第9部のつづき
○“面白そう…”
“肉便器”
大抵の成人男性なら、一度は聞いたことがあるだろう。
女性を蔑むようで、個人的には好きではない言葉だが、以降彼女は、まさにそれに相応しい性長をみせた。
だからといって、
“手当たり次第、誰彼構わず…”
という訳ではない。
既述した最低限の条件をクリアしている必要はある。それが2人の望みだから…。
例えば、
…時間にルーズ過ぎる人…
…中学生、高校生等の未成年者…
…お酒を呑んでから来た人…
などは、彼の方から丁重にお断りした。
1つ目は…冷やかしか非常識か。
2つ目は…実のところ2人共にその気はあった。しかし、何とか条例…という問題があるため、我慢して想像しただけに留めた。
3つ目に関して言えば、待ち合わせて一緒に呑んだ後や、そのなり行きで…という状況であれば、特段の問題は無かった筈だ。
予定が変更になった時は、ドライブや露出に勤しむ。
今2人がいるのは、ある大きな橋の下。
ドライブ中に2人のどちらかが、催した際に頻繁に用を足す場所である。
念のために言っておくが、ここで言う“催す”のは尿意ではない。
“挿入欲”のことである。
彼は携帯を操作していた。
…暇?何してる?…
…暇。TV見て寛いでいるとこ…
彼が送ったメールに即効で返事が来る。
…今、TELしてもいい?…
…いいよ…
…でも、喋んないでね?…
…何で?…
彼は助手席の足元に潜り、目隠し彼女の豆を舌を使って転がしていた。
右手の指2本が彼女の中で疼いている。
さっきまでは、左手にデジカメを持ち、ピンク色の彼女のヒクつきを撮影していた。
そんな中、ふと彼は、面白そうなことを思い付く。
カメラを置き、代わりに手にした携帯。
それで、彼女の喘ぎ声を別のβに聞かせようと言う魂胆だった。
彼女が吐息と喘ぎ声を漏らす中、彼は通話ボタンを押し、強く耳に押し当てた。
プップップッ…トゥル…
1コールで音は途切れ、画面を確認した。
0:01…0:02…
通話中のカウントは動いている。
彼は彼女の口元に携帯を近付けたその時、彼は自分の犯したミスに気付く。
「ねぇ?さっきから何やってんの?」
彼女は気付いていた…。
携帯のボタンを操作する音、それと彼の耳元から洩れた発信音まで…。
車のエンジンを切っていたのが仇になったようだ。
シラを切ろうとしたが、アイマスクは既に
外されているため無理。
そこで彼が取った行動は…
携帯を強引に彼女に預け、指と舌先を激しく動かしたこと。
「…話してみたら?」
「…いやん…んっ…あんっ…」
そうして彼はウヤムヤにした。
2度目の
「…話してみたら?」
で、機嫌悪そうな彼女はやっと
「…もしもし…こんばんは…」
ここぞ、とばかりに彼は彼女を責め立てた。思わず彼女は吐息が漏れる。
…彼に触られてるの?…
「うん」
…気持ちいいの?…
「うん」
…どこが?…
「クリちゃん…」
そこまで2人のやり取りが聞こえてきたのだから、彼女に発信音が聞こえて当然だ。
その後は、彼女の声が大きくなりよく聞き取れなかったが、喘ぎ声混じりに
「……て…うん…いいよ…」
などと、時々何やら返事をしていた。
メインの声を聞かせようと、彼は壺の中を軽く掻き混ぜる。
「…あっ…あん…イッちゃいそう…」
…イッちゃったの?…
βはそう尋ねたのだろう。
「うん…イッちゃった…うん…じゃあね…」
そう言って彼女は、βとの電話を切った。
「気持ちよかった?」
「うん」
「興奮した?」
「…うん…」
「何話してたの?」
「内緒…」
彼女は仕返しにちょっとだけ意地悪した。
ふてくされた顔のままで彼女にキスを
すると、2人の乗った車は揺れだした。
彼は、彼女の締め付けてくる感覚を少しでも紛らわそうと、外に目を向けた。
すると、そこには人影があった。
覗き…
確実に近付いてきている。が、彼は気にも留めず、彼女への奉仕に専念した。
人影は車の前を通り、助手席の前で止まる。
そして、食い入るように彼女の姿を見た。
当然、彼女も気付かない訳がない。
「見せてあげたら?」
彼は動くのを止め、運転席に腰を降ろす。
サイドポケットから取り出したモノのスイッチを入れて手渡すと、その手は自動的に所定の位置に突く。
「見せてあげるぅ…」
そう言って、彼女は腰を突き上げた。
彼は気を効かせて、車内に明かりを灯す。
露出ドライブ用の常備灯…ペンライト。
彼女の口が、クチャクチャと音を発てながらモノを食べている。
覗き魔は、べったり窓に貼り付き、時々角度を変えながら暫くの間、その光景を見ていた。
人目に付かないように観るスリル…それが覗きの醍醐味ではないのだろうか?
少なくてもこの人物には、覗きの才能は無さそうだ。
呆れた彼は、窓を少し下げて声を掛けた 。
「…後ろ、乗ったら?」
喜んで後部座席に乗り込んだその覗き魔。
「こんばんは。お邪魔しま~す」
さっきまでTELしていたβである。
彼はメールで、
…彼女の喘ぎ声聞きたい?…
と、もうひとつ
…覗きに来ない?…
とも招待していた。
βの家は、そこからそう遠くない場所にある。
彼からメールを貰ってすぐに出掛ける準備をし、彼女と電話で繋がりながら2人の居場所へと向かっていた。
そのβに彼女は、
「こんばんは。来るの早いね?家、そんな近いの?」
βを招待したのは、彼だけではなかった…。
聞くところに依れば、βが電話の中で、
…そっち行っても良い?…
と質問していたらしい。
どおりで、彼女が驚かない訳だ…。
覗き魔作戦は失敗に終わった。
「じゃっ、続き…見せてあげたら?」
彼は、彼女に後ろの席へ移動するよう奨めた。
「よいしょっと…」
倒したヘッドレストを跨ぎ終えたところで、彼は助手席のシートを立てた。
二人との間に境界ができ、自分だけ疎外された感覚が、彼を興奮させた。
彼女は、続きを始める…。
βは、彼女のお手伝いに勤しむ。
彼は、境界の向こう側の二人をただ見ていた。
暫くした後、
「ちょっと、おしっこ…」
彼は、車を降りた。
中から洩れ出る彼女の声が、橋桁のコンクリートに反射し、辺りを不気味に漂っていた。
この橋は、結構遅い時間でも歩行者や自転車の通りが多い。恐らく、橋向こうに立地するコンビニの買い物客が殆どだろう。
もしかしたら、彼女の声は上まで届いているのではないだろうか…。
一応確認してみるのも、面白そうだ…
そう思った彼は、急いで用を足し、土手を駆け上がって歩道を歩いてみた。
目の前を行き交う車の走音。
…やっぱ、聴こえる訳ないか…
残念そうに踵を返した。
その時、一列に並ぶ碧色の明かり全てが、一斉に黄、赤と変わる。
そして、一時の静寂の中、聞こえて来る声…。
果たして、今日のこれまで、2人が橋の下で過ごした時間、ここを通り過ぎた人々は、どれだけいたことだろう…。
もし、その中で彼女を聞いた人は、どう思ったのだろう…。
風の音?
幽霊?
…どこかのカップルが、Hしてる…
と正解した人もいるのだろうか…。
中には、
…この辺を歩いていた女性が、見知らぬ男から車に引きずり込まれ…レイプされてる声かも…
などと過度な解釈をした人もいるかも知れない…。
そんな勝手な妄想を描きながら、車の方へと歩みを進めた。
車は…大きく振れていた。
それも、後部座席の二人の動きに合わせて…。
「お待たせ…。なんだぁ?もう入れてたの?」
「すいません…」
彼女への意地悪発言のつもりが、βは真に受けた様子。
そう言っておきながらも、βは彼女から離れるつもりもない様子。
本音と建前を巧く遣いこなしている。
「別にダメじゃないから…」
彼はそんなことを気にするタイプではない。
因みに、息遣いの荒い彼女は、返事すらしない。
ひたすらβの動きに両手でしがみ付いていた。
さっきよりも、もっと大声で叫びながら…。
そんな二人を見ながら、また面白そうなことを思い付いた彼。
「ちょっと移動するから…」
移動する車内で他人に抱かれる彼女を、バックミラー越しに見れるせっかくのチャンスだ。
みすみす逃す訳にはいかない…。
「何で?」
と、もしも聞かれた場合の答えも用意しておいた。
それにβは、
「…はい…」
と答えただけ。
彼女は相変わらず…。
3人を載せた車が動き出す。すると、やっと彼女は
「…え?…え?…どこ行くの?」
「何かジュースでも買いに行くから…。飲むでしょ?そのまま続けて…」
用意した答えは無駄にならずに済んだ。
彼はチラチラ後ろを気にしつつ、心躍る気分で運転した。
とりあえず、近くのコンビニは駐車場が狭いので、スルーしたところで、橋の上から見えていた信号に引っ掛かる。
隣に停まっている運転手の目線は、彼に、そして後部座席へと注がれた。明らかに気付いている。
βのシルエット、車の大きな揺れ、彼女の大きな声、その3点セットで気付かない人などいる筈はない。
並走しては信号で停まり…を2回繰り返す
「…隣の車の人、ずっとこっち見てるよ?…」
彼女に報告する。
「…あっ…いやぁん…」
残念なことに、いつもの反応でしかなかった。
βが上だから、彼女には廻りのことが気にならない。
逆にβは、動じない。肝が据わっている。
それはそれで驚きだ。
大きなショッピングモールを少し進んだところで、T字路に突き当たる。一番前でまた信号に捕まった。
そこで彼は
…夜のまだ車通りが多い時間帯に、俗にいう背面座位で彼女に挿入したまま運転した時も、この信号に捕まったんだよなぁ。対向車も隣も驚いた顔をしてたけど、あの時何してたのか、みんなちゃんと解ってくれたのかなぁ?…
と、感慨に耽る。
少なくとも今回は、気付かれている。
それが嬉しくて、彼は廻りの車からの視線に対し、ニコニコと笑顔で返した。
後ろからは、
…グチョッ、グチョッ…
と、突き刺さる音が聞こえ
彼女の喘ぎ声に合わせ、車は二人の汗と体液が交じった強風に煽られたように揺れた。
右折、左折、住宅街を突き抜けて着いた頂上の折り返し地点は、もうひとつの用を足す場所のすぐ近く。
彼は、バス停向かいの自販機でジュースを買う。
ミルクティ…コーラ…甘めのカフェオレ。
目的は果たした。あとは元の場所に帰るのみ。
βの肩をトントンと叩き、親指と人差し指を使ってチェンジのサインを出す。
「俺、運転すればいいんですか?」
…いやいや違う違う…。
上下入れ替わって!って意味ですから…
そう思った彼は、彼女とβを交互に指差した後、もう一度同じサイン。
それでβは理解してくれたようだ。
彼女の方が上で復路はスタートした。
ゆっくりと動き出したmerry-go-roundは、やがて勢いよく上下する。
振り落とされまいと、その馬の首にすがり付く彼女。
大通りへ出ると、案の定、連なる信号が彼らの進行を阻止しようとする。
その一つ…再びショッピングモールを通過した交差点で、地下鉄を降りたばかりであろう綺麗めの女性と目が合った。
彼らに交差する信号が青になる。
渡り出した時は訝しげだった表情が一転、
…見てはいけないモノを見てしまった…
そんな感じで目線を逸らし、足早に目の前を通り過ぎていった。
「…いやぁん…今の女の人と目が合っちゃった…」
耳元で聞こえた声に振り返ると、いつの間にか彼女は体制を変え、前座席の肩に掴まり、その隙間から前方を臨みながら、βの上にしゃがみ込んでいた。
当然、激しく動きながら。
彼女も間違いなく肝が据わっている…
彼はそう思った。
彼女の上下する姿をミラーで覗きながら、間もなく橋の下へと3人は戻ってきた。
往復で正味40分程度のドライブ。
運転しながら彼は、彼女のイッた回数を途中まで数えていたのだが、もうすぐ10回目という辺りで記憶が曖昧になり、やむなく断念した。
後で聞いた話に依れば、
…周りが気になってそれどころじゃなかった…
というβ。それにしても強い…。
彼からすれば、実に羨ましい限りだ…。
到着して、落ち着きを取り戻したβは、目の前の事象に神経を集中させることができた。
そして、痺れる膣の奥深くへいっぱいに注がれる
…性なる洗礼の儀式…
を迎えた。
まだ密着したままの二人の隙間からは、飽和した黄白色のジュレが溢れ出した…。
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