禁断の木の実
2012/01/03 11:50:37(9zjEAy7d)
沢木とその仲間たち計三人は、その日うちに泊まりに来た。
母はたまたま休みで家におり、元気に挨拶をする沢木らを丁重に部屋にとおしながら私の左耳を摘まむと私を別部屋に引きずりこみ、「何で友達が来るって連絡しないんだ、この馬鹿息子が!」と本気で怒りながらも、得意のチーズハンバーグを短い時間で作り上げ彼らからマジ舌鼓をいただいたのはさすがとしかいいようがなかった。
料理をしているときの母は真剣で、沢木が、お母さん手伝いますよ、とキッチンに入ろうとすると、「男が厨房に入るんじゃないよ!」と一喝し、彼の出鼻をくじいていた。私は母を口説けるのは生涯で我が父だけだな、とこの時確信したのだったが。
父はおとなしい人で、異常なくらい寡黙で唯一の趣味は読書という地方公務員だった。その父が一年に一回あるかないかの出張お泊まりの日が今日だというのも何か運命づけられていたのかも知れなかった。
夕食時に沢木が買ってきたワインを母にも振る舞うと、
「あんたたち、ガキのくせにこんな高級なワインを・・・、ああもったいない」とガバガバその高級ワインとやらを飲んでいた。若い頃から酒の強さには定評のあった母は、私を含め沢木以外の男らを次々と潰し残る奴も蹴散らしてせせら笑おうとしていたのだろうが、さにあらず沢木もなかなかの酒豪だった。
12/01/04 00:59
(pjpsTRua)
いいねぇ~こういうの大好き。続き待ってます!
12/01/04 04:02
(hHglRtXv)
薄れゆく意識の中で、このまま母と沢木を残してぶっ倒れてしまったらヤバイんじゃないか、と思っていたが、体は全くいうことをきかず、それでも現実と夢の中を行ったり来たりしながら母と沢木の会話を聞き逃すまいと頑張っていた。
沢木は酒に酔わせて母をどうにかしようと思っていたのだろうが、逆に母に尺をされ、
「飲め!チャラ男。あたしゃあんたみたいなのが一番嫌いなんだよ、あっはっはっはっ」
と簡単に体をかわされていた。
数時間後、男子大学生四人をリビングに酔い潰したまま、一人寝室に行き、万が一のために鍵をしめて寝たということを、次の日の朝、おめめパッチリで二日酔いを微塵も見せずに私たちの朝食を作りながら語ってくれた母から聞いた時は、みんなテーブルに突っ伏しており、胃の奥から込み上げてくる吐き気と戦っている最中だった。
「ほれ、早く学校へ行った行った。あたしは早番なんだから、あんたたちがいると家のことをかたずけてから出掛けられないじゃないの。リズムを狂わすんじゃないよ」
私たちは強制的に外へ追い出され、手には、殆ど丸々残した朝食を、「こんなに残して勿体無い」と、タッパーに詰められ持たされていた。
駅までの道中、他の二人は、「お前んちの母ちゃん、確かに黙っていれば綺麗かもしれないけど、あれはないわ。ありゃ、男だわ」
「堕とすとかいう問題じゃない、こっちが殺される」と好き勝手なことをほざいていたが、沢木は一点を見つめたままだった。
「どうしたんだ、沢木」
具合が悪いのだろうと手をさしのべようとすると、それを払いのけ、
「絶対堕としてやる・・・」と小声で言い、そのままふらふらと駅の向こう側へ行ってしまった。
私は何だか嫌な予感を感じたのだが、この時は沢木があんなに早く次の行動をおこすなんて思っていなかった。
12/01/05 02:05
(8KDCmCmn)
オモシロイ展開じゃないか。次が期待されるね。頑張って!
12/01/05 09:50
(Tnn8fQXY)
どうも傑作の予感がする。
慎重に、しかしスピーディーに書き込んで欲しい。
賞金を用意して待っている。
12/01/05 16:03
(Tnn8fQXY)
この作品をぜひ映画化したい。ポルノとして久々にカンヌの金尻賞を狙いたい。
ぜひ作品を完成してくれたまえ!
12/01/05 21:22
(Tnn8fQXY)
煽らない煽らない!いきなり宅に泊まらせる母親何処にいる。父親に訊き許可伺うだろ。
12/01/06 06:53
(0T5hqilO)
沢木と別れた後、大学へ行き二日酔いを堪えながら四時限目までをこなし、フラフラになって帰宅したのはもう夕方だった。
早番のはずの母はまだ帰ってきておらず、家の中は昨夜の宴の後始末がされた、いつもの我が家に戻っていた。
時間にはキッチリしている母の帰りが遅いというだけで少し嫌な感じがした。母は携帯を持っていないため、こういうときに連絡の取りようがなかった。一瞬本気で外へ探しに行こうと思ったがやめた。奴らのいう通りいつからこんなマザコン気質になったんだ、と自分の今取ろうとした行動を恥じていたら、玄関のドアがガチャリと開いた。
「・・・ただいま」
母が帰ってきたのだが、その声には張りがなかった。いつもは元気いっぱいの母なのに・・・。
「遅くなってごめんね・・・」
「おかえり、どうしたの、何かあった?」
私は喰い気味に応えながら母に近寄った。
私が近寄りすぎたのか母は思いの外驚き少し後退りをし、
「あ・・・あのさ、怒らないで聞いてくれる?」
「?」
確かに様子がおかしいのだが、母の表情は被害者のそれではなく、どちらかといえばもう一方のような気がした。
「あはは、実はさ・・・、沢木君がね・・・」
12/01/07 02:08
(fW5axJvA)
母の話をまとめるとこうだった。
沢木は私と別れてからお昼前に母の勤めている牛丼屋へ行き、吐き気を堪えてでも母に会いに来たことを告げミニ牛丼を注文したのだが、母の「何だい情けないね、あれくらいの酒で。五杯や十杯くらいペロッと平らげてみなよ」という発言に、「平らげたらデートしてくれます?」と応酬したところ、「ああいいよ。食ったらね」という母の不本意な返答を鵜呑みにしてしまい、四杯目の途中で白目をむいて泡を吹きぶっ倒れたのだそうだ。
店内にいたお客からの通報ですぐに救急車がやってきて、救急隊員に「なにがあったのですか」と言われた通報者が、「この店員さんがお客を煽って・・・」と母の疎かな行為をチクったことにより、母はまず救急隊員に怒られ、別の救急隊員が沢木を救急車に運びながら、「この方のお知り合いはおられますか」という問いに気まずそうな感じでそっと手を挙げた母はその人に、「なに、あんたなの? ちっ、じゃあ乗って」と舌打ちをされ沢木とともに救急車に乗せられて病院に着くと、今度は事情を説明した看護士さんとお医者さんに怒られ、挙げ句の果てに後から駆けつけた牛丼屋の店長にこっぴどく怒られた。
沢木は治療室に入れられたがすぐに意識を取り戻し、母が大人なのにものすごく怒られたことを知ると、「すべては自分が招いたことなので池田さんはのせいではないです」と母をかばってくれた。
沢木の様態について医者から言われた診断結果は、「椅子から倒れ落ちたことによる、右人差し指及び右手首並びに右腹部周辺の打撲で全治二週間」だそうだ。
怒るというより、呆れてため息が出た。何という馬鹿げたことを・・・。母も母だが、沢木も沢木だ。あんなに思い詰めた顔をしてこの行動かよ・・・。
「・・・でね、医者が言うには、右手は暫く箸を持つのも困難だろうし、腰にはコルセットをするので重いものも持てないだろうから日常生活に困るだろう、なんていうのよ」
そりゃそうだろうな。沢木も災難というか何というか・・・。
「だからあたし言ったのよ。『私が責任もって面倒みます』って」
「え?」
「やっぱりさ、いい年こいて息子の同級生煽ってさ、病院送りにしたのはいくらなんでもまずいよね。うん、すごい反省してるよ。だからさ、罪滅ぼしというかなんというか、大人としてさ、彼の面倒をみる義務があるよね、うんうん。あ、そういう訳で明日から彼のところへ通うから何かと協力してよ。ていうか、あんたからも謝ってよね。一応彼は僕のせいだって言ってくれているけどさ、やっぱ友達として・・・」
「ちょ、ちょ、ちょっと待って!」
私はあらぬ方向へ話が猛スピードで進んでいくのを制した。
12/01/07 02:13
(fW5axJvA)
次は??
楽しみにしてます☆
12/01/07 14:02
(6spTCwHD)
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