沢木は少し涙目になりながら、切実に語った。母はやっぱりあの日、最後に行為をしてから帰ってきたんだ・・・。あの日の夕飯は相当気合いが入っていたのに・・・、あの日の晩、二人で抱き合いながら泣いたのに・・・。それも全部、沢木と行為をしていた後のことだったとは。母は一体どんな面持ちでこれを聞いているのかと見てみると、意外にも冷たい表情で沢木を見つめていた。「また泣き落とし? もうだまされないわよ」「何だ? 判っちゃった? 」「同じ手を何度も・・・ 」「でも最初引っかかったでしょ」「馬鹿・・・」沢木が言ったことを否定もしないし、私が沢木にバラしてしまった『母が沢木とセックスしたことを照れながら認めたこと』を聞いて、かっとなって沢木の頬を叩いたことも、まるで何もなかったかのように沢木と話をしている母を見て凄く違和感を覚えた。それを特に感じるのは、もうとっくに離れることが出来るのに、母が未だ沢木の腕の中にいることだ。本当に嫌ならそこから抜け出すことなんて簡単なことなのに・・・。何だろう、この感触は。ああ、そうか。あれだ・・・。恋人関係。この二人は・・・、深い関係なんだ。そう思うと同時に、胸が掻きむしられたような息苦しさと吐き気に襲われた。「っ! 」危うく声が漏れそうになったのを辛うじて堪えることができた。胃の奥から酸っぱいものが込み上げてきたが、何とか飲み込んだ。「女性を堕とすのってさ、母性本能をくすぐるか女としての魅力を引き出すかどちらかでしょ」沢木が得意気に語った。「は? あたしはどうだったって言うの」「おばさんは両方。入り口は母性本能、そして仲良くなってから女としての魅力。泊まった日は死ぬほど飲まされたから堕とせなかったけど、結果、意外と簡単だったわ」ははは、と笑う沢木を殴るかのように右手を上げた母の目は、そんなこと絶対するようなそれではなかった。「堕とすって言うな」なんて囁いていたのが仲の深さを物語っていた。「あんたの独特な論理展開にも慣れたわ」「でも、的は外してないだろ? 」「どうだか・・・」「おばさんのM属性だってピタリだったでしょ。俺そういうのは絶対的に当てちゃうんだから」「・・・」母は顔を赤らめて下を向いた。沢木はそんな母の頭を撫でながら続けた。「でもまさかこんなに好きものなのに、おばさんって旦那さんを含めて経験人数が二人目だったとはね。しかも可愛そうに旦那さん若いうちにEDになんかなっちゃってさ」父がEDだったなんて、全然知らなかった。若いうちということは、夫婦間の行為は長い間行われていなかったということか。だからと言って、母の体は慢性的に男のそれを求めていた
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