昔好きな人が居た。
15歳年上で茨木のり子と吉行淳之介が好きな国語教師。
「好きだよ。」
『そっか。』
彼に告白をする度に、笑顔で知らん振りをされた。
何回目かの告白の後、彼からも告白があった。
『僕は僕であることを辞めたいんだ。わたくしを手放したい。』
「一緒に辞めよう。どうすればいい?」
『僕を辞めた僕を受け入れて欲しい。』
自分を辞める為の手段として、彼は姿を変える事を選んだ。
全身タイツは首から下と、頭部とに、分かれている。
呼吸は意外と苦しくない。
『匂いで、吐息で、皮膚で僕を追って。見失わないで、ね。』
皮膚を布で覆って、彼の心は剥き出しになった。
布で隔ててあって、裸の状態よりも遠いはずなのに核の熱が凄い。
ドク ドク と、熱く尖り合った性器。
どれだけ擦り合わせても相手の内臓に届かない、もどかしさ。
何度も何度も、汁の染み込んだ布越しに擦る。
『もう、駄目だ。』
カッターで切れ目を入れて布を破く。
剥き出しの僕 と 私。ぬるぬる。ぬるぬる。
あまりにも性器だけが動物的で、頭が変になる。
後ろでフェラクティがリピートされている。馬鹿みたいにひたすら粘膜同士をにちゃにちゃと擦る。
くちゃ、くちゃ。
私たちは私たちを辞められたのかなぁ。
また、ぐちゃぐちゃな交尾がそのうちしたい。な(^^)