした女装娘のひとみです
また前の投稿からとても期間が空いてしまいましたが、今回は前回の投稿でも少しだけ触れた、彼女と別れた時のことついて書きたいと思います。
彼女というかもう別れているので、正確には「元カノ」ですね。(笑)
先に言っておくと、彼女と別れる直接の原因に女装であったりとか、御主人様との事とかは関係ないので、それを期待していた方はすみません。
それは、少しずつ肌寒さを感じるようになり始めた昨年の初秋のことでした。
「別れようと思ってるの・・・」
久しぶりに二人で見た映画の後に寄ったカフェで、彼女は私にそう静かに告げました。突然の衝撃に何も答えられず彼女の顔を見つめ返すと、瞳の奥に強い意志のようなものを感じます。
「あのね。今、あなたが私との結婚を考えられないなら、あなたとは別れようと思ってるの・・・」
改めて話を聞くと、彼女の言う「今」というのは具体的に言えばこの1年くらいで結婚してくれないならという意味でした。
日頃の会話から最近、彼女の結婚願望が強くなっていることは気付いていましたし、早めに子供を産んで育ててまた職場復帰がしたいという彼女の気持ちも凄く分かります。
しかし私は、その時すぐには「結婚しよう」と彼女に応えてあげることが出来ませんでした。自分の周りの男友達はまだ大半が結婚せずに、独身で自分の趣味やキャリアアップに勤しんでいます。
もちろん結婚して子供を授かっている友人も少なからずいましたし、自分も姉の姪っ子の相手をしていると、いつか自分の子供が欲しいとは思っていました。
しかしその時の自分には「結婚」というのはどこか遠くの事に感じられて、現実感がありませんでした。結局その場では、「考えさせて欲しい」としか言う事しか私には出来ませんでした。
それから1週間ほどした日の夜、私と彼女は私達にしてはちょっと背伸びしたレストランで夕食をとりました。そしてそこで、私は彼女への返事を口にしました。
「ごめん・・・、君のことは愛してるけど、まだ結婚を考えることは出来ない・・・本当にごめん」
私のそんな残酷な言葉を、彼女は涙を流すこともなく優しく微笑みながら受け止めてくれました。
「きっとそう言うだろうなって思ってた」
彼女はそれだけ言うと、自分から別れて欲しいと言ったけど、せめてクリスマスまでは一緒にいて欲しいと告げてきました。
それからの私達は、クリスマスまでの間に二人の思い出の場所に行ったりしながら最後のクリスマスを二人きりで過ごして、お互いの幸せを願いながら長かった私たちの関係は静かに終わりをつげました。
彼女と別れた話はこれで終わりですが、実は彼女に別れ話を切り出された時から私は女装をしなくなっていました。
真剣に彼女とのことだけを考えたかったので女装する気分にはとてもなれず、御主人様やお義兄さんからの誘いも断っていたんです。そしてさらに、私は彼女との別れを機会に「女装」を辞めることを決意していました。
御主人様やお義兄さんには「しばらく会えない」とだけ伝え、部屋に隠していた女装道具も全てトランクルームへ移し、お義兄さんにはトランクルームの中の物は自由に使ってくれて構わないと伝えました。
それ以降、定期的に御主人様やお義兄さんから連絡は来ましたが、女装をしたいという気持ちが湧くこともなく私はずっと誘いを断り続けました。
年末年始もお義兄さんと顔を合わせたくなかったので、適当に理由をつけて実家には帰らず、友人達と共に久しぶりに悠々自適な時間を堪能しました。
今になってその頃を思い返してみても、仕事もプライベートも満ち足りていて特に不満のない生活を送っていたと思います。
そんな充実した生活を満喫しながら、季節的にはちょうどバレンタインの頃でした。
ある日の休日、冬物の一部をクリーニングに出そうとクローゼットの中を片付けていると、衣装ケースの隅にある見慣れないパステルピンクの布地が目に留まります。
私は何だろうと思い、何気なくその布地をつまみ出しました。
「・・・?・・・・・・っ!!」
それが何か理解した瞬間、自分でも驚くほど大きく心臓が跳ねました。それは、サテン生地で出来たパステルピンクのシンプルなシュシュでした。
そこは女装道具を隠す場所ではなかったので、たぶん彼女・・・元彼女の物でしょう。きっと彼女が忘れたものを何かの拍子にそこに放り込んだまま、今まで忘れてしまっていたんだと思います。
こういう時、普通の男性なら元カノとの思い出を懐かしんだり、シュシュを返す事を口実に彼女とまた会うことを妄想したりするのかもしれません。でも何故かその時の私を襲ったのは、一つのある強烈な衝動でした。
(女装したい・・・)
私は、自分でもなぜ元カノのシュシュを見付けたくらいで、そんな激しい欲求が湧くのか分からず激しく動揺しました。そんな動揺を押さえ付けるように、慌てて手にしていたシュシュを衣装ケースの中へと押し込んでクローゼットを閉めます。
その頃は、私にとっては女装という倒錯した行為から解放され、普通の男性としての生活を取り戻しかけていた頃でした。
女装を止めてから、もっと女の子らしいアクセや服を目にすることだってたくさんあったはずなのに、特別可愛らしいデザインでもないシンプルなシュシュにこんなに心を掻き乱されるなんて・・・。
私は気持ちを落ち着かせようと、冬服をクリーニングに出しに家を出ました。しかしクリーニング店でも、帰り道に買い物をしている間でも、気持ちの昂りは一向に治まりません。
(そういえば、トランクルームは今どうなってるんだろう・・・)
ふと、女装道具を預けているトランクルームのことを思い出します。合鍵を持っているお義兄さんに好きに使ってくれて構わないと伝えてからは、私は一度も足を運んでいませんでした。
(お義兄さんが使っているのか、ちょっと気になるし・・・)
そう思うと、私はちょっと覗いてみるだけのつもりで女装道具を隠しているトランクルームへと向かいました。