2019/10/05 17:56:59
(byvK5N6A)
裕之さんとの一泊温泉旅行の前日、何を着て行こうかとあれこれ迷いましたが、ゆったりとした薄いピンク色のワンピースにしました。
姿見の鏡の前で、ワンピースを着てクルリって回ってみたりして、遠足前の子供に戻ったようでした。
下着も上下ともにピンクでレースの飾りが付いたセットにしました。
これを見たら裕之さん、何て言うかな…いい年してちょっと恥ずかしいかな…なんて思いながら…
旅行当日、家を出るときに玄関口でお嫁さんに
『それじゃ、留守をよろしくお願いしますね』と声をかけると彼女は笑顔で
『はい、家のことは任せてください。お義母さんもガンバってくださいね』と、両手でガッツポーズ!
孫にまで、
『おばあちゃん、ガンバレ』
なんて言われてしまいました。
一体何を頑張れって言ってるのかしら?(笑)
私は返事に困ってしまい誤魔化すように
『はいはい、お土産買ってきますからね』
と言って家を出ました。
待ち合わせの場所へ行くと裕之さんがすでに来ていました。
『おはようございます。お待たせしました』
『僕も今来た所です。さぁ、乗ってください』
裕之さんのプリウスの助手席に乗って車が走り出しました。
亡くなられた奥様が生前に元気でいられた時には、この席に座って買い物やドライブしていたのかな…と思うと、申し訳ないような気持ちになりました。
裕之さんは、そんな私の胸中には気付くこともなく、楽しそうにおしゃべりしながら運転しています。
車が県外の温泉に向かって高速道路を走っている時でした。
ラジオのFM放送から、なだそうそうが流れてきました。
私も大好きな曲です。
聞き慣れた前奏に続いて、夏川りみさんの高く透き通るような歌声が続きます。
古いアルバムめくり~
ありがとうってつぶやいた~
いつもいつも胸の中
励ましてくれる人よ~♪
さっきまで饒舌だった裕之さんがいつの間にか無口になり、じっと遠くを見るような目線でハンドルを握ってました。
そして、サビのところにかかると目から一筋の涙が…
あぁ、亡くなられた奥様の事を思い出しているんだな…と思いました。
でも、私、決して嫌な気持ちにはなりませんでした。
むしろ、奥様思いの優しい方なんだなと改めて思ったんです。
やっぱり、この人を好きになって良かったと思いました。